9.
8月6日。
ゆっくりと目を開け、目をこすり、欠伸を一つ。しばらく寝転がってから、ようやく服を着込み、ギルドへ向かう。
ギルドの扉を開けると、入ってすぐにあの七人の黒装束の姿が見えた。
一人が手を挙げて挨拶する。
「あの!陌鋒…さ、さん…こちらへ」
俺は近づく。
「あ…あんたたちも冒険者なのか?」
「一時的にあなたのパーティーに加入させていただいています、陌鋒さん。ディシアさんにもお話は済ませてあります」
昨日の背の高い女性が口を開いた。
一番小柄な子がうなずく。
「自己紹介させていただきます、陌鋒さん…ふぅ…」
彼女が一度息を吐く。
「私、ケルリンデ」
「アフライア…」
「私、リンガスです、陌鋒さん」
「モリカ」
「ヴァルシュタイン」
「バルザイド」
「シンツ」
一番背が高いのがケルリンデ。俺と同じくらいだ。アフライアは彼女より少し低い。リンガスとモリカはアフライアよりさらに低いが、二人はほぼ同じ身長。バルザイドはその二人より少し高く見える。シンツはケルリンデの胸のあたりまでしかない。
「あ…」
俺は頭をかいた。
「陌鋒でいいっすよ」
ディシアが扉を押して入ってくる。
「陌鋒、もう会ったか?ここ数日、一緒に行動してもらう」
彼女がこっちに歩いてくる。
俺はうなずく。
「ケルリンデさん、何か依頼は見つかりましたか?最近は良いのがなくて」
「もう承ってあります、ディシアさん。東南の森です。少し奥まで入る必要があります。目標はトロールです」
「トロール?」
彼女がまばたきして、俺を見る。
「陌鋒、ちょっと来い。治療薬を渡す」
ケルリンデたちはその場に立ったまま、こちらを見ている。
「あ…」
ディシアを見ると、彼女は俺を少し横に引っ張る。
「陌鋒、あいつらには気をつけろ。もし本当にトロールなら、戦闘中は離れてろよ」
彼女が俺の肩を抱くようにして言う。
「え?」
首をかしげて口を開けると、彼女は治療薬を俺の胸に押し込み、軽く肩を叩いて戻っていく。
「では、よろしくお願いします」
ケルリンデが言う。
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東の森へ向かって歩き出す。ケルリンデとアフライアはちゃんと前を歩いているが、他の連中はほとんど俺に張り付くように近い。横を向いてチラリと見ると、慌ててディシアのところへ歩いていく。
振り返ると、ディシアも顔を向ける。
「お前ら、馴れ馴れしすぎじゃないか?」
「申し訳ありません、ディシアさん…えっと…」
ケルリンデがため息をつき、後ろに下がって数人に言う。
「そういうのはやめろって言っただろ」
「でも…」
彼女が何か言うが、後はよく聞こえない。
彼女が前へ戻ると、他の連中はずっと遅れて歩き、しょんぼりしている。
「あの…陌鋒さん、すみません…えっと…」
頭をかきながら言って、途中で黙ってしまう。
「あ…別にいいっすけど」
「はあ…」
アフライアがため息をついて口を開く。
「私からちゃんと言っておきます。これからは大丈夫だと思います…陌…」
彼女がしばらく止まってから続ける。
「ここに来るまでに、いろいろありまして。彼女たちも疲れています。どうか許してやってください。わざとではないんです」
「あ…別にいいって」
肩を掻きながら言うと、彼女は立ち止まった。振り返ると、彼女が右手で何度も顔をこすっている。
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森の中に入り、しばらく歩く。
「もう少しで着くと思います」
ケルリンデが言う。
「姉さん、すごい速さで何かが前から来てます!たくさん!」
バルザイドが叫ぶ。
「戦闘準備!」
ケルリンデの声で、彼女たちが素早く半円に広がる。
しばらくすると、森の中で何かが動いているのが見える。
「クローウルフだ!」
ディシアが叫ぶ。
「魔化魔物です!」
「魔化魔物!?」
ディシアが声を上げる。
アフライアたちが素早く動き、俺たちは円陣を組む。
「ウォォォン!」
森の中から遠吠えが響き、木々の間を素早く影が動く。
「ディシアさん、陌鋒さん!守りを固めてください。数が多すぎます!」
ケルリンデが叫ぶ。
突然、前方から一匹のクローウルフが飛び出してくる。普通のクローウルフと変わらないように見えるが、瞬時に目の前まで迫っていた。剣を構えて受けると、爪が刃に当たる。体が後ろに倒れかけた瞬間、誰かの手が背中を支えてくれた。
ディシアが剣を振るう。クローウルフが素早く振り向いて刃を噛もうとするが、剣が頭を貫き、上半身ごと両断する。その直後、また別の一匹がディシアの前に飛び出す。支えてくれた手が俺を後ろに引いた。
