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笑顔と恋と ※BLです※  作者: 舘城凛


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「お体を壊さないように気をつけてくださいね」


 休日勤め初日。

 じいちゃんと一緒に保育園でセラちゃんの家族を迎えた。ご迷惑をおかけします、と何度も頭を下げたセラちゃんのお母さんにじいちゃんが声をかけた。

 そして見送りを終えると、じいちゃんから早速今日のことが教えられる。


「夕方四時頃に有沢さんが来るから、それまで二人の世話を頼む」

「了解」

「わかりました」

「わしはこれから外せない用事があるから行くが、くれぐれもよろしく頼むぞ」

「わかってるよ」


 じいちゃんは心配そうな顔を見せて、腕時計を見ると慌てて保育園を出て行った。


「セラちゃん。今日は何かしたいことはある?」


 セラちゃんに話しかける和泉さんを見て、俺は凝視しないように目をそらす。でもすぐに視線を和泉さんに戻してしまう。

 耳にかける少し長めの横髪。肌の白さと頭一つ分低い身長差。セラちゃんや隼人君と話す声音も、昨日までと何も変わらない。

 それなのに、俺には少し、和泉さんが輝いているように見えてしまう。和泉さんの周囲だけ、特別な何かがあるんじゃないかと考えてしまう。


「おい、どうした」

「いえ、何でもありません」


 じっと見ていたせいで、和泉さんに注意されてしまった。なるべく慌てずに返事をして、深呼吸をする。


「今セラちゃん達と話していたんだが、保育園を使うんじゃなくてオレの部屋に行かないか」

「へ、部屋!?」

「どうした」


 深呼吸をしてせっかく心を落ちつかせたのに、素っ頓狂な声を出してしまった。和泉さんからは不審げな目を向けられる。


「な、何でもありませんよ? 部屋でしたよね。ええそうですね。行きましょう。今すぐに行きましょう」


 外に出ようとした俺を、セラちゃんが止めた。服の裾を掴まれている。


「セラちゃんは本を読みたいそうだ。だから、学童保育所から本を持っていく」

「わかりました。じゃあ、セラちゃん。行こうか」


 セラちゃんをつれて移動しようとすると、今度は隼人君に止められた。正確に言えば、セラちゃんの腕を抱いて離さない隼人君が、その場で踏みとどまっている状態だ。


「じゃあ隼人君も一緒に行こうか」


 隼人君を抱き上げると嫌がられた。足をじたばたと動かし、腹に蹴りが入る。


「いたっ、わかった。下ろすよ」


 隼人君を腕から下ろすと、すぐにセラちゃんに抱きついた。どうやら隼人君は、セラちゃんのことが大好きらしい。


「隼人君をセラちゃんから離すのは難しいと思うぞ」

「そうですね」


 母子家庭であれば、セラちゃんのお母さんが言えにいることは少ない。そうなれば、必然的にセラちゃんと隼人君の二人で過ごす時間が長くなる。

 セラちゃんと一緒にいないと不安に思うのは無理もない。ましてや、今日は休日だ。いつも一緒なのに離されたくないはず。


「隼人君。じゃあ一緒に行こうか」


 隼人君が頷く。

 四人で学童保育所へ行き、セラちゃんが読みたいハードカバーの本を取る。

 用事が済み、和泉さんの部屋へ行こうとした。


「どうした? 隼人君」


 渡り廊下から裏口へ向かおうとした俺の服を引っ張り、隼人君がさくら組の教室へ入っていく。そしてそこから桃太郎の絵本を取った。


「よし。じゃあ行こうか」


 和泉さんを先頭に保育園を出る。そして和泉さんの部屋に着く。


「セラちゃんと隼人君。そっちのお部屋で本を読んでてくれるかな」


 和泉さんが寝室を指しながら言う。そして二人が頷いたのを確認すると、俺に案内するように頼んだ。


 セラちゃんと隼人君を寝室へ連れて行くと、ベッドの前には柔らかそうなマットが敷かれていた。準備が良いと思いながら、二人をベッドの前につれていく。


 セラちゃんは早速、マットの上に座って本を読み始める。隼人君もセラちゃんの隣に座り、姉をじっと見つめた。でもセラちゃんは読書に夢中で、隼人君のことなんて気にもかけない。

 べったりなのは隼人君だけなのだと思っていると、セラちゃんは本に栞を挟んだ。桃太郎を読んでもらえると思った隼人君は喜び、笑顔を見せる。でもセラちゃんはベッドから離れて壁際に移動してしまう。


「隼人君。俺でよければ読んであげるよ」


 構ってくれないセラちゃんを見て悲しそうな顔をしている隼人君が、かわいそうだった。

 隼人君は、セラちゃんに読んでもらうことを諦めたらしい。肩を落として俺のところにやってきた。


「じゃあ隼人君。俺の足の上に乗って」


 胡座あぐらをし、その上に隼人君を乗せる。一緒に桃太郎を読めるような体勢にした。

 そして、一ページ目から読み始める。


「昔むかし、あるところにおじいさんとおばあさんがいました」






明日以降、夜の時間帯に投稿していくこととします。

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