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少し長くなってしまいました(^_^;)
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エリル皇国の城を訪問し諸報告を交わした翌日予定通り首都エリルを出た。
もちろん例の車でだ。
首都を離れてすぐ台地方面へと向かったのだがその途中立ち寄った平原で像を見つけた。
只の像ならば素通りしたのだが立ち止まったのには理由がある。
像は先代覇王ウィリアムの像だったからだった。
じつはこのあたりウィリアムの時代において激戦地だった。
人と獣人国との争いが激しかったのだ。
その戦地の慰霊と平和を願いウィリアムの像が建てられた。
この平原、像が立っているのだが比較的魔物が多い場所で人通りが少ない。
魔物はそれほど強くはないので人はこの像を目印に旅をするのだという。
高名な司祭が像建築に携わってたとかで魔物忌避の効果がある像だった。
この像のおかげで旅人がひと休憩する場所になっていた。
休憩をすれば当然のように人は集まる。
像を中心に小さな町が出来上がったのだ。
おれはこの像の下にゲートの魔道具を設置することに決めた。
非常用の意味合いが強いゲートだったのでこの場所には高ランクの警備を付けた。
当然ながら関係者以外使えない。エリル皇国にはカードを誰にも渡してはいないので非公開のゲートになる。
ついでに像の魔物忌避の効果が弱まっていたので強めることも忘れなかった。
像のある街を離れた後エルナに聞かれた。
「移動手段の確保か」
「ああ、非常用にな。首都にも近いからちょうどよかった」
順調に台地へと進む。
そうして台地との境になる山の入り口に到着した。
この山の内部は車という大型の移動手段では入れないのだ。
休憩に置くことはできる場所はあるだろうが移動は難しい。道が狭いのだ。
小型の馬車でやっと通れるという幅なので大型に当たる車では無理だった。
中に入る。
「山に到着したぞ。この山を抜けるまでは徒歩だ。身軽になれよ」
「了解です」
実は召喚した三人の兵士はそのまま同行している。
エルナが同行しているほうが警備しやすいとのことでそのままになった。
エルナに警備関係は一任している。俺が仕切るより適材適所だ。
事実三名とはいえ兵たちをうまく使っている。
エルナはクリスが覇王城に来てから三日に一度は城に顔を出して城の兵たちと連携を図る訓練をしていた。
この三名も訓練に参加していたメンツだった。
全員車から降りるのを確認してから車を収納して皆を見た。
徒歩なので当然戦闘も考慮に入れての装備だ。
「大丈夫だな。出口までは徒歩になる。一本道という話だがそれなりに坂道だから無理せずに行こう」
エルナたちは頷いた。
「先頭は私が行くからしんがりは頼む」
「背後はお任せください」
タテが言ってきた。
俺は頷く。それを見届ける前にエルナは歩き出した。
兵たちが後ろを続きその後にクリス達が歩き出しそれを見届けて俺も歩き出した。
二時間ほど魔物を駆逐しつつ山のぼりを続けるとひらけた場所に出た。
ちょうど昼を少し過ぎたころにひらけた場所に出たので都合がよかった。
「広いからこのあたりで昼休憩をしようか」
俺はそう言って車を出した。
「そうね。ちょっと疲れたわ」
俺は先が気になったのでミドルサーチを使って周囲の地図を確認した。
時間的にそろそろ山も終盤に差し掛かっているはずなのだ。
「リュウ。どのくらい進んだ?」
エルナも気になっているようでミドルサーチを覗いてきた。
「ああ、もう一息で台地に出るな。姉さん、少し先行して様子を見てくるから後を頼む」
「一人では危険だろ」
「大丈夫」
俺はいってバイクを取り出した。バイクにまたがりゴーグルを出して目を覆う。
魔物忌避機能を発動させた。
「すぐに戻るから」
安全装置を解除して発進した。
山道なのでスピードは出していないがそれでも徒歩より早いのでサクサク進んだ。
曲がりくねる山道を進むこと十五分。
徐々に山道が広がり山道の終わりが見えた。
台地を確認してから引き返した。
十五分ほどなら一時間もあれば着くか
車のある広場に戻った俺はバイクとゴーグルをしまい車内に入る。
「リュウ、どうだった?」
「ああ、後一時間ほどで台地に出れそうだ」
各々昼休憩をしていたようだ。
クリスが手招きをしてきた。
