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そして時は過ぎ、数百年が過ぎた。
城の周囲は時と共に変化しその変化は城を居場所としていた俺の変化をも促した。
まず初めの変化は側室たちとの死の別れだ。
初めに逝ったのはステラでもクリスでもなくエリーゼだった。
彼女は先天的に転身スキルを所持していたため命を縮めた。
転身スキルは遺伝子レベルでの変化を促すため、転身すればするほど生命力を減らしてしまうデメリットがある。
それを防ぐ手立ては人にはなくまた生命の寿命ということで神族の救い手は掟により不可能だった。
俺にも転身スキルはあるものの半人半神の身はそれを打ち消すだけの神力という力があるため俺にはデメリットはない。
彼女自身それは承知していたのか二十歳の若さでこの世を去った彼女は最後にとても幸せだったと言い残した。
そんな彼女との間には俺との間に六人の王子と四人の王女を残した。
多産化な獣人族らしく五年の間に四回の出産を繰り返し全員が浄化スキル持ちで生まれた。
長子の王子は獣人国の従妹姫と結婚して獣人国の血に浄化スキルと覇王の血をもたらした。
他の王女王子たちはエリーゼの転生者としての能力を知っていたため母エリーゼの転生を世界で受け入れられるようにとリュウ神教会という宗教を立ち上げた。
このリュウ神教会は源流を覇王教と位置づけた、俺という覇王を神格化させた教会だった。
時代に合っていたのだろうその教会は瞬く間にその版図を広げやがて衰退の一途をたどっていた当時の教会をも飲み込んだ。
数百年経った今では世界中に広がる世界最大の教会となっていて冒険者たちのギルドと共に強力な支援としてなくてはならない存在となっている。入教も比較的緩く、覇王の末裔か俺の子孫、末裔であればちょっとした検査の後に簡単に入ることができるのも大きくなった一因だろう。
エリーゼが逝った五十年後クリスも逝った。エリーゼも彼女たち側室たち全員は巫女として不老になっているのだがそれでも八十年寿命のヒューマの寿命は越えられないという事なのか病で逝った。
彼女との間には二人の王子と一人の王女が授かった。
長子の王子はヴェリアス王国のエリス殿下の忘れ形見の王女と結婚して王家に覇王の血を残した。
もう一人の王子も世界を回ると冒険者になった。
最後に生まれた王女はクリスの執念の成果か浄化スキルを持って生まれたその王女はヴェリアス王国の有力な貴族との恋仲となりヴェリアス王国に浄化スキルをもたらした。
クリスの後を追うように数年後に逝ったのはステラだった。彼女との間には一人ずつ男子と女子を授かった。二人とも浄化スキルを持ちドワーフの容姿をもって生まれたのも相まって男子は当時のドワーフ王家が断絶したという事情もありドワーフの族長となった。女子はステラの母の血を色濃く継いだのか予言師としてその跡を継いだ。
海たち勇者四人はリリスに連れられてリリスとの面会後一年後に地球に帰った。
この城に最後まで居を構えていたのはリナだった。彼女との間には男女二人ずつの四人の子に恵まれた。全員が魔王族として生まれた上に浄化スキルを所持していたのでイグニアに居を構えそれぞれがイグニアで良い結婚をして子に恵まれた。
長子の男子はリナの希望通り隆としての子で魔王族であるにもかかわらずとても隆そっくりに育った。彼女は晩年、病に倒れ、治療のため城に居られなくなり、イグニアで子供たちに見守られるように逝った。それでも魔王族として長命種だったので亡くなったのはつい最近だ。
最後に亡くなったのはリューイだった。長命種な竜人族だけありステラが亡くなった後早々に竜人の里に帰った彼女は里と城を往復するのが習慣だった。彼女は里で子らに看取られはやり病で亡くなった。つい先日の事だ。
彼女との間には三人の男子と一人の女子を儲けた。子らは全員が浄化スキルを持ち黒龍二人と金竜二人という強い竜人だったため郷で暮らし今も幸せに暮らしている。
エルフのフローラとの間には男子と女子を一人ずつ授かった。彼女は後に生まれた女子を産むとすぐ郷に帰ることとなりその後、日巫女として継いだ後、エルフにしては短命だったらしくリナよりも先に逝った。現在は彼女の子が日巫女として継いでいる。
海たちが地球へ帰還してから三百年後、予てよりの優美の希望通りおれは工藤隆として二十歳になっていた彼女に子を授けた。子が授かる3カ月の間俺は地球での暮らしを優美と過ごした。
因みに俺の住処としてリリスが聖域の一つを作ってまで提供してくれた。その住処はその後優美が居を構え、後に海と結婚して俺との子をそこで育てた。
