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幼馴染をイケメン探索家に奪われたので俺も探索家になろうとしたら、魔力不足で不合格でした ~最後の切り札は押入れのエロトラップダンジョン~  作者: 四方博
序章 幼馴染をイケメン探索家に、以下略

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 翌日、気持ちを切り替えた涼馬は、再びダンジョンへと足を踏み入れた。


 今日の目的は、あのボスオナホクンGへのリベンジマッチ。


 ……に向けた準備だ。


 前回は魔力が枯渇した状態だった。それが最大の敗因なのは間違いない。だが、それを差し引いても、あの巨体を殴りつけた際の、まるで米俵でも叩いているかのような手応え。到底、勝てる自信など持てなかった。


 ならば、やることは一つ。

 とにかく地道にレベリングして、身体を鍛える。今はそれしかない。

 涼馬は手製のフロアマップを片手に、通路を巡りながらオナホクンを倒して回った。


 第1階層のマッピングは、すでにほとんど終わっている。複雑に入り組んだ通路も、行き止まりも、あらかた調べ尽くした。


 だが、どれだけ探しても第2階層へ続く道だけが見つからなかった。


 恐らく、この階層は『討伐型』なのだろう。

 調べたところによると、ダンジョンのフロアには、大きく分けていくつかの種類があるらしい。


 まずは『探索型』。

 最もオーソドックスなタイプで、階段や扉など、次の階層へ続く出入口を見つければ先へ進める。


 次に『ボス部屋型』。

 一度足を踏み入れると、ボスを倒すまで通常の方法では脱出できなくなるフロアだ。


 そして『討伐型』。

 階層内に存在する特定のモンスターを討伐することで、次の階層へ続く出入口が現れる。


 他にも特殊な構造のフロアはいくつか存在するようだが、全体の99%はこの3種類のいずれかに分類されるらしい。

 もし、この階層が討伐型だとすれば、討伐対象は十中八九、あのボスオナホクンGだろう。


 涼馬はぎゅっと拳を握り締めた。


「俺のテイム童貞は、アイツで捨てるって決めたからな」

 結局、その日はボスオナホクンGと遭遇することなく、ひたすらオナホクンを狩り続けて探索を終えた。


 翌日も、そのまた翌日も、停学という名の実質ダンジョン強化合宿は続いた。

 母さんと麻衣がそれぞれ仕事と学校へ出かけたのを確認すると、涼馬は決まって押入れのダンジョンへ潜り込んだ。


 体内を思わせる生々しい空間を、手製のフロアマップでルートを確かめながら進み、オナホクンを見つければ片っ端から倒していく。初めの頃は足を取られてばかりだった、ぶよぶよと不安定な地面にも、すっかり慣れてきた。


 最近では体力を付けるため、足元に注意を払いながら、ダンジョン内を走り回るようにもなっていた。


 少しずつではあるが、着実に強くなっている実感はあった。


 その日も探索を終え、涼馬は自分の部屋へ戻ってきた。窓からは夕焼けの橙色の光が差し込み、室内を淡く染めている。いつの間にか、すっかり日が暮れる時間になっていた。

 そろそろ麻衣が帰ってくる頃だろう。涼馬はシャワーを浴びて汗を流すと、再び自室へ戻った。

 少しくらい課題を進めておこうと机に向かった、そのときだった。何気なくカーテンを開け、窓の外へ目をやる。

 隣家にある沙織の部屋。その窓には薄緑色のカーテンが引かれ、向こう側から柔らかな明かりが漏れていた。


 カーテンの向こうに、ぼんやりと人影が浮かぶ。

 一つ。

 そして、二回りほど大きいもう一つの影。


「……っ」

 涼馬は反射的にカーテンを閉じる。

 どうにもやりきれなくなって、課題を机の隅に投げ捨てた。


 じっとしていられなかった。衝動のままに押入れの戸を開ける。そこには、黒々とした靄が、ぽっかりと口を開けて待ち構えていた。

 涼馬は一瞬の躊躇もなく、その中へ身体を突っ込んだ。


「よう、元気だったか? 丁度お前に会いたかった気分だった」

 彷徨い歩くこと数十分。薄ピンク色の景色が続く通路の先に、黄金色に輝く巨体を捉えた。


 ボスオナホクンG。


「ってあれ? デカくね?」

 以前は涼馬の腰ほどまでしかなかった身体が、今では胸元に届くほどまで成長している。見間違いではない。明らかに一回りも二回りも大きくなっていた。


 俺の精液を摂取して成長した?

