ep64 蛙の子は蛙 (※コレット・エミルゴ視点)
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私コレット・エミルゴは、(変わっている)お嬢さま、オリビアさまに強引に左隣へと座らされ、町屋敷1階のサロンで、弟のジルベールさまたちとお茶をさせて頂いています。
主家のお嬢さまと未来の当主であるジルベールさまと同席させて頂くのは、一年半を過ぎた今でも落ち着かない気分になってしまいます。 兄のリシェール(ジルベールさまの側近)は、TPOさえ弁えて居れば良いと平気そうですが。
決してオリビアさまに揶揄われるような理由ではありません。
私は、エミールさまのことを好きだとか、考えたことなどないのですから。本当に全くオリビアさまは。
我がエミルゴ家は、代々アーシュレイ家に仕えていた家臣の家系です。
〔アーシュレイ家の歴史と共に我がエミルゴ家在り〕と家訓へと刻まれているような家で、私たちは育ちました。
祖父のセバスティアン・ド・エミルゴは、アーシュレイ侯爵領の領主館の家令として、アーシュレイ侯爵の補佐や領地の運営実務と使用人たちの統括を。
父のクロードは、王都パルスの町屋敷で執事長として、邸内の全ての使用人の統括と屋敷内の運営責任を任されている。
祖母と母は、パンテール地区にある旧領主館で後進の育成や侍女長として前当主であるレナールさまに仕えている。
長兄は、14歳で現在ロイス学院に在学中。
次兄は、11歳。土属性レベル1の祝福を授かった為、聖堂に付属している神学校の寄宿舎で学びの最中。(父のクロードから「空気読んで欲しかった。」と言われたそうだ。主家の当主と次期当主に祝福が無かった為。)
三兄のリシェールは、9歳。現在ジルベールさまの側近候補として仕えています。
そして私、コレットは7歳になり、正式にオリビアさまの専属侍女となりました。
6歳で専属侍女見習としてオリビアさまに仕えたのは、家令をしている祖父のセバスティアンからの強い勧めによるものでした。
破天荒な若奥様であるクラウディアさまとの相性を考え、祖父は大人しい私に白羽の矢を立てたのです。 それと神殿の育児院でなく、旧領主館で母や祖母に育てられた私なら、クラウディア若奥さまの好みに沿うと考えたとのこと。
若奥様のクラウディアさまは、余り侍女長やオリビアさまの乳母との仲が宜しくないようで、祖父のセバスティアンは胃を抑えつつ、旧領主館で祖母と母へ、私がお披露目前に仕える理由を話してくださいました。 (高位貴族の令嬢が、7歳のお披露目会前に他家へ行くのは珍しいことだったのです。乳母の子女は別ですが。)
母の話では、奥様のミッシェル・アーシュレイ侯爵夫人は、現クロノア公爵の妹君。奥方さまの母君は、フローラル国王フルーブ1世の御息女、第九王女で在られるとか。
その貴き身分故か、ミッシェルさまと共にいらした方々は高慢で、、、いえ、とてもプライドの高いお付きの方々だったご様子。 祖父のセバスティアンや曾祖父たちは、アーシュレイ侯爵家に馴染んで頂くのに苦労したそうです。 何しろ若く無口なミッシェル奥様の虎の威を借る狐だったようで。
そして次期当主ロベール・アーシュレイさまに王命で嫁がれたクラウディアさま。 クラウディアさまは、北のブランシェ辺境伯さまのご令嬢でした。
夫となる問題の次期当主ロベールさまは、9歳年上。
「お坊ちゃまは、意固地な所があったが賢い少年だったのだよ。」
そう言えば家令の祖父セバスティアンは、懐かしむ様に次期当主であるロベール・アーシュレイさまのことを語っていた。 私は一度もお会いしたことがないけれども。
ロベールさまは、19歳頃に婚約者が亡くなられ、性格が変わられて、不真面目になって仕舞ったそうです。
軈て王命で、ロベールさまが23歳の時に16歳のクラウディアさまが輿入れ。