海とはあくまでもプラトニックな関係だったらしい。
優美の子は男子で俺が海里と名付けた。その後、幼い海里が兄弟が欲しいとあまりにもねだるというので二人目の子を優美に授けた子は女子でその子は海が空美と名付けたようだ。
俺はといえば空美を授けた時点で彼女らと接触することを止めた。
プラトニックな関係の優美と海だったが俺と会っていればろくな噂もたたない訳ではなく、海との仲も上手くいかない可能性もあったからだ。
海を含む勇者四人はそれぞれ使徒三人と聖母として某最小国家から影ながら認定されたという。
異世界帰還者は総じて帰還時に千里眼という固有スキルを授けられるという。
千里眼という名の窓システムだ。
というのも異世界で習得した特技呪文スキルは全て地球で使用ができるのでかなりの役に立つ。
故に使徒化が必ず認定されるのだという。
覚は帰還後警察官となり異世界で培ったスキルを糧に優秀な刑事となったという。
麗奈もデザインの夢を叶えたが賢者スキルを活用するためなのか表舞台に立つことはなく医療などの各方面で影ながら活躍したというリリスの言葉だった。
海はといえば俺の子を育てるという安定を求めたのか医者になった。
元々鑑定スキルを持っていた海なので他人の体の状態を調べるのに苦はなく、また、回復呪文も習得していたため後に医療改革の父とまで言われるほどの医師になったという。
その海は個人病院に徹していたというがその病院を陰ながら支えていたのは僧侶スキルを習得していた優美だった。
そして俺の周辺はといえば側室たちの減少と共に静かになっていった。
使い魔の一部は人に戻りたいと願い出た為、使い魔であることを神族として解消し人に戻した。
使い魔も減り、城を起動した時にいた百人だけが残った。
そして俺は神覚醒を果たした。
その副産物として城の全域を聖域化させた。
城に残った百人は使徒になることを拒否し天使化として俺に永劫の忠誠を誓うといった。
彼ら曰くヒトになることは使い魔となる決断をしたときに捨てた決断だったという。
永劫俺という御霊に忠義を捧げる決心をその時にしたので今更と言われてしまった。
キバといえば神官長としての血筋は残すべきとおれから言われたため先に人となり子を成し成長を見届けてから再びこの城に帰ってきた。
彼らの篤い想いに感謝して俺は彼らを天使化した。
俺の子らは全て俺という神の子にあたり使徒化を認定できる立場ということもあり世界中に使徒は出来ていた。
静かな城の中でここに滞在する理由をなくした俺は天使化した配下たちを連れて神界の銀世城へと帰還した。
本当は覇王城も回収して持っていくつもりだったのだがそれは世界中に散っていた子らが反対した。
俺がこの世界に顕現していたという事実を残すためにもこの城は世界に残してほしいと懇願してきたのだ。
その熱意に負け、俺はその願いを叶え、城をカイエルの上空高くに上げ残すことにした。
だが城自体全域が聖域と化しているため今までのように入れるわけにはいかず入城を子と使徒、側室たち聖母の魂を持つ者と限定した。
入り口の魔方陣も大きく縮小し強固な時空間結界張ってその場に残した。
その場は子らによって秘密裏に守られたという。
神界にリリスとその子のリリィともに戻った俺は完全神族化したことで次代宗主としての地位を父君アルフレードより受けた。
次代宗主として覚えることは多岐にわたったが元々覚えはいいので早々に覚えた。
覚えている間は忙しく過去を忘れるように没頭していたのだが覚えきるとそうはいかなくなった。
孤独が俺を襲っていた。
神界では顔見知りはほぼおらず、信頼できる存在もキバたち配下のみということも拍車をかけた。
そんな孤独な俺をリリスは心配し、俺の孤独にさいなまれる心を癒すように俺を抱いた。
結果として俺は二人の男子を授かった。
神族は元々腹の中で子を育てることはないので産むことはない。それは男女同じでお互いに神力が子を望む心のままに入れた腹で融合を果たし新たな神力となることで授かる。
新たな神力は最初で最後の肉体創造を行うために腹から出て受肉する。受肉した後に心が生まれ子になる。それが神族の生まれ方だ。
二人の男子はそれぞれ、長子をリクト。次子をクウヤと名つけた。
二人とも俺そっくりの黒髪と目鼻立ちをしており紛れもなく実子と分かる子たちだった。
子を育てている間は孤独を忘れられたが俺の中に巣くった虚無を拭うことはできず、神界に来て数か月後、俺は心配した父に静養を言い渡されてしまった。
