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墓に添える花の名は  作者: 春鏡凪/ちゃんす
金平糖
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黒い影

『悪霊に……されかけた?』


俺は耳を疑った。確かに普通の霊が誰かの恨み絶望などの感情が多く詰まった診察室あたりに近づけば悪霊化することはある。しかしそんな誰かに追いかけられて悪霊にされるなんて聞いたことがない。


もちろんそんなことができる方法なんて俺が知っている限りではできないはずだ。


『そんなこと本当にあるのか?ただ、ビビって勘違いしただけじゃないか?』


俺は苦し紛れにそう言う。


『ひどくないですか!?勘違いじゃないです!!確かに悪霊にされかけたのは初めてでしたけど、はっきり感じたんです。このままだと私は悪霊になるって!!

その証拠に……ほら!!』


そう言って腕を見せつけてくる明華さん。

しかし目の前にあるのは少し床が見えるほど透けた曇りのない白い腕だった。

何もないように見えるのだが……


『何もないが?』


『そんなわけ……ってあれ!?』


確かめるようにサスサスと自分の腕を擦る明華さん。しかしそこに何かが現れることはなかった。


『あれ?確かに黒ずんでたのに……』


ニュッと明華の脇から顔を覗かせる零。

キョトンとした顔をしながらじっと明華の腕を見つめている。


『本当にあったのに……』


まぁ、零が言ってきた時点で信じないつもりはないのだが、それにしても奇妙すぎる話だ。

人が霊を悪霊化させる。

そんなこと、この世の理にも人道的にも禁忌なはずだ。

霊とは言っても結局は生き物そのものの結晶の本質を捻じ曲げていることになるのだから。


それに自然に発生した悪霊は自然と消えていく。

彼らの悔やみが晴れるか魂にもエネルギーみたいなものがあってそれを悪霊として使い続けることによって何もできない状態、つまりガス欠になってこの世から消えていくか。悪霊になった行き先はそのどちらかである。その後魂がどうなっているのかは分からないが、、、。


とにかく彼らには怒る理由があるからこそ暴れるのだ。

理由もないのに悪霊にされたらそれこそおかしな話になる。


『一体誰がそんなこと……』


俺はうーんと考え込むが思い当たる考えが全く浮かばない。

まぁ、まずは、、、


『明華さん、つまり俺たちにあなたを守ってほしいってことであってますか?』


俺は彼女の意思を聞くことにした。

さっきの話を聞く限り、進んでここに来たわけではないのだろう。

彼女には迷いがあった。


『聞くんですね』


『まぁ』


彼女が俺たちを頼ってくれるのなら俺たちは協力するが、頼りたくないのなら助けない。求められていない救済なんてただのお節介だからだ。


『意外ですね。

零ちゃんに連れられて時々見るあなたは子どもたちに気持ち悪いくらいに優しくて、あなたのことただのヒーローぶってる人だと思ってました。どうせ俺に任せろとか言ってくるんだろうなって』


『それで?守ってほしいのか?俺らに』


そう俺が言うと明華さんはしばらく考え込んだ仕草を見せて急にバッと顔を上げた。


『どうかお願いします。私を助けてください。そして私を成仏させてください』


そういった彼女の少し透き通った目はまっすぐと信頼の目を勝星に向けていたのだった。

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