当主だったレイモン・フォン・アーシュレイ侯爵を筆頭に奥様のミッシェル侯爵夫人、そして夫になるロベールさまもフルーブ3世の命で、厭々、祝福無しのクラウディア・ブランシェさまを迎い入れたそうです。 その為、変な方向へアーシュレイ侯爵家が一丸となってしまったとか。
私は、ツンツンした高慢な侍女長たち一派の顔を思い出して、クラウディアさまに哀悼の意を捧げたくなってしまいました。
そんな状況の中、大人しくアーシュレイ侯爵家でクラウディアさまは過ごされていた。
但し、オリビアさまを出産なさるまで。
クラウディアさまは、自分の願いを叶える為、奥様のミッシェル侯爵夫人へと直談判しようと邪魔するミッシェルさま付きの侍女たちを物理で排除したり、当主のレイモンさまへと取り次いでもらう為に、祖父のセバスティアンを蹴り飛ばしたりと淑女とは思えない破天荒な行動に出たそうです。
そのことを話す祖父は、とても楽し気でした。
クラウディアさまの願いは、オリビアさまに自分が授乳させること。 そして神殿の育児院には預けず、自分で養育することでした。
中央の高位貴族の家では、生まれてから直ぐ乳児は育児院へ預けることが多いのです。
アーシュレイ侯爵夫妻から一応は了承されたようですが、クロノア公爵から付いて来た方々には、不評でクラウディアさまとオリビアさまへの反発が大きく為ったそうです。
祖父のセバスティアンは、そんなクラウディアさまへ面白味を感じ好感を抱き、御当主夫妻が中央の貴婦人との違いで戸惑われているのをフォローさせて頂いたと、優しい声で昔語りを私にしてくださいました。
私からすれば、嫋やかなクラウディアさまが、そんな一風変わった勇ましい行動を取られた方とは、想像など出来ませんが。
そしてオリビアさまも──────一風変わった方で、蛙の子は蛙なのかしら?と祖父や三兄のリシェールと話しています。 他の方々とは話せない事ですからね。
「突飛な事を仕出かさないようにオリビアお嬢様のことを頼むよ、コレット。」
私は、祖父からそう頼まれて、オリビアさまに仕えるようになったことを思い出していた。
本当にオリビアさまと出会ってから驚きの連続で。 驚いたことを数え上げたらキリがありません。
そして、態とじゃないのかしら? そう思う位にデジレやランテ語のローラン先生との話し言葉が荒いのです。
デジレとなら分ります。
彼女の場合は、下位貴族ですし、領主館に来られるまで殆ど教育を受けて無かったそうですから、つい親しいので釣られてしまうこともあるでしょう。
でもローラン先生の場合は、聖職者と言う敬うべき立場の方なのにフレンドリー過ぎますし、距離が近過ぎるような気がするのです。
それに時々、敢えて貴族としてのマナーを外しているようにも思えてしまうのです。
オリビアさまは、朗らかで気の良い方なのに、何処か危い気がして──────。
特に年が明けてから、時折、何か焦っているような、そんな気配を感じてしまうのです。
今回の急に思い立ったような王都行きもそうでした。
「来年春に招待されている王妃さま主催のお茶会のマナーを王都で学びたい。」
知らない人が出席しているお茶会嫌いのオリビアさまらしくない言葉で、王都行きを決められました。まるで何かに追い立てられているようにも感じてしまって、私の不安は募るばかり。
町屋敷には、ラクール公爵家の御令息が唐突に滞在される様に成ったりして、驚いている中、アーシュレイ侯爵ご夫妻と母君のクラウディアさまたちが狩猟大会へ出向かれ、一層不安な気持ちが増してきました。
執事長の父のクロードからは、「コレットはもっと肩の力を抜きなさい。」と声を掛けられました。
分っているのですが、どうしても心がザワザワザするをのを抑えられないのです。
今日のお茶会の後、事情を知っているようなデジレに、もう一度今回の王都行きの理由を確認してみましょう。
重く垂れこめる雲が晴れて、王都のスッキリとした青い空を見てみたいです。
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