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図書室に入ると天井すらも見えないほどの高さの図書室に圧倒されてしまった俺はさすがに図書室を見まわした。
静かな部屋だった。
位置口のすぐそばのカウンターに光る宝珠がセットされていてこの宝珠に手を翳せばその時のその手の持ち主の性格と能力と神力と才能を察知して必要な知識の書が寄ってくるという。
書たちに気に入られれば宝珠に手を翳さずとも読んでほしさに書が勝手に寄ってくるというが、今の俺の神力はアルフのものなので警戒されているのだろうと思われた。
早速俺はその宝珠に手を翳す。
少し経つと本が数冊宙に浮きながらも寄ってきた。
周囲に本が寄ってきたので試しに一冊触れるとタイトルが現れる。
そこには神界の歴史と銀世宗主の成り立ちと書いてある酷く分厚い書だった。
この図書室の本は3冊だけこの城内に限り持ち出しが可能だった。
もう一つ手に取ると創滅技法の全てという書だった。
スキルにあるものだな
更に立て続けに触ると、神界作法とマナー・神滅呪法の基礎と応用・ヒトと神・魔力と神力・世界創造のススメがあった。
どれを持っていくかで迷っていると足元に隠れて伺うようにかなり使い古されたと思われる一冊の本が寄ってきていた。
その本を触りタイトルを見るとその本には見覚えがあった。
銀世宗主の心構えと役割とあった。
伺っていたのにも納得した。
この本……。確かアルフが嫌気をさして投げ出した本じゃなかったかな?
「君は確かアルフが投げ出して読むのを途中でやめた本だよな?」
肯定するように本はパタパタと動いた。
「確か君は始まりの本だったかな。宗主となるべきものが必ず読破しないといけない書…」
肯定するように書は光って連なるように次々と本が現れた。
その数はざっと見ても十冊はあった。
「…………。かなり多いな。君は落ち着いたらゆっくり読むことにするか。心配するな。今度は完読するから今は棚に戻っていてくれるかな」
本は喜ぶように周囲を飛んで棚に戻っていった。
「さて、君らのどれを今日は借りるかな…」
俺が選んだのは神界の歴史と銀世宗主の成り立ち。神滅呪法の基礎と応用。創滅技法の全ての三冊だった。
おれは借りた書たちを連れて部屋に戻った。
部屋にリリスは居ない。彼女は神力世界ランク一位をここ最近ずっと維持している有能な人材で引っ張りだこな妃だったりする。
俺と違い、いろいろとやることがあるのだ。ちなみに俺のランクはほぼ最下位独走状態が三千年近く続いているというのである。
聞いたときは少しショックだった自分が居た。
この神界でもスキル特技は使えるので暗記と速読と即時自動習得が大いに役立つことは変わりない。
この世界は俺にとって酷く重い世界で鍛錬には向かない世界と理解している。
だからこそ知識を中心に覚える気でいるのだ。
柔らかな二人掛けのソファの横に、収納にあった簡易式のテーブルを出してそこに城の女中に頼んで持ってきてもらった水差しを置いた。
長読書する気満々だったりする。
「さ、読むか」
手に取った書は神界の歴史書だ。
初めはパラパラと速読を使わずにゆっくり読んでいたのだが長い歴史を持つ神界と銀世宗主の成り立ちは非常に面白くて時間が経つにつれで読む速さも上がっていく。
いつの間にか熱中して読んでいた自分は速読を使っていた。
この歴史書、神族の神城の人たちにはある意味で有名な書と後で聞いた。
なぜかといえばこの歴史書は神城での一年単位で更新される書で図書の本の中でも屈指の分厚さがある。
分厚さがあるということは読みにくいという事でもあり完読しにくいともいえる。
新入神官たちが研修で読まされる本らしいのだが読みずらい長い本ということもあり、手ごろな罰として完読を強要されるのだとか。
手ごろな罰とは様々な軽い理由からの罰なので効果覿面だったりするのだ。
罰を犯したことを悔い改めさせるためにもこの書を完読というものほどつらい物はないらしく更に手ごろな罰なので何度も読まされる者もいるという。
