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異世界に戻った異世界賢者の備忘録  作者: 夏
5章 器と覇王
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7-1



塒を後にして里へと向かったリューイと卵を見送って俺も塒を後にする。

この塒はドラゴンの住処状態なので近寄る魔物はいない。

山の麓にある村に異常事態が起きて村に居られないときはこの塒が避難場所になるらしい。広い上に水源も確保されているので都合がいいのだという。

そのせいもあるのか最近は村人が時折この塒までの道確保にやってきて管理しているというから驚きだった。

帰りは転移呪文で颯指定なのであっという間だ。

颯に帰還したとき時刻はすでに夕方だった。

竜化したままだったが意識的にオンにしていた自己栄養生産スキルを切る。

塒にいるときはどうしてもオンになるらしく注意していた。

独特の魔素状態のためリューイがあそこに塒を作ったのも納得できるのだ。

スキルを切ると腹は空なので当然のように鳴った。

「おかえりなさいませ、リュウ様」

「ああ、悪いけど何か飲み物をくれるか?」

長椅子に座ってもなお腹が鳴る。

「食事はされていらっしゃらないのですか?」

「ああ、塒に行くとどうしてもスキルが入るらしくてな」

フレアがスープをくれた。中には小さなパンが浸してあった。

「ありがとう」

ゆっくりと口に入れる。

ホッと一息ついたころ実験と実戦にかこつけた連携に行っていた海たちと側室メンツが帰ってきた。

俺がいないので実践訓練に行ったらしい。

「あ、兄さん?」

「リュウ、帰って来てたのね」

「ああ、一息ついたときだった」

両脇にいつものようにステラとクリスが座った。

二人は俺の体温を感じるようにもたれかかる。

「リューイ様はどうでしたか?」

「ああ問題なかったよ。さすがに疲れていたから介抱していたけどな」

「そうでしたか」

「彼女はしばらく卵と共に竜人の里に帰った。里での休息が一番体にはいいらしいから、一月ほどは向こうで過ごすと言っていたよ」

「卵も?」

「ああ、里で安置するほうが卵の育成にはいいらしいからな。孵ってもしばらくは里での生活になるらしいからしばらくは人里には下りれないだろうな」

「別生活になるの?」

「そうなるな。もっとも卵が孵れば一度は俺も里に行く必要があるだろうが…。人嫌いの竜人だからな、リューイが説得の時間をくれと言っていた」

「そんな人嫌いなところに行く必要があるの?」

「リューイのことを考えると放置するわけにもいかない。両親は亡くなったそうだが祖父は健在らしいから挨拶はしないと」

「挨拶といえばわたくしのことは?」

エリーゼが聞いてきた。

俺の膝元に頭をのせるようにしていたので耳元を撫でる。

「それも考えてるよ。エデンの果実を一つ手土産にするつもりだがもう一つ手土産ができるかもしれんな」

「もう一つの手土産?」

「ああ、この国に入ってから監視が消えないのは気持ちが悪い。明日は罠を張って捕まえて尋問してやる」

「監視の罠なんてそんなのできるの?」

「昨日暇つぶしに呪文検索していたらいい呪文を発見したんでな」

窓を出した。

『ライトラインカウンター』

  対象者にかかる魔術を紐づけして術師を特定する呪文。遠視透視阻害効果あり。紐づけすることによって術をつなげることが可能。

「光属性の監視反撃呪文だ。紐づけできるから空間呪文で強制転移させることもできる。術師が複数いればそいつらを無害化できるだろう」

「捕り物だね」

「ああ、尋問の成果によるがうまくいけば獣人国へのいい土産にもなる」

「光属性ってことは私にも覚えられるの?」

クリスが興味津々に聞いてきた。

「あまり知られていない呪文だが中級の呪文だから光の高適正があれば問題ないな」

「それにしても個性的な呪文ね」

ステラが感心していた。

「大賢者時代にもいろいろあったらしいな。名声が高いと妬みや嫉みも多かったのだろう。いろいろ対策を講じる必要があったんだろうな」

「大賢者になれば呪文作成が可能になるって噂だけど本当なのかもしれませんわね」

「かもな、俺もかなり条件がクリアしているから時間の問題かもしれんな」

「大賢者の転職条件をしっているの?」

「もちろんだ」

「兄さん、どんな条件?」

「条件はかなり厳しいな。全種族の秘宝を手にすることだからな」

「秘宝?」

「ああ、竜人族の竜の涙・エルフ族の世界樹の雫・ドワーフの神技で作られた武具・魔人族の忠義の証・獣人の転身の秘宝・ヒューマのブラッディソードだ。もしくは種族の血を取り込む」

「伝説の秘宝だらけだわ」

「この内の竜の涙と忠義の証とドワーフの武具は手にしているし、俺自身ヒューマだから剣は必要ない」

「半分以上手にしていることになるのね」

「ああ」

「獣人の秘宝に関して、御主人は手にしておられますわ」

「?」

「スキル転身こそ獣人の秘宝ですので」

「そうなのか?」

「はい」

「だとするといよいよエルフ族の雫だけになるな」

「武具なんてもっているの?」

「ああ、俺がいつも使ってる杖・叡智の魔導がそれだ。ドワーフ族の神技で作られた増幅の魔方陣の込められた杖。あれは大賢者時代の唯一の武具の持ち物だ。持ち主限定が付いているから俺以外では持てないしな」


