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運転を交代しつつ4時間ほど颯を走らせるとゲシュタルト獣人国首都ハリーが見えた。
少し手前で停車した俺は少し後悔していた。
というのも首都だけあり結構首都を覆う塀の外でも往来が激しいのだ。
見たことのない車で停車しているので視線を感じるのである。
隠すには無理か。このまま首都入りしたほうがよさそうだな
どのみちカイエルでは車の量産体制が整いつつあるとの報告は受けていたので隠す必要がそろそろなくなっているのも事実だった。
「………」
おれはアクセルを踏んだ。
助手席にいたエルナが聞いてきた。
「このまま行くのか?」
「ああ、ここまで往来が激しいとなると、降りると逆に目立つ。大人数だしな。それにそろそろ隠す理由もなくなっているんだ」
「量産体制…か」
「ああ」
そのまま検問を通った。
見たことのない魔道具で乗っているのが覇王様御一行と知って納得されてしまった。
一応王家から来訪の通達はあったらしい。門番に事前に獣人国から指定された宿を聞いて首都入りを果たした。
首都だけあり普通に馬車が往来を行き来できるほどの幅があるので門番から聞いた警備の行き届いた指定されていた高級宿前に停車した。
内部の扉に入る。
「到着したぞ。キバ、宿を確保してきてくれ。通達はいっているはずだ」
「了解。戻るまで出ないでください」
「わかってる」
「俺たちは魔物情報調べてギルド行ってくるよ」
「ああ。海たちはランクいくつだ?」
「この間Dになったよ」
「そうか一か月でDは早いほうだな。Bまでなら俺でも受けられるから頼む。強い魔物がいるようなら少しここでも滞在することもあるからな」
「わかった」
「タテは城へ謁見を」
「了解です」
「他は宿をとったら夕食までは自由でいいぞ。出かけるなら護衛をつけろよ」
「わかったわ。でもリュウは?」
「おれか。俺はギルドに行く。やはり自分で見ないとな。謁見は早くても明日だろうし」
しばらく雑談をしているとキバが宿をとったので車を降りて収納し、宿に入ると受付嬢の獣人が俺を見て妙におびえていたのが印象に残った。
なんだ?
ほかにも視線を感じ見回すと視線が合う度に驚かれてしまっていた。
獣人たちの反応が気にはなったが部屋に一度入ることにした。
部屋割りを決めて俺は認識阻害のメガネをかけて宿を出た。
背後にはキバがついてきた。
外に出ても周囲の獣人からはなぜか怯えられていた。
「なぜだが怯えられているな…」
「獣人たちは強者の気配に敏感といいますからリュウ様の気配に気がついているのではないでしょうか」
「ふむ…。とはいえ普通の人に怯えられると対応に困るな」
「ですね」
「後でエリーゼに詳しく聞いてみるかな」
おれは早速冒険者ギルドへと向かう。
ギルドはどこでも流通の主流でもあるので中心地にあることが多い。ここもそうだった。
二階建ての建物で一階は酒場が併設されており建物の裏には大き目の倉庫と素材置き場が常設されているところまで変わらない。
二階には恐らくここのギルドマスター室と応接室等があるのだろう。
先に入っているはずの海たちを追うようにして一階の酒場に入る。
獣人国のギルドはそれなりに猛者が揃っているという話は聞いているのだがそれでも入るとやはり気配が感じるのかいきなり視線を集めた。
中には震えている者もいるようだ。
なんなんだかな…
気にしているとやってられないので酒場を見回すと依頼ボードの前に海たちがいるのを見つけた。
「海、いい依頼はありそうか?」
声をかけられて海たちは振り向いた。
「あ、兄さん?」
「?」
「その眼鏡…」
「ああ、認識ずらしの伊達メガネだ。気にするな」
「気になる魔物討伐の依頼があるんだ」
「どれだ?」
「これですよ隆さん」
「ふむ…。ブルードラゴンか。西側の主な感じだなこの強さだと」
「わかるんですか?」
「ああ、図鑑があるからな」
海たちにも見えるように表示した。
「これだと、コイツをおびき出すのに少し周辺の魔物を駆逐する必要があるな」
他の低依頼のを見るとドラゴン系が西に多く生息している様子だった。
期限は1週間あり、ランクはBだった。
「お前らと一緒なら早く駆逐できそうだな」