俺は苦笑しつつクリスの手招きに応じるようにステラとの間に座った。
いつもの座り方だったからだ。
座るとタテがすぐに食事を持ってきた。
腹を宥めるようにスープをとる。
ホッとして一息をついた。
そんな俺にタテは声をかけてきた。
「台地に出れば移動も車を使うのでらくになりますからゆっくり時間をとってください」
「ああ、さすがに坂道は疲れるな」
「そうね」
向かい側に座るエルナが口を開いた。
「山道なだけあって飛行型の魔物が多かったな」
「飛行型はこういう場所に多いから対処に慣れないと大けがにもなりうるから注意する必要もあるしな」
「ふふ。おかげでレベルが上がったわ」
食事をとりながら俺は頷く。
「弓なんて久しぶりすぎてまいったよ」
「この世界に来てから初めて使ったと言っていたなリュウは」
頷く俺を見てエルナは笑った。
「せっかくの弓も使わないと慣れないからな」
「あれも先代覇王様の武器?」
「ああ」
「やっぱり伝承の通り先代覇王様は魔道具の付与に優れていたのね」
「どうもそのようだな。前衛というよりは後衛でのフォローに向いていたらしいな。覚えているスキルも剣以外は守備ばかりで使えそうな前衛スキルはあまりない」
「守備は我ら使い魔が徹底的に教えましたので残っていて何よりです」
「そうなのか?」
頷くタテをみて納得した俺だった。
「持っていた剣術〈覇剣術〉も中級になった途端全て使えるようになっていたから微妙だ。使えるスキルは完全防御と装備自動変換くらいだな」
おれは食後置いてある紅茶を取り飲んだ。
「今世で覚えた奥義級の技は全て抜刀術で括られているからほかの武器に落とせるようにやっているところだ」
「それはうまくいきそうなのか?」
「ハッキリ言って難しい。剣はともかく他の武器では落としどころに困っている技のほうが多い」
「そうなんだ…」
「刀は元々対人や殺傷能力に長けた武器だからな。取り回しが違う槍や弓では無理だ」
「やはり対人向けの武器なのかリュウ」
「ああ、元が人同士の戦争から発展し開発された剣術だからな。特化しているのは対人だ」
言って俺は立ち上がり皆と距離を置いたところに俺専用の回復型的を出した。
刀では破壊してしまうため回復型だ。
「懐かしい物か出たな。父が作った的じゃないかまだ残っていたのか」
「父さんが俺のために新たに作ってくれたんだ。すぐに壊すからとおれが後から自動修復機能を付けたらいい感じになった」
修羅を抜き的に対峙する。
「こうして抜いただけでもわかると思うが刃の部分が反射しやすいだろう」
「ああ」
「この反射を使えば目を欺きやすい上に刀身がこの世界の剣に比べて薄いから敵の正面に立つと刃の部分が見えずらい」
「先手を取りやすいのか!」
エルナのその声に俺は頷いた。
「しかも薄いからその分軽い。この世界にあるレイピアと変わらない速さが出る。デメリットとして軽いからこそ守備には弱く、振り方を間違えば殺傷力に難が出る」
俺は軽く的に修羅を振った。
それだけで的は袈裟切りに斜めに割れるように両断して見せる。
「それを補っているのがこの刀の材質と切れ味だな」
「そういえば覇王系の他の武器は持てないがその刀だけは私も持てたな。意味があるのか?」
エルナは言って立ち上がり俺の修羅を持った。
「意味はないとおもうぞ。持っている経緯と付与した人物が違うからそのせいだろう」
「経緯って?」
ステラが聞いてきた。
「覇王系の装備は元が先代覇王の持ち物で自身が譲渡不可を付けたんだろうな。だから収納の中に保存されていたものだった」
「これは違うのか」
「修羅はもともと俺の持ち物だ。この世界に帰還したときにイヴの手で一緒に召喚されたものだからな。素材もこの世界では生成不可能な金属でできていて魔術付与もできない」
「できないって。でもそれには付与がされてあるわ?」
クリスが目ざとくいった。
「できない素材だ。この世界で鉄が付与できないのは当たり前だろう?」
「確かに鉄は付与できない素材だな」
「修羅の素材は鉄だからな。付与はできない。もっとも只の鉄でもないけどな」
「鉄なの?」
一同に驚かれた。
「ただの鉄じゃないとは?」
「それは鉄をさらに鍛えた鋼鉄という素材だ。水にも強く耐久にも優れているんだ。俺はそれじゃないとだめだからな。イヴが付与をしてくれたんだ」
「え」
さらに驚かれる。
「イヴ神様直々に付与されたものなの?」
