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その十七

6913

 他人からの評価は切り離し、自分を貫いて生きる事が出来るかどうかだけを念頭に置いて下さい。真実に壊れぬものとはそういうものです。それは自己の卑怯や怠惰によってのみ壊れ、腐り、台無しになりますが、他人に認められ賞賛されない事によってはびくともしません。この事は非常に大切な事です。

 他人に迎合する事が目標になった時、その人の人生は失われます。他人の歓心を買う事を課題として受け容れた時、その人固有の価値観は封じられます。その人の歴史もその時点で停止します。自己を発揮する事を意識的に封じているからです。自分の人生にそんなものを近付けてはいけません。人の()く、生きる限り先へと続く一本道は、他のものに拠って邪魔されてはなりません。それを邪魔するのはただ自身の不純で()からざる心のみであるべきです。


6914

 間違ったものを目指していると生活が(きし)み始めます。『何かがおかしい』、そんな程度のものではありません。明らかに道から外れているという淋しさを感じます。次第に異様な感じがしてきます。そして程無くそれは否定しようにも出来ない程に明確な実感となります。

「これは、おかしい。明らかにおかしい。この先は私が進むべき道ではない。進んではいけない」

 その感覚に拠って自分が行くべき先を『選んで』下さい。そういう感覚があれば直ちに元の位置にまで引き返すのです。そういう感覚、勘頼りの舵取りは不安ですか。私に言わせればこれは理知的理論的に『計算』された計画などよりずっと信頼出来ますよ。


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 人間性に優先する、それを押し退けて『私こそ、私こそ最前列に相応しい』と出張って来るもの、そういうものが人間も世界をも毒するのです。科学もそうですし、論理もそうです。政治も経済も同じ。これらは全て、人間性に奉仕すべきものではありませんか。本来人間が人間性を発揮する時に道具として用いるべきものではありませんか。そんなものを第一に考えるから先が見えなくなるのです。

 私が人間から外れようとする時に私の腕を掴んで、否、背後から私を抱き締めて人間に留めてくれるもの。それが正に人間性です。私はこれを追う事に今まで後悔を感じた事はありません。疲れた事さえもです。


6916

 昭和を愛するテーマパーク。何処(どこ)かに目立たず、如何にも在りそうですね。そして少数ながら継続して入場者を維持出来そうな気がします。実際、ネットでそういうものをちらほら見ます。そしてそういう場所には昭和の時代に子供が遊んだ遊具や見慣れた看板、ポスター、そして懐かしいお菓子を売っていたりします。そのタイムスリップを今や中高年になった人間が懐かしく楽しむという訳ですね。私も近くに在れば入ってしまうかも知れません。実は私はそういう雰囲気には弱いのです。けれども、それでもその施設に夢中になってしまう事はないと思います。暫くすると私でも飽きると思います。それは昔のままで自然に残存しているのではなく客寄せ用に意図的に設計され意匠されたものだからです。それは昔の生活と文化の『展示』です。昔の生活と文化がそのままに保たれているものではありません。何より其処(そこ)に人間が生活の営みを続けていません。悪く謂うならばそれは外観だけ輪郭だけで内実血肉がすっぽりと抜け落ちています。

 これに対して、街中、主に裏通りなどに残る昔の風情は本物です。其処(そこ)には非常に地味に四十年五十年前の空気がそのままに残されています。家は木造のままです。通りは狭くろくろく陽の光が当たりません。(さすが)に通りに放り出してある器具類は現代か少し前の物ですが、何と謂うか、その辺り一帯が全体として昔を保っています。私はそういうものに心を奪われます。何故か奥襟を掴まれて引き摺り回されるのです。何が私にそんな強い作用を及ぼすのかは知りません。けれども現にその力はあって、私をして暫くの間時間を、場所を、そして現在の私の立場を忘れさせるのです。本当に夢の中の様です。

 私は好きにお金をつかっても()い立場の人間ではありません。そりゃ働いているのですから板チョコ一枚程度買う事には不自由しませんが、思い立って何万円などという支出の出来る身分ではありません。だから私は一銭のお金もつかわずに自分の心を慰める手法をしばしば思い付き、またそれをこの年齢に至るまで重ねてきました。古い裏通りを歩く楽しみもその一つです。有力な一つです。私には現在の生活に沿った、必要でしかも可能な楽しみがいつも与えられます。私を大金を投じないと楽しむ事の出来ない馬鹿者と一緒にしないでもらいたいと思います。いや、本当に。

 ブログは毎日更新しています。

https://gaho.hatenadiary.com/

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