10ー2
そうしてリリスと別れて数日経った。
側室たちとは一周するように全員一人ずつ毎日夜を過ごしていたためさすがに体がもたないのでその日は一人寝にして休んだのだがこれがまずかったらしい。
その夜にリリスが突然、降臨して夜這いをかけてきたからだ。
乱れるように体に異変を感じて目を覚ますとそこには俺の夜着を取っ払い、貪るようにして俺を抱えて煽っていたリリスがいたからだ。
逃げようとする俺を逃がすリリスでもなく煽られるように貪られ夜通し翻弄され、嬲られた。
朝になってもリリスの飢えは充たされないのか擦り切れそうな疲労の中、俺は嫌な予感があった。
その予感は的中しいつまでも起きてこない俺を心配したクリスがベッドルームに入ってきたからだ。
さすがのクリスも真っ最中は驚き慌てるように部屋を出て行く。
見られてしまった羞恥から俺はさらにあおられリリスの中で意識を失うことになった。
俺が目を覚ましたのは昼過ぎで、昼食は終わった後だった。
となりで俺の寝顔をずっと見ていたのかリリスは起きぬけに唇を奪っていつものように神力を俺に送り込む。
重い神力はいつもの癖のようにくぐもった息を出してしまうがリリスはそれ以上に俺の表情がお気に入りらしい。
陶酔しているように見えるのだとか。
そんなつもりは全くないのだが…。
腰に違和感を感じつつ、取り払われてしまった夜着を着こんでベッドルームから出た。
後からリリスもついてきた。
起きたことを知ったタテが居間に立っていた。
リリスが降臨していることを知ってか手にはグラスを持っていた。
「リュウ様、お飲みになりますか?」
「ああ、喉は乾いていたんだ」
貰った水を飲み干して一息つくと手にはタオルケットを持っていた。
「汗を流しますか?」
「ああ、べたついてるからな。入ってくるなよ、リリス」
「見たいな。水に滴るいい男はそそる」
俺は呆れた。
「人を散々隅々まで見尽くした奴が何言ってる…」
「それは、それ。これは、これだ」
おれは念を押してシャワー室に消えた。
「リリス様にはご機嫌直しにとおもいまして…」
タテが後ろから女官を連れてきた。
女官はカートを持っていた。
「お、料理か。気が利くね」
「食事は必須ではないもののお召しになるとお聞きしましてご用意をいたしました」
リリスは早速居間にある長椅子に座る。
「ありがたく貰おう。食事は私には必須ではないけど美味いものはうまいからな。神界でもリュウの持ってた食事は美味かったのを覚えてるよ」
「お召しになったのですか」
「ああ、つまむ程度だったけどな」
その時階段を上がってくるクリスがいた。
「タテさんリュウが起きたって…?」
「あ、クリス様。お起きになられて今は汗を流しておいでですよ」
「そう」
「お、朝のお嬢さんじゃん。ひょっとしてリュウの大事の一人かな?」
「……あなたは?」
「はは、私はリリス。一応、リュウの正妻に収まっちまった女だ。よろしくな」
「あなたが……リリス神様…?」
「リリス神様なんてこそばゆいからやめてくれ。リリスでいいよ。君は?」
「あ、わたしはクリスティーナと申します。一人目の側室ですわ」
「ふふ、私と気が合いそうな気の強そうなお嬢さんだ。やはりリュウは眼が肥えているな」
「え…?」
その後二人はリュウ談議に華が咲いた。
その後、他のメンツも上がってきてリリスと気が合ったのか盛り上がっていた。
俺はといえば汗を流して身綺麗にした後リリスの居る居間に行くと話に盛り上がりを見せていることに気がつく。みると側室メンツが勢ぞろいしていた。
「間に俺が入らなくても上手くいってるようじゃないか」
「あ、リュウ」
俺はリリスとクリスの座っている長椅子の二人に割るように座る。
したたかに空腹だったので目の前にある料理をつまんだ。
横のクリスを見た。
「今朝は悪かったな。あんなところを見せるつもりはなかったんだが…」
「ううん。気にしていないわ。どうせ、彼女が離さなかったんでしょ」
俺はその言葉に頬が軽く朱に散った。
「う、ま、まあな」
