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異世界に戻った異世界賢者の備忘録  作者: 夏
三章 竜人姫と賢者
36/98

外伝 夢王女

クリスティーナのピックアップです。


うまく書けているといいんですが…


今は頑張ってステラ編を書いている途中です。

ステラ編の投稿は未定です。

早めに投稿できたらいいな


外伝 夢王女


深い山に囲まれた森の中で一心不乱に魔法を唱える女性がいた。

『ファイアボール!』

遠巻きにある的に火の玉が着弾して的を燃やすが的は不思議な光に包まれて何も変化が起こらなかった。

女性は後方に椅子に座って読書をしている女性を見た。

「命中率も上がったし威力も申し分ないわね。やっぱりもうここに来る必要はないわねクリス王女」

「でも……」

「何が不満なのかは知らないけど非常用の魔法としては十分よ。後は自分なりに努力するしかないわ」

「………」

「とにかく明日で王都に戻るんだから今日はここまでにしなさい。そして国王から依頼された魔法修行もこれで完了よ。借りはちゃんと返したらね!」

言外に二度と来るなと言われてしまったクリスだった。

「はい。ありがとうございました」

「ところでさ、王女様は今もおかしな夢を見ているのかしら?」

「おかしな夢?」

「おかしな夢物語じゃないの。自分を危機から救ってくれる人が現れるなんてご都合的な夢物語でしょうが」

クリスは真っ赤になった。

「私がどんな夢見ていたって関係ないでしょう!」

「あのね、いい加減に目を覚まして現実を見なさい。王女に近寄ってくる男なんて地位と名声とカネ目的なんだからいい加減に現実を見ないといいように騙されるわよ」

「くっ……」

クリスには否定できなかった。

「それにね、あんたが城に帰るころには間違いなく婚約者ができているわよ。公爵辺りの男がね」

「お父様はそんなことしないわ!」

「そうかもしれないけどそろそろ時間がないわよ。普通の貴族は成人した時点で婚約者がいるものよ。成人した時点でお試し期間として相手の家に行くものだけどあんたは十七にもなってるのに婚約者どころか恋人すらいないのでは心配されるものよ」

クリスにも十五歳の時点で婚約者はいたのだが正式に決定する前に相手の公爵家が不正を働き取り潰しになって以来、釣り合いの取れる婿候補がいなくなってしまったためクリスに婚約者はいない状態が続いているのだ。

