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スキルダイバー~追放された深淵の鑑定士は最強レギオンを作り上げる~  作者: 国木田。
下位鑑定士と少女たち

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第27話:戦況を覆す戦域統率

「セリア! 無事だったか!」


 俺たちは防衛線の後方へ滑り込み、大剣を構えて前線を睨むセリアの元へ辿り着いた。


「マルク……! 生きて帰ってきたかい!」


 セリアはホッと表情を緩めた。だが、俺の後ろの面々を見た瞬間、その真紅の瞳が露骨に細められる。歩くたびに揺れるミラの超爆乳と、短すぎるズボンから伸びるミミィの太もも。


「……あんた、クランを離れてから女の趣味が随分と露骨になりやがらなかったかい?」


「そんなこと言ってる場合か! 敵は五百頭以上の大軍勢に、上位個体まで混ざってんだぞ!」


 俺は一歩前へ踏み出した。


「セリア、頼みがある。ここから先は、俺に全体の指揮を執らせてくれ!」


「あんたに指揮を?」


 セリアは一瞬だけ眉を上げた。だが、すぐに笑みを浮かべて大剣を担ぎ直す。


「いいねぇ、乗ったよ! あんたなら、うちの連中も文句は言やしないさ。その代わり――今晩の飯と酒のおごりは、あんただからね!」


「ああ、いくらでも奢ってやるよ!」


 俺は不敵に笑い返し、全神経を戦場へ集中させた。

 前世の『マスターズ・レギオン』では、プレイヤーが結成した複数のパーティが、オート行動でダンジョンを周回して育つのが基本だった。だが大規模なレイド戦や重要イベントでは、プレイヤー自身が部隊に同伴し、リアルタイムで指示を下すモードがあった。


 その際、指揮官が前線に立つことで発動する専用パッシブスキル――それが【戦域統率《バトル・タクト》】だ。指示が通っている間、配下全員の基礎筋力、敏捷性、魔力伝達効率を底上げする全体強化バフである。


 現在の俺の主脈はLv.4。対象全員のステータスを、一律『10%』引き上げられる。しかも複数パーティが入り乱れる『レギオン戦』では、範囲内の味方全員に効果が波及する。


 普段はミラやミミィが依存せず自立成長できるよう、あえてこのスキルを切っていた。だが、街の存亡がかかり、一頭の侵入も許されない今、出し惜しみなどしている場合ではなかった。


(制限解除……【戦域統率《バトル・タクト》】、展開ッ!)


