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スキルダイバー~追放された深淵の鑑定士は最強レギオンを作り上げる~  作者: 国木田。
下位鑑定士と少女たち

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第18話:暗殺娘のサバイバル講義

 俺が『レッドアイズ』の本拠地へ向かった後、教会の宿舎では遠征の荷造りが始まっていた。


「遠征って何日もお外でお泊まりするんですよね! なんだかピクニックみたいでワクワクしてきちゃいました!」


 ミミィが背嚢を広げ、焼き菓子や着替えを詰め込んでいく。


「ふぇぇ……森の夜は冷えるかもですから、厚手の毛布と……あと、スープ用に大きなお鍋も持って行った方がいいでしょうかぁ……?」


 ミラも心配そうに、鉄鍋や予備の毛布を山積みにしていた。

 腕を組んで見ていたライラが、静かに口を開いた。


「……すべて不要です。今すぐ荷解きをしてください」

「えっ!? だ、駄目なんですか……!?」


 目を丸くするミミィと、鉄鍋を抱えて固まるミラ。

 ライラは二人に歩み寄った。


「遠征とは敵地への潜入であり、生還を目的とした作戦行動です。ピクニックではありません」


 ライラはミミィの背嚢をひっくり返し、中身を床に並べ替えた。


「まず、重量配分です。重い物を背嚢の下部に詰めると、重心が後ろへ引っ張られ、腰や膝に負荷がかかります」


 ライラは背嚢の上部を指で示した。


「重い物は背中の上部、かつ脊椎に近い体幹の中心に配置するのが鉄則です」


「あ……! 朝の『スキル体操』で教わった【荷運び】と【体軸維持】の感覚ですね!」


 ミミィがハッとして声を上げる。


「その通りです。重心が数ミリ狂うだけで、回避や初動の一歩がコンマ数秒遅れます。そのわずかな遅れが、魔境では致命傷になります」


 ライラは焼き菓子を取り除き、代わりに干し肉や乾燥豆、塩分の濃い携帯糧食を並べた。


「嗜好品は重量の無駄です。水筒は利き腕の逆側の腰、戦闘中でも視線を逸らさず抜ける位置に固定してください」


「は、はいっ! 分かりました……!」


 徹底した合理性に、二人は息を呑んで背筋を伸ばした。


「次は緊急医療品と野営道具です」


 ライラは腰嚢から、教会の特務で使う特殊な資材を取り出して机に並べた。


「これは【魔除けの燻煙香】です。点火すると魔獣が嫌う煙を漂わせ、野営地への接近を阻みます」


「こちらは【止血・解毒パウダー】。傷口に擦り込めば、毒爪による壊死と出血を数秒で抑え込みます」


 どれも、極限をくぐり抜けた者だけが知る実戦の道具だった。


「野営時の油断は『死』を意味します。道具の配置は、暗闇でも指先だけで取り出せるよう、身体に記憶させてください」


「ふぇぇ……す、凄いですライラさん……! 戦う前から、もう戦いが始まってるんですねぇ……!」


 ミラは感嘆の声を上げ、教えられた通りに大槌のホルダーと背嚢の紐を締め直した。余計な荷物が削ぎ落とされた背嚢を背負い、ミラは大槌を構えて軽く跳躍してみせた。


「あ……! すごく軽いです! 背中に荷物があるのに、全然体の軸がブレません!」


「本当だ! 走っても荷物が暴れないから、すごく動きやすい!」


 ミミィも身軽な装備に目を輝かせた。そこへ扉がノックされ、俺が屈強な大盾使いを連れて戻ってきた。


「ただいま。準備はどうだ……って、おお! 見違えるようにすっきりまとまってるじゃないか!」


「マルク様、初期装備のパッキングおよびサバイバル資材の配備、完了いたしました」


「さすがライラ、完璧だな」


 俺は満足して頷き、後ろの巨漢を手で示した。


「紹介する。今回の遠征で盾役と野営のサポートを担当してくれる、クラン『レッドアイズ』の熟練冒険者・ヴォルクだ」


「ヴォルクだ。よろしく頼む。……へぇ、嬢ちゃんたち、初遠征にしちゃあ見事な荷造りだな。無駄が一切ねぇ」


 ミラとミミィは、誇らしげに顔をほころばせた。


「よし、全員の準備が整ったな。これより遠征討伐任務を開始する!」


 宿舎の広間に集まった四人を前に、俺は周辺地図を指差した。


「目的地は、おまえらもお馴染みの『オーグの街』だ。そこを拠点に『魔境の樹海』浅層で素材を狩りつつ――地下ダンジョンを攻略する!」


「……えぇぇぇっ!?」


 ミラとミミィが、揃って素っ頓狂な悲鳴を上げた。


「だ、ダンジョン攻略ですかぁ!? 教本には『最低でも二から三パーティ、十人以上で挑むべし』って書いてありましたよぅ……!」


「そうです先生! ここにいるのは、ヴォルクさんとライラさんを入れても、たったの四人しかいません!」


 頭を抱える二人に、俺はフッと不敵に笑い、胸をドンと叩いてみせた。


「何を言っている。俺も数に入っているから五人だぞ?」


「余計に不安ですぅーっ!」


 ミラとミミィの声が、見事に重なった。


「おい、そこは頼もしいって言うところだろ!?」


 泣きつく二人にツッコミを入れつつ、俺たちは馬車に乗り込んだ。街道を南下し、オーグの街へと向かったのだった。

チラッとデス・オーガ戦で書きましたが、マルクを含めスキルリーダー達は魔物に狙われにくいという特性があります。メタ的には、前世のゲームでプレイヤーは魔物に狙われないため、その特性が職業の特徴となっています。


カクヨム様でも掲載させていただいております。

是非、応援お願いします。

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