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ep55 祖父レイモンの決断



 ローランから礼拝堂で件の一報を聞いて、わたしが王都へ家族との避難を提案したのは、ゲーム脳的な確信みたいなモノが閃いたからだ。


 その1つ目が、ゲームでは王都パルスに疫病が流行ったと言う記述が全くされて居なかった為。

 私たちが暮らして居たアーシュレイ領地から王都パルスまで、陸路では三日、船では半日という距離なのにだ。


 その2つ目は、乙女ゲーム『ライラックの花が咲く頃に~』のヒロインをシナリオ上、病でロストさせちゃわないでしょ? 物語のプロローグが始まる前にヒロインとヒロインの母親がデットエンドって、、、ありえないわよね。普通に。


 まあ、ローランにゲームの話をしちゃう訳にいかないので、(デジレとの兼ね合いもあるし。) わたしは勢いで誤魔化し、ローランとの話を切り上げ護衛騎士のアッシュと領主館の西棟へとそそくさと戻って行ったけども。




 それから西棟(プライベートエリア)の2階へと上がり、わたしは祖父に面会を求めて、執事長のアランに申し入れをした。


 翌日、祖父は珍しく、わたしが普段「弟と寛ぐサロンで一時を過ごそう」と言う返答を侍従に託して、伝えてくれた。

 大抵は、応接間か祖父母夫婦のサロンに呼び出されるのに?

 ちょっと新鮮って思いながら、わたしは私室から馴れたサロンへの廊下を猫型アルプと一緒に歩いて行った。


 どうやら水の精霊アルプは、わたしが猫好きなことを察して、ペルシャ猫の姿へと擬態しているそうだ。

 アルプの水魔法は、対象者に望む姿の幻影を見せることが出来るそうだ。


 『(ワレ)が次代の水の精霊王だから可能な魔法なのだ。フフン。』


と、アルプは得意そうに水色の猫胸を張った。


 うっ、可愛い。



 淡いクリーム色を基調としたサロンにデジレを連れて入って行った。

 休日のコレットは領都で家族サービス。

 付いて来てくれたデジレは、乙女ゲームの『ライ花』を知る同じ転生者だし、気安い彼女が居ると何だか安心出来るのよね。

 



 お茶の準備をしたサロンには、祖父レイモンと修道服姿のローランが、ちゃかり座っていた。

 朝でもしっかりとジレとジュストコールを着ている厳格そうな祖父。

 うん。

 ビビっちゃあ駄目だ、わたし。

 王宮では孫自慢でハッチャけていたらしと言う話なのだから。


 わたしは、友人であるデジレにも着席する許可を与え、隣に座って貰った。




 「おはようございます。お祖父さま、そしてローラン先生も。」

 「ああ、おはよう。」

 「オリビア嬢、僕もお邪魔させてもらっているよ。」

 「はい。」

 「それでオリビアが話したいこととは?」

 「・・・ええと、うん。 お祖父さまが参加される狩猟大会へ、ジルと一緒について行きたいと思いまして、、、。」

 「今年は、王都郊外の王領であるのだが。未成年の参加は許されていないぞ?オリビア。」

 「いえ、そのぉ。」


 『そんなことも未だ教わっていないのか?』と、祖父は怪訝そうな表情をした。

 あっ!

 そうだった。忘れていた。

 王都へ逃げれば良いと思い付いて、それしか考えてなかった。

 ヤバイヤバイ!なんて言えば良いのだろう。


 隣りでデジレがチラチラとわたしを窺っている気配がした。


 『本当にリビーって迂闊なんだから。』

って、デジレは思っていそう。




 「ふふっ良いではありませんか、アーシュレイ侯爵閣下。来年は王城での王家主催のガーデンパーティーへオリビア嬢が招待されているのでしょう? 確か、オリビア嬢と母君であるアーシュレイ次期侯爵夫人は、殆ど王都パルスで過ごされたことが無かった筈。 良い機会として次期夫人とオリビア嬢をタウンハウスで過ごされてみるのは。 アーシュレイ侯爵閣下の奥方も共に狩猟大会へ参られるのでしょう? この機会に家族揃って秋の王都を愉しまれるのも素敵だと思いますよ。 オリビア嬢もそう思われるでしょう?」


 「はっ、はい。そうです!お祖父さまっ!!」


 わたしは、渡りに船とばかりに、流れるようなローランの説得に幾度も大きく頷いた。


 (やっぱりローランは、聖職者でなく詐欺師では?)


 そんな恩知らずな考えが脳裏を一瞬過ったが、胡散臭く綺麗なローランの笑みを見て、わたしは慌てて考えを打ち消した。



 「まあ息子のロベールのせいなのだが、、、。そうだな。王宮での茶会には、クラウディアも参加せねばならない。 自慢の孫娘であるオリビアや嫡男のジルベールも居る事だし、クラウディアだって今なら醜聞を躱し胸を張って社交に参加出来るだろう。 それにこれからは、妻のミッシェルもクラウディアの味方になるだろうしな。うむ、、、。」



 祖父の言葉は後半、独り事の様になり、、、、。

 やがて祖父は、意を決したように大きく頷いて、家族揃って王都を目指すことを決したのだ。


 わたしが大いにローランへと感謝し懐いて行ったのは、自然の流れだよね。





 そしてわたしは〔当主命令〕と言う錦の御旗を持って、意気揚々と母クラウディアの執務室へと向かった。

 母クラウディアに対する若干の罪の意識は、『プライドより命が大事』と言うキーワードでコーティングして。



◇◇




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