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旅路  作者: 風の中で
10/16

10.?

8月7日


あ〜…欠伸を一つ。目を開け、首をかく。


体を起こして服を着込み、パンを少しかじる。ドアを開けようとしたその時、昨日のディシアの言葉を思い出す。


「明日は迎えに行く」


振り返ると、バタンと勢いよくドアを閉め、ベッドに飛び込む。もう少し寝よう。体を動かして楽な姿勢を取る。寝入ろうとした瞬間——


ドン ドン ドン!


体がびくっとして、目を見開く。素早くベッドを下り、ドアを開ける。


「よっ、起きたか?」


ドアの外でディシアが腰に手を当てている。


「姉貴、まだ来てないと思って、もう少し寝ようかと…」


頭をかく。


「あ〜…俺ももう少し寝たかったんだがな。依頼が終わってからゆっくり寝よう」


ディシアが肩を動かす。


---


冒険者ギルドに着くと、七人の黒装束が椅子に座っていた。俺たちが入ってくるなり、彼女たちは立ち上がって近づく。


「来ましたね」


ケルリンデが言う。


「ずいぶん早いじゃねえか。八時って言っただろ」


ディシアが言う。


「他にすることもなくて、先に来てしまいました」


ケルリンデが答える。


「昨日話した通り、ヴァルシュタイン、シンツ、あなたたち二人は陌鋒さんとディシアさんを守って」


彼女は後ろの二人に言う。


「こっちも昨日と同じだな」


ディシアが俺を見る。


うなずく。


ディシアが持っていた包みを渡され、背負う。再び出発する。


---


昨日クローウルフと戦った場所に着くと、死体は腐って悪臭を放ち、ハエがたかり、何匹かは食い荒らされた跡があり、内臓が地面に散らばっている。


「うわ…気持ち悪い…」


地面を見て言う。


「ふん…慣れだな」


ディシアが軽く笑い、手で鼻の前を扇ぐ。


「ううう〜」


振り返ると、シンツが鼻をつまみ、もう片方の手で顔の前を扇いでいる。俺にはよく分からないけど、たぶんそういうことだろう。


さらに進む。昨日の場所まで来て、木の陰から洞窟の方を見る。洞窟がある。それ以外には何もない。


木陰に身を潜め、俺は左後方の木に寄りかかりながら時々洞窟を窺う。彼女たちは前方で様子を見ている。


トロールの姿はないが、時折クローウルフが獲物をくわえて戻ってくる。


前方に集中していると——


「駄目だ、感知魔法が効かない」


バルザイドが言う。


彼女たちの方を見ると、シンツが素早く振り返り、他の者たちもこちらを見る。


「陌鋒さん!」


シンツが叫ぶ。


勢いよく振り返ると、五匹のクローウルフがもう俺に向かって突進してきている。反射的に後退し、手は素早く刀の柄を握る。先頭の一匹がもう跳びかかっている。右爪が振り下ろされ、口を開けて噛みつこうとしている——


突然、誰かに腕を引かれ、後ろに倒れ込む。アフライアとケルリンデが左から飛び出してきた。ケルリンデが素早く剣を振るい、刃がクローウルフの腹を貫く。そのまま前へ駆ける。クローウルフの死体が地面に落ち、滑って俺の足元まで来る。地面に座り込んで前を見る。


彼女はさらに前へ。前方のクローウルフが爪を振りかざして襲いかかる。体を左にずらし、再び剣を振るう。刃が脇腹を貫き、そのまま走り抜ける。


一方アフライアは左側のクローウルフに向かって突っ込む。クローウルフが口を開けて飛びかかろうとする。彼女は少し左に走りながら剣を振るい、刃が首をかすめる。


さらに前へ。次のクローウルフはまだ攻撃態勢を取る間もなく、アフライアの剣が横薙ぎに胴を断つ。振り抜いた勢いで一回転し、最後の一匹に向かって走り出す。


そのクローウルフがケルリンデに向かって跳びかかる。ケルリンデは一瞬アフライアに目配せし、素早く剣を振って前足を払い、そのまま走り抜ける。右側からはアフライアが全速力で突っ込み、大きく跳躍してクローウルフの上を横に越えながら剣を振るう。刃が背中を貫き、空中で体を捻り回転しながら落下する。