神族の子の成長は精神に呼応するので成長は様々だ。長子のリクトは不安定な心の父の俺を心配しその精神のありようそのままに成長速度は速かった。すでに大人顔負けの成長速度で賢くまた、利発な子だった。
片やまだ生まれて間がない次子のクウヤはまだお子様という精神で5歳児くらいの成長だ。
良く動く活発な子で考えるよりも体が動く性格らしい。
そうして俺は再び覇王城に来ていた。
歳月は神界で数カ月たっているので下界ではすでに5百年以上経っているものと思われた。
思われたというのも歳月がわからないほどに変化していたからだ。
というのも城の真下にあったカイエルがなくなり樹海と化していたからだ。
俺はそれを見て愕然としていた。
もうこの世界には俺の場所はないのだろうと判断するしかなかった。
その景色はそれほどまでに俺の心を折ってしまった。
城の中もしばらく主が居なかったということもあり風化が進んでいたことも折った理由だった。
一緒に来ていたタテ達が城を修復する中、クウヤと静かに三階で過ごしていた。
折れた心は体をも蝕み俺はやつれていた。
そんな中でクウヤがいつものように姿が見当たらなくなった。
たまたま来ていたリクトに捜索を手伝ってもらいながら二階に降りると慌てるようにタテが駆け寄ってきた。
「城に珍客がきております」
「珍客?」
「はい」
「この城はかなりの入城制限が掛かってるはずだが…」
珍しくタテが嬉しそうな顔をしていた。
「懐かしい方々です。一階に居られますのでお会いしてみてはいかがですか?」
「……それよりもクウヤを探していたんじゃないのか?」
「クウヤ様は現在その方たちとおられます」
「………クウヤが迷惑をかけていないといいんだがな」
俺はそう言って一階へと向かう。
途中すぐにリクトと合流を果たす。
「クウヤには困るな…」
「ふふ、お前にはない奔放さがあるよ。クウヤには」
「そうだとしても…さ」
「クウヤはリリスにそっくりな性格だからな。我が強いのさ」
「僕にはないですね」
「お前にはお前らしさがある。すまんなもう少し俺がしっかりしていればお前もこんなに早い成長はなかったろうに…」
「それこそ父君のせいではないですよ」
おれはリクトの頭を撫でる。
「できた息子だ、だがお前は…もう少しゆとり持ったほうが良いのかもしれんな」
「あ、あそこにクウヤがいるよ、父君!」
一階へと降りる階段の上から一階を見下ろしクウヤを発見する。クウヤは一人ではなかった。
「そう……だな…」
俺は驚きしかなかった。
クウヤを取り囲んでいた五人の女性に視線が外せなかった。
「クウヤ!」
リクトがクウヤに向かって駆け出していくが俺は足が止まったままだった。
リクトに気がついた後、階段上にいた俺の姿に彼女らも追って気がついたようだ。
「ダメじゃないか勝手に父君の傍を離れては!」
「ご、ごめんなしゃい、あにぎみ…」
そんな言葉を交わされていておれはやっと動くことができた。
「見つかったんだからそれくらいにしておきなさい、リクト」
「でも!」
俺はリクトの頭を撫でる。
「反省しているようだしな」
「う、うん」
おれは屈んでクウヤのおでこにデコピンした。
クウヤは涙を浮かべたがいけないことをしたことは理解しているのか頭が下に下がる。
「心配したんだからな」
「ごめんなしゃい……ちちぎみ…」
裾をギュッと握ったクウヤが震えながら言った。
俺はその黒い頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜるように撫でた。
「わかったならいいんだよ?」
「うん…」
俺はクウヤを片腕で抱き上げた。後ろでは俺の服を握るようにリクトが女性らを警戒していた。
そして五人の女性に声をかけた。
「すまなかったね。息子が迷惑をかけなかったかな?」
「大丈夫じゃ。元気な子じゃな」
そう言ったのは竜人の赤い髪の女性だった。
「活発すぎて困る」
俺がそう言うと反対するように金髪の帰の強そうな女性が言った。
「子供はそれくらいがちょうどいいのよ」
同意したのは浅葱色の髪をした女性だった。
「ええ」
確認するように聞いたのは黒髪の女性だった。
「それにしてもリュウにそっくり」
「………。俺が孕んだ俺の子たちだ。そっくりなのは当たり前だ」
「リリス様との?」
そう聞いたのは獣人の女性だ。
「ああ」
「父君、彼女らをお知り合いなのですか?」
「………………」
その言葉に答える術が俺にはなかった。
それでも事実を言うしかなかった。
「過去に俺の子を産んでくれたヒト達だ」
「…………そっか、クウヤと三階にいってるね、父君」
「すまんな」
リクトはそう言ってクウヤを抱いて三階に戻った。