「受ける?」
「ああ、そろそろ自分的にはギルドに貢献しないとまずい。あと少し討伐数を稼げればランクも上がるだろうしな」
実はギルドカードには魔物討伐数もカウントされている。ランク上げに必要なCランク魔物討伐は完了しているのだが数が足りないせいでCのままなのだ。依頼を完了したときに討伐数もカウントされ、更新される仕組みなのだ。
こればかりはランクを上げたいギルドといえどもどうしようもないのだ。
依頼書を取った。
「受けられる依頼の西側のドラゴン系は受けても問題はないと思うぞ」
「本当?」
「ああ、うまくいけば一日あれば討伐できるだろうしな」
カウンターに行くとやはり怯えている受付嬢がいた。
「………。大丈夫か?」
「は、はい」
「これを受ける」
言って依頼書と久しぶりに冒険者カードを出した。
受け取った受付嬢は驚いていた。
なぜかジッと俺を見た。
「?」
受付嬢は俺の視線に気がついたのか慌てて処理をした。
「はい、お返しします。依頼は今日より1週間以内で討伐ですのでお気をつけてください」
「ああ」
なおも、じっと見ていた。
「なにか?」
「いえ、未完の貴公子様を拝見できるとは光栄でございます。ようこそハリーへ覇王様」
さすがに呆れた。
「というか…どこまでそれが伝わっているんだ…」
「世界中で有名になっております。かの〈未完の貴公子〉の二つ名をお持ちの方が伝説の覇王様の再来ということは」
「………。世界中ね…」
ため息が漏れる。
諦めるように依頼書とカードを仕舞った。
「二つ名を持ってるなんてさすが兄さんだ」
嬉しそうにしている海たちをたしなめるように言った。
「勝手についたんだよ。いつの間にか…な」
ギルドを後にした。
「討伐は明日から本格的にしようか。今日は移動に時間が食ったからな」
海たちは頷いた。
ギルドを出ると日は傾いていた。
そして何故かギルド前に人が集まっていた。人といっても獣人たちだが。
おれが建物を出た途端に集まっていた獣人たちが怯えるように後ずさりをしていく。
さすがにイラついてきた。
「さっきから何なんだ。人を見ると化け物みたく怖がるくせに興味があるってか」
「リュウ様」
キバが宥めにかかる。
「わかってる。俺は宿に戻る。海たちは夕食までに帰ってくればいいから自由でいいぞ」
「うんありがとう。何かあるのか聞いてみるよ」
早々に宿に戻ったおれはイラついた気分を治すのに修羅の手入れを始めた。
ゆっくりと丁寧に集中しているといつの間にか海たちも戻ってきていた。
「帰ってきていたのか」
「うん。その手入れ用具も兄さんの手作り?」
「ああ、今の修羅には必要ないんだけど気分転換にもなるし集中できるんで使ってるんだ」
「その床材も畳みたいだね」
「似せて作ったんだ。集中するには正座が集中できるし、やはり正座には畳が一番だからな」
「畳なんて久しぶりに見たわ」
海たちが代わる代わる座っていた。
「やっぱり兄さんは変わってないよ」
「そうか…?」
「うん」
「気に入ったのなら、しばらくそのままにしておこうか?」
「隆さんいいの?」
「ああ、かまわないさ。ただし土足厳禁だからな。汚れるときれいにするには苦労するんだ」
四人くらいは平気で座れる広さがある床材は時々寝転がることもあることも想定してある。
「そうそう、あの後、この町の人に聞いたんだけどやっぱり獣人だけあって気配察知が高いみたいだね」
「そうなのか?」
「うん」
「それは当然ですわ。元々わたくしたち獣人族は気配に敏感なのですわ」
エリーゼが納得して言った。
「俺が怖がられていたのもか?」
「ええ、御主人なら当然の反応ですわね。御主人は竜人族の覇気がヒューマであっても抑えきれないほどの強さなので過敏に察知するものほど恐怖で怯えるでしょう」
「覇気?」
「ええ、かくいうわたくしも御主人にお会いした直後はあまりの恐怖に動けなかったほどです。竜人族でも天突く力をお持ちだとリューイさんからお聞きしたので納得出来ましたわ、わたくし」
「そういえば確かにおびえていたな。あれはそういうことか」
「はい。申し訳ないことでしたわ。今はその覇気がわたくしには心地よいので平気ですが他の者には慣れるまでは難しいかもしれませんわ」