「うわっ」と「どさっ」という音とともに、死体が地面に落ち、木の葉が舞う。彼女は…木に激突した。


「もう…」


ケルリンデが額に手を当てる。


「わああああ…陌鋒さん!カッコよかったでしょ!」


「あ…カッコよかった…」


俺はまばたきしながら彼女を見る。


「ふんふん〜」


「おい!まだ戦いは終わってないぞ!」


ディシアが洞窟の方を見て叫び、駆け出す。


振り向くと、洞窟から何匹ものクローウルフとトロールが飛び出してくる。


他の者たちもすぐに続く。


ディシア、シンツ、ヴァルシュタインが一緒に走る。


リンガス、モリカ、バルザイドが連携する。


「姉貴!」


俺がディシアを見て叫ぶと、ケルリンデが言う。


「陌鋒さんはここでお待ちください」


彼女を見、ディシアを見る。


「俺も行く」


ケルリンデとアフライアは顔を見合わせる。


「うん」


二人がうなずく。


「一緒に行こう」


彼女たちが言う。


「ああああ!!!」


アフライアが叫びながら突っ込んでいく。


---


ディシアは前へ飛び出し、剣を振るいながら一回転。一匹のクローウルフを真っ二つにする。シンツが剣で別の一匹を受け止め押し返し、隣のヴァルシュタインが仕留める。


リンガスは前に出て左に体をかわしながら一匹を斬る。別の一匹がモリカに襲いかかるが、モリカは左に避けながら剣を振るう。バルザイドが素早く左側から回り込み、クローウルフが反応する前に通り過ぎざまに背中を切り裂く。


アフライアは全速力で目の前のクローウルフに向かう。横を通り過ぎざまに一閃。その勢いで一回転し、左側から飛びかかってきた別の一匹も斬り捨てる。体を低くして死体の下を潜り、さらに前へ。


右側から別の一匹が襲いかかるが、彼女は気にせず前へ。ケルリンデが右後方から駆け寄り、素早く剣を振るって横を走り抜ける。


アフライアは前へ。正面のクローウルフに右側から走り寄り、剣が口元を貫く。


---


一方、ディシアは前へ出てトロールに向かう。シンツが右、ヴァルシュタインがその後ろ。シンツが加速してトロールの左側を駆け抜け、背後に回る。ヴァルシュタインも素早く続き、手を前に伸ばす。手が伸び切るより先に、紫色の魔法陣が彼女の目の前に現れる。完全に伸ばすと、魔法陣は彼女の掌の先にあった。


火球が魔法陣から放たれ、トロールの肩に命中する。トロールが「ウウアアア」と叫び、素早く振り返って近くのシンツを掴もうとする。


「ディシアさん!右足を!」


シンツが叫びながら右へ走る。トロールの攻撃をかわし、トロールに向かって突っ込む。左足に一撃を加え、傷を負わせる。さらに少し走ってから立ち止まり、振り返る。


ディシアがトロールに駆け寄り、大剣で右足を一閃。刃が足を完全に斬り裂く。その勢いで一回転し、剣が腰をなぎ払い、体の半分と背骨を断つ。トロールが倒れ、両手をつく。ディシアは数歩走って止まり、素早く振り返って、大剣を上から振り下ろし、トロールの首から肩まで斬り裂く。トロールは完全に動かなくなった。