「まぁ、リュウのイク顔は癖になるほど美しいからのう。妾もすぐ泣かせたくなる」
「やっぱりそう思うんだな。絶対、他にもいるとおもったぞ」
「……お前らな…」
居たたまれないので席を外そうかと考えたときクリスが目の前のパンをくれた。
「昼食まだなんでしょ」
「ああ」
「リュウ様の分も兼ねての料理ですので」
「そうか」
そう言って目の前の料理を見た。
「あれ、この料理って…」
「私が作ったの。試作も兼ねて」
「日本料理じゃん。そっか、君が香里菜か」
「リリス…?」
「実はなお前の地球での転生はずっと見てたんだ」
「え」
「やきもきしてたんだぞ。お前の転生が早すぎて用意してた器を使えなかったからさ」
「リリス」
「三度目の転生の際にはって器を準備していたんだが完了する前にお前が工藤隆の器に入るから悔しかったんだぞ」
「悔しかった?」
「おう、三度目の転生が地球での最後の転生になることは気がついていたからな。地球にお前の子を残してほしくて用意していたのにその前に転生するものだから結果として残せなかったことが悔しかったんだ。相手も香里菜なら問題ないなってめぼし付けてた相手だったからな」
「お前…」
「お前の嘆きが私にまで聞こえたんだぞ。不完全な神力で転生を仕掛けたときはさすがに焦ったわ」
「香里菜の転生はやっぱりお前も関与していたのか」
「無論だ。異世界転生に許可出してお前の神力が不完全すぎたからな。ちょっと手伝ってもやったっけ。お前の世界で出会えるもまたお前ら次第だが出会えたらそれこそ、めぼし付けた甲斐があるってもんだと思ってな」
「感謝しています」
リリスはリナのその言葉に笑みを深める。
「お前が飼ってた猫も、後おうようにして死んだ跡、その猫も送ったっけな。お前の記憶が残ることはイヴに聞いて知っていたからな。慰めにはなるかと思ったが、気をもんだ甲斐があったな」
「そうでしたの。とても感謝していますわ」
エリーゼが自分の転生に彼女が深く関与していたことを知って感謝しかなかった。
「こうしてみるとお前の女の見る目は確かだというしかないな。うん」
「俺が選んだわけじゃないさ。彼女らが俺を選んでくれただけで…」
「ふふ、いい男は放っておいてもハレムができる。いい男にはイイ女も寄るからな」
そう言ってリリスは持っていた果物の実を一つ俺の口の中に押し込んできた。
「…む…が!」
押し込まれたので仕方なく咀嚼して飲み込む。
「なにする」
「お前の昼飯だろ。それとも口移しがご希望かな?」
「冗談じゃない。食うよ」
「あのリリス様…」
「ん?ああ君か。地球に帰りたいんだろ。ちゃんと送ってやるから心配すんな」
「あ、それだけじゃなくてお願いが…」
「願い?」
優美のその言葉におれは食事を止めて言葉をはさむ。
「…彼女、向こうで俺の子が欲しいって言いだしててな」
「ほう……。それは、それは…」
「だめですか…」
リリスは極上の笑みを浮かべた。
「いいじゃん。地球でリュウの神の子!」
「え」
「こっちからお願いしたいくらいだ!」
「リリス…お前…?」
「いったろ、悔しかったって。工藤隆に子供を残せなかったって」
「あ…」
優美がハッとなった。
「何人でも産んでくれ。心配すんな、援護はしてやる。というよりもな、地球では異世界に行った人間はもれなく使徒化するんだ。神の子を産んだらその時点で聖母だ。援護はいる」
「ありがとうございます!」
優美は本当に嬉しそうに笑った。
「ふふ、忙しくなるぞ。あ、そうだリュウ。そういう事情ならお前に渡しておくものがある」
「なんだ?」
「工藤隆になれるか」
「なれるけど…?」
「なってくれ、あれじゃないと渡しても意味が無いからな」
言われるままに俺は工藤隆に転身した。
「なったぞ?」
「うんうん。完全だな」
そう言ったリリスはおれの首をむんずと寄せていきなり口を奪った。
「!」
口から何か大きな質量のある力を飲まされた。
リリスは口を解放して俺の動向を注視した。
俺はといえば質量が大きすぎて飲み込んでもしばらく吐き気と戦う羽目になった。
「う………」
