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翌日おれは酷い頭痛で目が覚める。
左手を額に置いて痛みにこらえる。
目を瞑って軽減を図っていると右腕を枕にしているエリーゼが身動きして目を覚ましたらしい。
「リュウ様…?」
「ああ……、起こしてしまったか…すまん」
そっと右手を頭にのせて撫でる。
ひかない頭痛が気になり窓を開けて確認するとしっかり疲労と頭痛がセットになっていた。
頭痛には注意書きがあったので見ると魅了スキルによる記憶障害とあった。それも記憶改善不可とある。
記憶を戻したいとは思わんが、頭痛は参るな……
窓を消し、重い体と頭痛に霹靂しているとエリーゼが動いた。
俺に覆いかぶさるように上に乗ってきた。
「………ん……?」
不意に俺の唇をなめるとそのまま情熱的なキスをしてきた。
しばらくされるままにしていると唇を濡らしたエリーゼが俺を見つめてきた。
「昨晩はとても素敵でしたわ…」
「そうか…、それならいいけど、悪いな。夜のことはあまり記憶にないんだ。どうもスキル効果らしくてな」
「そうでしたの…。納得ですわ。昨晩のリュウ様はとてもいつものリュウ様とは思えないほど乱暴でいらしたから…」
エリーゼはそう言ったがとても魅力的に映ったのか満足気だった。
獣人はその一族の性質により全種族中トップクラスの生命力を誇る。
多産系で一度に双子は当たり前で三つ子四つ子もざらに生まれる種族だ。
当然ながら夜の営みもより獣じみている者ほど魅力的に映りモテるという。
魅了スキルの効果があったせいだろうが理性が無くした状態なので獣じみた行為になったことは予想が付く。
エリーゼはしばらく俺の上から離れず、素肌で体温を感じているようだった。
俺は頭を撫でるのをしばらくやめなかった。
酷い頭痛がやまないので辛いがエリーゼは幸福そうにしていたので良しとした。
そんなエリーゼはぽつりと呟いた。
「ずっと夢でした。貴方のそばにこうして受け入れる体をもって侍ることが…」
「そうか……」
「この世界に生まれなおしてから寂しかった。どこにも貴方がいないというだけで…それだけで…」
エリーゼはそう言って俺の鼓動を聞いているようだった。
「この世界のどこかに貴方がいる。いつか会える日が来る。そう希望にして…」
エリーゼは満足したのか不意に起きた。
「名残惜しいですけどそろそろ起きたほうがよさそうですわね…」
「……いいのか?」
「はい」
極上の笑みを浮かべたエリーゼは美しいと思った。
「俺は運がいい男だと自負しているつもりだ」
ベッドの上に胡坐をかいた俺は一糸まとわない裸体をさらしているエリーゼを見ていった。
「運がいい…のですか?」
「ああ。俺の側室たちはみんな個性豊かな極上の女性ばかりだからな。運がいいと言わずどう言えと?」
「そんなことはありませんわ。みんな自分の意志でリュウ様のそばにいるだけでリュウ様の魅力に心を奪われた方ばかりですのよ。決して運がいいのではありませんことよ」
「そうだとしても幸運で幸福な男には違いないからな。見捨てられないようにしないと気が気でないさ」
おれはいつものように魔力鍛錬をして疲労を吹き飛ばそうとしたが頭痛も相まってうまくいかなかった。
「ち、やっぱ無理か…」
俺はオールを取り出していつものように飲み干して異常を回復させたがスキル効果の頭痛は消えず、軽減されただけだった。
俺はベッドから離れて立ち上がり軽く伸びをして眠気を吹き飛ばした。
床に散乱していた衣服を取って下着を収納内の物に変えて着替える。
着る服を一瞬考慮したがいつもの普段着の冒険者用服を着た。
今日の予定はフィニアス達には入っているが俺に予定はないに等しい。
というのも獣人国側からの配慮でエリーゼともっと仲を進展してほしいらしく事務レベルの協議のみになっているからだ。
昨日はエリーゼの部屋で夜を過ごしたが今日はそういうわけにはいかない。
他の側室たちが寂しがるからだ。
とはいえ今日はリチャード国王主催の歓迎会という名の舞踏会が行われる。