---


バルザイドがトロールの前に駆け寄り、相手が反応する前に右足を一閃。そのまま走り抜ける。攻撃を受けたトロールが振り返って彼女を掴もうとするが、モリカが素早く駆け寄り、左足のアキレス腱を断つ。トロールは片膝をつき、半ば這うように倒れる。後方からリンガスが横から走り寄り、大きく跳躍しながら剣を振るう。刃がトロールの首をかすめ、着地すると体を前傾させ、左手の指先を地面につけて後方へ滑る。


「残りは私たちに任せて」


ケルリンデが俺に言い、アフライアと共に前方の二体のトロールに向かって走り出す。




---


ケルリンデはトロールに迫り、速度を落とす。トロールが左拳を振るう。体を低くしてかわし、素早く剣を振るって右膝の内側を斬る。剣の勢いで体を回転させ、同じ場所にもう一撃。トロールが叫び声を上げる中、ケルリンデはさらに走り抜ける。少し走ってから足を止め、素早く振り返る。再び前へ。トロールが右手で傷口を押さえ、振り返ろうとしている。ゆっくりと体を回す。ケルリンデは素早く間合いを詰め、剣を振るって左足のアキレス腱を断つ。さらに走り抜ける。トロールが倒れ、ほとんど這うように地面に伏せる。ケルリンデが再び駆け寄り、剣を横に振ってトロールの頭を貫く。トロールが倒れ、ケルリンデも数歩進んで止まる。


---


一方、アフライアは全速力でトロールに突っ込む。左側を走り抜けざまに左足に傷を負わせ、そのまま走り抜ける。少し離れてから素早く振り返る。トロールが素早く体を向けて彼女を掴もうとするが、アフライアはそのまま前に出て、トロールの目前で剣を振るい、左側から走り抜ける。刃がトロールの左腕を横に貫く。そのまま走り抜ける。トロールは叫び声を上げ、右手で左腕を押さえる。左手から血が滴る。アフライアは素早く向きを変え、再び突っ込む。大きく跳躍し、トロールの頭上を横に越えながら空中で体を回転させ、剣を振るう。刃がトロールの頭を貫き、着地すると後方へ滑る。トロールはその場に倒れる。


「陌鋒さん!どうでした!今回は失敗しませんでしたよ!」


アフライアが俺に叫ぶ。


「あ…うん…結構、カッコよかった…」


俺は彼女を見て言う。


---


ディシアが洞口で様子を窺っている。他の者たちは俺の周りに集まってきた。


「陌鋒さん、私の動きどうでした!」


リンガスが言う。


「陌鋒さん!私、すごかったでしょ!」


シンツが言う。


「あ…みんなすごかったよ」


うなずく。


「もう、あなたたち、静かにしなさい!」


ケルリンデが声を張り上げる。


「お姉さん!もう戦いは終わったんだよ!」


シンツが言う。


「あなたたちはもう陌鋒さんに迷惑をかけている!」


彼女たちががっかりして俺のそばを離れる。


俺は頭をかいた。


「あ…ありがとう」


---


ディシアのそばに歩いていく。他の者たちも集まる。


「ディシアさん、本当に申し訳ありません」


ケルリンデが口を開こうとすると、ディシアが手を挙げて遮る。


「謝るのはいい。まだ戦いは終わってない。悪いと思うなら、陌鋒の面倒をみてやってくれ」


ディシアが肩を動かす。


ケルリンデは長く息を吐く。


「はい、そうします。中へ行きましょう」


---


ケルリンデとディシアが先頭。続いてヴァルシュタインとリンガス。ヴァルシュタインが照明魔法で道を照らす。その後ろに俺とシンツ。さらに後ろにアフライア、バルザイド、モリカ。ゆっくりと進む。


歩いていると、前方に光が見える。


光る場所に着く。鉱石が放つ光だった。青い石が、深い青色の淡い光を放っている。


さらに進むと、何かが見えてくる。階段だ。その上には四本の柱があり、中央に祭壇のようなものがある。そこから水が湧き出し、下の円形の水場に流れている。その水場の周りには、無数のクローウルフとトロールがいる。彼らはこちらを見ている。