何が言いたいかといえば興味を持って読む者はほぼいない書ということである。
そんな書を真っ先に読み出すあたり、後で変人とリリスに呆れられた。
ハッキリ言って速読と暗記のスキルもちだからできることである。
長時間、同じ体勢で微動だにせずに読んでいれば当然だが疲労も溜まるというもので気分を変えるためにおれは読んでいた歴史書から手を離した。
軽くソファ上で伸びをすると膝の上に置いていた書はパタパタと宙に浮いた。
意志があるんだっけか。修羅と同じなんだな
書が飛んでいたので立ち上がり大きく伸びをして体を伸び解した。
「ん………!」
気分直しに収納から修羅を取り出した。
修羅は収納されていたことから少し機嫌が悪く、どうやらへそを曲げているらしい。
俺としてもやはり腰に修羅がないのは落ち着かないので書たちを自分の背後にやり修羅をもって軽く数回素振りをした。
体は重いがそれでも気分直しにはなったのでソファのすぐそばのテーブルに修羅を立てかけてソファに座りなおし水差しの水で喉を潤した。
するとそれだけで書たちは再び俺の周りにやってきて歴史書が開けていたページを開いて膝に載ってきた。
読もうとして立てかけた修羅に視線をやると意志がある器物同士で通じ合うのか読んでいなかった書二冊が修羅に語り掛けるようにパタパタと動き、やがて修羅にもたれ置くようにして動きがやんだ。
そんな修羅は書たちに感化されたのか機嫌がマシになったようだった。
どうやら俺以外で初めて意思疎通できる存在に会って嬉しいようだった。
俺は再び意識を書に向けて読みだした。
半分上読んでいたのでさほど時間がかからずに歴史書を完読して閉じると書は満足気に輝き手元から動きを止めた。
修羅の隣に平置きするように歴史書を置くと一番手前にあった書に手を取る。
本は創滅技法の全ての書だった。
再び本を開き読み出す。
読みだすと世界は文字に染まる。しばらく読んで二冊目の本を半分くらい読み終えた頃だろうか収納してあった杖がいきなり現れ、強い光に辺りは埋め尽くされた。
そこで俺は光に気がつき杖を見ながら本を閉じる。
膝に乗せた状態で杖を取ると輝きは収まった。
その後すぐにリリスが部屋に入ってきた。
「そろそろ夕食会の準備を始めよう」
「ああ」
寄ってきてリリスは座っていた俺の傍に置いてある本三冊を見て驚いていた。
あの歴史書が完読状態で置いてあったからだ。
「この本を完読したのか。この短時間で!」
「ああ、そうだが…?」
何故驚くのか分からなかった俺はリリスに歴史書について聞いたのだった。
最後に面白かったと満足気に言った俺にあきれ顔でリリスはつぶやいた。
「変人だ」
リリスの合図の後に女官たちが入ってきて手始めにとおれはあっという間に全裸にされて剥かれた。
軽く汚れを落とすために女官たちが持ってきた台に乗せられた俺はタオルで拭かれ、香りづけにと香油を塗られてされるままになった。その後に台に座らされて何やら顔を弄られる。どうも眉やまつ毛を弄って整えているらしいようだ。顔が落ち着くと爪を軽く磨かれ髪を丁寧に梳かれた。
こういう時は何を言っても無駄なことは実感して知っていたからだ。
服の準備のために俺は渋々、着せ替えの人形と化した。
その様子を準備の終えたリリスが興味深げに俺を見ていた。
「王なくせにそういう事には慣れていないようだな」
「……やらせていないからな。どうしても羞恥が勝るんだ」
「…………くく、そんな感じだな。そそられる顔だ」
「ちっ」
そうしている間に俺の準備は着々と女官たちの手早い動作で終盤を迎える。
というのも見たことのない剣を持ってきたからだ。
「その剣じゃないとだめなのか?」
「………いえ、普通ならばその御方の愛剣を刺させていただいておりますがお持ちかどうかわかりませんでしたので飾り太刀をご用意させていただいたのです」
「そうか、それならある。……来い」
俺がそういうと修羅は不意に動き出し飛んできた。
