招かれざる客人
俺が入院してから数日立った。
俺の部屋はありがたいことに個室で結構窮屈はしていない。だが、俺がいつ死ぬのかなんてわからないから正直ソワソワしているのも事実だ。また笑いがこみ上げてくる。
するとベッドの下から幼稚な声が聞こえた。
『どうして笑ってるの?』
俺は体をビクッと奮わせた。
さっき言ったとおり、ここは個室だ。誰かの声が聞こえるなんてありえない。
もしや、ストーカー!?
ベッドの下をゆっくりと覗いてみた、、、誰もいない。
『なんだ、気のせいか』
フーと一息ついて体を起こす。
すると俺の足の上に誰かが乗っていた。
しばらく思考が止まる。
『誰?』
俺の上には白髪の女の子が乗っかっていた。
『ねぇ、どうして笑ってるの?』
俺のキョトンとした顔なんて知らないように女の子はもう一度同じ質問をした。
『え?どうしてって、、、それは、、、』
こんな小さい子に言っていいものか、俺が死ぬことを楽しみにしてるって、、、って!?
『君誰だよ!?ここ俺の部屋だぞ?勝手に入ってきちゃだめでしょ!?』
小さい子に思わず大きな声で言ってしまってハッと口を抑えるが、女の子は、怯えるどころかジッと俺を見て放さない。
『私は、何でもない。誰でもない。名前もない。私は誰なのかな?』
そう言ってフフッと笑った。
『ねぇねぇ、それより何で笑ってたの?昨日から見てたけどお兄さん、あともうちょっとで死んじゃうんだよね、悲しくないの?』
そう言うとフワッと宙に浮かび上がった。
昨日から見てた?宙を飛ぶ?
明らかに普通の人間ではない。そんなことができる存在なんて俺の知識の中では一つしか知らない。
試しに女の子に頼んで見る。
『よかったら、手を触らせてくれないか?確かめたいことがあるんだ。』
すると女の子はいたずらっ子のようにニヤッと笑った。
『お兄さん、ロリコンなの?え〜気持ち悪い〜。』
『ちげぇよ!?本当に確かめたいことがあるだけだ!?いいなら早く手を出せ!?』
少し動揺している俺を面白そうな目で見ながら宙を飛んでいる状態で手を差し出してきた。
俺はその手を掴もうとする。
スカッ
俺の手は女の子の手を掴まず空を掴む。
通り抜けたのだ。俺の手が女の子の手を。
『やっぱりか』
『何がー?』
女の子はまだ嬉しそうに笑っている。どうやらなんとなく俺が言おうとしていることがわかっているらしい。
『お前、幽霊だろ』
『だいせいかーい!!』
キャッキャと笑いながら俺の周りをぐるぐると周る。
『その様子だと、生霊じゃなさそうだな。』
『あれ?お兄さん、驚かないの?つまんなーい』
ムスッと頬を膨らませると俺の足の上に戻ってくる。
『昔から死にかけてばかりいるからな。あっち側に近いのか知らねえが、昔から見える側なんだよ。』
『じゃあ、何で私が生霊じゃないってわかったの?』
『ちゃんと自分が幽霊だって自覚してっからだよ、俺の経験上、生霊で自覚してるやつは一人もいなかった。それにお前はちゃんと会話できているのもあるな、生霊ならボーッと突っ立てるだけだし』
『そうなんだ〜、初めて知った。』
『お前、他の幽霊にあったことないのか?』
『ないよ、だからいっつも私ね、一人なの』
少し女の子の顔が暗くなる
『だから、お兄さんは私のことが見える初めての人だったの』
俺は少し目元を下げる。
そうか、この子は死んでからずっと一人だったのか。それは凄く寂しい。誰にも認識されない。俺が学校で感じていた気持ちをこの子はこの小さな体で支えているんだ。俺の口は勝手に言葉を紡いでいた。
『い、、、こ、、よ』
『え?』
霊の子はキョトンとする
『いつでも話に来いよ。俺が生きてる間は話してやらなくもない。一人は寂しいだろ?俺も話し相手がほしいって思ってたところだったんだ。』
その言葉を言った瞬間に霊の子は目を輝かせ、しばらく俺を見つめた後、涙をブワッと溢れさせた。涙がこぼれ落ちるがその下の布団にシミを作ることはない。
『おい!?何だよ急に!?』
『だって、、、、だってッ』
そう言ってしゃくりあげる霊の子を見ていると
本当に辛かったのかと感じる。
『もう、大丈夫だ』
何の保証もないその言葉を俺は無意識に呟いていた。
『うん、うん、お兄さん、、、ありがとう。』
『あぁ、どういたしまして』
俺は死ぬ前に随分な拾い物をしてしまった