予定では武闘大会だったのだがどうやら俺の覇気に当てられたものが多かったらしい。
主要の武闘メンバーが総じて棄権してしまい実行不可能になったのだとか。
これは本格的に覇気を抑えることを考える必要があると実感してしまった俺だった。
とはいえ俺自身覇気とやらに実感はないのでどう抑えるべきかも手段に困っている。
元よりリューイやリャンに聞く必要がある。
エリーゼの部屋を出て朝食のために王たちも使う食堂に向かった。
入る途中でクリス達と合流した。
挨拶代わりにキスをねだられてしまったのでそれぞれ頬に降らせて食堂に入る。
すでに国王たちが椅子に座っていた。
国王一家は実に多い。多産種族だけありエリーゼにも双子の妹が一人いる。
王女は四人、王子は五人いる。
エリーゼは第四子で長女に当たる。それぞれ一八歳三人と一五歳二人と一三歳の王子二人と十歳の王女二人になる。
食堂には王が上座に座っており王妃と王子王女が年齢順に片側に座っていた。
本来ならば王と同じ上座に座るべきなのだろうが今日は特別に王女の婿立場でいるので問題はない。因みに宰相とフィニアスの姿はない。会食は専ら自分任せにされているのだ。
「おはようございます。リチャード王」
「おう、おはよう。昨晩は楽しんだかね?」
さすがに露骨すぎて少し羞恥が出た。
頬が朱に散ってしまう。
「え。ま、まぁご想像にお任せしますよ」
「もう、返答にお困りになるようなことを聞くものではないでしょうに…」
王妃が王をたしなめた。
「うふふ、私はとても幸せですわ、お父様、お母様」
俺は用意された椅子に座る。リチャード王の左斜め前の椅子で隣にはエリーゼが座った。
エリーゼの隣にはそれぞれクリスとステラ。エルナと海たち四人が座った。
朝食はどこにでもあるパンとスープとあっさり味の肉が少しと軽い量のサラダ。そして果物が並んだ。
ただし、王家の食事なので覇王城で出るものと大差のない上等なものだ。
食事もほぼ終わり一息ついていると王が声をかけてきた。
「我が城の食事はいかがでしたかな?」
「とてもおいしかったですよ」
「それは良かった。ところで一つ直に聞いておきたいことがあってな」
「聞きたいことですか?」
「うむ、リュウ殿が纏う、その気配についてなんだが…」
「……ああ、そのことですか…」
「今日の予定が昨日大幅に変更されたことは耳にしておいでだと思うのだが…」
「武闘大会に出場予定だったというこの首都に滞在していた腕利きの猛者たちが総じて戦意を喪失して棄権したと聞いています。申し訳ない事です。恐らく半分は俺の持つ竜の覇気に当てられたのでしょう」
「やはり、それは竜の覇気か?」
王のその言葉に王子たちが息をのむのが分かった。
「はい。今回の側室たちの中には事情があり同行していない側室がおります」
「それと関係がおありか?」
「はい。竜人王の姫が俺の側室として傍に居りましてね。彼女の番いになるために自分が竜人化することになりまして、その竜の覇気が転身スキルを使いヒューマとなっていても抑えきれていないようなのです」
「今回の依頼でリュウ様は本当に難儀していましたわ。平民でさえも怯えられてしまったので」
「ほう……それは難儀なことだ。だが納得でもあるな、その覇気では平民はおびえるであろうな。しかしリュウ殿は転身スキルをお持ちか」
「ええ、運がよかったんですよ」
「ともかく竜人の覇気であるならば納得だ」
王は納得できたのか何度もうなずいていた。
「ところで今日はどのようにお過ごしの予定なのかしら?」
王妃が聞いてきた。
その王妃の言葉に王が聞いてきた。
「そうだな、覇王武具の譲渡は明日と聞いているしな」
「好意により予定を開けていただいたので側室たちとハリーを見て回ろうかと思っています」
「ゆっくり観光してくれたまえ。それにできれば覇王専用スキルとやらの浄化スキルの効果がこのハリーに及ぼしてくれればこれ以上のものはない」
「浄化スキルを御存じでしたか。考慮ありがとうございます」
そうして王たちと共にした朝食は終わった。
その昼過ぎクリス達とエリーゼのおすすめの店をめぐってハリーの町を楽しんだ一行だった。
