3ー3
変な所で切ってしまった感があります。
出だしが…orz
しばらくそのまま落ち着くまで待った。
「落ち着いたか?」
「うん。ごめん兄さん…」
「でもその姿はどうやって…?」
「転身というスキルがあるんだ。このスキルは姿を変えるスキルでな。過去の姿は魔力次第でいつでも完全再現できるんだ」
おれはそう言って元のマリノスの姿に戻った。
部屋を出ようとして扉に近づくと開ける前に扉が派手に開いた。
「リュウ終わった?」
「え、ああ」
驚いているとクリスを筆頭に女性陣が揃っていた。
「興味が湧いてのう。リュウの前世の兄弟とやらに」
「ふふ、海様にお会いするのは久しぶりですわ」
「兄さん。彼女たちは?」
「え、ああ」
さすがに居心地が悪い。頭を掻いた。
「彼女らは全員俺の側室だ」
「え」
「えええ!」
今日一番の驚きだったのだろう。勇者の女性陣は真っ赤になって驚いていた。
「第一妃のクリスティーナ=フォン=ヴェリアスと申します」
「第二妃のステラ=ルーシェですよろしく」
「第三妃のリューイ=ドラクドじゃ」
「うふふ。第四妃のエリーゼ=ゲシュタルトですわ」
それぞれに華麗なお辞儀をして見せた。
さすがに王族育ちな側室達だった。
「はぁ綺麗な人ばっかりだね。さすが兄さんだ」
「さすが隆さん。モテるのはどの世界でも同じなんですね」
「なんだそれは」
「本当のことだよね。兄さんに惚れてる人はあの世界でも結構いたから複数の側室とか不思議でも何でもないよ」
「そんなわけないだろ。モテた記憶なんざない」
海は首を振った。
「みんな陰で見ているくらいしかできなかったんだよ。剣道部のコーチをやっていたせいもあって学校では兄さんのファンクラブまで存在してたんだよ」
「そんなことは初耳だぞ」
「そりゃあね。隠していたらしいから兄さんは知らないよ」
「ほほう。リュウは前世でも女に人気じゃったか。さすがはわらわが選んだ番いじゃのう」
「なんとなく隠れてというのに納得できるわね」
「そうね」
「とにかく会って見たかったのはわかるけどお前ら…」
「ふふ、わかっておるわ。わらわたちはこれで退散するぞな」
「ええ、後でね」
クリス達はリビングに戻っていった。
その姿を優美は複雑そうに見つめていた。
「優美、どうした?」
「リュウさん香里菜さんのことは克服したのね…」
俺はその名を久しぶりに聞いて驚いてしまった。
「優美…」
「克服したのならいいの。安心したの。ごめんなさい、嫌な気持ちにさせてしまって…」
一同は香里菜という名に聞き覚えがあるのか俺を見つめていた。
さすがにその名を聞いて俺は冷静ではいられない。気持ちが泡立つのを実感した。
彼女を想うと今も胸が詰まり気持ちが沈む自分がいることに改めて気がついた。
「克服したとか、そういう事じゃないんだ…」
「兄さん…」
「忘れていられた。それだけだ」
「でも、彼女たちは知らないんでしょう。香里菜さんのことを…」
「ああ、彼女らは知らない。打ち明けられていないことは事実だ」
「それだと兄さんダメだよ」
「わかってる。いずれは打ち明けないといけないことくらい…。彼女らの想いに俺は甘えているんだ」
「知らないと彼女らはリュウさんから離れるかもしれないじゃない」
「ああ、おれは彼女らが俺以外では無理なことに甘えているんだ。わかっていても今はどうすることもできない」
俺は震えた。香里菜を想えば今も後悔と哀惜と消えない愛しさがこみ上げる。
優美はそんな俺の握りこんだ手を握ってくれた。
「私、ずるいわ。香里菜さんを想うリュウさんにホッとしながら嫉妬してる」
「優美…」
「私、リュウさんがここに存在してくれて本当に嬉しい…。大好きなリュウさんが変わっていないことが本当に嬉しいの…。変わってほしいくせしてするいの。ごめんなさい…」
「優美は何も悪くない。悪いのは俺だから。そんな優美を利用した俺が最悪なんだ…」
「利用されたいの、私」
「……相変わらず変わっているな優美は…」
おれは苦笑した。
「それはリュウさんだからよ。私も彼女らの中に混ざりたいわ…」
俺は首を横に振った。
「もっとこの世界を見ろ。おれに固執するな。世界を見て自分を見て、それでも俺でなければだめなら考えてやる。自分の世界を狭めるものじゃない。彼女らは俺が誰かの一人の者になれないことを全て承知で俺の元にいるんだ」
その後二階のリビングと食堂、浴室の時間制などを案内し一階に降りて転移の間とホールと客室、貴賓室、ダンスホールを案内した後地下にある兵士待機所と魔道具作成室などを案内した後、訓練室と鍛錬所に案内して武器の話題になる。
そこで初めて海が刀ではなく剣を装備していたことに話題が振られた。
魔導国では刀は存在しなかったのだ。
「珍しい武器だからな。なくても仕方ないのかもしれんが…」