「そういえば獣人族たちは、昔は竜人族を闘人と崇めていたこともありましたな」
「ええ、それは今も変わりませんわ。獣人族にとって竜人族は憧れにも近い信仰があります。けれど実際に竜人族に会ったことがあるものは少ないので御主人の気配が竜王の覇気ともいえるものだとは思いもよらないと思いますわ」
「竜王…ね。そういえばリューイがそんなことを言っていたな。自分と番うということは竜王になることだとか。軽く冗談かと思っていたがあり得る話なのか…」
「リュウの竜人姿はすごく強いものね。竜王というのも納得だわ」
俺は額に手を当て呻いた。
「これ以上、王の称号はいらんわ。覇王でも十分持て余し気味なのに…」
気分直しに久しぶりに窓を開ける。
リュウ=クドウ=マリノス
職業=賢者30・王者26
HP=13689
MP=17532
力=2456
素早さ=1898
集中=2241
魔力=5874
魅力=32415
運=8500
特技〈抜刀術・剣術・体術・全武具習得・無詠唱・魔術付与・魔力操作・魔道具作成・使い魔召喚・使い魔疎通・使い魔共有・息吹(限定)=MAX・覇剣術・弓術=中級・竜魔法(限定)=初級〉
呪文〈水・炎・熱・光・闇・土・風・空間・聖・魔・回復=全最上級習得済・召喚=中級〉
スキル〈鑑定β・図鑑・言語自動翻訳・速読・暗記・道具収納Ω・装備自動変換・特技呪文補助機能・手加減・魔力消費最適化・即時自動習得・浄化・生成・魅了・完全防御・魔物浄化・転身・竜化(限定)・飛行(限定)〉
固有スキル〈覇王の末裔・管理者の福音・管理者の祝福・覇王の結晶・王者の証・叡智の結晶・覇王の覇道記(限定解除)・叡智の魔術記(現在使用不可)〉
EXスキル〈超回復・超吸収・自己栄養生産〉
「はぁ…。久しぶりに開けたが、色々増えてるよ…」
おれは自分の窓を開けて呆れるしかなかった。
限定ということは、竜人族としてのスキルか
自己栄養生産にタップした。
自己栄養生産=水分を摂取するだけで必要栄養分を周囲の魔素から摂取可能。高位の竜と竜人にのみ取得可能スキル。任意で切り替え可。現在切断中
周囲の魔素からの栄養摂取か。これのせいだったのか。しばらく水のみの生活だったのは…
「兄さん息吹って何?」
「ん?」
海が覗き見していた。
息吹をタップした。
息吹=竜人族のみ取得可能特技。等級によって使える種類と威力、範囲に差が出る。現在 使用種 炎・氷・毒・波動・音波
「ブレスだな。竜人時に使える特技だから限定が付いてるな」
音波なんてものもあるな。波動ってなんだ?
波動をタップすると魔法・特技強化強制解除とあった。
強制解除ってなかなか使えそうだな
そこまで見ていると誰かの腹の音が鳴った。
窓の外を見るともうすっかり夜だった。窓をとじる。
「食事をとってくるか」
一同は頷いた。
「もう腹が減って…」
俺はその覚の言葉に笑った。
「いえばよかったのに」
「すんません。なんか言いづらくて」
「気づかなくて悪いな。竜人化してからどうも腹が減りづらくなってるらしくてな」
「そうなの?」
「ああ、なにせ自己栄養生産なんてEXスキルが入ったせいか使ってなくても燃費が良くて少食になったんだよ」
「一時期、水しか飲まなかったのもそのせいなのね?」
「ああ、いまは切ってるから問題はないけどな。というわけで食事提案はしてくれるほうがありがたいぞ」
一階の食堂に降りて夕食を取った。一流の宿だけあり城で出る食事とほぼ変わらない料理だった。
「王への謁見は明後日になったから明日は一日魔物討伐に力を注げるな」
「リュウは最近体を動かせてないものね」
「ああ鍛錬はしてるけどそれだとできることが限られるからな。船の上でもできることなんて限られるし参るよ」
一行はその日明日の魔物討伐のため早めに休んだのであった。
その夜俺は悪夢を見た。
完全に悪夢だった。ウィリアムになる夢だった。
信頼していた幼馴染に裏切られ奴隷として売られる夢だった。
前世大賢者としての能力がありおそらく嫉妬したのだろう。
当時から見目もよく魔術師としての能力も高かったウィリアムは人気もあった。
それが災いしたのだろう。当時の裏奴隷屋に魔封じを施され売られたのだ。
当時奴隷には人権などない。
犯罪奴隷から人体実験用の使い捨てまで何でもありで、ウィリアムは売られた先が娼館だった。
