↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキルダイバー~追放された深淵の鑑定士は最強レギオンを作り上げる~  作者: 国木田。
下位鑑定士と少女たち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/82

第11話:教会の密命

 ゴトゴトと規則正しく揺れる乗合馬車の車輪の音が、乾いた街道に響いていた。開け放たれた小窓から、初夏の心地よい風が吹き込んでくる。


「ねぇねぇミラ、王都に行ったら一番何が食べたいですか? 私、前の依頼で見た中央広場のアップルパイがずっと気になってて!」


「ふぇぇ……あ、あたしですかぁ? えっと……王都のパン屋さんの大きい白パンを、お腹いっぱい食べてみたいですぅ……!」


「あははっ、ミラ! マルク先生にお願いして、連れてってもらいましょうね!」


 向かいの座席では、すっかり打ち解けたミラとミミィが肩を寄せ合い、笑い声を弾ませていた。デス・オーガとの死闘や筋肉痛の恐怖など嘘のように、屈託のない笑顔が並んでいる。


 俺は窓枠に肘をつき、流れていく長閑な景色を眺めながら思考を巡らせていた。


(……王都か)


 表向き、俺は教会所属の下位鑑定士だ。弱小クランや一般市民を巡礼鑑定する、奉仕職という肩書きになっている。だが、それは世間を欺くための隠れ蓑に過ぎない。実態は――ウルズ教会の最高幹部、大司教エレオノーラからの極秘勅令によるものだ。


 教会の真の目的は、いずれ大陸に訪れるとされる『魔王』の復活に備えること。それに対抗し得る『勇者候補』を世界中から探し出し、囲い込むことだ。勇者候補とは、すなわち【主脈Lv.8以上】の潜在限界《ポテンシャルキャップ》を秘めた者を指す。魂の深淵に潜行し、器の底を暴き出す俺の【深淵透視《ディープサーチ》】は、勇者候補を探すのにこれ以上なく都合のいい能力だった。


 だからこそ、俺は指示に従って各地を巡礼して回っていたのだ。


(とはいえ……今まで何百人、何千人と鑑定してきて、Lv.8なんて見つからなかったんだけどな)


 大抵の人間はLv.4で頭打ちになり、稀な逸材ですらLv.5止まり。そんな中で突然見つかったのが、目の前でおずおずと笑っているこの怪力娘――ミラだった。


 だが、前世の記憶を持つ俺には、ずっと拭いきれない違和感があった。


(……そもそも、この世界の教会が恐れている『魔王』って、何なんだ?)


 前世のMMO『マスターズ・レギオン』で、魔王は世界を滅ぼす絶対悪などではなかった。条件を満たしてクエストをこなせば、普通に仲間にスカウトできる。魔王とは、超強力な魔法特化の人気NPC職種に過ぎなかったのだ。


 プレイヤーたちにとっての敵といえば、『奴ら』だったはずだ。


(この世界の教会が言っている魔王と、前世のゲームの魔王は同じなのか? それとも、何か致命的な食い違いがあるのか……?)


