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墓に添える花の名は  作者: 春鏡凪/ちゃんす
死の部屋編
35/77

俺が目を覚ますと部屋は真っ暗で夜になっていた。

いつもの病室なのに少し物寂しい。

俺は喉が乾いていることに気づき、自販機で何か買ってこようかとベッドから下りる。


『勝星、、、?』


零がヌッと壁から出てくる。心配しているような瞳をして


『零、、、どうしたんだよ、こんな夜中に』


零は幽霊と言っても他の幽霊とは違って睡眠をとる。

必要なのかはわからないが、、、とにかく、この時間に零が起きているなんておかしいのだ。


『勝星、、、起きるの待ってたの、、、すっごく怒ってる声が聞こえたから、、、勝星、、、今、怒ってる?』


怒ってる、、、、というより悔しいというか、苦しいというか、、、とにかくなんか胸が、、、霧みたいにモヤモヤしている。

こんな気持ち、、、初めてだ、、、。

いや、初めてじゃないな、、、

小さな頃に何度も何度も母さんに電話かけて、毎回出なかったあの時の気持ちに似ている。


そんな俺を見て、零は眉をハの字に下げた。


『勝星、、、すっごく寂しそう』


零の言葉にハッとする。

あ、そっか、、、。俺、寂しかったんだ。

母さんが病院からの電話に慌てもしないことに、

俺を心配してくれないことに、

小さな頃に何度か見た俺に笑いかける顔が見れないことに。


不意に涙が溢れてくる。止めようと思っても留めなく流れてくるそれを拭いながら俺の口が勝手に動き出した。


『零、、、俺寂しいよ、、、。母さんは少し無愛想なところもあったけど俺のこと、、、小さな頃は本当に大事にしてくれて、いっぱい笑いかけてくれたんだ。』


話すうちにまた涙が留めなく溢れてくる。

何でだよ、、、

この口、、、勝手に喋るなよ、、、。そんなこと思ったことないし、、、。


『でも、今じゃ母さんは俺に見向きもしない、、、俺を心配してくれない、、、顔だって少しぼやけてる。』


次第に声がしゃくり上げる。


『でも、、、(ヒック)、連が話す母さんはすごく連に優しくて、(ヒック)、連を愛してて、なら、、、俺の母さんは?って考えるとすごく胸が苦しくて空っぽになるんだ。』


こんなこと思ってないだろう?俺はこんなこと考えるようなやつじゃ、、、


『それが勝星の本音なんだね、心の声なんだね、、、。』


『俺の本音?』


『うん、勝星は今までお母さんの話が出た時、どこか何かを我慢してるような感じがしてた。でも、今は涙まで流してすごく素直な顔して言ってる。

それって勝星がやっと本音を言えるようになったってことでしょ?』


俺の心の声。そうだよ、、、小さな頃、俺は母さんが恋しくても会えない寂しさをいつの間にか抑え込むようになって、、、いつの間にかそんなことを考えていた事すら忘れてたんだ。


『勝星、、、やらなきゃいけないことあるんでしょ?』


そうだ、クロマンに謝らないと、、、俺、本音と向き合いたくない気持ちであんな怒ってたんだ。

あんなにクロマンは優しそうな顔で俺を見てくれたのに、、、

母さんが大事な人やものは大事にしたいってあんな真っ直ぐな目で言ってたのに

母さんが俺を愛してくれているか否かってことはわからないけど、俺はあんな真っ直ぐできれいな人を傷つけたかもしれないんだ。


俺は早速スマホを取り出し、電話をしようと思ったが今が夜ということを思い出し、やめる。

そして俺は忘れていたことを思い出す


『零、ありがとう』


少し照れくさいが零の方に向き直り、礼を言った。

すると零は優しい目で言った。


『どういたしまして』


そう言って零は俺の頭の方に浮かんで手を頭の上でとめた。

なんだと思っていると


『いい子いい子』


手を左右に動かして俺の頭を撫でる真似をした。


『なっなんだよ!?急に』


『えへへ』


俺の驚いた声に笑って返す。

変な感じだ。頭を撫でられるなんて何年ぶりだろう?

でも、嫌な気はしなかった。どこか懐かしく、嬉しいとまで感じてしまう俺はおかしいのだろうか。

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