ゴースティング
「悲しい絵だ……」
とある美術館にて。私は展示されていた一枚の絵を見て思った。
その絵は特徴的な白い服を着た後ろ姿の女性を描いたものだった。
雪景色の中、黒い天秤に背を向けるように女性が描かれている。誰がモデルかは分からない。
黒い天秤は傾いている。左側に。そして、左皿には赤い禁止マークが貼られるように描かれていた。
この禁止マークは何を表しているのだろう。そう、ふと考える。絵のタイトルを見る。嗚呼、そうか。禁止マークの意味が分かった。
ゴースティング。確か、オンラインゲームにおける違反行為の一つ。
相手プレイヤーの配信を見て、相手の位置を一方的に確認する。卑怯行為で禁止されている行為だったか。
だからだろう。この赤い禁止マークが垢バン。すなわち、アカウントがバンされる。つまり停止されてしまうということだと。
また、それに連なって分かったのは、後ろ姿の女性は配信者であり、背を向けることで関わらないようにしている。
そう考えてみると、この絵は本当に悲しいものだ。公式からも否定され、配信者からも否定されてしまうのだから。
特に、彼女のことが好きだった者からすれば、彼女に嫌われてしまう。恐らくは口も聞きたくないだろう。名前も呼ぶことすらも。
それほどまでにゴースティングという行為は愚かなものだ。何故なら、自分で自分の首を締めているのと同じなのだから。
この絵の天秤はもはや傾くことは無いだろう。力尽くで浮かび上がることすらできない。嫌われる行為を悪い仕方で行ったのだから当然といえる。
この絵のモデルになった彼女はどんな気持ちなのだろうか。推測することしかできないが、邪推になりかねない。ゆえに止めておこう。
悲しい絵というのは時に必要なものだが、それだけを見るべきで無い。他の絵も見なくては。
この美術館には他にも色んな絵画がある。お気に入りの絵画を見つけに行こう。
私はそう考えると、この絵「ゴースティング」を後にしていったのだったーー。