「皆様、前方に湧き水の休憩所がございます。馬を休ませるため、三十分ほど停車いたします」


 御者の声が響き、馬車が街道脇の木陰に停車した。


「ミラ、外行ってみましょう!」

「は、はいですぅ! あ、お馬さんにもお水あげたいですね!」


 扉が開くや否や、ミミィとミラが弾む足取りで飛び出していった。俺も凝り固まった身体を伸ばし、木陰の涼しい風に息を吐く。


 ふと見ると、十数歩離れた巨木の陰に、黒い人影が音もなく佇んでいた。


 教会の特務工作員であり、俺の護衛兼監視役のライラだ。俺は周囲に誰もいないことを確認し、ライラのもとへ歩み寄った。


「ライラ、ちょっといいか」


「はい、マルク様。周囲の索敵は完了しております。半径五十メートル以内に敵性反応はありません」


 一切の感情を交えずに答える少女。


 泉のほとりでは、ミミィが繋がれた馬の鼻先を撫でてじゃれ合っている。その横で、ミラがおっかなびっくり手を伸ばしていた。


「あの二人のことじゃない。……教会の裏の話だ」


「何でしょうか」


「エレオノーラ《マスター》から、何か聞いてないか? その……『魔王』の動向とか、他の『勇者候補』の捜索の進捗についてだ」


 ライラは漆黒の瞳を微かに瞬かせ、首を傾げた。


「いえ。特務工作部隊に対しても、魔王の出現時期や兆候に関する情報は開示されておりません」


「そうか……他の候補者についてもか?」


「はい。『マルク様の動向を注視し、指示に従え』との命令以外、他部署の状況は共有されておりません。最高機密ですので」


「……なるほどな」


(やはりか。エレオノーラ(マスター)は、直属の特務部隊にすら全貌を伏せているわけだ)


 魔王の襲来に備える、という大義名分。


 だが、その実態はあまりにも不透明だった。教会の思惑に、どこか得体の知れない作為を感じずにはいられない。


 俺は泉のそばの二人へ、視線を戻した。

 草原の真ん中で、馬の背中を撫でているミラ。


 体長二メートルを超える屈強な軍馬と並んでいるのに、ミラの圧倒的な体躯のせいで、縮尺が完全に狂って見えていた。巨大な馬が、ミラの丸太のような腕や要塞のような腰回りと並ぶと、まるでポニーのように小さく見えてしまう。


(……あいつ、あんなに心優しくて、おどおどした気弱な性格なのにさ)


 保護者としての、あるいは一人の男としての割り切れない思いが、胸の奥に広がっていく。主脈Lv.8の器を持って生まれただけで、いずれ教会の権力闘争や、正体不明の『魔王討伐』という重荷を背負わされるのだ。


(本当に、あいつを教会の問題に巻き込んじまってよかったのか……)


 田舎のギルドで「お荷物」と蔑まれながらも、平和に暮らしていた方が、あいつは幸せだったんじゃないだろうか。


 そんな感傷に浸りながら、ミラの背中を見つめていた――その時だった。


「――マルク様」


 真横から、絶対零度の声が降ってきた。


「うおっ!? な、なんだライラ」


 視線を向けると、ライラが無表情な漆黒の双眸で、俺の顔を真っ直ぐに射抜いていた。


「女性というものは、いやらしい目で見られていることに対して極めて敏感です」


「……は?」


「先ほどから、ミラの肉体を凝視する際のマルク様の瞳孔が著しく散大しております。また、無意識に喉仏を上下させておりました」


「ちょっ……!?」


「女性陣に警戒され、信頼関係が破綻する恐れがあります。露骨に発情した視線を向けるのはお控えください」


 業務日誌を読み上げるような冷徹さで、痛烈な指摘を繰り出す暗殺者。俺の額から、滝のような冷や汗が噴き出した。


「ちげぇぇぇぇよッ!! そんな目で見てねぇよ!」


「言い逃れは見苦しいです」


「言い逃れじゃねぇ! 俺はもっとこう、あいつの将来とか教会の重責とか、真面目で哲学的な心配をしてたんだよ!」


「では、なぜ視線がミラの臀部と胸部を執拗に往復していたのですか」


「それはあいつの縮尺がおかしいから、自然と視界に入っちまうだけだろ! 不可抗力だ!」


 必死に喚く俺の横で、ライラは表情一つ変えずに小さくため息を吐いた。


「エレオノーラ(マスター)への定期報告書に、『護衛対象の性欲過多による精神弛緩』と追記しておきます」


「やめろぉぉぉっ! 頼むからそのペンをしまってくれ!!」


 頭を抱えて叫ぶ俺の向こうで、ミミィが泉のほとりから無邪気に手を振っていた。


「先生ー! お水冷たくておいしいですよー!」

ミミィはお姉ちゃん。

ミラは体は大ききけど妹みたいなイメージです。

AIに3人娘の画像出力を依頼したとき使ったプロンプトが、ミラがボンキュンボン、ミミィが太ももマシマシ、ライラが対魔忍でした・・・本当に申し訳ない。


マルク達の冒険が少しでも気になる方は、評価、ブックマークお願いします☆

カクヨム様でも掲載させていただいております。

是非、応援お願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。