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「勇者召喚…?」
「それって覇王伝にあるあの勇者召喚よね…?」
「うむ、たしか異世界より4人の勇者を招くというあれじゃのう…」
「実在したんだ…」
女性陣が驚きの声を上げていた。
俺はといえば頭がフル回転をし思考に入る。
「魔導国は我が国とは最悪の関係だったな、フィニアス?」
「はい」
「確か…俺を魔王と呼び卑下していた…、だったな」
「そうです」
「………。魔王という名の俺を討伐するためか」
「おそらくは…」
「あの国は恐ろしいほどのヒューマ至上主義国家なはずだがどうやって勇者を説得する気だ?」
疑問に思った。
「仮にもヒューマのおれを魔王として討伐するにはどんな理由があると思う?」
「おそらく洗脳かと…」
言ったのはキバだった。
「ですね。千年前でもそうでしたから間違いはないかと」
同意したのはタテだった。
「……。フィニアス、至急歴代の勇者がどうなったのか調べろ」
「なぜです?」
おれは前世のライトノベルの鉄板ネタを思っていた。
「召喚された勇者は帰還したのか?」
「……そういう話は聞きませんね」
「意図的にその後の勇者の足跡を消しているのやもしれんな」
「その可能性もあり得ますな」
「ああいう国は勇者にウソをついてまでやらせる可能性がある。〈魔王を倒せば返せる手段がある〉とか言ってな」
「ありえますね」
「召喚された勇者についても情報がいる」
「カゲを使ってもよろしいですか?」
キバが言うカゲとは覇王の使い魔たちにいる諜報に長けた兵のことで隠密行動に最適な部隊だ。
「構わん。ただ、相手はあの魔導国だ。気を付けろ」
「はい、慎重に調べさせます」
「イヴに聞く必要があるか…」
「帰還したかどうかですか?」
「そうだ。おそらく異世界移動に関してはイヴにしかできないと思う」
「なぜそう思われるのですか?」
「転生する前に聞いたことがある。異世界の下界は神ですら手が届かない場所だと」
「ですがリュウ様は…」
「おれは異世界転移じゃない。異世界転生だ。魂のみが連れ戻された形だ。おそらくだが生きた人を簡単に移動させる術はないかもしれない」
「帰れない可能性が高いと?」
「ああ、召喚に関しても知っているかもしれない」
「聞いてみる価値はありますね。ですが簡単にきけるものですか?」
「いや、簡単ではない。イヴからこちらに来る分は問題ないがこちらからイヴに声をかけるにはおびただしい魔力がいる。この場合は俺が、な」
「難しいのですか?」
「いや、そうじゃない。俺の全魔力を使っても会話できる時間は一、二分ほどだろうな」
「つまり聞いた後、リュウ様は身動きできなくなると?」
「そうだ。魔力を使い切るなんてことはここ最近では浄化スキルくらいしかなかったからな。二日ほどは無理だろうな」
「わかりました。準備を整えます」
「頼む」
「リュウがくれたあの通信用ブレスレットと同じ?」
「ああ、性能は段違いだけどな。というよりもイヴからもらった指輪を参考に作った物だから劣化版といったところか」
「その指輪の性能?」
「そうだ」
「本当に人にできんのじゃろうか…」
「わからん。だが、人にできるとすれば一つだけ可能性のある属性があるな」
「もしかして、空間魔法ですか」
「ああ。ゲートの応用でできる可能性があるな。行先を異世界に設定することができれば、だがな」
「もしそうならリュウ様にもできる可能性がありますね」
「かもしれんが、一人では難しいな。消費最適化を持つ俺でさえ、神界にいるイヴに話すだけでもおびただしい魔力消費なのに異世界へとなるとな」
「魔導国ならではということですか」
「秘匿している魔方陣でもあるのだろう。作ったとすれば大賢者以外では無理だろうがな」
「ですね」
「どちらにせよ今の俺には無理だな。もっとも覇王武具をもっと集めて封印されている能力を解除できれば話は違ってくるかもしれんが」
「まだ何か封印されている能力があると?」
「ああ、一つだけ気になる属性がある」
「何の属性なの?」
「時空だ」
「!」
「城の封印を解いたときに気になったんだ。空間結界があったにしては森に時間が流れていないような感じだったからな」
「御主人、我が国には覇王装備がつたわっておりますの。今回私の輿入れが成れば父上はその装備を手土産にするおつもりでした」
「そうなのか?」
「はい」
「そういえば魔導国にもあると聞いたことがありますが噂でしかありませんでしたからな」
「また厄介なところにあるんだな」
「できれば各地にある覇王装備を集めたいわね」
「まぁそれは使命ついでだな」
「準備が整ったようです」
雑談をしているとキバが割り込んできた。
「わかった」
俺は早速背もたれから離れて座りなおし指輪の手を握りこむ。
いつもの状態異常回復のような微細な魔力ではない。
通信には強大な魔力と繊細な操作がいる。おれは集中のために目を閉じる。
【イヴ神よ、聞こえてるか?】
【はいどうしました?】
【一つ聞きたい。勇者召喚を知っているな?】
【もちろんです】
【召喚された勇者は異世界に帰還はできるのか?】
【出来ません】
【確かか?】
【はい召喚する異世界は上位の世界故、落ちた水が拾えないのと同じでこちらからの帰還はどのようにしても無理です】
【そうか、それが知りたかった】
【こちらからも言いましょう。召喚された勇者の世界はかつてあなたがいた世界。地球のニホンからの召喚です。上限は四名】
さすがに驚いた。
【確かなのか?】
【はい】
【ありがとう】
【いつも心は貴方と共にあることを覚えておいてください。たまには逢いに来てくださいね】
【ああ】
通信を切った。
一気に脱力が襲う。背もたれに体を預けた。
荒れた息を整え一息ついた。
「………。日本からだと…」
「どうだったの?」
「あ、ああ」
あまりの情報に驚きから放心していた。
思いのほか魔力が残っているらしい。
窓を開けた。
MPは二十だけ残っていた。
「ギリギリ残ったな…」
ホッとした。残るのとゼロでは大きな違いがある。
「残ってよかったです。準備が杞憂に終わったことがなによりです」
「ああ」
「しかしリュウ様、ニホンとは確かリュウ様の故郷…」
「そうだ。召喚された勇者はどうやら同胞らしい。しかも四人。帰還できない以上この世界に留まることになるが…」
「やはり勇者の情報がいりますか。ご心配になっておられるようですし」
「そうだな。同郷となると気になる」
「そうですね。洗脳される前にこちらに引き込められれば、向こうを弱体化させつつこちらの戦力が見込めるかもしれません。勇者ですので」
「というよりも上位の世界からの召喚という話だから強い潜在能力は当たり前なのかもしれないな」
「上位ですか」
「ああ。なんにせよ勇者の情報が集めるのが先決だな。引き込むのに同郷という手を使わない手はないしな」
「魔導国の奴らに知られず、かつ勇者と接触することはうまくいけば十分ある。日本語を使えばいいんだからな」
ふっと笑みを浮かべた。
「ニホンゴですか」
「ああ、故郷で使っていた文字と言語だ。俺らにしか読めん」
「そうですね。言語翻訳スキルはレア中のレアスキルですし習得しているほうが珍しい」
「良い手段です」
「だろ。準備を急がせろ。勇者に送る手紙は俺が書く」
「了解です」
数日後リュウの元に勇者の詳細がもたらされた。
その詳細を見たリュウは驚愕し何が何でも勇者を引き込む決心をしたのだった。