ディシアが素早く体を捻り、大剣がもう一匹の胴を切り裂く。その死体は地面を滑って彼女の足元まで来る。別方向からはシンツに向かって一匹が襲いかかる。彼女が防ぎ、隣のアフライアがとどめを刺す。
振り返ると、支えてくれたのはケルリンデだった。
「ありがとう」
「いいえ」
前を見ると、また一匹が飛び出してくる。ディシアに向かって突進する。彼女が素早く剣を横に振り、刃の腹で叩き飛ばす。狼は地面に倒れ、足をバタつかせながら立ち上がろうとしている。
「私がやります」
ケルリンデが近づき、一突きで仕留める。剣を抜くと、狼はしばらく足を動かしてから動かなくなった。
「陌鋒さん、ディシアさんが剣を振るう時は、少し下がっていてください」
ケルリンデが俺に言う。
まばたきして、ゆっくりうなずく。
ケルリンデが元の位置に戻る。
その後も数匹のクローウルフが森から飛び出してくる。
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しばらくして。
「何匹か逃げました。終わりです」
バルザイドが言う。
ディシアが大きく息を吐く。
「こんなところに魔化魔物が出るなんてな…」
彼女が振り返る。
「いや、助かった。とりあえず死体を集めてくれ。無傷なのは別にしておいて、後で皮を剥ぐ」
ケルリンデが俺のところに来る。
「陌鋒さん、少し休んでいてください。後は私たちに任せて」
「あ…別に大丈夫っすけど…ありがとう」
ディシアがこっちを見ている。ケルリンデが頭をかく。俺はそのまま死体を運び続ける。
死体を集めると、全部で十七匹だった。ほとんどが真っ二つになっているが、無傷に近いのも四匹はある。…まあ、傷口が小さいってだけだけど。
ケルリンデが薪を拾ってくる。
ディシアが慣れた手つきで皮を剥ぎ、地面に敷いた皮の上に死体を載せる。
ケルリンデが手早く焚き火を組む。ディシアが横に立つ。
「陌鋒、ライター持ってきたか?」
「持ってないっす」
俺が首を振ると、ディシアは腰に手を当てて火を見つめる。
ヴァルシュタインがケルリンデを見る。彼女がうなずく。
「少しだけ魔法をかじったことがあります」
ヴァルシュタインが火に近づき手をかざす。紫色の魔法陣が現れる。中央の紋様は四角星で、その中心に小さな五角星がある。
すぐに火が燃え上がる。
「陌鋒さんは魔力がなくても、きっとそのうち魔法を使えるようになりますよ」
ヴァルシュタインが言う。
「魔法…そういや、俺に魔力がないって話、言ったことなかったはずだけど?」
俺が彼女を見ると、ディシアも彼女を見る。
「それはギルドで聞いたんです。魔力のない人がいるって話が気になって、ちょっと尋ねてしまって…すみません、陌鋒さん」
ケルリンデが言う。
「別にいいっすけど」
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昼食を終え、逃げたクローウルフを追跡することにする。
足跡を辿ってゆっくり進む。
「この辺りにトロールがいるなら、奴らも魔化している可能性がある。三体以上いたら、撤退だ」
ディシアが言う。
「同意します、ディシアさん」
ケルリンデがうなずく。
「戻ったらギルドに報告して、この辺りを封鎖してもらおう。冒険者か帝国軍に来てもらう」
ディシアが続ける。
振り返ると、アフライアがケルリンデの肩に手を置いている。
前を向いて歩き続ける。バルザイドが魔物に気づかれないようにする魔法をかけてくれた。体が淡い黄色の光を放つ。
足跡が突然入り組んできた。同じ場所をぐるぐる回っているようだ。ゆっくりと進む。
「この先です」
バルザイドが言う。
「ディシアさん、先に様子を見てきます。討伐するかどうかはその後で」
「ああ」
ディシアがうなずき、数人が前へ進む。
俺は木に寄りかかり、葉っぱを眺めながら時々ディシアの方を見る。
アフライアたちが戻ってきて、外套の中から干し肉を一本差し出す。
「あ…ありがとう」
受け取って食べる。
「あんたら、強いな」
「そんなことないですよ。ちゃんと教わっただけですから」
モリカが頭をかく。
「それでもすごいよ。剣教えた人、すごいのか?」
「はい!教えてくれた人は、世界で一番強いんです!」
シンツが目を輝かせる。
「今でも、師匠の十分の一にも達してないですけどね」
バルザイドが腕を組む。
「うんうん、どう考えてもすごすぎる」
他の連中もうなずく。
「へえ…姉貴って、もうすごいんだなって思ってたんだけど。」
「あ…ディシアさんももちろん強いですよ!」
シンツが言う。
