その二十三
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遠い昔を旅する、私は大好きです。遠い昔見たものを訪ねて行く旅、遠い昔触れたものを探しに行く旅、私は子供にかえってしまいます。心は非常に無防備な状態になります。そしてどきどきします。それが其処に今も猶在ったとしても私の生活の状況に何らかの直接的な影響がある訳でもないのに。
全ては私の側でもっている『期待』です。当人である私にもその正体がよく判らない期待です。それが私に在るが故にそういう旅は私の精神に深く作用し、それまで絶対に出来ないと思っていた事を平然とさせる様になるのです。何かが向こうからやって来るのではありません。私が私のままで、私の中の何かが掘り起こされるのです。それに拠って私は何らの抵抗も無く、寧ろしばしば自分から望んで自然に変わる事が出来るのです。
「この旅は、私に何をくれるのだろうか」
その『貰うもの』は私の中で斯く繋がっています。だから私が興奮する訳ですね。私にはそれは大きな事件です。興奮するに十分に値する。
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「今、御前は悩み苦しんでいるな。だが多分それは御前の一生で最も大きく困難な問題ではないぞ。真面目に生きるというのなら人間の人生の登攀は年齢が嵩むに従って急峻になるのだ。だからその時にこそ御前は身を捩られる様な苦悩の中に置かれる。しかもそれでなお冷静で最善の判断を下さねばならん。その事を思えば、まだ若い御前は今斯んなところでこの程度の問題で身動き出来なくなっていてはいかんのだ。踏ん張って、下腹に力を込めて、無理矢理に冷静になって、今の問題に落ち着いて対処しろ。それでなくては到底この先の道を往く事は出来ん。ここよりも先に進んで御前自身の納得を得る事は出来ん。分かるな」
私なら斯んな言葉が最も私を励ますでしょう。現下目前の苦しみに呻く中で。生きる事はまだまだ、まだまだ続く、だからここでへたり込む事は出来ない、ここで死んでも可いとは自身に答えてやる事は出来ない。自分を励ます言葉、それは矢張自分の使命生きる目的を思い出させる言葉でしょう。
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