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墓に添える花の名は  作者: 春鏡凪/ちゃんす
金平糖
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作戦実行

「確かにこれなら見つかるかもしれないな……ネットで募金を募って手術のお金が集まったって話もあるし……」


俺はなるほどと首を頷かせながらそう言った。


「じゃあ、早速記念すべき初投稿を上げるわけだけど、明華さんの思い出を教えてくれない?出来れば家族だけの思い出」


連はパソコンに手を添えながら言った。

視線を形だけは向けているが、もちろん明華と合ってはいない。


明華はうーんと少し悩むとやっぱり最初に話すならあれかな……と声を漏らした。


「私が病院に入るってなった時、お父さんとお母さんはご馳走をたくさん用意してくれたの」


「ご馳走?これから病院に入るのにか?」


「うん、私の人生の中であんなに嬉しかったことはないかな」


「……そっか」


どうして嬉しかったのかと聞きたかったが、明華がまた切なくて寂しそうな顔をしだしたので聞こうに聞けなかった。


とりあえずそれを連に通訳するといとも簡単にタイピングしだした。

一分も立たない内に連は文章を書き上げてしまう。


「よし、じゃあ投稿っと……」


シュポという音と共に画面に現れる投稿画面。

そこにはさっきの内容とたくさんの青く光った文字が羅列していた。

はっしゅたぐ?というものだろうか?


「これを毎日、毎日やっていく。継続は力なりだよ」


あ、まずいまずい、忘れるところだった。


「連、俺実はそのサイトの使い方知らなくて……教えてもらっていいか?」


「いいよ」


連から了承をもらった俺は連にできるだけ細かく使い方を教えてもらい、あらかた使えるようになった。


「これで大丈夫?」


「あぁ、大丈夫。ありがとう」


「どういたしまして」


そう言った瞬間に連のスマホが鳴る。


「あぁ、もうそんな時間か……」


そう呟くと連は携帯を取って「今行きます」とだけ呟いて切ってしまった。


「クロマンが迎えに来たから行くね。じゃあまた近いうちに……」


「あぁ、今日はありがとう」


連はパタパタと急ぎながら速歩きに病室を出ていった。

心做しか少し病室が寂しくなる。

病室に差し込む夕日が病室の寂しさを倍増させているようだった。


心がざわつく。この時間はいつだってこんなだ。無性に不安になり、人に縋りたくなる。



ふとベッドから降りて、窓から夕日を眺める。

少し冷えた風が頬を撫でる。

ゆっくりと落ちていく夕日は全てを染めていき、そして全てを暗闇に置き去りにするのだ。

無意識に夕日に手を伸ばす。

あの場所に行きたい。

そんなことが頭に浮かぶ。

するとその手を少し透けた手が遮る。


「勝星、そっちに行っちゃだめだよ」


零は静かにそう言った。


「そっち?」


「うん、そっち。まだ行っちゃだめだよ」


「……分かった」


俺は手を引っ込める。

そっち……その意味は聞かなくても分かった。

俺が少し前まで行きたがっていた場所、いやたぶん誰だってどこかで帰りたがっている場所。

俺は少し前まであそこに早く帰りたくて仕方がなかったのに……

今は少しでもこの場所にしがみついてでも残っていたい。

そんな気持ちを作ってくれたのは連や零、そして明華もだろうか。

俺はこの短期間で随分と変わったのだ……。

友達ができて、親友もできて、生きる意欲も目標もできた。今の俺は何を感じているのだろう。

どこか温かく、じわじわとくすぐったくなる。


変化が怖い。それは身を守るための本能であるが、この変化は不思議と嫌ではなかった。


あぁ、そうか。

これが幸せという感情なのか。

どんなことをしたって手を離したくない。俺は零も連も明華もクロマンも誰一人として失いたくない。


連は未だに狙われてるし子供の俺ができることなんてクロマンができることの1割にも満たないだろう。

だけど、俺が大人になればあいつらにできることが増えるのだろうか。


いや、きっと増える。大人になれば俺の手はもっと大きくなるのだから。

決して多くはないけれど大事な人たちを包んで守れるくらいに俺はなりたい。


そう決意をすると明華から声が聞こえる。


「おーい、早速いいね付いてるぞ」


その声に振り返ると明華は嬉しそうに目を輝かせながらコメント来ないかなと声を漏らす。


今はできることを……明華を両親と会わせてやるんだ。必ず。


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