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墓に添える花の名は  作者: 春鏡凪/ちゃんす
金平糖
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未練

本人から助けを求められた。それなら俺たちはその伸ばされた手を掴むだけだ。


『それで、未練って言うのは?その様子だと零みたいに未練が分からないって訳ではないですよね』


早速本題に入る。これで未練分からないってなったらどうしよう……二人分見つけるなんてできるだろうか。


『まぁ、心当たりみたいなものはあります』


ホッ

心の底の自分が胸を撫で下ろす声が聴こえた気がした。


『それは?』


『両親のことです。実は私、死ぬ前に両親と約束してたことがあったんですけど、病気で死んでしまった今それが叶うことはなくなってしまったので謝りに行きたいんです。』


『謝りに?』


『はい』


『ちなみにご両親はどこら辺に住んでいるんですか』


『ここから車で1時間ぐらいの場所です』


1時間……

俺は今ピンピン?しているから忘れがちだろうが死を考えなければいけないほどの重症だ。

そんな体でそこまでの遠出をはたして病院が許すだろうか?

答えは99.9% NOだろう。

これまた難しい課題だ。


こっそり抜け出すとか?いやでも服がな…

まぁ、事情は置いといて


『約束ってなんですか?』


『それは……秘密です。他の人にとってはあまりにバカらしい約束です。それでも笑われたらちょっと悲しいので』



彼女の顔を見て『分かりました』とそうつぶやくしかなかった。その時の彼女の目はあまりにも切なそうに細められておりこちらまで胸を抑えたくなるほどだった。踏み入ってはいけない。そんな線がありありと目の前に現れた瞬間だった。


『ありがとうございます』


そう言って彼女はペコリと頭を下げた。

顔を上げた時、彼女はどこか遠くを見ているようだった。


『それじゃあ、どうやって伝えるかってことですが……』


『憑依とかいいんじゃない!?』


零が名案と言わんばかりに身を乗り出してくる。

憑依って……な〜……


『却下』


『えーなんで!?』


『憑依ってのはな!?一番霊にされて危険なことなんだよ!?まず、自分の体でもない体を使うのはかなり霊にとって負担になる。そしてそれは憑依された側にも霊と同じような負荷がかかる。魂が1個しか入らない器に2個詰め込もうとしたらそうなるに決まってる。その後、大体の霊はしばらくしたら体の中から弾き返される。危険なのはこれの例外だ。たまに体から抜け出さない、抜け出せない魂があるんだ。するとどうなると思う?』


『二重人格になるとか…?』


今まで黙って話を聞いてくれていた連がつぶやく。


『流石だな連、そういう例もある。器がでっかくなって二重人格になるってやつだよ。魂が2つ。体の中で共に生き続けるんだ。多少不便だろうが命にはほとんど関わらない。でもそれはかなり珍しい例だ。逆にそれが大半だったら良かったんだけどな、あと2つ最悪な例がある』


そう言って俺は人差し指をピンと立てる。


『1つ目は器の乗っ取り。

その憑依した魂が元いた魂を弾き出してその人に成り代わる。どう考えても最悪な結果の一つだ』


そして中指も続けて立てる。


『2つ目、器の崩壊。


これだけは絶対に起きてはいけないがたまに魂の器が脆くて壊れてしまうことがある。本当に珍しい例だが実際に起きていることは確かだ。歴史上で起きている突然の原因不明の死。そういうのは大体、これでやられてたりするんだよ』


『え……コワっ!?』


零が口を手で抑える。


『だから、すみませんが憑依はできません』


そう言って俺はペコっと明華さんに小さく頭を下げる。

それを見た明華さんはアワアワと手を振った。


『顔を上げてください!!?手伝ってもらってる時点ですごくありがたいんですから!!』


そうたしなめられながらも俺はどうやって病院の外に向かおうかを考えていた。


『まぁとりあえず、俺は病院から外出許可もらってくるんでちょっと待っててください』


とりあえず頼んで見る。もらってくると仮定形で言ったのはちょっとした願掛けと俺なりの気遣いだ。病気で亡くなった人なら俺が重い病気だと知れば少なからず罪悪感を覚えてしまうだろう。それを心配してのことだった。


『僕も行くよ』


そう言って連もついてくる。


『そうか?分かった。じゃあ行ってくるんで、ちょっと待っててください、零、来ないと思うがさっき言ってた陰陽師みたいなやつが来たら教えるんだぞ』


『分かった〜!』


零はフリフリと手を振りながら、気楽そうに答えた。


それを確認して俺たちは幸子さんの部屋に向かったのだった。

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