壊れた時計
私は時計。100円均一で売られていた500円の時計だった。
今の主人は私を一年以上使ってくださった。腕時計としてではなく、懐中時計としてだが。
変わり者の使い方だと私は思う。腕時計として私は作られているのに、一度も主人の腕に着けられたことは無いのだから。しかし、使ってもらっていた以上主人のことを悪く言うことは無い。使われないまま倉庫で眠り続ける未来も私にはあったのだから。
一年以上も使われた私は、今までのように秒針を刻むことができなくなった。
主人がいくら正しい時刻に合わせても、秒針を刻めないせいで大きくずれてしまうことが多々あった。時計として、これは致命的だろう。
何せ、主人がいくら合わせても、正しい時刻を示せないばかりか、間違った時刻ばかりを示してしまう。壊れてしまっているのだ。壊れてしまえば使われることは無い。ただの置物でしかない。処分される日を刻々と感じることしか私にはできないのだ。
処分されたくないとしても、壊れてしまっている腕時計など、誰が使ってくれるだろうか。誰も使いたくないに決まっている。飾り物としての価値も私には無いのだから。
そんな私でも使いたい、飾りたい、と思ってくれるのがいるのならば、その人こそが主人以上に変わり者であるに違いない。
壊れてしまっている腕時計である私に価値を見出すなんて、真の変人でしかないのだからーー