突然、ケルリンデの左側から一匹のクローウルフが飛び出す。アフライアが素早く前に出て一刀のもとに倒す。


「側面に注意!」


彼女が叫ぶと同時に、クローウルフが猛スピードで目前に迫る。


三匹がディシアに襲いかかる。ディシアが一匹を斬り、二匹目も迫るが、後方のヴァルシュタインが前に出て仕留める。


「助かった!」


ディシアが言い、三匹目も斬り捨てる。


ディシアの右側からまた一匹飛び出すが、リンガスが素早く対応して倒す。


---


正面から四匹のクローウルフがケルリンデに襲いかかる。ケルリンデは一匹を斬り、すぐに二匹目、三匹目も斬る。四匹目は剣で受け止め、力を込めて押し返し、素早く前に出て仕留める。


残るはトロールだけ。八体のトロールがいる。七体は大型の棍棒を持ち、最後尾の一体は折れた大剣を手にしている。


「アフライア!一体片付けろ!」


ケルリンデが叫び、最も近いトロールに向かって走る。アフライアも続く。


ディシアたちの右側からも数匹のクローウルフが飛び出す。ディシアは剣を振るい一回転で一体を倒し、残りはヴァルシュタインたちが片付ける。


---


アフライアは加速してトロールの棍棒を受け止める。刀に手を添えて支えるが、トロールの力で後ろに押される。ケルリンデが横からトロールの右腕に剣を振るい、腕を完全に切断する。トロールが叫ぶ。ケルリンデは素早く体をひねり、トロールの右足を斬る。傷を負わせた二人は一旦後退する。


ヴァルシュタインが手を伸ばし、火魔法を放つ。最も近いトロールに命中する。バルザイドが素早く前に出る。トロールが棍棒を振るうが、バルザイドは体を低くしてかわす。ディシアが素早く前に出て、剣をトロールの腹に斬り込む。リンガスはディシアのそばに付き添い、他のトロールの攻撃を防ぐ。


ディシアは素早く速度を落とし、再びトロールに向き直って剣を振るう。トロールは腹を押さえる。バルザイドは素早く後退する。ディシアの剣がトロールの胸を斬り裂く。全員が距離を取る。


---


一方、ケルリンデが再び前に出る。負傷したトロールが片手で棍棒を振るう。ケルリンデは受け止め、アフライアが素早く前に出て残った腕を切り落とす。ケルリンデは力を込めて押し返し、棍棒と共に切断された腕を弾き飛ばす。素早く剣を振り、トロールの左胸に傷を負わせる。すぐに剣を引き、トロールの胸に突き刺す。


その時、大剣を持ったトロールがケルリンデに向かって突っ込む。大剣を振り下ろす。ケルリンデは素早く剣を抜き、前に構える。ガキンという音とともに、ケルリンデが後方に滑る。


アフライアは死体を避けながら素早くトロールの腕を斬りつける。トロールは反撃せず、素早くアフライアに向かってくる。アフライアは素早く体を回転させて攻撃を受け止めるが、その勢いで後ろに滑る。後ろにはまだ二体のトロールがいる。彼女は敢えて力を抜き、勢いをつけて押し返し、自ら後退する。後ろのトロールが棍棒を振るうが、右に避けて走り抜ける。


ケルリンデは体勢を立て直し、トロールが向き直る前に素早く剣を振るい、右足に骨が見えるほどの深い傷を負わせる。


---


俺はケルリンデの方を見ていた。ふと右を見ると、闇の中から真っ黒なクローウルフが飛び出してくる。瞬時に目前まで迫る。手はしっかりと刀の柄を握っている。奴は爪を伸ばし、口を開け、俺の真ん前——


