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新章です。
この章は比較的バトルが入れられたかと思うのですが…
バトルをもっといれようとしてつまずいてしまう気がします
5章 器と覇王
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獣人国の依頼を受けた数日後、皆の準備を待って行くことになったが一人だけ同行ができない人物がいた。
リューイである。
どうやらリューイのお腹にいる俺との間の卵が産卵の時期が近いのだという。
俺も付き添ったほうがいいのかという俺の問いかけにはきっぱりと要らないと言われた。
どうやらあの塒に戻りそこで産卵の準備のために産むまで籠るという。
元々あの塒は転変と産卵に適した場所でそのために用意したのだという。
産卵を終えた後、卵は羽化するまで竜人の里に安置されるという。その後もしばらく子は里で生活する必要があるとのこと。
里に戻る前に一度卵に触れてほしいという。それで父親と認識するという話なので竜人は不思議生命体だと思ってしまうこの頃だ。
産卵を終えたら俺にも自然と伝わるらしいので一度はあの塒に行く必要がある。
それまでは獣人国での依頼に集中してほしいと言われた。
出来た側室だと思う。
ちなみに海たちはリューイの腹に俺の子がいるとは思っていなかったらしいので驚いていた。
というのもほぼ体形が変わらなかったせいでもある。
しかもヒューマと違い卵生なので母体の影響も比較的少ないという。
産卵後一か月もあれば母体は十分元に戻るので繁殖期であれば問題なく受胎できるというから驚きだ。もっとも、受胎が可能であっても竜人族の男は基本的に生殖能力が低い事には変わりはない。それゆえにヒューマの血を入れる必要がある。
おれは竜人と化してもなおヒューマの特性はそのままなのでまだ繁殖期に入ったばかりのリューイに乞われればかなりの高確率で受胎してしまうだろう。
ちなみに受胎するには必ず竜化して行う必要があるのは竜人族が元々ドラゴンを祖としているせいだろう。
人型では絶対に受胎しないのは変わらないらしい。故に竜の涙が必要なのだ。
その竜の涙はどうやら俺の前々世の大賢者が竜人族に乞われて作った物らしい。リューイが里に一度帰った時に調べて判明した事実なのだとか。
そういう事実がありリューイは今回獣人国には行けない。本人は酷く残念がっていたが。
一か月もあれば刀や武器を作ることにも十分可能だったので先日作った武器を海たちに渡したところだった。
もちろん修羅は返してもらった。
皆の準備も整いおれは同行メンツを連れて城下町の転移室の前にいた。
今回の同行メンツはおれとクリスとステラとエリーゼの側室メンツ。護衛にエルナとタテとキバが。そして海たち勇者一行の四人というメンバーだ。
なぜ城下町の転移室の前かといえば獣人国へは船を使う。そう、バーミリオン号だ。
船はいつものようにブルーヴェル港町に停泊しているのでそこまでは転移を使うので転移室前というわけだ。
「ゲート用の魔道具はお持ちですよね?」
「ああ、念のために二つ用意してある」
「必要であればいつでも兵をお使いください。いいですね!」
「わかった、わかった。お前に絞られるのはたくさんだからな」
「タテ殿キバ殿そして海様達も我らの覇王様をくれぐれもよろしく」
海たちは頷く。
「俺たちはそのためにいるんだから」
「おまかせをフィニアス殿」
おれは居心地が悪かったがそれも仕方ない。心配をさせてしまったのは確かなのだから。
「フィニアス。何かあれば城の使い魔に連絡を取れ。後は頼む」
「了解です。お気をつけてください」
「ああ」
俺たちはそう言って送ってくれたフィニアスを後ろに転移室にはいりブルーヴェル港町に転移したのだった。
ブルーヴェル港町に転移して部屋から出ると使い魔のジークとラミレスが出迎えてくれた。
「覇王様お久しぶりでございます」
「ああ、ラミレスか。わざわざ出迎えに?」
「もちろんですよ。覇王様を出迎えないわけにはいきません!」
「ありがたいが通常作業に戻ってくれ」
「相変わらずですね覇王様も。御心配感謝いたします」
「ジーク、出港準備はどうなってる?」
