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スキルダイバー~追放された深淵の鑑定士は最強レギオンを作り上げる~  作者: 国木田。
動乱のレッドアイズ

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第60話:絶影・穿孔殺

「よし……残るはあいつだな」


 数百頭いたキメラの群れは徐々に掃討され、阿鼻叫喚の悲鳴は収まりつつあった。残る脅威は――広間の中央で赤黒い魔力を噴き上げ、暴れ回るエンシェント・ゴーレムのみ。


 だが、俺の目にはすでに勝負の結末が見えていた。


(真っ先にライラへ経験値を注いだのは、思いつきの順番じゃない。圧倒的な相性の差だ)


 主脈Lv.5を完全コンプリートしたライラの神速。鈍重なゴーレムでは、その影を踏むことすらできない。


「フッ……!」


 ライラの姿が掻き消え、漆黒の残像がゴーレムの周囲を縦横無尽に駆け巡る。ガガガガガッ! と甲高い切削音が響き、分厚い岩石装甲が紙屑のように削り落とされていく。


 だがその時、ゴーレムの全身の亀裂から紫黒の光が溢れ出した。


 最深部の【大型魔力励起杭】から汚染エネルギーを吸い上げ、削られた装甲がボコボコと自己修復を始めたのだ。


「なっ……!? 装甲が再生しているぞ!?」

「あんな再生速度じゃ、どれだけ攻撃しても削りきれない!」


 後方の騎士や冒険者たちが、再び焦燥にざわめき始める。


 しかし、当のライラはフッと妖艶な笑みを浮かべた。後方へ軽く跳躍して着地し、獲物を狙う猫のように身体を低く丸め込む。


 その構えを見て、俺は思わず口元を吊り上げた。


(なるほど……あれをやる気か)


 ライラの影のオーラが、漆黒の短剣の切っ先へ凄まじい密度で凝縮されていく。アサシン系統の、超火力の一点集中必殺技――。


「――穿て。【絶影・穿孔殺】」


 囁きとともに、世界から音が消えた。


 ドッッ!!!!


 閃光となった一刺しが、超高硬度の装甲をバターのように貫通した。胸郭深くの魔力コアを、内部から粉々に穿ち抜く。


「グ……オ……ッ!?」


 巨人は断末魔とともに赤黒い魔力を噴き出し、光の粒子へと崩壊していった。


 中ボスの完全消滅。


 静寂が訪れた大空洞に、直後、割れんばかりの大歓声が爆発した。


「やった……! 中ボスを倒したぞォォォッ!!」

「信じられない、あの凶悪なゴーレムを一撃で……!?」

「助かったんだ! 俺たちは生き残ったんだ!!」


 歓喜と涙に暮れる冒険者たち。

 ジュリアスやクラン長たちも、ライラと、すべてを掌上で操った俺へ、畏怖の眼差しを向けていた。


 だが――。


 ズズズズズズズズッ……!!


 歓声を切り裂くように、床の亀裂が赤黒く発光した。ゴーレムやキメラの死骸から立ち上る莫大な魔力が、結界を解くどころか、地下深くへ猛烈に吸い上げられていく。


「な、なんだ……!? 結界が開かないぞ!?」


 ゴォォォォォォォンッッ!!!!


 これまでとは次元の違う重低音の咆哮が、迷宮の最深部から轟き渡った。俺は歓声に沸く広間で一人、大剣を握り直すセリアと視線を交わした。


「……歓声を上げるのはまだ早いか。本番は、ここからってことか」


 真の怪物――要塞級キメラが姿を現そうとしていた。


 ドッガァァァァァァンッッ!!!!


 広間の中央の石畳が爆発し、直径数十メートルの大穴が穿たれた。地下から這い上がってきたのは、山のような四足歩行の甲殻巨獣――【要塞級人造キメラ『グランド・キメラ』】。


 数百頭のキメラとゴーレムの汚染魔力を一身に喰らい、岩石甲殻の隙間からドス黒い瘴気を噴き上げている。頭部では魔導光線をチャージする巨大な角が禍々しく光り、猛毒を滴らせる無数の蛇尾が床を削っていた。


「ひ、ひぃぃぃっ……!? なんだあの化け物は……!?」

「中ボスよりもデカいぞ……! こんなの勝てるわけがないッ!」


 歓喜に沸いていた冒険者や騎士たちの顔から、一瞬で血の気が引いていく。


「……っ、はぁ……はぁっ……」


 その時、中ボスを穿ち抜いたライラが、カクンと膝をついた。黒銀の影のオーラが急速に霧散していく。


「……すいません、マルク様。時間切れ、です……もう指一本、動かせそうにありません……」


 悔しげに唇を噛むライラを、俺は手を差し伸べて抱え起こした。


「気にするな。十分すぎるほどよくやってくれた。あとは――俺が鍛えた奴らに任せればいい」


 その瞬間、背後から豪快な笑い声が響き渡った。


「カッカッカッ! ようやくあたしの出番かい! さっきから暴れ足りないと思ってたところだよ!」


 紅蓮の大剣を肩に担ぎ、セリアが獰猛な笑みで前に出た。その両脇を、ガインやロイスら『レッドアイズ』の主力が固める。そして――精鋭たちのど真ん中に、大槌を構えたミラが並び立っていた。


 後方では、アークとミミィが無理に前へ出ず、白銀とともに防衛陣形を敷いていた。負傷者や動けないライラの周囲を囲み、警戒に当たっている。


(よし……自分の役割が分かっているな)


 俺は二人の立ち回りに小さく頷いた。本気を出した『レッドアイズ』主力の速度と火力には、今のアークやミミィではまだついていけない。だが、基礎をコンプリート寸前まで鍛え上げたミラだけは違う。経験は、まだまだだが彼女らの突貫に、呼吸を合わせられるはずだ。


 並び立つセリアとミラの背中を見つめ、俺は武者震いに口元を吊り上げた。


(ミラの才能は、規格外の【潜在Lv.8】。そして、この街で見つけたもう一人の原石――セリアは【潜在Lv.7】の怪物だ)


 俺の見つけた二大巨頭が、今ここで噛み合って前線に立つ。


「ギシャアアアアッッ!!」

「総員、突撃ィィッ! 巨躯を切り崩せ!」


 セリアの号令とともに、レッドアイズの主力とミラが地を蹴った。

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