表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旅路  作者: 風の中で
PR
21/24

21.帰郷

9月6日


揺れる馬車に横たわり、覆い布の小さな隙間から漏れる光を眺めていた。陽の光が顔に当たる。もうしばらく道を進んでいる。だいたい4日くらい?


「今日中に着くのか?」


「もうすぐだ。昼頃には着くんじゃないか?」


「お…」


「あ…陌鋒、お前のリュックにプレゼントの箱があったけど、誰に贈るんだ~」


「あ…姉貴…」 上体を起こしてリュックを見て、それからディシアを見る。


「何を買ったんだ? お前が何か買ったなんて知らなかったよ」 彼女は微笑んで言う。


頭をかく。「あ…マフラーですよ…えっと…」


「からかってるだけだよ」 笑って手を振る。


まばたきしてまた馬車に横たわる。


---


どれくらい経ったか、馬車がやがて止まる。馬車を降りてマッハさんにお金を渡す。


「あ~戻ってきた」 村の入り口に立ち、深呼吸する。


「陌鋒」 ディシアが村の入り口に立ち、後ろの方を見る。「俺はヘルクのところに行く。お前、狐芙によろしく言っておいて」


うなずくと、彼女は肩をポンと叩き、ヘルクの家の方へ歩いていく。村の入り口に立ち、右側——狐芙の家の方角を見る。うつむいて上着をパンパンと叩き、狐芙の家へ向かう。


狐芙の家の柵のところに着き、息を吐く。柵の門を押し開けて中へ進む。門の前に立ち、ノックしようとしたその時、ドアが勢いよく開かれて、慌てて手を引っ込める。


「陌鋒!」 笑っている小さな頭が覗く。


「狐芙! なんで俺が来るって知ってたんだ…」


「コホン!」 彼女はドアを開け、すぐに笑顔を引っ込めて続ける。「勝ったの?」


「あ…負けた」 頭をかき、体をひねる。


「バカ!」 指を指して叫び、それから両肩を掴んで激しく揺する。「あんなに頑張ったのに! 一勝くらいしなさいよ! せっかく楽しみにしてたのに!!!」


「うわっうわっうわっ」 激しく揺さぶられる。「すみません、秒殺されました~」


彼女は肩から手を離し、腕を組んでこちらを見る。「責めてるわけじゃないの! 新聞に『逆の意味で天才 』って書いてあったんだから! それに! あのターニャって子、本当にそんなに強いの?」


「反応する間もなく秒殺された。あ~龍流水斬で秒殺してやろうと思ってたのに」


「ほんとバカね~ 次は頑張ればいいじゃん。次は絶対勝ってよ。次は秒殺されないでね! 何ラウンドか戦って負けるだけでもいいから!」


「分かったよ~ 次は絶対勝つからな~ あ…新聞で見てたのに、なんで聞くんだ…」


「それは違うの! どこのバカか知らないけど、試合に負けた後に『負けた!!』って叫んだ人がいるんだよね。ふん、もし私がいたら、『お前はバカか!』って叫んでやるのに!」