「万事滞りなく完了しております。後は魔力を込めれば、いつでも出航できますリュウ様」
「ああ、早速だが予定通り出港準備に取り掛かってくれ。一時間後には出航できるようにな」
「了解です」
「さて一時間ほどでおそらくは準備が整うからそれまでは自由時間としようか。今から一時間後にはバーミリオン号に乗船していること。厳守だぞ」
俺はにっこり笑って言いきった。
「リュウはどうするの?」
クリスが聞いてきた。
「俺は船のメンテを兼ねてブリッジに行かないとな」
「じゃあ、一緒がいいわ」
「やめとけ。暇にしかならんぞ。行くのはブリッジだけじゃないしな」
「ブリッジ以外にもいくの?」
ステラは興味津々のようだ。
「ああ、だけど俺以外は入れない場所だからなついてきても締め出しを食らうだけだ」
「それなら…」
「どうせだから街で道中の菓子でも買ってきてくれよ。備蓄はあるけど菓子はあまり持ってきてないからな」
「そうなんだ…」
「あ、そうそう、これをつけていけ。身元ばれするとうざいからな」
クリスとステラに耳飾りを渡す。
「あら、可愛い」
悩みに悩んだデザインのアクセはそれなりにうまくいった感がある前世でも見覚えがあるバラの花をあしらったものだった。
「これって…」
「ああ、言ってただろ。認識阻害のアクセを作るって。そのまま耳に付ければ効果が出るが、その下にある穴に普通の耳飾りをつければ効果は無効化できる」
「二人だけですの?」
「まさか、四人全員あるに決まってるだろ。ここではお前には必要ない。とはいえ持っておくといい。向こうで活躍できるしな」
エリーゼにも同じものを渡した。
ただし全員色違いだ。クリスは青。ステラは白。エリーゼは赤。リューイは黒だ。予備に黄と緑があるがそれは収納されてある。
渡す奴が現れないことを祈るばかりだが…。
そして自由時間を貰ったほかのメンツはそれぞれ街歩きを楽しんだようだった。
就航予定時刻になり全員が船に乗り込んだのを確認してラミレス達に見送られバーミリオン号はゲシュタルト獣人国へむけて出航した。
高性能なバーミリオン号はエリル皇国よりも獣人国の距離が長いにも関わらず順調に航海していた。
魔道具な為全く揺れない船はリュウの魔力の影響から海上の魔物も弱い個体は近寄れず遭遇しても海たちが討伐するので順調すぎた航海だった。
この一か月の間、海たちは転移室を使い覇王国の辺境の魔物を退治してまわっていたためかなり上達していたので今回の同行の申し出を受ける形になった。
「バーミリオン号の魔物忌避能力に強弱をつけたのはうまくいったな」
「はい。前回の航海であまりにも強い忌避能力のために周囲の魔物が逃げたのは良かったんですが縄張りが乱れて結果的に魔物が密集してほかの海域の被害が大きくなりましたから、今回のメンテで影響を少なくできたのは良かったです」
「それなりに強い魔物と遭遇できるからレベル上げにはもってこいになったな」
かくいう俺も今回の船旅で弓術が中級になったのは御の字だった。
「さて、リュウ様。そろそろ獣人国の玄関港町バリーに寄港します」
「ああ、速度を落として慎重にな」
そう注意したのには理由がある。
獣人国の首都に一番近い港町だがこのバリーという港町は港が少し小さい規模でバーミリオン号がギリギリの大きさで寄港できる港なのだ。
この港町で俺たちは下船した後バーミリオン号はこの港町より西に位置するここよりも大きな港町へと移動することになる。
このバーミリオン号にも今回ゲートを設置したので使いやすさが上がったことは間違いない。
「下船の準備を整えろ」
「は」
「下船後は予定通り停泊申請をしている西の港町で待機だ。待機状態だと消費も抑えられるはずだしな。なにかあれば連絡しろ」
「は」
おれはキバを引き連れブリッジを出た。
甲板に出ると軽い潮風が吹き抜けていった。
「あ、兄さんもうじき到着って聞いたんだけど」
「ああ。小さい港だからな。寄港して下船した後ここを船は離れる。そのつもりでな」
「本当に小さいわね。港町というけど漁村な感じだわ」
俺はクリスを軽くデコピンした。
「痛い」
「言い過ぎだ。首都まではこの港で降りるのが一番マシなルートなんだから文句は言わない」
「これ以外だと山越えなのですわ。この時期に山越えはよろしくはないの」