「ああ、だから付与に状態保全と福音の付与と強化がある。福音とは浄化スキルと回復呪文のことだからその二つは強化される機能だな」
「回復呪文の強化なんて聞いたことがないわ」
「そうね。浄化スキルには魔物には絶大な効果があるという話だからすごいわ」
おれはエルナの手にあった修羅を返してもらった。
自分の刀が身内とはいえ他人の手にあるのは落ち着かないのだ。
「イヴの依頼が魔物討伐と浄化だからな。当然の付与だと思うぞ」
「だからなのかいつも腰に下げているのは」
俺は首を振った。
「それもあるけどおれは刀が腰にないと落ち着かないだけだ。姉さんだってそうだろ」
言って俺は修復された的をしまう。
「そうだな」
おれは返してもらった修羅を見る。
最近気がついたのだがこの世界に来てから修羅に妙な気配が混じるのだ。
魔力でもない気配なので平時意識を修羅に向けないと気がつかないのだが人に修羅を渡した後に強く醸すことが多い。
そういえば最近忙しかったから手入れをしていないな
「………」
おれはその場に手入れ用の床材を敷いて正座をした。前に修羅を置く。
横に手入れ用の道具を取り出し置いた。
修羅には状態保全が掛かっているので手入れは要らないのだが時折するようにしている。
妙な気配をかもしたときに手入れをやると修羅が落ち着くのがわかるからだ。
愛用されたモノには意志が宿るというから修羅にも意志があるのかもしれんな。
柄の紐をほどき刀身をさらす。ゆっくりと刀身を見つめた後、歪みや傷がない事を確認して緩んでいた柄ひもを固く結びなおし結い上げる。柄を元通りに戻し刀身を綺麗にして鞘に納める。
最後に鞘ひもを結びなおし両手で横に持ち上げキスを落とした。
それを合図になのか修羅は落ち着いたようだ。
「ふぅ…」
手入れ道具をしまうと一同の視線を浴びていたことに気がついた。
立ち上がり修羅を腰に差して床材をしまう。
「いきなり手入れを始めるとか…」
エルナに呆れられた。
俺は頭を掻いた。
「人に渡すと修羅が落ち着かなくなるんだよ。最近気がついたんだがどうも意志があるような気がしてさ」
「意志?」
「ああ。イヴ神の付与だからありえなくもなくてさ」
「最後のキスも?」
クリスがジト目で聞いてきた。
「うん?まぁ、そうだな。あれをすると修羅が落ち着きやすいというのも事実だがあれは手入れの癖だ」
クリスが何を思っているのか不毛だと思いデコピンをした。
「痛」
「……。修羅相手に嫉妬か?」
「そ、そんなんじゃ…」
言っていることと態度がバラバラだった。明らかに図星で慌てている。
俺は呆れた。
が、それもクリスらしく愛おしいと思った。ステラの横に座りなおしステラの肩を抱いてクリスに手招きした。
クリスは赤い顔をしながらも俺の横に座ってきた。
クリスの頭を抱え肩に寄せる。
「困った奴らだ。お前も修羅もよく似てるよ。嫉妬深くてな」
「悪かったわね。どうせ…」
クリスの言葉を遮る。笑みがこぼれた。
「手間がかかる可愛いやつらだよ。まったくな」
その言葉でクリスは機嫌が直ったらしい笑みを浮かべていた。
「私は…?」
ステラがおずおずと聞いてきた。
「傍にいると落ち着く」
それを聞いたステラは笑みを浮かべる。
しばらく体を休ませた。
ひと休憩した後1時間ほど登山を続けるとやがて山の終わりである台地への入り口が見えた。
「登り切ったな」
見届けるように俺はミドルサーチを使った。
このミドルサーチは地味に便利で使うと必ず正確な方角を示し意識すれば北を指し示す機能がある。それは魔道具につけたものも同様で迷わずに済むのだ。
「依頼された村は出口から北西だったな」
「はい、ですがこの馬車跡が村に続くのでは?」
「可能性は高いがサーチで確認しながら進むほうが迷わずに済みそうだ」
「このまま歩くの?」
「疲れたのか?」
「少しだけ」
「休憩というわけにはいかないがこれだけ広い台地なら移動は颯でも問題はないか」
おれは車の颯を出した。
「運転は私が致しますのでリュウ様は中で休憩してください」
「前には私が乗る」
タテの提案に乗っかるように言ったのはエルナだった。
「悪路の可能性も大いにあるから気を付けろよ」
「はい。お任せを」
クリスが我先にと車に入っていった。
俺はそれを見つつ入ると拡張された部屋内の隅にあるいつもの長椅子に向かった。
長椅子が隅にあるには理由がある。飽きないようにと窓があるからだ。
その窓の外を見る。全員乗り込んだので外の風景が動き出した。