「陌鋒さん!!!」


左から叫び声。どさっと倒され、俺の上にのしかかったクローウルフはすぐに横へ投げ飛ばされる。前を見ると、黒い髪に黒い獣耳の少女が俺の肩に手を置いている。


「陌鋒さん!大丈夫ですか!」


シンツが叫ぶ。アフライアが彼女のフードを素早くかぶせる。


「気をつけて」


彼女が小さく言う。


「あ…大丈夫だ」


首を揉みながら言う。シンツがフードを押さえてうなずく。クローウルフを見ると、胸から真っ二つに斬られている。


---


ケルリンデが剣でトロールの攻撃を受け止め、こちらを見る。アフライアも彼女を見る。ケルリンデは前を向く。


ケルリンデは力を込めてトロールの大剣を押し返し、素早く剣を振るってトロールの左足を斬る。体を前に倒し、再び剣を振るう。刃がトロールの左脇腹から右胸までを貫く。


アフライアも素早く前に出る。トロールの目前で剣を横薙ぎに振り、刃が腹を貫く。そのまま前へ走り抜け、別のトロールの頭上を大きく跳躍しながら剣を回転させ、トロールの頭と上半身の一部を両断する。着地すると左前方へ走り、刀を鞘に収め、左手で鞘を後ろに引き、体を低くする。右手で柄をしっかり握り、大きく前に跳び、空中で半回転しながら剣を振るう。刃がトロールの体をかすめ、着地すると後方へ滑る。刀を振って血を落とし、鞘に収める。


一方、ケルリンデが前に向かって走り出す。巨魔の右足を斬りつける。巨魔が悲鳴を上げる。刃が右足を貫く。ケルリンデは素早く体を翻す。体はまだ後ろに滑っている。そのまま前に向かって走り出す。大きく前に跳び、剣を振るう。刃が巨魔の胸を斬り抜ける。空中で半回転し、そのまま前へ走り抜ける。剣を鞘に収める。巨魔に近づくと、大きく跳び上がる。ほとんど逆立ちのような格好で巨魔の頭上を越える。続いて、体を整えて着地する。振り返ると、巨魔は動かない。ゆっくりと、左胸から右肩にかけて血痕が現れる。巨魔はその場に倒れ、動かなくなった


---


俺は服の埃をはたく。血もついていた。


ケルリンデが階段へ向かい、祭壇の上の物を手に取る。それは枝のようなものだった。


それをポケットにしまい、俺のところへ歩いてくる。


「陌鋒さん、怪我はありませんか?気づくのが遅れて申し訳ありません。それにディシアさん、戦わせないって約束だったのに」


ケルリンデが言う。


「別に大したことじゃない。それより、あれを取るために来たのか?」


ディシアが腰に手を当てて言う。


「これは魂の欠片です。何に使うのかは私たちにもわかりません。ただ、探してくるように言われただけで」


ケルリンデが言う。


「それで、任務は終わりか?」


ディシアが続ける。


「はい、これで一つ目です。あと二つありますが、この近くにはありません。明日…いえ、今夜のうちに出発します」


---


ヴァルシュタインが俺のそばに来て手をかざす。紫色の魔法陣が現れ、俺の体も淡い紫色の光を放つ。


「これは清潔魔法ですよ」


彼女が言う。


うなずいて服を見ると、本当に綺麗になっている。


ディシアは何も言わず、うなずいてから死体の皮剥ぎを始める。ケルリンデたちは死体を完全なものとそうでないものに分類する。


俺はディシアのそばにしゃがむ。


「見てな。まず四肢の付け根をぐるっと一周切る。それから腹だ。胸のところ、前足の真ん中よりちょっと上から、下まで一直線に切る。そしたらここから上に引っ張るんだ。力入れすぎるな。上に引っ張っていって、引っかかったら皮を起こして、必要なら足の上に乗って、皮と肉の間の白いとこ見えるだろ?引っ張りながら、少しずつ切っていく」


