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笑顔と恋と ※BLです※  作者: 舘城凛


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続、ケンカ中……。

ここで痛めのケンカは終わるので、こ、このまま続きを読んでいただければ幸いです(-_-;)


「……朝海。さっき先輩が言っていたことは本当なのか」

「あ、や、えっと……」


 思いがけない形で自分の気持ちがばれてしまい、焦る。でも質問の答えを聞きたそうにしている和泉さんを見て、俺は決心した。

 深呼吸をして覚悟を決めると、和泉さんと向き合う。


「俺は和泉さんが好きです。だから」


 交際を申し込もうとすると、絶妙なタイミングで貝崎が間に入ってきた。貝崎は和泉さんに背を向け、俺を睨む。睨まれているけど、貝崎の顔からは悲壮な覚悟が感じられる。


「達哉が好きだ。おれだって諦めたくない。でも無理だ。だからせめて、こいつが達哉を幸せにできるかどうか、試してやる。達哉、邪魔すんなよ」

「先輩、止めてください」


 和泉さんの声を聞かず、貝崎はゆっくりと俺に近づいてきた。貝崎が腕を振り上げ、下ろそうとする。


「先輩!」


 貝崎の腕を、和泉さんが両手で掴んでいた。何があっても離すまいと、貝崎の腕を抱きしめるようにしている。貝崎は、腕を下ろす。


「達哉、離せ」

「離しません!」

「離せよ! ……お前に、おれの行動を止める権利なんてない」


 貝崎は腕を振り払い、和泉さんを離れさせる。和泉さんを拒絶するなんてどんな心境の変化なんだろう。和泉さんも、貝崎の行動に混乱しているみたいだ。貝崎から少し離れて様子を窺っている。


「達哉。おれは、お前に頼られて嬉しかったんだよ。でも、お前はおれを頼ってきたんじゃない。現実から逃げる場所として利用しただけだ」

「違います!」

「違わないだろ! 好きな相手に挑まず離れて、逃げる先を捜していただけだ。おれはそんな都合の良い人間じゃない。そんな人間でいたくない」

「……ごめんなさい」


 和泉さんは眉を下げて肩を落とす。和泉さんが後ろに下がったことを確認した貝崎は、俺に近づいてくる。そして、俺を見据えた。

 貝崎が体を落とし、突っ込んでくる。その攻撃をかわし、俺は貝崎の懐に入り込む。


「殴るな!」


 貝崎の腹に拳を入れようとした時に、和泉さんが止めた。だから俺は貝崎の前から横に跳び、和泉さんに背を向けるような形で立つ。そこへ貝崎が殴りかかってくる。


「っ」


 右頬に貝崎の攻撃を受ける。でも、足に力を入れて踏みとどまった。

 続けて貝崎が腹に拳を入れてくる。一瞬息が詰まったけど、殴り飛ばされない。

 左頬を殴られ、俺は少しよろけて後ろに下がってしまった。背中に手が置かれる。和泉さんが支えてくれたみたいだ。


「悠真……」


 心配する和泉さんに名前を呼ばれ、ちょっとときめいた。殴られた痛みもなくなる。


「和泉さん。好きです」

「こ、こんな時に言うことじゃ……」

「こんな時だから言うんですよ」


 貝崎が近づいてきて、腹に軽い攻撃をしてきた。足に力が入らなくて倒れそうになる。

 でも、和泉さんが支えてくれた。たぶん、和泉さんには相当負荷がかかってる。でも、和泉さんが俺を見ているとわかるから嬉しい。

 和泉さんの表情は硬い。眉間にシワが寄っている。


「そんな顔しないでください。笑ってくださいよ」

「こんな時に笑えるか」

「俺、和泉さんの笑顔が一番好きなんです。だから笑ってください」


 お願いすると、和泉さんは笑ってくれた。練習していた時のような笑顔だったけど、それも和泉さんの笑顔だ。


「はは。やった。和泉さんの笑顔ゲットー。これでもう少し頑張れます」


 和泉さんにお礼を言いながら立ち上がり、少し離れた場所にいた貝崎に向かっていった。


「悠真」

「大丈夫です。殴りません。見ていてください」


 言い終えると、貝崎が右腕を振り上げた。殴り飛ばされたけど、着地する瞬間に手をついて体にくる衝撃を和らげる。それでも勢いを削げず、ごろごろと転がった。立ち上がるよりも早く貝崎がやってきて、体の上に跨がられてしまう。左、右、左と頬を殴られる。


「どうして抵抗しないんだ!」


 和泉さんの悲痛な声が耳に届く。

 このままでは和泉さんが駆け寄ってきてしまうと思い、俺は自分の顔の前で腕を交差する。なるべく攻撃を受けていないように見せないといけない。

 腕を少しずらして貝崎を観察する。殴りかかってくる時はいつも右左の順番で、右の方が強い。でもその力も弱くなってきている。

 たぶん、そろそろチャンスが来るはずだ。


「和泉さんを電車の中で見かけて、一目惚れをしました。俺はその時から、和泉さんに夢中でした」


 貝崎が大きく左手を振り上げた。殴られた腕は少し痺れたけど、恐れるほどじゃない。貝崎が右手を上げる、その瞬間を待っていた!

 俺は貝崎の胸をついて立ち上がり、よろけている貝崎の顎に拳を叩き込む。貝崎はそのまま倒れ、起き上がらなかった。

 勝った、と思っていると、和泉さんが駆け寄ってくる。


「殴らないって言ったじゃないか!」

「殴っていませんよ」

「だって今……」

「ジョッキーが気に入らなくて馬が暴れただけです」

「ジョッキー? 馬? どういうことだ。わかるように説明しろ」

「わかりました。えっと、貝崎は俺を跨いで殴ってきました」

「ああ、馬乗りになって悠真を……あ」

「そうです。俺は馬、貝崎はジョッキー。つまり騎手です。馬に嫌われた騎手が落馬した。そして嫌いな騎手から早く離れようとして、馬の後ろ足が貝崎の顎にヒットした」

「でも、グーで殴って……」

「細かいことは気にしないでください。それよりも、貝崎の手当てをしないと」

「そうだな。移動して……悠真、運転できるか」

「できません。和泉さんは?」

「オレもできない」


 どっちも免許なし。そこで考えられるのはじいちゃんを呼んで頼む方法がある。でも朝海園にはたぶん、葵ノ本さんがいる。ジンジンと熱くなっている殴られた顔を見せるのは良くないと思う。じいちゃんに連絡をしなければ、葵ノ本さんは部屋に帰るはず。というより、じいちゃんが帰るように言ってくれると思う。


「和泉さん。携帯って持ってます?」

「ああ」

「じゃあ、救急車に来てもらいましょう」

「わかった」


 葵ノ本さんの話題を和泉さんにしたくなくて勝手に判断したけど、和泉さんは何の疑問もなく救急車を呼んでくれた。






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