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気弱な令嬢ではありませんので、やられた分はやり返します  作者: 風見ゆうみ


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22  嫌がらせをされる

 別れ際、哲平が眉間に皺を寄せて話しかけてきた。


「授業が終わったら、お前のクラスに行くから大人しく待っとけ。それまでに何かあったら、すぐに連絡しろ」

「心配しなくても大丈夫よ」

「相手の心配をしてるだけだ」

「相手を心配する必要あるの?」


 哲平は眉間の皺を深くしたあと「ないか」と呟いた。

 

 先生に紹介するから、とキースに促され、哲平は彼と一緒に行ってしまった。残された私たちは自分の教室へと向かうことにする。


 歩き出すと、ノアが興奮した様子で話し始める。


「休み中に色々とあったのね。婚約者が変わった話とか、キースから教えてもらった時には、かなり驚いたよ。相手がイッシュバルド公爵家とまでは教えてもらえてなかったから、余計に驚いたけど」

「ご、ごめんね。なんだかんだとバタバタしていたから」

「それはしょうがないと思うけど」


 ノアは眉尻を下げ、少し俯いて続ける。


「休み前にアリスと別れる時、なんだか嫌な予感がして、何度も聞いたけど何もないって言ってた。それでも気になってアリスの家に行こうかなって、休みの間は何度も思ったりしてたの。手紙の返事もなんか素っ気なかったし、迷惑かと思ってやめたんだ」

「……ごめんね」


 ノアから手紙がきていたことは確かだが、へたにボロを出したくなくて、短文の手紙を返しただけだった。


 アリスの日記にも書いてあったが、ノアはいい子だ。

 彼女のことを信用して、正直に話すべきなんだろうか。

 でも、中身は違う人間なんですと言われても、普通は困惑するだけよね。


「……アリス、どうかしたの?」

「あ、ごめん。ちょっと考え事をしてたの」

「体調が悪いんじゃないならいいけど」

「そういうわけじゃないわ。心配かけてごめんね」


 教室の場所がわからないから、ノアに付いて歩く。

 授業開始までに時間があるからか、馬車の乗降場から校舎に入るまでの道にはたくさんの人が歩いている。

 その中に、知り合いなのかはわからないが、私を見て何か言いたげな顔をしている人もいた。


 ほとんど敵だろうけど、無害な人もいるでしょう。

 

 自分の席もどこだかわからないわけだし、記憶喪失、とまではいかなくても、記憶が抜け落ちていることは、やはりノアには伝えておこう。


「……あのね、ノア。私、休み中に色々とあって、ところどころ記憶が抜けちゃってるの。少しずつ思い出していくと思うけど、それまでは色々と教えてほしいのよね」


 手を合わせてお願いすると、ノアは驚いた顔をした。


「だ、大丈夫なの!? お医者さんには行った?」

「あ、うん。もちろん。心配してくれてありがとう」

「お医者さんはなんて? 記憶が抜け落ちるだなんてよっぽどのことだよ」


 涙目になってノアは私を見つめた。


 うう。いい人を騙すのは罪悪感しかない。


 ごめんね、ノア。

 嘘をつきたくてついてる訳ではないの。

 

「……大丈夫だから気にしないで」

「ならいいけど、無理はしないでね。あ、だから、私たちのことも顔を見ただけじゃわからなかったのね」


 ノアは心配そうな表情はそのままで、納得したようにうなずいた。


 学園の敷地はとても広い。馬車の乗降場から教室までは、歩いて五分ほどかかった。


 校舎の大きさは違えど、教室の中は私が昔通っていた学校と似たようなものだった。

 机の並べ方も同じだが、私の学生時代と違うのは席替えはないということだ。

 新学年になり、新しいクラスになった時だけくじ引きを引いて席が決まり、そのまま固定されるらしい。

 私の席は廊下側の前のほうの席だとノアが教えてくれた。


「ここだよ」


 笑顔でノアは私の席まで行くと、笑顔で軽く机を叩いた。


 すると、私の席の近くに椅子を寄せて円陣を組んでいた4人の女子グループが、なぜか一斉にノアを見た。

 そして、すぐに私に視線を移し、何か訴えるかのように、視線と顎で私にアイコンタクトをとってきた。


 一体、何を言おうとしてるのかわからないんだけど。

 というか、そんなやり取りで理解できるような仲でもないでしょうよ。


 とりあえず無視しとこう。

 

 私は視線をノアに戻してお礼を言う。


「ありがと」

「どういたしまして」


 机の横にあった鞄をかけるフックに鞄をかけ、椅子を引いた時に、私は異変に気が付いた。

 

 なんかあれだ。

 マンガとかで見る典型的なやつが行われていたのだ。

 これ、やったの誰よ。

 ただの暇人でしょ。


 そう思いながら、再度、机の中を確認する。


 教科書やノートを入れるスペースには大量のゴミが突っ込まれている。


 これ、いつやったのかしら。

 早朝?

 こんなことをするために早起きして学園に来てるなら、本当に暇人で馬鹿だわ。


「アリス?」


 ノアは何も気が付いていないらしく、動きを止めた私を見て不思議そうにしている。


 今までアリスはこんな嫌がらせをどんな風に隠していたのかしら。

 ノアがいない時に、こっそりゴミを捨てたりしてたの?

 

 ……ごめんね、アリス。

 あなたはいじめられていることをノアに知られたくかったから、こんなことをされても我慢して何も言わなかったんでしょう?  


 でもね、私には無理だわ。


 だって、こんなふざけたことをやった女子グループは、ノアには知られたくなさそうだったから。

 だから、私に合図を送って、ノアをどこかへやれって指図してきたんだと思うのよね。


 人が嫌な思いをするようなことをしてきたのは向こうが先。

 やらなくてもいいことをしてきたのはあっちよ。


「……アリス?」

「ごめんね、ノア。ちょっと話をつけるから、心配しないでね」


 ノアに詫びを入れてから、私は笑顔で四人グループに尋ねる。


「ねえ、こんなことをした暇人はあなたたち?」


 予想外の出来事だったからか、四人とも私を見上げ、ぽかんと口を開けた状態で固まった。


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