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幼馴染をイケメン探索家に奪われたので俺も探索家になろうとしたら、魔力不足で不合格でした ~最後の切り札は押入れのエロトラップダンジョン~  作者: 四方博
序章 幼馴染をイケメン探索家に、以下略

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 油断があった。慢心があった。

 魔法を手に入れて浮かれて調子に乗ってしまった。

  魔力切れによる昏倒。魔法を手に入れたばかりの探索家にはありがちな失敗だった。俺はただでさえ魔力量が少ないのだから、人一倍気を付ける必要がある。

 一歩間違えれば――というより、あのボスオナホクンGが見逃してくれなければ、死んでいた。

 どうにか這うようにしてダンジョンから生還した涼馬は、ベッドの上で一人反省会をしていた。大の字に寝転がり、ぼんやりと天井を見上げる。


 調教魔法 淫(テインム)が失敗した理由には何となく感覚で察しが付いていた。


 魔力が足りず、魔法が最後まで完成していないのだ。不完全なまま発動した結果、途中で破綻している。いくらオナホクンを弱らせたところで、これではテイムが成功するはずもない。


『もし、俺を襲ってくるような奴がいれば全員返り討ちです。探索家になっといて、掲げる看板が自分の実績じゃなくて母校の名前とかいう、情けないド三流にビビりはしませんから』

 この間、生徒会室で切った啖呵が脳裏に蘇り、涼馬はベッドの上で身悶えした。

 完全に魔法頼りの啖呵だった。

 魔法さえ使いこなすことができれば、少なくともその辺の探索家には負けない。そう思っての発言だったのだが。


 完全にイキっただけだ。


 身の程知らずにもほどがある。俺は才能がない上に、すぐ調子に乗る駄目人間。

 私は貝になりたい。


 ガチャガチャガチャ。

 不意に部屋のドアから物音がして、涼馬は飛び上がった。鍵穴のあたりで金属が擦れ合うような音が何度か続き、やがてガチャリと錠の外れる音が響いた。


「あれ? お兄、いつの間に帰ってたんだ。停学中の分際で自由に外出とかズルっ子だよ」

 扉を開けて顔を覗かせたのは麻衣だった。その手には、紙の単行本が握られている。

 見覚えのある表紙だった。

 それも当然だ。涼馬の部屋の本棚に並んでいる漫画なのだから。


 薬で身体が小さくなってしまった探偵が、数々の難事件を解決していく古い作品だ。すでに完結しているが、敵組織のボスが、まさか序盤から登場していた仲間の博士だったとは思わなかった。


 そんな物語の内容を思い返していたところで、ずきりと頭が痛んだ。

 この作品、幼馴染の恋愛成就率高すぎる……。

 涼馬は、この漫画を全巻まとめて段ボールに封印することを決心した。


「勝手に人の部屋に入るなよ。大体鍵掛かってただろ」


「お兄甘いね」

 麻衣は得意満面にそう言って、今度は一本のヘアピンをぷらぷらと揺らしてみせた。


「怪盗麻衣ちゃんにかかれば朝飯前なのだっ」


「そのうちハンググライダーで空飛び始めないだろうな」


「それ、楽しそーー!」

 目をキラキラに輝かせる麻衣とは対照的に、涼馬の心拍数は跳ね上がっていた。


 ヤバいヤバいヤバいヤバい。

 部屋に鍵さえ掛けておけば、誰も入れないし、押入れのダンジョンのことはバレない。

 そう高を括っていた。


 まさかピッキングしてまで侵入してくる馬鹿がいるとは。それもたかが漫画を借りる為だけに。しかも、この手慣れた様子。どう考えても初犯ではない。


 だからといって、下手に「絶対に入るな」なんて釘を刺すわけにもいかないよな。

 麻衣の性格を考えれば、何か秘密があると察した瞬間、喜々として侵入してくるに決まっている。


「とっとと出てけ」

 しっしと動物を追い払うように手を振った。


 麻衣をどうにか叩きだした後、虚空を眺めて一人呟く。


「新しい鍵……買うしかないか」


 頭をよぎったのは、心許ない貯金残高だった。

 鍵穴式ではまた解錠されかねない。ならば暗証番号式が良さそうだが、単純なダイヤル錠では総当たりを試されかねない。


 あれこれセキュリティを考慮すると、なかなか痛い出費になりそうだった。魔石を換金できれば、それなりにまとまった金にはなるはずなのだが……。


 魔石の買い取りを認可されているのは、探索家協会だけ。もちろん、売却するには探索家資格が必要になるわけで。


「……っていうか、魔石も隠さないとな」

 隠すべきはダンジョンの存在だけではない。部屋に積み上がった魔石を見つけられれば、それはそれで言い訳に困る。


「それにオナホも要らないよな」

 何となく拾ってきたオナホールがベッドの下に収まっているが、当然使う気にもなれない。

 考えれば考えるほど、隠さなければならないものが増えていく。


「はぁ……」

 涼馬は大きく溜息を吐いた。


 何となくこのまま横になっていると余計なことばかり考えそうな気がして、脇によけていた課題と反省文の山に取り掛かる。

 しかし、改めて正面から向き合うと、その膨大な量に辟易とする。そもそも、紙の課題など随分と久しぶりにお目にかかった。


 ロストシグナルによって通信機器が一切使用不能となった際、一時は紙媒体へ回帰する動きが広まったらしい。しかし、魔導機構の発明によって通信機器が復旧した今となっては、再びスマートフォンやタブレットが幅を利かせている。


 ちょうど、その関連の問いが見えてペンを走らせる。

 

『ロストシグナル以降、○○の影響で旧来の通信手段は使用不可となった。○○に当

 てはまる語句を答えよ』

 これは簡単だ。

 太陰フレア。


『現在使用されているスマートフォン等の通信機器類が、太陰フレアの影響を受けない理由を答えよ』


 魔導機構が組み込まれており、電波に微弱な魔力をコーティングすることで太陰フレアの影響を防いでいるから。


『問2の回答に関連する発明をした日本人探索家の名前を答えよ』

「才葉 徹(さいば とおる)」


 この問題を間違える筈がない。


 技術クラン、未知を殺す者(アンノウン・マーダー)のリーダーにして、日本に3名しかいない特級探索家のうちの1人。


 父さんが失踪する直前、最後に連絡を取っていた相手だった。


 とはいえそれ以上のことを知っているわけではない。

 一つ言えるのは教科書に載っている白衣姿の写真は実物とはかけ離れているということだ。

 父さんの葬式で一度だけ目にしたその男は、頭部を除く全身が機械仕掛けの身体になっていた。

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