 涼馬の脳裏にあまり考えたくない予想が浮かび上がる。

 それを振り払うように、ボスオナホクンG目掛けて駆け出した。


「先手必勝!!」

 勢いよく踏み込み、渾身の拳を突き出す。

 数多のオナホクンをKOしてきたパンチだった。


 だが、その拳が届くことはなかった。


 金色の触手がしゅるりと伸び、振り抜こうとした腕に絡みつく。次の瞬間、突進の勢いを逆に利用され、身体ごと宙へ放り投げられた。


「うわっ!」

 涼馬はぶよぶよとした床の上を何度も弾みながら転がっていった。衝撃こそ柔らかな地面に吸収されたものの、視界が目まぐるしく回転し、一瞬、天地の区別すらつかなくなる。

 慌てて体勢を立て直す。だが、ボスオナホクンGは追ってこない。

 悠然とその場に立ったまま、まるで「その程度か」とでも言いたげに佇んでいた。


 冷や汗が、右頬の火傷の痕に沿ってゆっくりと伝っていく。

 今日はすでに散々オナホクンを狩った後だ。少し休憩を挟んだとはいえ、身体には明らかに疲労が溜まっている。


 涼馬は大きく肩で息をした。


 今日のところは一旦、逃げ……。

 涼馬の判断は致命的に遅かった。


 次の瞬間には、ボスオナホクンGが懐へ潜り込んでいた。黄金色の巨体が視界いっぱいに迫り、涼馬は抗う間もなく床へと押し倒された。


 そして、

「うぁぁあああああああっ!!」

 それから先は、もう抵抗と呼べるものですらなかった。

 金色の触手が幾重にも絡みつき、身動きを封じる。逃れようともがくたびに拘束は強まっていく。


 そして、たっぷりと。ねっとりと。


 身体の奥に残っていたものまで根こそぎ奪われるように、涼馬は容赦なく搾り取られた。

 気付けば、指一本動かす気力すら失い、湿った床にぐったりと横たわっていた。


 これで終わった。

 そう思った矢先、足首に何かが絡みついた。


 金色の触手だった。


「……へ?」

 次の瞬間、涼馬の身体はずるずると床の上を引きずられていく。


「やめろ! はなせって! どこに連れてく気だよ!!」

 抵抗はできなかった。身体は鉛のように重く、腕を持ち上げることさえままならない。ただ、なされるがままに引きずられていく。


 やがて、通路の先に見えてきたものに、涼馬は目を瞬いた。



 押入れの戸だった。

 ボスオナホクンGはその前まで涼馬を運ぶと、まるで役目を終えたとでもいうように、足首に絡めていた触手を解いた。


 何も言わない。


 ただ悠然と背を向け、そのまますたすたと去っていく。

 涼馬は床に転がったまま、その黄金色の背中を呆然と見送った。


 完敗だった。


「というか戸の前まで送り届けるってなんだよ。本当にモンスターかよアイツ」

 涼馬は老人もかくやという覚束ない動きで、どうにかダンジョンの外へと這い出した。

 そのまま風呂場へ直行しようと、部屋を出た瞬間だった。


「お兄……大丈夫?」

 最悪のタイミングで麻衣と鉢合わせてしまった。


 全身はずるずる、でろでろ。

 足取りは覚束なく、腰が砕けた老人のような歩き方になっている。


 そんな兄の惨状を目の当たりにした麻衣の表情が、みるみるうちに変わっていった。頬がじわりと赤く染まり、眉根が寄る。心配そうな眼差しには、やがて何とも言えない憐れみまで混じり始めた。