台地の様子が少し知りたかったのもある。
ジッと外を見つめているとステラから声が掛かる。
「リュウ。飲み物を作ったから飲んで」
「ああ、ありがとう」
「おいしくできてるといいけど…」
「ちょうど喉は乾いてるからありがたいよ」
俺はそう言って長椅子に座る。
それを待っていたかのように傍にクリスが座った。手には軽く菓子があった。
一口飲んで感想が出た。
「……おいしいよ」
さすがに疲れていたらしい。
慣れない弓を使ったせいかもな…
今回の旅でいろいろと弓に関して鍛錬が進んだのは僥倖だった。
課題が出たな。だが魔法と融合させて弓を打ち出せば威力がでたのは嬉しい発見だったな
「山登りは地味に疲れるわね」
「そうだな。山登りに慣れていないとつかれるな」
「ねぇリュウ。今日はどうして弓を使ったの?」
「そうね、魔法でもよかった気がするんだけど何かあるのかしら」
両脇に座っている二人は疑問に思ったようだ。
「確かに魔法のほうが効率は良いだろうな」
「だったらどうして?」
「それは単純に魔法三人もいらないだろ。それに俺と皆の力の差がありすぎるから皆のレベルアップというのもあるな」
「それだけじゃないの?」
「俺の性分でもあるかな。武器を持っている以上は使えるようになっておきたいというのもあるし実戦でないとわからない部分というのもあるから魔法も居る、前衛もいるというのであれば必然的にサポートに回るほうがいいと判断したんだよ」
同行しているほかのメンツの技術も上がるしな。と加えた。
そして俺は気になったことがあるのでステータス窓を開けた。
リュウ=クドウ=マリノス
職業=賢者28・王者23
HP=12574
MP=15891
力=2000
素早さ=1800
集中=2000
魔力=5000
魅力=20000
運=8500
特技〈抜刀術・剣術・体術・全武具習得・無詠唱・魔術付与・魔力操作・魔道具作成・使い魔召喚・使い魔疎通・使い魔共有=MAX・覇剣術=中級・弓術=初級〉
呪文〈水・炎・熱・光・闇・土・風・空間・聖・魔・回復=全最上級習得済・召喚呪文=中級〉
スキル〈鑑定β・図鑑・言語自動翻訳・速読・暗記・道具収納Ω・装備自動変換・特技呪文補助機能・手加減・魔力消費最適化・即時自動習得・浄化・生成・魅了・完全防御・魔物浄化・転身〉
固有スキル〈覇王の末裔・管理者の福音・管理者の祝福・覇王の結晶・王者の証・叡智の結晶・覇王の覇道記(現在使用不可)・叡智の魔術記(現在使用不可)〉
EXスキル〈超回復・超吸収〉
「やっぱりな。弓術を覚えてると思った」
「え?」
「あ、ほんとだ。初級になってる」
「途中で威力が上がった気がしたんだ。予備知識なしで弓が命中して引けたのは全武具習得のおかげだが修練となると別だからな」
「これが目的だったのね」
「ああ」
時折魔物に遭遇し立ち止まることが多かった台地の移動も日が暮れる前ギリギリに村に到着できたのは御の字だった。
しかし村は小さい上に辺境の台地ということもあり宿などないので予定通りその日は車中泊になった。
車中泊にしたのには理由がある。村には結界が張ってあったのだ。
その結界は酷く拙いもので聖魔法でもなければ空間魔法でもなかった。
実は結界はそれぞれの属性全てに独自の結界魔法が存在するのだがほとんどの属性結界には問題があり欠陥がある。
欠陥のない安全な結界は二種しかないことは世界中で知られている。
聖結界と空間結界だった。
だが空間魔法は使い手が少ないため結界といえば聖結界というのが当たり前であり主流だ。
この村に敷かれている結界も欠陥のある結界だった。しかも魔結界なので人への影響は最も大きい結界だ。
助けを求めた村人が中毒症状を持っていたのもこの結界のせいだとすぐに気がついた。
結界を確認して村に入るのを躊躇っているうちに日が暮れてしまい村に入る前に車中泊となったのだ。
もっとも車内を二つの部屋に分割してあるので扉などないが元より車中泊も考慮に入れている設計でいくつか登録してある部屋割りの一つだったりする。
車中泊するのは同行メンツのみで兵たち三名は城の兵士と日替わりで交代することになった。
使い魔なので基本3日ほどは睡眠をとらなくとも平気なのだがどうやら城の兵たちに羨ましがられたというので日替わりとなった。
翌日身支度を整え車から降りた俺は昨日降りたときには感じなかった視線を感じた。
気のせい?