「じゃあ次は一緒に来るか?」


「うわっ?」 彼女はびくっとする。「ふん…こ、次はまだまだ先でしょ。そ、その時になったら考えるからね! コホン! それで、ディシアさんはどこにいるの?」


「姉貴? ヘルクさんに用事があるって言ってた」


「ヘルクさん?! 数日前に出かけたって言ってたよ!」


「え?」 振り返ってヘルクの家の方を見て、それから狐芙を見る。彼女も同じ方向を見て、またこちらを見る。


「姉貴に伝えに行こう!」 彼女はドアを出て鍵をかけ、二人で小走りにヘルクの家の前まで行く。遠くにディシアが立っているのが見える。


「姉貴!!!」 二人同時に叫ぶ。


彼女が振り返る。


「よっ。どうした?」 軽く手を上げる。


「ヘ…ヘルクさん、出かけてたみたいです!」 狐芙が息を切らしながら言う。


「え?」 ディシアが頭をかき、ヘルクの家を見て、それからうなずく。「じゃあ帰ってくるまで待つか。狐芙、昼ご飯は食べたか?」


「食べてない。ずっと帰ってくるのを待ってたんです」 狐芙は首を振り、頭をかく。


「じゃあ一緒に昼飯を食べに行こうか」 ディシアが言い、目を上げて前方を見て、それから笑う。


「いいね!」 二人で叫ぶ。


「陌鋒」


「うわっああああ」 後ろから声がして、肩に手を置かれて、飛び上がるほど驚く。


「うわっ!」 狐芙もこちらを見る。


「はははは!」 ディシアは顔の上半分を手で覆い、腰を曲げて笑う。


「驚かせてすまなかった。わざとじゃないんだ。でも、陌鋒、狐芙、警戒心をもう少し鍛えたほうがいいぞ」 ヘルクが笑いながら前方に立っている。その後ろには、自分と背丈が変わらない亜人の女性がいる。


まだ驚いた表情のまま立ち尽くす。


「あはははは」 ディシアは太ももを叩いて笑う。


「すまない、わざと驚かせたわけじゃないんだ、陌鋒。スタンディンではよくやった。次も頑張ればいい」


おずおずとうなずく。


「あ…やりすぎたか?」 ヘルクが首をかく。


「い…いいえ。次は頑張ります」


「あ…私もびっくりした」 狐芙が言う。


「すまない、狐芙。冗談のつもりだったんだ」


「あ…まあまあ、まずはご飯を食べに行こう。ヘルク、今回は陌鋒に聞いてみるか?」


「何をですか?」 尋ねる。


「後で説明するよ。もし疲れているなら、それでも…」


「行きます」 ヘルクが言い終わる前に返事をする。


「私も行く!」 狐芙はその場でぴょんぴょん跳ねる。


ヘルクは笑ってうなずく。「こちらはグリーナ【グリーナ】だ。あまり話すのは得意じゃない。彼女を家まで送らなきゃならない。詳しい依頼内容は後で説明する」


不思議そうに狐芙を見ると、狐芙も不思議そうにこちらを見る。食堂に入り、狐芙と隣に座る。ディシアとその女性…グリーナが一緒に座る。ヘルクは別の椅子を取ってきて通路側に座る。注文を済ませる。


「陌鋒陌鋒! スタンディンのレストランってどんな感じ? ここと同じなの?」 狐芙が頬杖をついて興奮して言う。


ゆっくりと首を振る。「同じようなのもあるけど、めちゃくちゃすごい店がある!」


「めちゃくちゃすごいの?」


「あ…どう言えばいいんだろう。床に赤いカーペットが敷いてあって、レストラン中がキラキラしてた! 椅子には布が掛かっていて、座布団まで付いてたよ!」


「おお~本当? そんなレストランあるわけないじゃん!」 狐芙が笑う。


「本当なんだって! それにソーセージ…名前忘れちゃったけど、すごく美味しかった」 うなずく。


「あ~次は私も行けばよかった~」 二人が言うと、ヘルクとディシアがほのかに笑いながらこちらを見ている。


「いいよ。機会があったら、次はみんなで行こう。それから陌鋒、それはスフィクソーセージだ」 ディシアが笑う。


うなずく。料理が運ばれてくる。オレンジジュースと狐芙の梨ジュース、グリーナも梨ジュース。


食べ始める。肉ステーキと鶏肉の煮込み、ご飯。食べている間、グリーナはずっと何も食べていない。ヘルクは彼女を見て、ディシアを見て、立ち上がって店員に皿を何枚か頼み、料理を少し取り分けてもらい、別のテーブルに持っていく。ヘルクはグリーナを連れてそちらのテーブルで食べる。


