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新章です。アクロバトルがない章になりますか…
主人公がいない状態を書くことに苦労した章でもあります
結構、全体的に書くのに苦労した章でもあります
6章 世界樹と忘却の河
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獣人国宝物庫から姿を忽然と消した覇王リュウ=クドウ=マリノス。
行方はようとして知れず、かといっていつまでも獣人国の世話になっているわけにもいかないのでフィニアスはキバの手に残されていた颯を使い獣人国首都ハリーから国王たちに見送られる形でエリーゼと共に帰国の途に就いた。
颯もバーミリオン号も有事の際にとあらかじめリュウが魔力をフル満タンにしていたおかげもあり何事もなく帰途についた。
本来ならば使い魔共有のスキルもありキバたちの主のリュウの存在と現在位置は普通の意識があれば即座にわかるのだが現在リュウの意識が戻っていないせいなのか行方が分からない状態が続いた。
覇王城に帰還した際にリュウの行方知れずという事態で母エリアーナが心労から倒れてしまう事態にまで発展した。
それだけでなく獣人国で起きた闇教会のことを聞かされたせいもあったのだろうという父エルドの話には驚かされたクリス達だった。
闇教会との関りがあったという事への驚きだったようだ。
聞くと聖印のせいでエリアーナも誘拐されたりといろいろあったのだという。
だが唯一、生存が確認されているのか覇王城の維持機構が通常通りだったのが救いだった。
覇王城は覇王の生命力と魔力を感知して起動しているので覇王が死んでしまえば非常事態となり封印猶予一か月のカウントが入るからだった。
それは城を管理しているキバが一番よく理解していることだった。
キバ曰く、城は通常運転でありリュウ様の生命に重篤な変化はないとのことだった。
城の覇王探知能力は屈指の広さと精度を誇り、ほぼ全世界中を網羅しているのだ。
世界の中心地に城が配置されている理由も探知能力の精度を上げつつ広げるためでもあった。
今、キバとタテはその城の探知能力を使いリュウを探していた。
単純な探知能力なので詳細を知るにはキバといえども時間がかかっている。
獣人国でリュウを見失って三十日経ったその日、キバがようやくリュウの居場所を突き止めた。
時間がかかったのにも理由がある。
リュウの魔力が探知できなかったためだった。
場所は東部エルフ郷の中心地の世界樹だった。
東部エルフ郷は現在鎖国中であり国交はない。
二十年ほど前に突然理由もなく鎖国に入ったエルフ郷は鎖国前であるならば連合国だけが唯一の国交があった国だ。
国交があった理由も唯一の大陸続きで馬車を使っていける道程があったためだった。
他国は険しい山と人踏未開地の森と激しい海流で通行不可能な海峡が阻んでいるため交流ができない土壌だった。
エルフ族は竜人族と同じくヒューマへの嫌悪が激しい種族である。
それも致し方ない事ではある。
エルフ族は長命種な上に長い耳と色素の薄い髪を持つ、眉目秀麗な種族で総じて美しい容姿と幼い姿を長期に維持する種族だ。
当然ながら奴隷制度のあった時代では高値で取引されるほどだったという。
そのヒューマの人気から郷から誘拐され奴隷となったエルフも多い。
その奴隷時代が長く続いたことでエルフ族は竜人族以上に種の個体数を激減させた。
元々長命種で繁殖能力の低いエルフは一時絶滅の危機にすらあったという。
故にヒューマへの嫌悪感は奴隷制度がなくなって千年経つにもかかわらず嫌悪は凄まじい。
連合国が郷との国交があったのも奴隷制度をなくした先駆国だったからだ。
とは言え鎖国中のエルフ郷へどのようにいくかで協議した結果エルフのロビンソンとタテが覇王国のエルフ郷最短の町までゲートを使いそこから飛行して入国することにした。
鎖国中なので入国依頼を出したが拒否されたため秘密裏に行くことになった。
そんなキバがタテを引き連れて覇王城地下施設にある魔術研究の一室に立ち入る。
ここには新入りの使い魔エルフ・ロビンソンが入りびたっているからだ。
「すっかり専用の部屋と化してしまいましたね…ロビン?」
「ここは最高の環境です。自分の魔術人形の研究を再開させていただけるのを許可していただいたことは感謝してもしきれませんよ」
「満足しているなら安心ですね」
「それよりも主リュウ様の消息は知れたのですか?」
「もちろんです。探査に時間がかかりましたが居場所は特定できましたよ」
「そうでしたか。動かれるのですね」
「ええ、ですが場所の事を考えて貴方にタテと共に行ってもらうことになりましてね」
「俺が行く場所…ですか。それってもしかして…」