 俺の全身から、指揮官としての魔力波が同心円状に戦場全域へ広がっていく。


「よし……まずは負傷者の手当てだ。――おい、治癒士《リアーチカ》はいるか!?」


 後方の支援天幕へ声を張り上げると、白銀のローブを纏った女性がすぐさま駆け寄ってきた。


「はい、マルク先生! ここにおります!」


 レッドアイズが誇るトップ治癒士――リアーチカだった。


「先生がお戻りになると信じておりました!」


「助かるよリアーチカ。この『鉄蠍の尾』の重傷者たちの止血と、ミラたちのスタミナ回復を最優先で頼む!」


「かしこまりました! 【聖脈活性】、【全体治癒(エリア・ヒール)】!」


 杖から放たれた清らかな光が、担架の負傷者たちを包み込む。傷口が、急速に塞がっていった。


「ふぇぇ……身体がすごく軽くなってきましたぁ……!」


「ありがとうございます、治癒士様!」


 ミラとミミィの疲労も一気に抜け、戦闘態勢が整った。


「よし! 俺は前線に出て、ガインたちと直接合流して防衛線を押し上げる!」


 駆け出そうとした瞬間、背後の影から黒い人影が音もなく滑り込んできた。


「――マルク様」


「ライラ! 戻っていたか!」


「はい。急報を伝えた後、囮任務に出ておりました。ただいま合流いたしました。主《あるじ》の近接護衛は、この私にお任せください」


 ライラが、絶対の忠誠を宿した瞳で短剣を構える。


「へっ、俺の盾もまだまだ現役バリバリだぜ! 背中は任せて、前だけ見て指図を飛ばしな!」


 ヴォルクも大盾をガツンと打ち鳴らし、俺の左脇を固めた。


 その時――最前線で両手斧を振るっていたガインが、自身の腕を見つめて目を見張った。


「……あ? なんだこりゃあ……!? 急に身体が軽くなりやがったぞ……!?」


「魔力の通りが滑らかです……! 詠唱のインターバルが明らかに短縮されています!」


 後方のヘレナが眼鏡の奥の瞳を丸くする。左右を駆け回るロイスも、驚愕の声を上げた。


「ステップの踏み込みのキレが増したぞ……!」


 【戦域統率《バトル・タクト》】による、ステータス10%上昇。

 前線の三人は、戦場全体を包む「流れの劇的な変化」を肌で察知した。


 振り返った彼らの視界に飛び込んできたのは――ライラとヴォルクを従え、鋭い眼光で敵陣を見据えて歩み寄ってくる、かつての仲間。専属の下位鑑定士《スキルリーダー》の姿だった。


「ははっ! やっぱりマルクかよ!」


 ガインが血飛沫をぬぐい、豪快に笑った。


「よう、待ちくたびれたぜマルク! 遅いじゃないか!」


 ロイスが短剣をくるりと回してウインクを投げる。ヘレナが、不敵に口元を吊り上げた。


「ええ、待っていましたよ。――マルク先生」


 かつて苦楽を共にした最高の仲間、レッドアイズの面々。全幅の信頼を込めた笑顔で、彼らは俺を戦列のド真ん中へと迎え入れたのだった。


◇


「ガイン、半歩右へ引いて斧を受け流せ! ヴォルク、左の軸を支えて挟み込め!」


「おうッ! 任せな!」


「お前の重撃の邪魔はさせねぇ、ガツンと叩き込めガイン!」


 俺の指示が飛ぶたびに、前線の噛み合わせが滑らかに修正されていく。


 10%の底上げがあるとはいえ、大軍勢と連戦を続けてきたガインたちの損耗は浅くない。だが、俺の合流で戦況の流れは劇的に変化していた。


「ヘレナ、三時の方向へ火球を三連射! 魔力消費を二割抑え、爆砕ではなく足元の泥を焼き払って足止めに徹しろ!」


「了解しました! ――【炎鎖弾】!」


 火球が指定座標へ正確に着弾した。泥濘が一瞬で焼き固まり、敵の機動力を奪う。


「ロイス、脱力を意識して左の死角へ回り込め! ヘビーファングの首筋の隙間を刺突で抉れ!」


「へっ、見えたぜ! 【連鎖閃刃】!」


 ロイスの短剣が電光石火の軌道を描き、体勢を崩した魔獣の急所を貫いていく。ガインの防御姿勢の角度。ヘレナの魔力消費と着弾ポイント。ロイスが間合いを詰める秒単位のタイミング。


 かつて彼らの魂に刻み込んだスキルツリーの最適解を、戦況に合わせてリアルタイムで呼び覚ましていく。力みが削ぎ落とされたことで、消耗しているはずのレッドアイズの面々は、戦うほどに動きのキレを増していった。


「なんなんだ……!? あの人たち、さっきより動きが洗練されていってるぞ……!」


 防壁の上で矢を射かけていた自警団員たちが、息を呑む。


 突進してきたヘビーファングを、ヴォルクの大盾とガインの両手斧が阿吽の呼吸で挟み込み、その勢いを完全に殺す。完璧な波状攻撃の前に、前衛を脅かしていた上位個体群が次々と骸へと変わっていった。

戦域統率【《バトル・タクト》】

指揮官専用のパッシブスキル。マルクが戦場で直接指揮を執る際、影響範囲内の味方全員の基礎筋力、敏捷性、魔力伝達効率などを一律「10%」底上げする。レギオン戦のような大規模な乱戦でも、指揮下に入った部隊全体に波及する。

マルクの主脈レベルにより以下の効果が追加される。

Lv..1:軍団《レギオン》全員のステータスを10%底上げする

Lv.2:全員の士気をたかめ、恐怖を軽減する耐性を与える。

Lv.3:全員の魔力循環を改善し、スキル発動時の効果減少を低減する

Lv4:スタミナ、ケガに対する自然治癒能力を10%上昇させる



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カクヨム様でも掲載させていただいております。

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