「兄さんの武器のそれ、修羅だよね」
「ああ、この世界に転生した際にイヴから特別にと許されたものだからな。これ以外に替えの刀はない」
「だよね…」
「その刀に関してですが…」
「なんだ、タテ?」
「部下たちがその刀を何とか作って陛下に献上しようとしているそうですよ」
「献上?」
「ええ、陛下の愛用の武器が特殊な形の剣なので民たちが作ってほしいという嘆願書があったらしく、城下の腕利きの武器鍛冶職人が使い魔たちの陛下の知識を基に現在頑張って制作しているという報告がフィニアス殿より、昨日ありましたので近日には献上されるのではないでしょうか」
「初耳だぞ、それは」
「実は黙っていてほしいと頼まれまして…」
「民たちの嘆願というのは?」
「民衆は陛下と同じ刀という武器を持ちたいらしいのです」
「………」
「人気者なんだね、兄さん」
おれは笑みが浮かんだ。
「ありがたい話だ。しかし作る…か。それは考えていなかったな。よく考えれば鋼鉄より強く硬い鉱石はこの世界にはたくさんある。試しに魔道具で作ってみるのもいいかもしれんな」
「兄さん作れるの?」
「今更、聞くのかそれを?」
「だって…」
「そのアクセも俺の手作りだぞ。魔道具作成の中に鍛冶だって入ってるんだ。面倒だから使ってないだけで防具だけじゃなく武器だって作れる」
「兄さんってかなりチートだよね」
「あ、それ俺も思った」
覚が同意してきた。
苦笑を浮かべる。
「否定できないな。人生三つ分が俺にはあるし…。せっかくだしなお前らの分の武器を作ってやるよ」
「本当?」
「ああ、その代わりこれをお前に預けておく。刀ができるまではこいつで刀のカンを取り戻しておけよ」
俺はそう言って海に修羅を渡す。
海は受け取ったが複雑な表情だ。
「いいの?」
「貸すだけだ。だが修羅もお前ならいいらしいな」
「え?」
俺は事情を説明した。この世界の創造神に力を貰ったせいか修羅には意志があることだ。
「変な扱いをすれば機嫌が悪くなる。刀の使い手はわかるらしいな」
「でも兄さんは?」
「俺は恐らく道具作成にかかりきりになるから作るまでは修羅を使ってやれない。それなら使ってやってくれるほうが機嫌は良いだろうしな」
「わかった。丁寧に扱うよ」
「そうしてくれ」
海は早々に大事に修羅を腰に下げた。
「隆さん、私たちにも魔法を教えてもらえないかな?」
言ってきたのは優美と麗奈だ。
「魔法を?」
「ええ、この城に来る前に聞いたのよ。隆さんは世界でも屈指の賢者で使えない呪文のほうが少ないって」
「魔導国では教わらなかったのか?」
「教えてもらっていたのだけど理解が難しくて…」
「理屈ばっかりでうまく身に付かなかったのよ」
「そういうことなら側室たちと一緒に鍛錬したほうがいいかもしれんな」
「さっきの人たち?」
「そうだ。ステラとクリスの二人は術師で鍛えている途中なんだ。術師としては上級の力を持ってる。女性同士で気も合うだろうし城下町の図書館には上級の魔導書も揃ってる。使える属性と照らし合わせておすすめを聞いたほうが早いかもな」
「あとで紹介してくれますか?」
「もちろんだ。麗奈は賢者だというから空間魔法が覚えられるかもしれないな」
「空間魔法?」
「賢者の専売特許だ。空間属性はロストスペルが多いから俺しか教えられん」
「何ができるの?」
「空間魔法だぞ。結界から転移やいろいろあるが覚えていると便利だぞ」
「転移って瞬間移動みたいなやつ?」
「そうだ。だが魔力消費が半端ないから魔力を上げないと教えられない。鍛錬次第だな」
「がんばる」
「今度、全員に装備自動変換の特技の習得方法を教えておく。道具収納は持っているはずだな?」
「持ってるけど、装備自動変換って?」
「これのことだ」
おれは収納から覇王の剣を取り出し持った。そのまま素振りして見せる。
「前衛は覚えておくほうが便利だぞ」
「便利そうだね」
「覚はこれを習得できれば盾を仕舞える。身軽になれるぞ」
いろいろと習得の指針を示して再び二階に戻った俺たちは側室たちの部屋と三階には覇王専用のプライベートエリアがあることを説明し後をキバに引き継ぐ。
部屋はかなりの数が空いているので好きに選べたが彼らは比較的小さめの部屋をそれぞれ密集して選んだ。
なぜかと聞けば広すぎると落ち着かないとのことだった。
それは俺にも身に覚えがあるので納得だった。
今夜には彼らの歓迎として内々的に晩餐会を行うことを言った。
彼らは疲れたのか各々部屋で休んでいった。
俺は玉璽からいつもの服に替え書斎に入る。この書斎は小さな部屋だが三階に行く階段をはさんでリビングと反対側にある。この部屋のすぐ廊下の前には謁見の間の扉があり事務作業に適した場所にある。この部屋に入ったのには理由がある。