ディシアは振り返ってヘルクと少女を見て、体を乗り出して話す。


「あの子は奴隷なんだ。家まで送らなきゃならない」


「奴隷?」 グリーナの方を見る。


狐芙はディシアを見て、うつむいて食べ続ける。


ディシアがうなずく。「後でヘルクがちゃんと話すだろう。とにかくまずは食べよう」


---


昼食を終え、ヘルクは先にグリーナを連れて行く。


「二人は今日はゆっくり遊びなさい~ あ~俺も疲れたから先に戻る。後でヘルクが来るはずだから、二人とも俺の家に来るように伝えてくれ」


「うん」 二人でうなずく。


「ヘルクさんが来たら、あんたは一旦休んでね~」 狐芙が言う。


「え? なんで?」


「馬車で疲れたでしょ~ それに一緒に遊ぶとか面倒だし。とりあえず午後はゆっくり休んで。夜になったら私が来るから~」


「面倒にはならないけど…分かった」


「へへ! 夜はご飯おごってね~」


「え?」


「スタンディンから帰ったらご飯おごるって言ったでしょ~ ずっと待ってたんだから!」


「覚えてるのは勝ったらって言ったんだけど…」


「ふんふん~」


「あ~はいはい」


「へへ! 全部お肉ね!」


「はいはい」


「あ! 陌鋒! いつ帰ってきたんだ!」


「平野さん、大進さん。帰ってきたばかりです」


「新聞見たよ~ 頑張ったね! 次も頑張れよ~!」 平野が言う。


「次も頑張れ!」 大進が左手を上げる。


うなずく。


「じゃあ俺たちはご飯を食べに行くよ。依頼で腹ペコだ。二人はゆっくり遊びな~ バイバイ」 食堂へ入っていく。


「陌鋒! 狐芙!」 ヘルクが歩いてくる。


「ヘルクさん」 二人同時に言う。


「あの子は奴隷なんだ。知っての通り、俺は奴隷出身だから、時々町の奴隷商人のところに行って奴隷を買い、家まで送っているんだ」 ヘルクがそばに来て言う。


うなずく。


「だから陌鋒、道中俺たちを守ってくれるか? この依頼をお前に頼めるか?」


「もちろん!」 うなずいて返事する。


「では狐芙、道中彼女の世話をしてくれるか? 面倒だろうが、頼めるか?」


「できます!」 狐芙が返事する。


ヘルクは淡く笑い、二人の肩をポンと叩く。


「よし、明日出発する時に迎えに行く。二人はゆっくり遊びなさい」 そう言って去っていく。


「ヘルクさん! 姉貴が来てほしいって言ってました!」 二人で叫ぶ。


彼は手を振って応える。


狐芙を見ると、狐芙もこちらを見る。


「家まで送るよ~」


「今日は送らなくていいよ」 こちらを見て言う。


うなずく。「分かった」


帰り道を歩く。


「ヘルクさんが奴隷を買って家まで送ってるなんて知らなかった」


「俺も知らなかった」 首を振る。


「ヘルクさんは何を経験してきたんだろうね?」 狐芙が尋ねる。


「分からないな。今度聞いてみる?」


「ヘルクさんは大魔法使いなんだって」


「そうなのか? じゃあなんでヘルクさんはすごい魔法を使わないんだろう」


「もう使えないって言ってたでしょ~ 分からないな。後で聞いてみよう~」


うなずく。「後で聞いてみよう」


---


しばらく歩いて宿の前に着く。


「バイバイ。また後で来るね」


うなずく。「バイバイ」 彼女が去るのを見送ってから部屋に戻る。リュックを下ろし、中から服を取り出す。プレゼントの箱だけ入れたら、はみ出しが目立たなくなる。それからベッドに横たわり、どうやって彼女に渡そうか考える……