吐き気がなくなると今度は全身に違和感が出る。
俺は背もたれにもたれると違和感から息が少し上がった。
「なじまないか…?」
「………大丈夫。もう少し…」
しばらくそうしてジッとしていた。
落ち着いたのを見計らい、リリスに問い詰める。
「何を飲ませた…?」
「ん、工藤隆の子作り許可証…かな」
「!」
さすがにリリスを見た。
「何を飲ませたかと思えば…」
「どうせならそのほうが良いだろ」
「お前な…」
「心置きなく工藤隆の子を残してくれ」
そうしてしばらくリリスをも交えての時間は過ぎていった。
その日の夜は数日ぶりということもあってリリスに気を利かせたクリス達は一緒ではなかった。
二人きりで長椅子で酒を飲み交わしていると不意にリリスが聞いてきた。
「なぁ、リュウ。彼女らは巫女なのか?」
「…ああ」
「そうか、それでは天使化はできないな。残念だよ、彼女らならきっと神界でもうまく立ち回れると思ったんだが…」
「……………」
おれはこの先に待つ別離は不可避であることに苦しい想いだった。
できれば俺も彼女らと同じ時間を生きたかった。
生きる時間が違う以上、別れはつくものだからだ。
天使化を行えば自分と同じ時間を生き、死も同じように訪れるのが天使化だ。
ヒトから召し上げる天使化は完全に神族化した自分にできる能力だが天使化には一つだけできない条件があった。
それは神とまぐわい巫女となった者だ。聖母も同じように天使化できない存在だ。
巫女は神の守護に身も魂も守られる。与えた神は守護が働けばいかな変化も後では不可能になる。
そして天使化や使徒化は自身の世界人の身にのみ許されることだ。
異世界神では別世界人の天使化はできないのだ。
「でもそれなら転生後に天使化することもできるんじゃないのか。守護は魂の浄化さえ阻み記憶を残す力があるだろ」
「転生者の恩恵があるエリーゼとリナなら記憶も完全に残るからそれも可能だが守護だけでは確実に記憶が残る保証はない。聖母同士で共鳴して覚醒する可能性は否定できんが、奇跡のような確率だ。巫女である以上転生者の恩恵は授けても彼女らの身には守護で身につかないしな」
「打つ手がないという訳か…くやしいな。優美なら私が天使化すればいいだけだが今すぐである必要はなさそうだし…」
「まあな。優美は俺の巫女で聖母になるがリリスの巫女ではないから天使化はできるか…」
「お前には守るべき存在が必要なことは私とて理解している。このまま別離が来ればお前の精神がすり減っていくのは目に見えることだから何とかしてやりたいんだが…。だからなのか天使化の可能性を彼女らに話していないのは…」
「ああ」
しばらく何も言えなくなった。
そんな無言に俺が居たたまれなくなり声をかける。
「向こうへ行くか。今日はお前を酔わせてやるよ」
「ん」
リリスは少し頬を染めて俺の肩にしなだれてきた。
「………。そういえばエリン義母さまから興味深い事を聞いたんだ」
「興味深い事?」
「うん。人としてのまぐわいが熱くなればなるほど神族としての腹も柔らかくなって受胎しやすいって…」
「そんなとことは初めて聞いたが?」
「エリン様はかなりの実証例があるって言ってた」
「母君はああ見えても女神たちと交流が凄くある社交家だからある意味、嘘ではないのかもしれないな」
「お前もそう思うか…」
「………今夜試してみるか?」
「………ん。任せるよ…」
リリスは朱に散った自分の顔に自覚があるのか俯いていた。
おれは寄りかかっていたリリスの肩をグッと引き寄せ、ベッドルームへと連れて夜を過ごした。
結果論として母君エリンの言っていたことは事実で、硬かった彼女の腹はかなり弾力が戻ってきたのである。
それを何よりも喜んだのはリリス本人だった。
何せ、念願の女児を手にできる可能性が出てきたからだ。
残すところ後2話分と外伝+エピローグです
次回作は現在進行中で書いているのですが亀の鈍さを体現した進み……
投稿はいずれしたいと思っているのですがもう少し時間がいるかと…
ちょっと難産かな…あはは(T_T)