「ええ、リュウ様の現在地はここより東の地、エルフ郷の世界樹と判明しましたのでね。目立たない貴方に動いてもらうことになりました」
「なるほど、それは仕方ないですね。でも向こうでの捜索ですか?」
「それもありますが向こうでの臨時とは言えゲートを設置する拠点となる場所を確保してもらいたいのです」
ロビンソンは少し考えた。
「それなら良い場所があります。自分の屋敷です」
「え、ですが…」
「問題ないですよ。自分に身内はおりませんし、私の屋敷は魔術人形で警備が固めてあるので誰も立ち入らないはずですし、私がスケルトンになったのもここ最近で3カ月も経っていないので心配も無用です」
にっこりとロビンは笑った。
「それに一度、私は出かけると3か月くらい平気で空けるので慣れたものです。なによりも世界樹と城に遠くない上に、広い敷地もあるので近隣と距離もありますしそれなりに便利な距離なので使っていただいたほうが私としては嬉しいです」
「そういう事ならありがたく使わせてもらいましょう」
そうしてロビンソンとタテはエルフ郷へと向かったのだった。
「ここですか。ロビンソン殿の屋敷は」
「ええ」
そう言って二人がいた場所は立派な門構えの日本風の二階建ての大きな建物だった。
「道中も思ったんですが噂通りエルフ郷は独特の文化ですね」
「よく言われます。ですが慣れれば落ち着きますよ」
そう言ってタテを連れて屋敷の門をくぐる。
「おかえりなさいませ、博士」
「何か変化はあったかい?」
「はい。姫巫女様が1か月ほど前にご訪問なされまして奉納した人形について聞きたいと仰せになられたのですが不在と分かると帰還時でいいから城に来るようにと伝言を承りました」
「姫巫女といえばこの郷の次期女王でしたか…」
「ええそうです。しかし、奉納の人形のことですか…」
「問題がおありか?」
「…いえ、実は最新物の魔術人形を出かける前に奉納したのですがご使用時には必ず報告をお願いしていたので、おそらくは使用するから報告に来られたのでしょうね」
「そうでしたか。それにしても城と懇意にされているのですね」
「ふふ、こう見えてもエルフの中でも古株のほうでしてね。それなりに顔は広いのですよ。姫巫女は私の魔術の教え子の一人なのですよ」
「世界樹は城の奥でしたか…」
「ええ、世界樹に行くとなると日巫女様の許可が必要ですが、難しいでしょうね」
「ですが、何とかリュウ様を見つけなければ…」
「姫巫女に相談してみましょうか。彼女ならばなんとか説得できるやもしれませんからね」
タテは頷いた。
「ですがとりあえず今日は英気を養いましょう。ゲートの件もありますしね」
「ええ」
そうして二人は移動の疲れもあったので城への登城を申請する手続きを行いその日はゆっくり休んだ。
翌日城への登城は午後だったので午前中の間にゲートを設置した。
その後昼食を取ってから屋敷を出た。
「城へ行きましょうか」
タテとロビンは屋敷を出て城に向かっていると細い路地裏で争う声が聞こえてきた。
争う声というがどうやら一方的な争いだった。
二人は関わる気はなかったのだが気になる魔力を持った人物だったので介入することにした。
見ると集団暴行という名が相応しい争いだった。
タテはその腕でやられていた少年を守り暴行者達を蹴散らした。
タテは改めてその少年を見た。
「大丈夫ですか?」
ロビンが聞いてきた。
「はい、助けていただいてありがとうございます。本当に助かりました」
その少年は真っ白な髪と蒼い目をしたエルフでヒューマの年齢で見れば十歳前後の少年だった。
その姿はどこにでもいるエルフといった感じだったが二人が注視した事情があった。
タテはその魔力に意識が行った。リュウの魔力によく似た気配を持っていたからだ。
一方でロビンは別のことに気がついた。
「君、名前は?」
ロビンが聞いてきた。
「あ、申し遅れました。僕はクリフといいます。助けていただいて本当にありがとうございました。お礼がしたいのですが僕は急いでいかないといけないことろがありましてこれで失礼します」
彼、クリフは丁寧にお辞儀をして足早にその場を離れていった。
見送っていると向かう先は自分たちも向かう城だった。
「彼は何者でしょうか……。リュウ様と同じ魔力を持っていた」
「同じ魔力でしたか?俺は気がつきませんでしたが…」
「ええ、私が間違うはずがありません。微量な魔力でしたがあれはたしかにリュウ様と同じ魔力でした。エルフでなければリュウ様と思ったほどです」
「その感覚、間違っていないかもしれません。事情は姫巫女に聞くことにしましょう」
「姫巫女にですか?」
「ええ、あの者…、クリフといいましたか。エルフではありませんよ、彼は…」
タテはその後に続いた言葉に驚いた。