トントントン。ノックの音で目が覚める。目をこすり、素早く起きてリュックを背負い、ドアを開ける。


「狐芙」 言う。


「よっ。寝てた?」


「あ、寝転んでたら寝ちゃった」 うなずきながら目をこする。


「へへ、怠け者だね~」


「怠け者ってわけじゃないと思うけど…寝転んでたら寝るのは普通だよ」


「へへ、言い訳~」


目をそらす。


「ふんふん、もうからかわないよ! ご飯行こう! お腹空いた!」


うなずく。「行こう」


食堂に入る。


「うーん…何を食べようかな~ うーん…肉ステーキを二つ!」


「二つ?」


「二つ! あんなに長~く待ってたんだから! もし一日一つだったら、十個も食べる権利があるんだよ!」


「十個? 食べられるのか?」


「もちろん!」 狐芙は笑って「チーズ」のポーズをする。


微笑んで彼女を見る。


「あとチキンも! ご飯も! それから~~~ 梨ジュースを二つ! へへ、おかわりも二つカウントね」 続けて「チーズ」のポーズをする。


うなずく。


「そういえば、まだリュック背負ってるね」


「あ…夜返そうと思って」


「へへ、返さなくていいよ。あげる! あんたリュック持ってなかったでしょ! ちょうど買わなくて済むね!」


小さくうなずく。「ありがとう」


「いいえいいえ~ これもう4年前のリュックだよ。しかもそんなにたくさん入らないし」


うなずく。「いいと思うよ」 そう言っていると、肉ステーキ三つとチキンの煮込みが運ばれてくる。食べながら話す。狐芙は二皿目のステーキを半分に分けてこちらに寄せる。


---


食べ終わって帰り道を歩く。


「あ~お腹いっぱい~」


「あ~やっぱり家でのご飯が一番だね~」


「ヘルクさんが明日出発だって言ってたね」


うなずく。


「正直に言うと、一緒に行けばよかったなって少し後悔してる。まあ今回は一緒に行けるけどね~」


うなずく。「どのくらいかかるんだろう」


「へへ、私たち二人で初めての冒険だね」 狐芙が一本指を立てる。


「ヘルクさんもあの子もいるじゃん」


「ふん! そういう意味じゃなくて! ほとんど二人だけの初めての冒険って感じってこと!」


頭をかく。次第に狐芙の家の前に着く。


「夜はしっかり休んでね。明日はまた早朝に出発するかもしれないから」


うなずく。「あの…狐芙」 リュックを下ろし、上半身をひねる。「あの…」 白い箱に紫色のリボンがかかったプレゼントを取り出す。


狐芙は何も言わず、口を少し開けてその場に立っている。


箱を手に取り、リュックを足元に置き、上半身を横に向ける。ほとんど背中を向けそうなほどに。


「これ、あんたに買ってきたんだ。えっと…好きかどうか分からないけど…家に帰ってから開けてほしい」 うつむいて箱を見る。目線が落ち着かない。箱を狐芙に差し出す。


彼女はゆっくりと箱を受け取り、目線を箱に走らせ、時々チラリとこちらを見る。指で箱をそっと撫でる。


「あの…じゃあ帰るよ。もし気に入らなかったら、明日…明日はこの話をしなくていいからな…」 後ろ向きに歩き出す。


「私がどんな顔するか見たくないの?」 彼女が言い、顔を素早くうつむかせ、箱が半分顔を隠す。


何も言わずに彼女を見る。彼女は箱を腕の上に置き、ゆっくりとリボンを解く。時折素早くチラリとこちらを見て、またすぐに視線を外す。箱を開ける。中を見た時、一瞬止まり、すぐに素早く笑う。下を見て、ゆっくりと後退する。ドアに近づいたところで、マフラーを取り出す。そして背を向け、箱を入り口の階段に置く。彼女は振り返らない。ただうつむいて手の中のマフラーを見ている。


「あの…店員がマフラーに保温魔法と自己洗浄魔法を無料で付けてくれたんだ。あの…」 前で手をもじもじさせる。


彼女はマフラーを掲げ、うつむいてその布に顔を擦りつける。そして向き直り、元の場所に戻る。


彼女は素早くこちらをチラリと見てから、またマフラーを見る。指でそっと撫でる。


「店…店員は騙してないよね?」 うつむいて震える声で言う。


小さく首を振る。「分からない…」


「ほんとバカね!」 彼女はマフラーに顔全体を埋める。


「これ、いくらで買ったの…」 顔を埋めたまま言う。


「あんたに買ったものだから、気にしないで。それに狐芙もたくさんくれたからな…」


「バカ!!!」 顔を埋めたまま叫ぶ。


頭をかいて彼女を見る。


「あ…あんたは帰っていいよ。ちゃんと休むんだよ…」 続ける。


しばらく彼女を見てから、家の方角を振り返る。ゆっくりと向きを変え、数歩歩き出すと、後ろから声がする。


「あ…あの…わ…私…とても気に入った!」 振り返ると、狐芙は言い終わるとすぐに素早く部屋の中へ走り込んだ。その場に立ち、彼女を見る。頭をかき、笑ってリュックを背負い、家へ歩いていく。角を曲がる時、狐芙の家を振り返って見る。それからまた歩き続ける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