「馬鹿お兄!! そんなになるまで無理して!! アホなの!!」

 口では散々に罵りながらも、麻衣は涼馬の腕を自分の肩に回し、倒れないよう身体を支えてくれた。そのまま二人で、よろよろと階段を下りていく。


 そして風呂場に放り込まれた。


「うわベトベトだよっ。私もまた風呂に入らないといけないじゃん」

 脱衣所の向こうから、麻衣のげんなりとした声が聞こえてくる。


「髪乾かすのめんどいよぉ。お兄、ちゃんと責任取ってドライヤーしてよね」

 助けてもらった手前、断れる雰囲気ではなかった。


 ブォーッ、と低い風切り音を立てながら、涼馬はリビングのソファでくつろぐ麻衣の髪にドライヤーを当てていた。


 普段はサイドで一つに括っているせいか、あまり長いという印象はなかったが、こうして解いてみると意外なほど長い。背中へ流れ落ちる黒髪が、温風を受けるたびに柔らかく揺れていた。


 絡まないよう指を差し入れ、梳くようにゆっくりと手を滑らせる。

 指の間をさらさらと抜けていく髪の感触は思いのほか心地よく、涼馬は少しだけ手つきを緩めた。


「なぁ、流石に俺が何してたか気付いた?」

 その言葉を口にした途端、指先を滑らせていた麻衣の髪が、ほんのわずかに張ったような気がした。


「ま、まぁ、何となく」

 やはり気付かれてしまったらしい。


 何度かあんな、ずるずるででろでろになった姿を見られているのだ。今さら誤魔化せという方が無理がある。


 普通に考えて、自分の部屋に籠もっていただけの人間が、あそこまで汚れて出てくるはずがない。ダンジョンに潜っていると勘ぐられてもしょうがない。


 麻衣は昔から、妙なところで勘が鋭いし。


「なぁ、他の人たちには黙っててくれないか?」


「え、あ、まぁ、そりゃ……言いふらしたりはしないよ。私の沽券にも関わるし」


「本当?」


「そりゃ、うん」


「ありがとう。物わかりの良い妹で良かったよ」

 安堵して、涼馬は再び麻衣の髪へ指を通した。


「でも! これ以上は駄目だよ。今日だって、もう半分死人みたいになるまで……」


「ごめん、今日はここまで頑張る気は無かったんだけど、つい衝動的に」


「馬鹿!! 大体、お兄は停学を何だと思ってるの?」

 やけに強い語気で怒鳴られ、涼馬は思わず口を噤んだ。


 そこで会話は途切れた。


 ブォーッというドライヤーの風音だけが、気まずい沈黙を埋めるようにリビングへ響いていた。


「次、そんなになるまでしてたら、病院連れてくからね」

 麻衣は自分の髪を指先で撫で、乾き具合を確かめた。どうやら満足したらしく、ソファから立ち上がると、去り際にそんな言葉を残した。


「びょ、病院、って大袈裟すぎない?」


「大袈裟じゃないよ! 依存症一歩手前じゃん!!」



 ダンジョン依存症。


 ダンジョンの中で味わう命のやり取り、その緊張と興奮に取り憑かれ、狂ったように潜り続けるようになる症状だったはずだ。


 実際、探索家の間では昔から問題になっていて、専門の治療施設まで存在するらしい。

 確かに最近は毎日のように潜っているし、今日はろくに休みもせず、衝動的に飛び込んでしまった。


「……そこまでか?」

 自分ではまだ正常なつもりだったのだが。


***

 麻衣は階段を上がると小さく溜息を吐いた。


「どうしよ、お兄が壊れちゃった」


 全身変なベトベトでぐしょぐしょ。

 妙に汗ばんでいるどころか、なんとなくイカっぽい生臭さまで漂っていた。


 自分の部屋でナニをしていたのか、別段、性に明るいわけではない麻衣にだって想像はついた。


 まぁ、失恋直後だし、男ならそういうこともあるのだろうけどもだよ。


 あるのだろうけど!!!


 あれはおかしいって!! ……多分。


 どれだけ過酷なオナニーしてるのよ、お兄は!!!

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