いわゆる性奴隷というものだ。
見目もよくまだ一六歳という若さだったため娼館でも人気の男娼にされてしまった。
どんな夢か詳細を語る必要はないだろう。
人気の男娼な為日替わりで様々な女性と関係を持たされた。
女性との関係に辟易したころ一人の男が大金を払ってウィリアムを買った。
彼はウィリアムを奴隷紋と魔封じいう呪縛から解放してくれた。そんな夢だった。
さすがに寝覚めは悪すぎた。
明け方に目が覚めてしまい、傍で眠るステラたちを起こさないようにベッドを出る。
だが上に乗って眠っていたエリーゼは起こしてしまったようだ。猫のままで丸くなったままこちらを見た。
ひと撫でして洗面所に向かう。
鏡に映る自分を見て悪夢の影響だろう。姿が完全にウィリアムになっていた。
意識的に使ってないはずなんだが…
鏡を背に洗面にもたれた。
嫌な予感がしたのかもしれない。窓を開けた。
リュウ=クドウ=マリノス
職業=賢者30・王者26
HP=13689
MP=17532
力=2456
素早さ=1898
集中=2241
魔力=5874
魅力=32415
運=8500
特技〈抜刀術・剣術・体術・全武具習得・無詠唱・魔術付与・魔力操作・魔道具作成・使い魔召喚・使い魔疎通・使い魔共有・息吹(限定)=MAX・覇剣術・弓術=中級・竜魔法(限定)=初級〉
呪文〈水・炎・熱・光・闇・土・風・空間・聖・魔・回復=全最上級習得済・召喚=中級〉
スキル〈鑑定β・図鑑・言語自動翻訳・速読・暗記・道具収納Ω・装備自動変換・特技呪文補助機能・手加減・魔力消費最適化・即時自動習得・浄化・生成・魅了・完全防御・魔物浄化・転身・竜化(限定)・飛行(限定)〉
固有スキル〈覇王の末裔・管理者の福音・管理者の祝福・覇王の結晶・王者の証・叡智の結晶・覇王の覇道記(限定解除)・叡智の魔術記(現在使用不可)〉
EXスキル〈超回復・超吸収・自己栄養生産〉
予想通り覇王の覇道記が限定解除されてる。あの夢はコレのせいか、いつ解除していたのか気がつかなかったな
「眠れないのですか?」
小声でキバが入って聞いてきた。
「嫌な過去視をしてしまったようでな。…過去視というよりはスキルかもしれんな」
俺はそう言って掌から一冊の本を出した。スキル化した本でタイトルが覇王の覇道記と書いている本だった。勝手に手から離れて宙に浮く。軽く黒く輝いているように見えた。
「それは…」
「おそらくウィリアムにとって一番の忘れたい過去だったんだろうな。男娼奴隷時代は」
さすがにキバすらも声がかけられなかったのだろう。
「さすがに悪夢以外の何物でもないが、いろいろわかったことがある」
俺は右手首のアクセを外した。
「これがウィリアムにとって先天的にあった紋章ではなかったことだ」
キバを見た。
目が覚める直前に奴隷だったウィリアムを高額で買い取った人物がいた。
「これがウィリアムについた事情を知っているんだな、キバルグ=フェニックス」
そうキバこそ奴隷だったウィリアムを買い取り奴隷から解放した人物だった。
「……はい。ですが…」
キバの言葉を遮る。
「おれはお前に詰問しているわけではない。必要なことならいずれわかる時が来るだろう。これを使えばおそらくはわかることだ。何かを問い質すつもりはない。大切なことはそんな過去ではないからな」
「リュウ様」
「お前たちが真実、俺を必要としていることも心配してくれていることも大切な存在と思ってくれていることも理解しているし、知っている。それだけあれば十分だ」
おれは笑みを浮かべていた。不思議と内から何か力が湧いてきている気がした。
「おそらくはイヴと同じなんだろう。俺という存在が大切で何よりも必要なのだということが」
キバはお辞儀をしていた。静かに涙を流しているようだった。
しばらく無言だった。外していた右手首のアクセを腕に付け直す。本も消した。
「多分、何かが始まっているのかもしれんな。この紋章を軸にこの獣人国の北側で」
「北ですか…」
「ああ、北にある魔素だまり。あれが原因だろうな。記憶のスキルが限定解除された理由だ」
おれは姿を元に戻した。
「もう少し休む。起きるには早いしな」
「はい」
俺は洗面所を出てベッドに戻り休んだ。
今度は夢も見なかった。




