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その十八

6917

 お金に余裕の無い人の苦労は他人に理解してもらい易いです。分かり易いからです。失恋もそうだと思います。ところが人生の意義に迷い生きる目的を見出せない苦しみに就いては、私の経験では多くの場合他人は理解しないかさもなくば冷淡でした。

「別に、喰うに困っている訳ではなかろう」

「そこまで深く考えなくてもいいじゃないか」

「多分、君は今、体調が優れないんだよ。十分睡眠をとる事を勧める」

 全部違います。これでは理解してくれと願う方が愚かな気がしてくる、そんな返答ばかりでした。しかし若き日の私はその事から知ったのです。他人には通じない、私の本心は人には通じないのだ、と。そして現在の年齢の私はもう一つの事も知っています。すなわちこの、他人には通じない、私の本心は人には通じないのだという自覚をもっている人間は存外多いのだと。それは私だけではなかったのだという事を。まさかこの問題が()んな風に遷移してくるとは思いませんでした。私はまだ生きるべきなのでしょうね。


6918

屹度(きっと)未来には希望が広がっていますよ。だから元気を出して」

 私なら人をそうやって励ます事はしません。そう言ってあげたい気持ちはありますが、また事実そうなる可能性だって否定しませんが、それでもそれを言われて元気を出す人というのがどうしても『浅い』と思うからです。人が生きる力を奮い立たせ、何があるか何がやって来るか真実に分かったものではない未来に向けて歩を進める力は、未来において自分にやって来る福利やその可能性であってはなりません。そうではなく現時点に於いて、今直ちに、自分が為すべき果たすべき使命に拠って確立されなければならぬものだからです。

 その力に拠って立ち上がる時、先に何が来ようが関係はありません。しなければならない事があるから、そしてその使命を自分が心から納得して受け容れる事が出来るから、だからまだ生きるという意志を発揮出来るのです。これは厳しいと謂うか無情の様に響いて、その実本当の意味で『優しい』のです。嘘が無いからです。力を失っている時にこの覚悟をする事は困難です。しかし何が最も善いものかと問われれば、矢張私は()う答えざるを得ません。


6919

 私は愛情に拠って生かされてきました。この事は本当にそう思います。それは私の生きる動力そのものでした。そしてその愛情を受けた私には使命が生まれました。その使命が弱い時の私を励まします。

「お前には、(ないがし)ろに出来ない役目がある。それを果たすのだ。それが必ず御前の、最も大きな幸いとなる」

と。

 それ無しにどうしてこの私が今まで生きてくる事が出来たでしょう。世の中の様々な楽しみが束になってかかって来たとしても、そんなものはこの私に私が私の人生を絶望せずに生きる為の如何なる材料も提供してくれはしなかったでしょう。『若しやこれなるか』と初めには夢中になっても、直ぐに飽いて次を探し求めていたでしょう。その刹那的な根無し草の営みの連続が私の人生となったでしょう。私は何処(どこ)にも辿り着かず、否、抑々(そもそも)自分が立っている場所から一歩も動く事が出来ずに一生を終わったと思います。私は心の底から自分の命を呪ったに違いありません。

 何が自分を今生かしているのか。その事に深く想いを致して下さい。全て根源的な迷いはこれを知らぬ事から生まれてくるからです。


6920

 自分の最も大切なものは、如何なる時であってもそれが最も大切なものであるに違いない。火急の、命の危険が迫る時でも、それでも依然としてそれが一番大切なものであるに違いない。切迫する深刻な危機に臨んでそれが別の何かに入れ替わってしまう事などない、自分の立場が変わったらそれに応じて変遷するなどという事はあり得ない。私はそんな風に思っています。思うと謂うか、それを私の人生で証明する事が私の最大の課題であると感じています。

 その事によって、それが本当にそうなのかそうでないのかによって、私の人生の何も変わらないと言う人も居るでしょう。そういう欲求を全く感じた事の無い人からすればそうでしょう。しかし私の人生です。私が大切だと思う事が大切なのであって、違う立場など私には何の関係もありません。この個別性、否、孤独が大切なのです。それを『自分自身をもっている』と謂うのだと私は思っています。

 ブログは毎日更新しています。

https://gaho.hatenadiary.com/

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