周囲を見回すがそれらしい気配はない。
だが気のせいにするにはあまりにも強い視線だった。まとわりつくような視線に得体のしれない気持ち悪さがあった。
そんな俺の異変に気がついたのはタテだった。
「どうかされましたか?」
「気持ち悪い視線を感じる」
「確かにどこからか視線を感じます。それもリュウ様を見ているようですね」
「ああ、気配を感じないとこから見ても魔法で見ているのかもしれんな」
「警戒を強めます」
俺は頷いた。
村人は村の前に置かれた不思議な道具で話題になっていたらしい。
慌てるようにして一人の女性と数人の男たちが村前に集まってきた。
ひとりの女性には見覚えがあった。
そうカイエルにやってきた女性だった。
「リュウ様。遠路はるばるありがとうございます」
「事情を詳しく聞きたいが先に結界の基盤はどこだ?」
「結界の基盤ですか?」
「ああ、君らの中毒症状は結界のせいだ。害のない結界に書き換える」
「………。こちらですじゃ」
背後の一番歳のいった老人が答えた。
「クリス達は結界の属性が変わるまでは村に入るな。俺とタテで行く」
「待てリュウ。こいつらも連れていけ」
背後の三人の兵たちを示し言ったのはエルナだった。
エルナも村の様子が尋常でないことに気がついたようだ。
「わかった。姉さん、車には万が一に備えてゲート用の魔道具が置いてある。俺に何かあればそれを使って城に帰還してフィニアスと相談してくれ」
頷くエルナを見て村に入るために歩き出した俺に声が掛かる。
「リュウも気を付けてね」
ステラが不安そうに声をかけてきた。
俺は振り向き頷いた。
案内されたのは村の中央に位置した場所にある広場だった。
一段高く設置された場所の中央に石碑のような大きなものが基盤だった。
明らかに罠と思われる場所だった。
そう判断したのには理由がある。
基盤が大きすぎるのだ。
只の結界用の基盤であればあれの十分の一で済むからだ。
何か別の罠が仕込まれているのは理解できたが罠にも様々だ。
「あの結界は誰が設置したんですか?」
無難な質問をした。
「十年ほど前に旅の魔術師様が村の惨状に見かねて作ってくださったと聞いています」
「ほう。でも結界を作るにあたり副作用があると聞いていましたか?」
「もちろんですじゃ。術師様は初め、結界つくりには拒否されました。自分は副作用の大きい魔結界しか作れないからと」
「それでも頼み込んで設置してもらったと聞いています」
「それにしても基盤が大きすぎる。普通ならあれの半分以下で結界の基盤はできるはずなんだが…」
「そうなのですか?」
女性は知らなかったのか驚いているようだった。
この女性は罠とは無関係らしい。
「ああ」
「術師様は結界は不得手だと言っておられたのでそのせいではないのですかな?」
おれは顎に指を当て考えるそぶりを見せた。
言いながらも俺は鑑定を行い精査していた。
案の定トラップがあった。拘束系だった。だが鑑定ではそれ以上の情報は得られなかった。
まだ何かありそうだな…
『グランド・イレイズ』
おれは無詠唱で聖属性の罠解除の呪文を唱えた。大体の設置型の罠はこれで解除し無効化できるからだ。
背後の老人はかなり驚いていた。
「何をなさったのですか?」
酷く慌てている。
「罠が設置されていたので解除しただけですが?」
ジッと老人を見た。
老人は後ろめたいのか動揺しているのか視線が彷徨い、俺とあわせなかった。
この老人、主犯ではないものの、事情を知っていそうだった。
その思考はタテにもつながり共有された。
「私が調べてきますリュウ様」
「頼む」
タテが一段上に上り基盤に近づき調べ始める。
しばらく調べているとタテは降りてきた。
