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笑顔と恋と ※BLです※  作者: 舘城凛


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「じゃあ、健太。また明日な」

「はい。さようなら」


 十八時五分前に、セラちゃんのお母さんが迎えに来た。弟の隼人君も一緒だ。隼人君はお母さんの血を多く受け継いだのか、セラちゃんとは違って黒髪だった。


 十八時を五分ほど過ぎて、健太は迎えに来たお父さんと一緒に凱津駅の方へ行く。健太はどうやら少し前を歩いていたセラちゃんの家族に追いついたらしい。セラちゃんの隣に並んでいるのが見えた。


「かわいいなあ、もう」


 健太の微笑ましい様子を見て、思わずにやけた。姿が確認できなくなってから学童保育所に戻る。

 マットと椅子を倉庫にしまって、鍵を職員室に返しに行った。


「あれ? 今日は残業ですか」


 職員室に戻ると、いつも十八時には帰宅している女性保育士三名がいた。三人とも、折り紙で花や鶴を折っている。手前に葵ノ本さんがいて、机の上には立体的な何かがあった。

 黄色い体に長い首。たぶん、キリンだ。


「葵ノ本さん、器用ですね。そんなの作れるんですか」

「友達に得意な子がいてね。教えてもらったんだ」


 葵ノ本さんは茶色いペンでキリンの柄を描いた。


「朝海君、仕事は終わったのよね?」

「あ、はい。健太もセラちゃんも帰りました」

「そ。じゃぁこれから飲みに行かない?」

「飲み会ですか?」

「そう。朝海君の歓迎会をしようと思って。この後、何か予定はある?」

「いえ。何もないです」

「じゃぁ、決まりね。十分後に門の前に集合。良いわね?」


 俺が了承の返事をするよりも早く、葛城さんは職員室を出て行く。俺の目の前を通る瞬間に見た葛城さんの顔は、例えようのない真剣な表情だった。


「……葛城さんがすごい顔をしていたような気がするんですが、気のせいですか?」

「気のせいじゃないよー。飲み会だからね」

「はあ……」


 葛城さんが立ち去った後も落ち着いて作業をしていた葵ノ本さんは、いつも通りで問題ないといった様子を見せた。

 折り紙を引き出しにしまうと、俺の腕を引いて職員室を出る。


「あの、イズミさんは歓迎会に出てくれるんですか?」

「あ」


 裏口から出て行こうとした葵ノ本さんを止めると、彼女は忘れていたというような顔をした。


「ごめん、いつ誘ってもダメだったからうっかりしていたよ。今日は悠真君もいることだし、もしかしたら来るかもしれないね」

「じゃあ俺が声をかけてみるので、葵ノ本さん達は先に外に行っていてください」

「了解。よろしくね」


 葵ノ本さんは桜ヶ丘さんと一緒に裏口から出て行く。

 俺は調理室を覗き、イズミさんがいることを確認した。


「イズミさん。これから飲み会があるんですが、一緒にどうですか?」

「断る」


 うう、素っ気ない。


 イズミさんは俺の方を見ず、鍋に向かったまま。その様子からしつこく誘っても駄目だと思って、裏口から外へ出る。そして自室に戻って財布を持ち、門の前に行った。

 すでに集合していた三名は、何か楽しそうな話をしているみたいだ。三人とも笑顔で、特に桜ヶ丘さんんが目を輝かせているように見える。


「すみません、お待たせしました」


 駆け寄ると、三人は揃って顔を向ける。その三人のうち、一人だけ雰囲気ががらりと変わっていた。


「葛城さん……」

「ダメだよ、悠真君。思ったことがあっても指摘しちゃダメ」


 勤務時はズボンとトレーナーという動きやすい格好をしていた葛城さん。でも今は、胸元が大きく開いた服とタイトなスカートを身につけていた。じっと顔を見ると、お化粧をしていることもわかる。

 単なる飲み会になぜそんなに気合を入れるのかと疑問を持つのは当然だ。でも葵ノ本さんから止められ、とりあえず口をつぐむ。


「……これから行く場所って、ちょっとオシャレをしないと入れないところなんですか?」

「そんなことないよ。あたしも夏樹さんも、さっきまでと変わらないでしょ?」


 葛城さん行きつけの居酒屋に向かう途中、気になって聞いてしまった。葛城さんは少し前を歩いている。


「じゃあ、なんで……」

「京香さんは、ちょっと素直になれないことがあってね……服変えて化粧までして気合を入れてるんだから、さっさとまとまっちゃえば良いのに」

「まとまる?」

「居酒屋に着いたらたぶん、すぐにわかるよ」


 葵ノ本さんは解答を渋ると、前を歩いていた葛城さんのもとへ走って行く。桜ヶ丘さんは、二人のすぐ後ろを歩いていた。一人で歩かせるのは悪いと思い、隣に並ぶ。


「あの、改めてよろしくお願いします」

「はいっ、よろしくお願いします」


 声をかけると、桜ヶ丘さんは少し驚いてから礼儀正しくお辞儀をしてくれる。俺もつられてお辞儀をしていると、前を歩いていた二人から早く来るように呼ばれた。






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