そうしてしばらく雑談した後、夕食ついでに明日の予定を立てる。

フィニアスと教会の協議によって樹海跡地は教会の直轄地に入ることになった。責任者として俺が立つことになったという。知らない人物がイグニアに入るよりもイグニアにいる魔人たちの族長としての俺が立つことで双方ともに角の立たない方法がとられることになった。

獣人国内部にある地域になるのだが元々樹海という手つかずの領地ということもあり獣人国側から教会へと譲渡される形になったのだ。

もともと教会から御子としての認定を受けている俺である。御子としての領地という形になったそうだ。

この協議の結果はイグニアの魔人たちには今日のうちに報告されているのでここでの滞在予定が終わることになった。


明日の監視の捕り物を行い撤収予定だ。

なんだかんだと一週間ほどの滞在になった。


翌日転身を使いヒューマに戻ったおれは捕り物の影響を避けるためにもイグニアと颯から少し離れた位置にまで移動することにして颯から出る。

それにしても不思議だった。

俺の何が知りたいのかと疑問だったがふと気がついた。

今日は監視の目が感じられないことに。

 なにかあるのか?

周囲を見回す。イグニアのある平原は比較的森もある上に平原を囲むように切り立った断崖で遮られているため近くにある街以外では人を寄せ付けない土壌だ。

いくら監視のスキルや魔法を使っていても距離を稼げるわけではないのでこの平原に身を潜めているのは確実だった。

「兄さんどうかした?」

「いや…、今日は視線を感じないんだ」

「え、それって捕り物ができないってことだよね」

「…そうなるな」

「周囲に気配は感じますので向こうが何か手を打ってくるのかもしれませんね」

念のためにイグニアのゲートを使い数名兵を配置しているのだが何も起こらなければいいなと思っていると街のある方角から狐耳の獣人たちが駆け寄ってくるのが見えた。

よく見ると王国兵なのか首都ハリーで見かけた兵装だった。

「覇王様御一行でありますか?」

警戒しつつそれに答えたのキバだった。

「聞く前に名乗りなさい」

「失礼いたしました。我らはこの先の町リドルに配属されている王国兵師団所属の大尉であります」

ビシッと敬礼をしてきた。

「実は不甲斐ない話なのですが街中に不審な魔物の集団が現れて街の民衆を襲っているのであります」

「あっちの方角というとこの間行った大きな町だよね」

海たちが感想と確認をしてきた。

「はい、それで救援要請を出しているのですが到着までしばし時間がかかるらしくこのままでは町と共に民衆たちに大きな被害がでるのでご協力をお願いできないかと思いまして」

「………。君の独断だな?」

「……。はい。後で処罰は受ける覚悟で参りました。ですが待っていては…!」

兵は震える拳を握っていた。

「君があの町にいる兵たちの責任者か?」


「はい」

俺は少し考えて決断した。

「わかった、協力しよう。後のことはこちらからも善処させてもらう。獣人国の応援を待てないのであればこちらからも俺の使い魔の兵を召喚させてもらうが?」

「ありがとうございます!」

大尉は深々とお辞儀をして見せる。

「動きますか?」

「ああ、町までは少し距離があるようだから颯を動かそう」

「了解しました。運転はしますので中で詳細をお聞きしますか」

「頼めるか?」

「はい」

「大尉も共に街に戻ろう」

「は、よろしいのですか?」

「不審な魔物集団という話だが気になることがあってな。君から詳細が知りたいのだ」

「わかりました。御厚意に甘えてもよろしいのでしょうか」

「急ぐのだから道々聞く必要があるだろう。とはいえ見知らぬ者を乗せるのだから警戒はさせてもらうがな」

「もちろんであります」

颯に乗り込み街へと急ぐ。

道中の大尉の話では町の周囲に居るよく見る魔物たちではないというその魔物集団はいきなり街中に現れたのだという。

どんな魔物が多いのかを聞くとイグニアで俺たちが襲われた魔物と似たような編成だという。

つまりゴーレムと狼の集団。それとスケルトン兵だという。

「ゴーレムの数は多くはないのですが他の魔物の個体数が多く対処しきれていないのが現状なのです」

「町の人たちの安全は?」

「町で一番の強固な大きい建物に避難は完了していてそこを守ることを重点的にしております」

おれは町の襲撃が俺を誘うための囮にしているのはないかと考えた。

監視が消えた途端に街に襲撃が起きるというのはできすぎている。

【俺を誘う罠かもしれん。魔物の種類が似すぎているしな。監視が緩んだすぐの襲撃というのはできすぎのような気がするが、首謀者を釣るか】

【危険ではないでしょうか】

【あぶりだして尋問してやる】

「町の外からの襲撃ではないのだな?」

「はい」

「作為的なものを感じるな。外からの襲撃でないというのは」

「統率された魔物だと?」

「可能性が高い。首謀者を探すほうにも力を入れるべきだな。一匹生きたまま捕縛する。魔物を思うように動かすにはかなりの魔力がいるはずだしな。魔力糸をたどり探そう」

「町についてから召喚しますか?」

「ああ、町の混乱を収めるためにも魔物は討伐すべきだしな。到着後町全体に魔物弱体化の効果のある聖結界を張る。この結界の中から魔物がどれだけいるかが明確に部下に伝わるから効率のいい討伐にできるはずだ」

「俺たちは町の魔物を討伐していけばいいということ?」

「ああ、魔物制圧は海たちに任せる。おれはキバたちを連れて首謀者を釣る。ステラたちは避難している建物の現状維持に努めてくれ。街中で呪文は難しいからな」

「気を付けてね、リュウ」

「ああクリス達も無理はするなよ。状況が悪化する場合は結界を転換する必要が出るからな」


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