ひとえにクリスが片っ端から相手を拒否するという事情もある。


そうして翌日、クリスは魔法を教えてもらった師匠の家を後にして王都の城への旅路についた。


師匠の家のあった場所は辺境の地でヴェリアス王国の最南端に位置する場所にある。

そこからの帰城なので早くても一週間の道のりはそれなりに長旅である。

護衛騎士を六名引き連れての旅はそれなりに安全なはずなのだがクリスの旅は安全とはいいがたい旅になった。

道中で盗賊に襲われたからである。

馬車があまりにも豪華すぎた。幸運にも盗賊を撃退できたが代償が大きかった。

護衛騎士の半数の三名が酷いケガを負ったのである。

ポーションでは回復が追い付かず、近隣の村の教会でケガを負った騎士は静養することになったがクリスはそのまま滞在するわけにはいかなかった。

というのも実母の命日が一週間を切っていたからだ。

予定が詰まっていたのである。

仕方ないので残った騎士たちで滞在していた村を出た。

だがその判断は間違っていたことを後で痛感することになるのだがその判断は良し悪しであった。

村を出たからこそ道中でリュウに助けてもらったのだから。

実はクリスが一時的に滞在した村こそリュウの故郷だったのだが当時は知る由もない。

けが人をリュウの回復魔法で回復することもできたのだが村長が気を利かせたのである。

王女一行に目をつけられてはリュウの幸先がよくないという判断だった。


早々に目をつけられていたのか村を出て二時間ほど進んだころ盗賊が再び襲ってきた。

真っ先に馬車を引いていた馬の脚をやられ取り囲まれた。

馬をやられたことで巻き添えを食う形で馬車は傾いた。

このままではやられてしまうので馬車から杖を持って外に出るといつの間にか周囲に接近を許していたのか予想以上に盗賊たちがにやけ面でこちらを見ていた。

それどころか盗賊どもはひどい悪臭を放っていた。

 こいつら臭くてたまらないわね

「金目の物を出しな!」

「ひひひ、上玉がいるぜ!」

だが数が多すぎた。あっという間に窮地に立たされてしまう。

クリスもただ黙っていたわけではなく魔法を使って撃退を試みていたのだが防魔対策がされてあるのか思うように攻撃のダメージが伝わらなかった。

次第にMPが枯渇しかけてくると盗賊たちは余裕さえ見せるようになるが時間がかかりすぎているせいでイラついてき始める。

やがて我慢も限界だったのか盗賊たちはクリスの生け捕りをやめて皆殺しに切りかえる。

その殺気を感じたクリスはさすがにもうだめかとあきらめかけた時だった。

正面にいた盗賊三人がいきなり床に倒れ伏し地面を鮮血で濡らして死んでいた。

「え」

驚いている傍から一瞬の煌めきと共に側面にいた盗賊も倒れた。

その時クリスは前方に黒髪の若い男性が立っているのに気がついた。

見たことのない形の剣を握って背を向けて立つ男は再び動き出した。

といっても2・3歩前に踏み出すとその先にいた最後の盗賊たちに剣を軽く振っただけでうめき声をあげて倒れていった。

軽傷で済んだものはその場から恐怖のあまり逃げ出してしまった。

剣についていた血糊を振り払い鞘に納めると彼は声をかけてきた。

「大丈夫か?」

張りの通った声はクリスには心地よかった。

クリスは黒髪の彼に見とれてしまった。

慌てて護衛騎士が答える。

「助かったよ、君は?」

「俺はリュウ。カリガまでの道中悲鳴と争う声が聞こえたんで賊だろうなと」

さすがにクリスは答えた。

「ありがとう命の恩人だわ」

笑みを浮かべた。

だが彼はその笑みにはいい印象はもたなかったのか冷淡だった。

「君、責任者だろ」

肯定すると彼は呆れているようだった。

「こんな辺境の悪路でこんな豪華な馬車に乗って護衛が三人というのは少なすぎる。盗賊に襲われてくれと言っているようなものだな。それでなくともこの辺りは魔物でなく盗賊がよく出る地域なのにうかつすぎるな」

もっともな意見だった。

痛い所をつかれてしまった。

彼はそういうと馬車や馬を治してくれた。

手早い動作だったこともありクリスは彼に再び見とれた。というよりも見惚れた。

 動作に気品を感じるわ。一般市民ではなさそうね。それにしてもなんて素敵…

一目ぼれしてしまったクリスだった。

馬車と馬を治してくれた後、彼は立ち去ろうとしていたのを慌てて引き留める。

このまま別れたくなかった。

もっと彼を知りたいと思った。何よりもこれだけのことをしてくれたのに自分たちは何も今は返せないことが悔しかった。

王家の沽券にかかわると思った。せめて次の町まで送り届けたいと思った。

彼は渋々クリスの提案を受け入れてくれた。

道中、事情を聞くとどうやら貴族のようで、成人の儀を終えたので冒険者になるために家を出たばかりだという。

クリスは少し驚いた。

一五歳には見えないほど落ち着いていたからだ。しかも家を出るということは次男か三男坊ということにすぐ気がつく。

クリスは少し打算が働いた。もっと彼を知りたいと思った。

あわよくば身元を調べて自分の婚約者にできないものかと思った。

なによりも彼ともっと一緒に居たかった。


こんな風に思ったことは今まで一度もなかった。


その後次の町で冒険者になった彼に護衛を引き受けてもらったクリスはそばに居られると純粋に喜んだ。

そうして一緒に旅をするうちにクリスは彼しかいないと思った。

王都に到着して別れが来ると彼の意外な身元が判明する。

この国でも知らない者は世間知らずと言われる『英雄エルド=イルラーシャ=フォア=マリノス』の次男坊という。

噂に聞いたことがあった。マリノス公の次男坊はマリノス公の知識や武勲をそれ以上に吸収した天才児で冒険者ギルドから二つ名の貴公子を貰うほどの気品と教養があり、強いという。

それを知ってクリスは覚悟を決めた。彼を逃がしたくないと。

そう思った瞬間、行動に移していた。クリスは彼の唇を強引に奪った。

王都の衛兵たちの目の前で、だ。


彼の唇は思う以上に柔らかかった。

さすがに茫然自失に陥ってしまった彼を尻目にクリスは想いを告げた。

「わたし、あなたが好きよ。だから逃がさないから」

嬉しさから満面の笑みが浮かんだクリスだった。



その後、彼が伝説の覇王様の転生者としってもクリスの想いは変わらなかった。



次回新章です。

今までで一番短い章になります。


猫と前世


タイトル通り主人公の過去にせまる章かと…



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