「この辺りはもうじき冬季に入るはずだしな。寒暖差の少ないヴェリアス王国の首都やカイエルとは違うから魔物の生息も変わってくるだろうし注意が必要だな」
俺は言ってグランドサーチを使い周辺を大きく拡大した。
「グランドサーチね。これって確か魔素もでるんだっけ?」
「ああ、縮小すれば俺の魔力から獣人国の全体は見れるぞ」
「そんなに?」
「ああ、ヴェリアス王国もそれで全体を確認したからな。しかし、北部がかなり濃い魔素だな」
「本当ね」
「というよりも濃すぎる気がする。乱れはなさそうだから天然物なのだろうが…何かあるのかもな」
おれはその魔素の濃い場所を調べようと意識を強くすると突然右手首に激痛が走る。
痛みに驚き手首を握る。
その激痛から呪文の効果が消えてしまう。
「リュウ?」
「兄さんどうしたの?」
「……!」
激痛がやまないので覆っていた右手首のソウルオブサマサを外した。
そこにはいつもの肌色の聖印ではなく赤く血がにじんだ黒い聖印が浮かんでいた。
軽く黒く輝いているように見えた。
なんだ、この変化は…
「聖印の様子が変だわ」
ステラは見慣れていることもあり変化に気がついた。
滲んだ血が気になったのかステラは回復呪文を聖印にかけるが効果がない。
「え、回復しない?」
滲んだ血は雫を作り床に一滴落ちる。
その血は赤い血を作らず黒い血となり床を黒く染めた。
その黒い床に呪文の指示が出る。
聖呪文の解呪呪文だった。聖印にも出た。
「!」
これ以上はさすがに激痛が酷くなるので試しに聖印に下級の解呪呪文を押し当てる。
周囲はさすがに驚いた。自分に解呪呪文を唱えたのだから。
すると黒くにじんだ血は消え聖印も肌色に戻った。激痛も収まる。
何かに共鳴した…のか?
床の黒いシミを見つめていると嫌な気がした。この予感は大抵当たる。
「優美、この床の血を解呪してみろ」
「え、私?」
「ああ、解呪呪文は覚えただろう」
「うん」
優美は覚えたばかりの解呪呪文を唱えると床のシミはきれいに消えた。
一同はホッとした。
「今のはなんだったの?」
「わからん。だが何かに共鳴したようだった。さっきの魔素なのかもしれんな」
「いやな予感がします。リュウ様、上陸は見送ったほうが良いのでは?」
キバだった。
「そういうわけにもいかないだろ。獣人国には来訪を約束している以上違えるわけにもいかん」
「そうですが…」
「わかってる。お前にも感じているようにいい気はしてない。それにこの共鳴も何かを確かめる必要もある。放置するほうがやばい気がする」
そうなのだ。放置するほうが後々まずい気がしてならない。
「わかりました。全力でお守りいたします」
そうして船は無事寄港した。
ジークたちに見送られ俺たちは下船した。
「小さな町だからこのまま外に出るぞ」
「了解です」
「外で使うのね?」
「ああ、首都までは距離があるしな」
「隆さん、何を使うんですか?」
覚のその言葉に俺は笑みを浮かべた。
「俺の作った魔道具だ」
「きっと驚くわよ」
本当に小さな町だったその港町はすぐに出入り口に出た。
小さすぎて出入り自由だったのだ。
一応魔物よけの柵はあったのだが…。
おれは道具収納から颯を選択して取り出す。
「なんだか久しぶりに出した気がするな」
「実際久しぶりよね」
「そうね。エリル皇国以来だから」
「兄さん、これ自動車?」
「ああ、颯と名付けた」
「すげえ、この世界じゃ馬車しかなかったから久しぶりに見る自動車か」
海たちは嬉しそうにしていた。
「隆さんがつくったの?」
「ああ、一から作ったんだがかなり苦労した。駆動系がうろ覚えだったからな。バイクもあるぞ」
「バイクもあるの?」
「ああ、お前らなら乗れるかもな」
「私は前に乗るぞ」
「姉さんは前が好きだよな」
「ああ、あの速さは素晴らしいからな」
「でもこのサイズで全員乗れるの?」
「心配いらん。後部ドアの先は空間拡張されているから寝泊りできる広さはある。二十人ほどは乗れる」
「魔道具なんだ…」
「早く乗れ。出発できんだろが」
「運転されますか」
「ああ、後で変わってもらうかもしれんが」
「はい、いつでも変わりますので遠慮はなさらず」
一同は全員乗り込み獣人国首都ハリーへと颯を走らせるのであった。