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話していると、ディシアたちが戻ってきた。ディシアが俺のところへ、ケルリンデが他の連中のところへ向かう。
「この先に洞窟があった。ケルリンデ曰く『魔能建築』だってさ。魔物はそれに引き寄せられたらしい」
彼女が俺の肩を抱くように言う。
「そんな言葉、聞いたことねえけどな」
小声で付け加える。
ケルリンデたちが戻ってくる。
「ディシアさん、話は済みました。一度戻りましょう。どうするかはその後で決めましょう」
ディシアがうなずく。
日が暮れる前に、ディシアが手際よく何匹かの皮を剥ぐ。
「私に預けてください」
ケルリンデが言う。
「いいのか?」
「私たちの外套は収納機能がありますので、大丈夫です」
彼女が言い、ディシアが皮を渡すと、外套の中に入れて消える。
暗くなる前に村へ戻る。
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食堂で夕食を取りながら、洞窟の件について話し合う。
「率直に言います、ディシアさん。私たちはこの魔能建築を処理するために来ました。私たちの…父の、かつての友人が、この件を依頼してくれたんです。どうか、他言しないでいただけませんか?それと…お会いした理由ですが、この村に来てギルドに寄った時、魔力のない人がいると聞きまして…つい、気になってしまいまして…」
ケルリンデが指を机に軽く叩きながら言う。
ディシアは何も言わずに聞いている。しばらくして口を開く。
「それで、私たちのパーティーに加わったのは、陌鋒を見てから決めたのか」
「はい。陌鋒さんが、私たちの父にとても似ていらしたので…父はもう少し無口でしたが…はは…あまり話すのが好きじゃない人でしたから」
ディシアは彼女を見つめ、まばたきする。
「わかった。ギルドには報告しない。ただ、今日の戦いを見ても、明日は俺たちは行かない。無理な戦いはできん」
「構いません。戦いは私たちに任せてください。信じてください」
少し間を置いて、彼女が言う。
ディシアはため息をつく。
「信じる信じないの問題じゃない。それに、もう行くな。『死んだ父親の友人の依頼』だからって、そんなの断ればいい。自分の命を懸けるような真似は、最初から引き受けるな。父親の友人だからって受けたんなら、それはただのバカだ」
「お願いです…信じてください」
彼女が机を軽く叩きながら続ける。
ディシアは何も言わない。
「安全は確保します。戦利品はすべてお渡しします。ヴァルシュタイン、シンツ、あなたたち二人はディシアさんと陌鋒さんを守って」
二人がうなずく。
「ヴァルシュタインは魔法が使えます。シンツは小柄ですが、戦えますから」
ケルリンデが続ける。
ディシアはしばらく考えて、また食べ始める。俺もそれに続く。ケルリンデがうつむく。隣のアフライアが彼女の肩を軽く叩く。その後は誰も話さず、ただ食べ続ける。
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ディシアが食べ終え、袖口で口を拭く。
「明日行くなら、八時ごろにギルドに行く」
ケルリンデが返事をする間もなく、ディシアは代金を払って店を出る。
俺も急いで食べ終える。
「あの…陌鋒さん…ディシアさんが来なくても、あなたは来ていただけますか?」
ケルリンデが言う。
「え?あ…俺、大体姉貴と一緒に動いてるから…」
急いで食べ終え、口を拭く。
「あ…じゃあ、先に行くね」
早足で店を出て、宿の方へ向かう。
「おい、陌鋒坊や、こっちだ」
顔を上げると、ディシアがいた。
彼女について路地に入る。真ん中あたりで立ち止まる。
「陌鋒、あの連中、どう見ても怪しい。南方から来たって言うけど、具体的な場所は言わなかった」
「気づいたか?あの連中の外套、顔がすっぽり隠れてた。魔法でもかかってるのかもしれん。俺にはわからん。ヘルクがいればな」
彼女が顎を揉む。
「悪人には見えなかったけど…まあ、用心はしよう」
「ああ。ヘルクも数日で戻る。その時に聞いてみる」
「姉貴、明日は行くのか?」
「本当に二人も護衛につけてくれるなら、皮も全部くれるって。ただ、用心はするに越したことはない。あの魔化魔物、ただ事じゃなかった。あの連中が何考えてるかわからん。もし何かあったら、すぐに逃げるぞ」
「逃げるのか?」
「命懸ける価値のない戦いだ。死んでも意味ねえ。ギルドに戻って人を呼ぶ方がいい」
俺はうなずく。
「よし、明日は迎えに行く」
「はい」
それから大通りに出て、家に戻る。軽く身を清めて、ベッドに横たわる。ゆっくりと眠りに落ちていく。