あっという間に俺の手の中に納まった。
書たちが動いていたので修羅もひょっとしたらと思って呼んでみた結果だった。
「これで頼む」
「は、はい」
驚いているのか女官たちは軽く震えているようだった。
さすがに異変を感じて俺は伺う。
「大丈夫か?」
「は、はい」
「というかリュウ。その剣なんだ、それは?」
そこでリリスが声をかけてきた。
「俺の刀だが?」
「そうじゃなくてその刀。器物にしては凄まじい神力を感じるぞ。意志があるのもうなずける」
「と言われてもな。昔から持ってる刀で肌身離さずにきた。手入れも欠かしたことはないから大事な相棒だ」
言いつつ、頭を掻いた。
「昔から?」
「ああ、工藤隆の時代からずっと一緒だからな」
「……見覚えあるのはそれでか。意志ある器物は神界には山のようにあるが神力が籠っているものは極まれだ。恐らくお前が無意識に神力を注いできたんだろうな。それはもう神剣と呼ぶにふさわしいものになっていてこの神界でも相対できる剣は少ない。恐らくお前以外の奴が手荒に扱うとろくな目には合わんと思うぞ」
「え」
俺は驚き修羅を見た。
修羅は褒められていることはわかるのかご機嫌だった。
表に出していたのは本体だったが複製のほうも気になりだすとこちらは何もないので本体ほどの力はないのだと気がついた。
「そっちもほうも意思はあるようだが先のものよりは弱いらしいな。神力も感じないしな」
「これは複製体だ。少し前に分裂したものだ」
俺はそう言って複製のほうを仕舞った。
「その刀はお前で付けたほうが良いな」
「……そうしよう」
俺はそう言って用意されて装着されていた剣帯の先に修羅を下げる。
女官が声をあげた。
「申し訳ございませんでした。その御方様の剣をみると震えが止まりませんでしたので…」
「気にするな。おれもそれほど力があるとは気がついていなかったからな」
女官たちが準備をすべて終わったのか後を片付けて部屋から出て行った。
リリスが近寄ってきた。
まじまじと俺を上から足元まで舐めるように見た。
「いい男だ。極上の男に仕上がったな」
「着せられ感がハンパないんだが…」
「いつものお前のほうが男らしくて好みだが今のお前も上品な男ぶりがイイ…」
うっとりするように呟いたそのリリスはモデル並みのプロポーションをいかんなく発揮するような服で上半身と左手は手首までぴったりとしわ一つない布で覆われ、右側は首先から手首まで露出しているドレスで豊満な胸もどうやって服に納めているのかと思うような収まり具合は目のやり場に困る服だった。
足元は動きやすさを主に置いているのか右足はひざ丈で高いかかとのヒールが目立つが左足はヒールがかろうじで見えるほどのレースのようなスカートで覆われていた。
「リリスも十分すぎるほど綺麗だ」
「その割には目が少し泳いでいるが?」
俺は少し頬を染める。
「……目のやり場に困ってるだけだ」
「ふふ」
リリスは俺の顔を抱えいきなり自分の胸元に俺の顔を埋める。
恐ろしく柔らかい感触に両頬が包まれてしまう。
「……う…む……」
「そんなに気になるなら今夜にでも堪能させてやろう。どうせこの部屋に二人きりで誰も邪魔はない」
「……ぶはっ……」
解放されて慌てるように息を吸うと間近にあるリリスの顔に見とれて、さすがに男心が揺さぶられた。
「うう……」
沈黙は肯定とリリスは受け取ったようだった。
「ふふ、決まりだな。楽しみにしていよう」
正式な伴侶の夜の誘いを断るほどやぼではないので拒否できずに時間が迫っているので照れ隠しのようにドアへと歩きだした。
後を追うように追ってきたリリスは部屋を出てすぐの廊下で追いつき、左手で俺の腕をつかみ、胸を押し付けた。
右手は貰った杖を握っていたためだ。
部屋を出ると出迎えの官達が最敬礼をして待っていたようだ。
「ご案内申し上げます」
「ああ、ありがとう、頼む」
俺は素直に彼らの出迎えを受け入れ、先導されて次代銀世宗主就任祝いという名の夕食会が行われる場へと案内された。




