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墓に添える花の名は  作者: 春鏡凪/ちゃんす
死の部屋編
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クロマンと話す


『私の過去を話してもよろしいでしょうか?』


クロマンはコテンと首を傾げながらそう言った。


俺は無言で首を振る。

病室前の廊下でクロマンと俺は座りながら、クロマンは静かに話しだした。


『私、実は昔、人に言えないような仕事についていたことがあるんです』


『人に言えない仕事?』


『はい、平気で人を殴ったり、殺したり、、、とにかくこの世の汚いものを寄せ集めたような場所でした』


クロマンがそんなところで働いていたとは、、、あまり想像がつかない。

確かに大男で力も強そうだが、今まで見てきたクロマンの性格からして俺にとっては意外過ぎた。


『クロマンも人を殴ったり、殺したりしたのか?』


そう聞いてみるとクロマンは慌てたように首を振った。


『そんなことは断じてしてません!!

だからこそ、それが当たり前だとわかった瞬間、私はその仕事をやめようとしたんです』


『やめようと”した”?』


クロマンは眉を下げながら、頬を掻いた。


『はい、そんな職業なので簡単にやめられる訳なかったんです。せめて逃げるとか、そういうことをしなくてはいけなかったのに

考え足らずの私は当時のボスに真っ正面からやめますと言ってしまったんです。そこからが地獄でしたね。』


俺はゴクリと唾をのんだ。


『狭い部屋に閉じ込められて、毎日のように浴びせられる暴力、怒号、、、食事は出されましたがすごく不味くて腐ってるような匂いがしました。でも、お腹は空くので腹をくくって食べましたね、、、いつか出られると信じて』


そこでクロマンが黙る。


『クロマン?』


『、、れ、、なか、です』


『え?』


『出す気なんてなかったんですよ、あの人たちは』


『どういうことだ?』


『つまり、、、私は殺されかけたんです』


俺たちの間に沈黙が流れる


『ある日、私は夜中に目隠しをされた状態でどこかに連れて行かれました。そこでなにかを足につけられたかと思うと私は次の瞬間、海の中に突き落とされていました』


俺は目を見開いた。


『こんなこと聞くの失礼かもしれないけど、、、どうしてそんな状況で生きていられたんだ?たぶん、足につけられたのっておもりかなんかだろ?』


するとクロマンは苦笑した。


『私も死ぬかと思いました、、、。でも、あの時運良くおもりが外れたんです。その時必死で泳ぎました。とにかく上へ上へと、、、。でも、そこで力尽きて、、、また運良く浜辺に打ち上げられていたところを気づいたら社長、つまり坊っちゃんのお母様が社長の自宅に連れて行ってくださっていたんです』


『俺の家?病院に連れて行かなかったのか?母さんは』


『はい、ありがたいことに私の身なりを見てなんとなく察してくださったそうです。もし病院に連れて行かれていたら、下手をすればあの人たちに私が生きていることがわかってしまいますからね。本当にすごい方です。僕の姿だけでそんなに分かったなんて、、、』


母さんってそんなに観察力があったんだ。


『私はその後、社長に今まであったことを話すと新しい名前と戸籍を渡されて私を雇ってくださいました。』


『へー、、、戸籍を準備!?』


『はい?』


クロマンがキョトンと首を傾げる


『戸籍を準備って、、、それって違法じゃ!?』


私は何年ほどか監禁されていたので死んだことになってたみたいで、、、それを申請し直して取り消して、名前も変えたんです』


『何年も!?』


さっきの話がすんなり進むからせいぜい一ヶ月か二ヶ月かと思っていた、、、。


『そういう訳で私はここにいます』


そう言ってクロマンはあの優しい笑顔で笑った。

そんなことがあったのにこんなにも優しい笑顔で笑えるクロマンは本当にすごい、なんて強い人なんだろう。


『クロマン、、、俺、クロマンのこと本気で尊敬する』


するとクロマンはあわわと声が聞こえそうなほど手を前で振った。


『そんな!!滅相もないです、、、もったいないお言葉をありがとうございます!!』


少し暗いこの廊下でも分かるほど顔が真っ赤になっている。


俺はハハッと笑ってしまった。


『坊っちゃん?』


『ハハハッ!!』


クロマンを見ていると何だか心が穏やかになる。


俺は心から溢れてくる温かい何かが笑い声として出てくる。


クロマンはキョトンとしていたが、俺に釣られたのかフフフッと笑いだす。廊下に笑い声が静かにこだました。

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