ディシアが説明しながら、片方の皮を剥ぐ。反対側も同じ手順だ。


「頭は、まあ、別にいい。俺たち専門の皮商人じゃないしな」


首の周りをぐるっと一周切ってから、首の毛皮を引っ張って全体を一枚にまとめ、尻尾のところで一周切る。


「尻尾の処理は面倒だし時間もかかる。捨てちまえ」


腹の皮のところから尻尾まで引っ張り、一枚の皮を剥ぎ取って脇に置く。


「これで終わり。後は保冷魔法をかけて持ち帰り、後でまた二次処理する。脂を削いだり、湿気を取ったりな。まあ、剥ぎ方を覚えなくても、死体ごとギルドに持ち込めば金にはなるけどな」


ディシアが皮を見ながら言う。


ケルリンデたちも歩いてくる。


「父は剥ぎ方を知っていましたが、私たちには教えませんでした」


ケルリンデがディシアを見て言う。


「汚いし、疲れるし、わざわざ覚えなくてもいいさ。ただ、もう少し稼ぎたいだけだ」


ヴァルシュタインが剥いだ皮に保冷魔法をかける。


しばらくして、ディシアが皮を何枚か剥ぎ終え、ケルリンデに渡す。村に戻り、食堂へ向かう。


---


「ジュースはどうされますか?」


ケルリンデが尋ねる。


「飲みたい!」と、ほぼ同時に彼女たちが口にする。


「陌鋒さんとディシアさんはいかがですか?今日は私たちがご馳走しますので」


ケルリンデが俺たちを見て言う。


「あ…オレンジジュースで」

頭をかく。


「俺はいらん」


ディシアが言う。


ケルリンデがうなずく。


「他に何か食べたいものはありますか?」


「肉!」


シンツが大声で言う。


「おい、シンツ、聞いてないだろ!」


アフライアが背もたれに寄りかかりながら言う。


「私も肉が食べたいよ〜姉貴~」


アフライアがケルリンデに向かって手を挙げる。


「私は何でもいいです」


俺が言う。


「うーん…油菜のエビ炒めで」


「それだけですか?…店員さん!」


しばらく待って、店員がケルリンデのところに来る。


「お嬢様…何をなさいますか?」


「豚のステーキ、一人前ずつ。ジャガイモと肉の煮込み、一つ。えっと…油菜のエビ炒め、一つ。揚げ豚肉、二つ。それからオレンジジュースを八杯、ご飯を一人一杯ずつお願いします」