フィニアスから預かっている覇王にしかできない決裁書を見るためだ。
台地から帰還し体調が回復してからそれまでに溜めてしまった書類が多いので時間を見つけては見るようにしている。
フィニアスが意図的にこちらに回している節があるがこれも勉強と仕事を兼ねているので何も言わないでやっている。
そんな書類と格闘しているとノック音と共にキバが入ってきた。
「あまり根を詰めないようにしてください」
「わかってるよ。でも少しでも終わらせないとフィニアスに悪いしな」
俺自身、根を詰めているつもりはない。速読があるので少しため込んでも何とかなるからだ。
こんなところでも前世の学業が約立つとは思わなかったが。
そんな会話をキバとしていると開いている扉にノック音が響く。
「この部屋は何?」
海だった。
「どうした。部屋で休んでいると思っていたが?」
「うん、もう少し兄さんと一緒にいたかったんだ」
「そうか…」
「この部屋って書斎?」
「まぁそうだな。覇王専用の執務室だ」
「すごい本だらけだけどこの世界って紙の本って高いんだよね?」
「ああ。ここにある新しい本はこの国の歴史書が多いんだ。フィニアスが正しい歴史を残すにはここがいいと言ってな。他にも実務的な本もあるけどな」
「城の広さのわりにここは狭いんだね」
「まぁ、あまり使っていなかった部屋らしいからな」
「兄さんは、この世界で転生したんだよね?」
「ああ」
「今、何歳なの?」
「………。お前は確か一八歳か?」
「うん」
「じゃあお前のほうが年上だな。この体は一五歳だからな」
「え、一五歳なの?」
「この世界では十五で成人とみなされる。そんな驚くことか?」
「同い年くらいかと」
「はは、この世界では両親に恵まれたからな。生活環境も良くて早熟だったんだよ、おれは」
「でも不思議だね。この世界では一五年もたっているのにおれの世界では二か月しか経ってなかったんだよ」
「二か月?」
「うん。兄さんが事故に遭ってから二か月だ」
「それは仕方ないかもしれないな。世界が違えば時間の流れも違う。上位の世界ほど時間はゆっくりらしいからな」
「そうなんだ」
「ところでこの世界の母さんがお前に会いたがっていてな。会ってみる気はないか?」
「俺なんか会わないほうがいいんじゃないの?」
俺は首を振った。
「ここだけの話。母さんは天涯孤独でな。家族というものに敏感なんだ」
「なら、なおさら合わないほうが…」
「違うんだ。天涯孤独だからこそ、家族が増えるのは嬉しいんだ。お前のことを言ったら俺の兄弟なら自分にとっても子供だから逢いたいって言ってな」
「すごいね…」
「ああ、実際家族では最強だよ」
「でもこんな大きな子供なんていないよ」
「それこそ今更だな。俺は三人兄弟の末っ子でな。一番上の兄は異母兄弟になるから母さんとは血がつながらないんだけど、立派な親子で家族だ」
「そんな立派なお母さんなら会ってみたいかも」
「最強だからな。振り回されるのは覚悟しとけよ」
「うん覚悟しとく」
お互い笑っていた。
「俺、嬉しいんだ。こうしてもう一度兄さんと過ごせるなんて…」
「海…」
海は涙を浮かべていた。
丸めていた背をおれは近寄り軽く叩く。
「俺もお前とこうしていられることが嬉しい」
「本当に?」
「ああ。実はな、お前らが召喚される直前まで俺は体を壊していてな」
「え」
「いわゆる、ホームシックというやつでどうすることもできなかったんだよ」
「体を壊すまで追いつめられるホームシックって。兄さん、相変わらず追い込んでしまうんだね」
「はは。だからな、本当にお前らと会えたことが嬉しんだよ、俺は」
「俺、兄さんの為に何かしたい。なんでもいいから役に立ちたい」
「ありがとうな。その気持ちだけでも十分だがそのうちな」
「うん」
お互いが会えたことを喜び合った会話をしたおかげか海は落ち着き部屋に戻っていった。
数日後、母さんたち一家を交えて内輪向けの歓迎会が開かれた。
その日の歓迎会は海たちと皆の距離を縮めたのは言うまでもないだろう。
そして海たちはその日を境にその後、覇王の食客という立場を利用して覇王国の各地の辺境の魔物討伐に冒険者として活躍することになる。
少しでもリュウの役に立ちたいという海たちの思いからの行動だった。
その行動が辺境の地の覇王への忠誠が上がることにつながるのである。
海たちがリュウの元へやってきてから一か月が経つ頃、ゲシュタルト獣人国から覇王への緊急の依頼が舞い込む。どうやら魔物が即湧きする場所が出現したらしく獣人国では対処しきれていないらしい。
リュウはエリーゼのこともあり依頼の詳細を聞くためにバーミリオン号で獣人国に向かうことになった。
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