その夜、城のホールで舞踏会が行われた。
同盟締結記念ということもありおれはリチャード王のすぐ隣に用意された立派な椅子で国王と共に歓談することになった。
この舞踏会、体のいい出会いの場になっていたりする。
その為、チラチラとおれに視線を送ってくる女性たちがいるのだが傍にいる二人の側室たちの圧が強いのか見るだけにとどまっていた。
リチャード王と共に歓談しつつ酔えない酒を飲んでいるとしばらく顔見知りの貴族たちと会話を楽しんでいたエリーゼが傍に寄ってきた。
「初めの一曲踊ってもらえますかしら、リュウ様」
俺が踊るならエリーゼが最初なのは同然だった。
それはクリス達も理解していてその後にクリス達と踊る予定をしていた。
俺の服はやはり覇軍だった。もともとこの服は舞踏に向いている服なので派手だ。
「リチャード王。少し失礼しますよ」
「楽しんできたまえ」
椅子に腰かけ組んでいた足をほどいて立ち上がる。
エリーゼはそつなく俺の腕を取り一緒に高段を降りる。
一曲エリーゼとしばらく共に踊った。
以外にもエリーゼは作法に精通しているようでダンスもそつがなかった。
そのおかげか俺のほうが少し緊張したようだ。
「スキルを持っているだけあって作法はお手の物だな、エリーゼは……」
「うふふ、そう言ってくださると頑張った甲斐がありましたわ」
「俺のほうで、ボロが出そうだよ」
「そんなことはありませんわ。とても巧いので感心しておりますのよ」
そんな会話をダンス後にエリーゼとしてクリス達のもとに戻ってくるとエリーゼがクリス達に声をかけた。
「お先に独占してしまいましたわね」
クリス達は笑みを浮かべた。
「優先されるのは仕方ないわね。今日はエリーゼが主役だもの」
「そうね」
「クリスティーナ」
俺は高段にいるクリスを見上げて手を差し伸べる。
クリスは極上の笑みを浮かべた。
クリスは俺の手を取る。
今度はクリスと踊った。
クリスとのダンスは何故かホッとした。踊り慣れているおかげだろう。
我の強いクリスのダンスはどちらかといえば俺が振り回される傾向にある。
だが、それはそれで楽しかった。
「クリスと踊ると一番楽しめる気がするな」
「そう?」
「ああ、踊り慣れてるせいかもな」
「それはそうでしょうね。お姉さまの分まで夜会に出ることもあったから…」
「それはそれで大変だな」
「ふふ、たくさんの貴族の男を袖に降った甲斐があったから今は感謝しないとね。こうしてリュウとゆっくり踊れるんだから」
「愛想をつかされないようにしないといかんな」
「大丈夫よ。みんなリュウじゃないとダメなんだから」
「そういわれても皆の想いに応えられる男に努力することは無駄じゃないだろ」
クリスとひとしきり踊った後、上段にいたステラを目が合った。
「楽しかったわ。ステラも楽しんだほうがいいわよ」
「うふふ、そうですわ。ダンスは大事な方と楽しむものですもの」
「そうね…」
ステラは幾分か緊張しているようだった。
あまりダンスは得意ではないと言ってたがどうやらそのようだった。
「いつも壁の花とフィニアスが言っていた通りのようだけど俺と踊りたくないのならやめようか?」
ステラはその言葉に首を横に振った。
俺とは踊りたいらしいが下手なのがよほど気になるようだ。
躊躇しているとダンスの音楽がバラードに変わってしまった。
俺はためらいを見せているステラを呼んだ。
「ステラ、この音楽なら派手に動かないから平気だろ。おいで」
手を差し伸べた。
ステラは少し頬を染めておずおずと手を重ねてきた。
ゆっくり歩を進めてステラを抱き寄せ密着してダンスを楽しんだ。
ステラはぎこちない足取りだったがあまり派手に動かないおかげだろう。次第に緊張がほどけて楽しむステラがいた。
そんなステラをリードしつつ俺もこの時間を楽しんだ。
その日の夜はほどほどに踊ったおかげか与えられていた貴賓室でクリス達と共にゆっくり休むことができた。
そう、いつものように両脇をクリスとステラが陣取りエリーゼが猫になって上に乗るのは変わらない位置だった。




