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笑顔と恋と ※BLです※  作者: 舘城凛


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 翌日。今日も和泉さんの手伝いをすると思っていたけど、じいちゃんからはゆり組を手伝うように言われた。


「おはよーございまーす」

「おはよう、良哉」

「おはようございます」

「おはよう、俊介」


 登園時間。良哉と俊介が仲良くやってきた。二人をつれて教室まで行くと、俺の周りにはすぐに人だかりができる。


「ゆうませんせー。のせてー」


 俺の足下でぴょんぴょんと跳ねる、ショートカットの女の子。優香ゆかちゃんはキラキラとした目を俺に向ける。


「なんだよ、ゆか。のせてもらうのはおれがさきだぞ」

「なにいっているんですか。ぼくがさきですよ」

「あー、待て待て。ケンカはなし。それと、今日は肩車じゃなくてお馬さんな」

「えー、そんなのつまんねーよ。どうしてのせてくれねーの?」

「肩車だと、全員終わるまで時間がかかっちゃうだろ? それに、もし俺がこけたら怪我を負わせちゃう。その代わり、お馬さんだったら長くできるから」


 俺の言葉に、三人のうち特に良哉が不満そうな顔をする。そんな顔を視ていられなくて、俺は膝と手を床につけた。


「ほら、先生背が高いから、二人ぐらいだったらいっぺんに乗せられるぞ」


 乗りやすいように姿勢を低くする。すると優香ちゃんが乗り、俊介が乗ってくれた。


「しゅっぱーつ!」


 元気な優香ちゃんの掛け声で動き始める。置かれているテーブルを避けながら、ゆり組の教室内を歩く。

 とことこと、二人が乗っている背中に神経を集中させながら手足を動かす。


「たのしいね、しゅんすけくん」

「そうですね。これもなかなかたのしめます」


 ゆっくり動いたり、時々少し速くしたりして歩いてみたら、どうやら気に入ってくれたみたいだ。上から楽しそうな声が聞こえた。


「おれものる!」

「おーし、良哉も乗るか。待ってろ、今そっちに行くから」


 良哉がいる入口付近へ行こうと向きを変える。しかし良哉から近づいてきてくれた。


「ちょっと待ってろ。今低くなるから、二人のどっちかと交代して……」

「ゆか、しゅんすけ。まえにつめろ」


 三人ぐらいは大丈夫だろうと思って、良哉が乗るのを待つ。体を低くすると、良哉以外に何人かが乗ろうとしてきた。


「あー、待て待て。そんなに乗ったら潰れ……る!」


 注意するよりも早く園児が集まり、支えきれなくなった。床に強打した顎が痛い。


「ゆうませんせー、なさけねーな」


 潰れる前に避難していたらしい良哉が、隣に来て言った。


「そうだね、ごめん。次からは二人ずつでお願いします」

「よわっちぃゆうませんせーのために、そうしてあげるよ」


 良哉に礼を言っていると、葵ノ本さんが数人の園児を連れてきた。


「はーい、みんな揃ったのでこれからおやつタイムになりまーす。みんなで手を洗いに行こう」

「はーい」


 教室に入ってきた葵ノ本さんの先導のもと、ゆり組の園児達は手を洗いに行く。


「きちんと石鹸を泡立てて、手首まで洗うんだぞー」

「はーい」


 元気な返事が返ってくる。俺は腰を叩きながら、園児達を見守った。




 ゆり組がお昼寝の時間になり、いつものように葵ノ本さんが先に昼食を取りに行った。


「悠真君、ありがと。お昼、行ってきて」


 いつもより十分遅い、四十分後に葵ノ本さんが戻ってくる。俺は彼女と入れ替わるように職員室へ向かった。


「先輩もしつこいですね。何度来ていただいても、先輩と付き合うことは絶対にありません」


 職員室の扉を開けようとしたら、中から苛立った和泉さんの声が聞こえてきた。すぐに扉を開けると、和泉さんの前には青いジャージを着た貝崎がいた。二人の他には誰もいない。


 和泉さんに近づく貝崎。壁際に追い込まれている和泉さんは逃げ場がないみたいだ。迫られている和泉さんは、嫌そうな顔をしている。


 和泉さんと貝崎の間に入った。すると和泉さんは、何も言わずに職員室から出て行ってしまう。


「和泉さん……」


 ……何か一言言ってくれても良いと思うんだけど。


「あーあ。お前のせいで楽しい逢瀬が終わっちまった」


 貝崎は不満を隠そうともしない。

 貝崎を睨むと、鼻で笑われる。


「なんだよ、おれに何か用事があんのか」

「和泉さんが困るってわかっていて、何しに来たんだよ」

「おーこわ。おっかないねえ」


 ケンカ腰になったからか、貝崎は両手を上げて怖がるような仕草をする。でも実際は俺を馬鹿にしたような口調だった。だから貝崎に詰め寄る。


「怖いな-。そんなに力むなよ」


 貝崎は軽い身のこなしで俺と距離を置く。腰に手を当て俺を見て、ここに来た目的を話す。


「教え子がここの――正確に言えば、隣の学童保育所で世話になってるって聞いたから、挨拶しに来ただけだ」

「教え子? あんた、教師なのか」

「そ。おれはすぐそこの白山小学校で体育を教えている、真面目な小学校教諭」


 白山小学校は、朝海園から歩いて十五分くらいの所にある。健太やセラちゃんも通っている場所だ。


「授業が終わってから鶴岡にここのことを聞いてな。だったら挨拶をしようと思って学校を抜けてきた」


 鶴岡は、健太の名字だ。


「それで来てみたら達哉がいたから、ひよりちゃんに呼んでもらった」


 もう葵ノ本さんと仲良くなったらしい。教室に戻ってくるのが少し遅かったのは、こいつと話していたからなのかと納得する。


「まさか達哉がこんな近くで働いているとは思わなかったよ。おれにとっては好都合だ」

「どういうことだ」

「そんなこと、言わなくてもわかるだろ? おれは、あいつが好きなんだから」


 ふっと小馬鹿にしたような笑い方をすると、貝崎は動き出す。どうやら帰るらしい。この男を好きにはなれないけど、表向きは客人だ。送ってやろうと俺も貝崎の後に続く。

 玄関で靴を履いた貝崎は、外へ出る前に振り返った。


「これからも教え子のこと、よろしくお願いしますね。朝海悠真先生」


 嫌味としか思えない言い方をすると、貝崎は保育園を出て行った。






次のエピソード。

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