「……先ほどの解除で全て解除されたようです」
【表面的には問題なさそうですが安心はできません】
タテのそういう報告が俺に共有された。
「そうか…」
【虎穴に入らざれば虎子を得ずというから罠があれば頼む】
【【了解です】】
その場のタテや兵たちの声だった。
「結界を張りなおします。いいですね?」
確認だった。
「はい、お願いします」
答えたのは女性だった。老人は頷いただけだった。
俺は覚悟を決め基盤に近づくために上った。
上って基盤に近づいたが何も起こらなかった。
警戒をしつつも聖結界を基盤に上書きを施した。その直後結界は魔結界から聖結界に変じる。
おれは基盤から離れた。降りようとして片足を下ろすとそれは起こった。
基盤のあった台座から輝くばかりの光が床から放射された。
「!」
俺は驚いて基盤から離れようとするが目の前に空間結界が張られた。
結界に気がついた俺は解除しようと呪文を唱えだすがそれよりも先に違う呪文が俺を襲った。
その呪文に俺は焦りを覚えた。設置型の罠や結界ではないことにすぐに気がつく。
魔力封じ!
慌てて道具収納を使い武器を取り出そうとするが失敗した。
呪文を唱えようとするも呪文も出ない。
自分の手足首を見ると魔力封じの証でもある枷が完全に効力を発揮していた。
しかもなぜか指輪のある手首だけは二重に枷が施されてあった。
枷が現れるのは独立型の魔力封じで術師が解くか封じられた対象が死なない限りとけないものだった。完全に魔力を封じられてしまったことを知った。
まずい。このままでは完全に無力化されてしまう!
指輪に魔力を込め無効化させようにも魔力を込められないので指輪も役に立たず内側の俺からでは何もできなかった。
空間結界なので修羅を使っても意味がないのだ。
事態に気がついたタテたちは外から結界を外そうと試みていたが空間結界な為にうまくいかないようだった。
そんな中クリス達が事態の急変を知って慌てて近寄ってくるのが見えた。
ステラが結界を解除しようと魔力を込めるのが見えた。
だがそれを待たずにさらなる呪文が俺を襲った。
俺もよく知る拘束呪文だった。
俺の全身に漆黒の鎖が絡みついた。
さすがに激痛が走りこらえきれず喉から絶叫が飛び出す。
意識が…
精神にダメージを受ける拘束呪文だった。
揺れる視界が傾き俺は床に倒れる。
俺は意識をつなぎとめるだけで精いっぱいだった。
視界の空の端に北の山から赤い竜が飛んでくるのが見えた。
俺が意識をつなぎ留められたのはそこまでだった。
空間結界の中で拘束されたリュウの絶叫が辺りに響き渡る中、ステラとクリスは二人がかりで結界解除のための魔力を紡ぎあげ繰り出したが結界はそれ以上の強度を誇るのかびくともしなかった。
リュウの絶叫を耳にしたタテは取り押さえにかかろうとする村人たちを吹き飛ばしリュウが捕らわれている結界に向けて走り出す。
漆黒の魔力球を瞬時に右手に紡ぎ結界へと押し当てる。
さすがに結界にヒビが入る。衝撃で軽く吹き飛ばされたタテだったが瞬時に立て直す。
辺りの視界を遮った魔力が散ると結界の中には意識を失い仰向けに床に転がっているリュウがいた。
その身を拘束していた呪文はなくなっていたがリュウの手足には鈍く銀に光る腕輪のような枷がはまっていた。その様子にタテは再び魔力球を作り出しにかかる。
「リュウ!」
一同がリュウを心配し声を上げたときリュウを覆っていた結界の周囲に強い風が巻き起こり周囲にいた者は皆吹き飛ばされる。
空間結界は宙に浮き始め村の上空にまで高く上がるとリュウを抱えたまま丸い球体をさらしたまま静止する。
静止していた結界を赤く鋭い爪を持った竜が飛来して結界を大事そうに抱え北の山に飛び去っていった。




