十一章・5
「そ、それでですね! クリームがすっごく乗っかっていてですね! でも食べきれちゃいましたよ!」
「そうか。それはよかったな」
美弥子は今日一日、一咲子と遊んだことを、大げさすぎる身振り手振りを使って俺に説明してくれた。
「楽しかったか?」
「はい!」
「そうかよ。一咲子、ありがとな」
「別に。あたしも楽しかったし」
一咲子に礼を言うと、そっけない返事が返ってきた。きっと照れているのだ。そうに違いない。決して嫌われているわけではない。と思う。ちょっとわからない。
「ところでつっきー、用事って? もう済んだのですか?」
「ん、まあ、ちょっとな。もう済んだ」
「ふーん、そうですか」
「そんなことより、明日の準備をしておけよ。母さんと一咲子にも手伝ってもらえ」
泊まりに行く女子が何を持っていくかなんて、俺は知らない。
「わかりました。明日、楽しみですね」
「そうだな」
「お兄ちゃん、どこまで行くの?」
「昔、一咲子はまだ小さかったから覚えていないだろうけど、家族全員で温泉旅行に行ったことがあるんだ。そこに行くことにした。電話で予約もした」
ちょうど明日、一番いい部屋が開いているということで、俺はすぐに予約した。
「あら、あそこに行くことにしたの? わたし覚えているわ。とてもいいところよ」
洗い物を終えた母さんが、そう言いながらエプロンを外して美弥子の横に座った。
「たしか一泊するのよね?」
「ああ。せっかくだしな」
「変なことしたら、あたしお兄ちゃんのこと絶対許さないから。わかった?」
「しねえよ。するかよ。わかったよ」
「お母様、一咲子さん、あの、明日の用意を手伝っていただけませんか?」
「いいわよ」
「うん。あ、そうだ。今日買ってきた服出さないと」
一咲子はそう言ってパンパンに膨らんだ大きな袋を抱えて持ってきた。
俺がここにいても、できることはなさそうだ。
俺はそう思い、静かに自分の部屋に行った。
部屋に入った俺は、机の上に目をやった。
そこには、今日買ってきて、明日使うものが置いてある。
今日の用事と言うのは、これを買いに行ったことだ。
初めて買うものだから、結構迷ったし緊張もした。
迷いに迷って、なんとか納得いくものを選ぶことができた。
俺はそれを手に取って眺めた。
そして目を閉じると、それを胸に抱いた。
これを俺は明日、美弥子に渡す。
喜んでくれるかわからない。
困らせてしまうかもしれない。
でも、もう決めたことだから。