「そんなに頼むのか?」


ディシアが尋ねる。


「今日で私たちは出発しますから。二日間一緒に行動しましたし、お礼も兼ねて」


ケルリンデが言う。


ディシアはしばらく彼女を見つめ、それから黙ってうなずく。


---


しばらくして、ジュースと料理が運ばれてくる。


ケルリンデはジュースのグラスを見つめ、指を縁に沿って滑らせていたが、やがてグラスを掲げる。


「陌鋒さん!乾杯しましょう!」


他の者たちが彼女を見て、それぞれグラスを掲げて中央に集める。彼女たちの視線が俺に向く。


「あ…おう」


グラスを掲げ、そっと合わせる。かちりと小さな音がする。


「乾杯!」


彼女たちが声を揃え、俺もグラスを口に運び、オレンジジュースを半分以上一気に飲む。グラスを下ろす。


「酸っぱ…!」


俺たちも声を揃える。


「はははは!」


アフライアが笑い出し、ケルリンデ以外の者たちも笑い出す。ケルリンデは彼女たちを見て、それから俺の方へ身を寄せる。


アフライアがグラスを掲げる。「私は一気に飲み干したよ!」


「私も一気に飲んだよ」


ケルリンデもグラスを掲げる。


「はは〜」


リンガスもグラスを掲げる。


「一気に飲まなきゃよかった…酸っぱすぎ…」


バルザイドが言う。


「私も全部飲み干したよ…ふふん〜」


モリカがグラスを掲げる。


「私も酸っぱいの苦手…」


言いながらヴァルシュタインも飲み干したグラスを掲げる。


シンツを見ると、彼女は動かない。


ケルリンデがシンツの頭を撫でる。


「平気だよ!お姉さん!私も飲み干したよ!」


彼女はグラスを掲げる。


「ずるいよなあ、みんな…」


アフライアが言う。


「あ…俺は半分しか飲んでない…」


自分のグラスを見る。


「酸っぱいから、普通は一気に飲めないよ〜」


アフライアが言う。


「そうだよ、こんな酸っぱいもの、本当に飲む人いるのか?」


グラスを見て言うと、全員の視線が俺に集まる。彼女たちを見てまばたきし、頭をかく。


「ふふふ…さあ、食べよう」


ケルリンデが軽く笑い、続ける。


俺はステーキとご飯を口に運ぶ。ケルリンデ以外は皆食べ始めている。


「ケルリンデさん、食べないんですか?」


「あ…食べる、食べる」


そう言って茶碗を持ち、ご飯だけを二口かき込む。俺はまばたきしながら彼女を見る。彼女は息を吐いて続ける。


「考えてみれば…久しぶりだな、こんなにリラックスしたのは。本当に久しぶりだ」


指で茶碗の縁をなぞる。


まばたきして彼女を見てからうつむき、食べ続ける。俺、慰めるの得意じゃないし…


アフライアがケルリンデの肩を叩く。ケルリンデはアフライアを見て、何も言わない。


---


しばらくして、料理を全部食べ終える。


「あ〜美味しかった!」


シンツが言う。


「そうだね〜」


ヴァルシュタインが応じ、皆が背もたれに寄りかかる。


「もう結構です。半分会計します」


ディシアが立ち上がり、カウンターへ向かう。


「ディシアさん!私たちが払うって言ったじゃないですか!」


「疑ったお詫びだ。借りを作るのは嫌いでな」


ディシアは左手を振る。


「ディシアさん、個性的ですね」


「姉貴はいい人だ。じゃ、俺ももう結構」


俺は立ち上がる。


「もう帰るんですか?」


ケルリンデが言う。


「あ…ちょっとぶらついてから帰るよ」


入り口の方を見る。


ケルリンデがうなずき、彼女たちが手を振って別れを告げる。俺も手を挙げる。


---


しばらく歩いて、村外れの大きな木のところへ行く。木の下に寝転び、空と雲を眺める。しばらくして、そろそろ帰ろうと上体を起こす。前を見ると、体がびくっとする。


「うわっ!」


目の前にケルリンデたちが立っている。


「ご、ごめんなさい!驚かせるつもりじゃ…!」


ケルリンデが慌てて手を振る。


「あ…別にいいけど…でも、みんな足音がしないな」


首をかく。


「野での戦いでは音を立てない方が安全で、それが習慣になっています。


ケルリンデが頭をかく。


「そうか…もう帰るんじゃなかったのか?」


「もうすぐ出発します…陌鋒さん…」


ケルリンデが大きく息を吸って続ける。


「私たち、またお会いしましょう、陌鋒さん」


アフライアがケルリンデの肩を引っ張る。ケルリンデは振り返り、また向き直って続ける。


「どうか信じてください…何があっても、私たちはあなたを信じています。あなたがどこにいようと、私たちはいつまでもあなたを信じています」


彼女は胸に手を当てて俺に言う。


「あ…あ…うん」


うなずく。


「では…私が言いたいことは以上です。陌鋒さん、それでは失礼します」


ケルリンデたちは振り返らずに歩き出す。俺は手を挙げて振る。


彼女たちの姿が小さくなり、やがて見えなくなる。


---


家に帰り、簡単に身を清めてベッドに横たわる。欠伸をしながら、彼女たちの言葉を思い出し、頭をかく。ろうそくを吹き消し、両手を頭の下に置く。ゆっくりと眠りに落ちていく。

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