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異世界に戻った異世界賢者の備忘録  作者: 夏
三章 竜人姫と賢者
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4

やっと覇王国領脱出です





ラミレス達新領主らに見送られ戦艦バーミリオン号は港町ブルーヴェルを出発した。

目指すはエリル皇国の海の玄関口と名高い港町サンクだ。

事前資料ではこの港町サンク、エリル皇国の外貨の貴重な入り口で首都エリルと非常に近いこともあり、また、内海に面した海でも比較的通行に適した位置にあるので船舶の往来が激しい港町だ。

エリル皇国到着後は陸路となるため戦艦バーミリオン号はこの港町付近での待機となる。初めは道具収納に格納することも考えたのだがそれをすると同行した船員たちの居場所確保が困難なこともあり港町近海での待機となった。

移動距離と時間等を考慮しても2週間ほどだろうというのが待機に至った理由だった。

それ以上になるのなら一度ブルーヴェル港町に戻るように指示することになる。

帰るだけならば別段船は必要ではないのだがエリル皇国での入国が船、それも覇王専用艦となれば思うことは誰しも同じらしい。

音にきこえたバーミリオン号を間近で見たいというのが本音だったようだ。


船旅は順調だった。

比較的気候の穏やかな内海。しかも戦艦なため音もなく海を渡り魔道具の性能のために揺れもないので順調すぎて予想通り暇になった。

ブリッジに上がり魔力を注ぐこともあるが今回の航行の距離では一度満タンにすれば補充も必要ないとのこと。

やることといえばそれだけなのでやることもないのだ。

今回、エリル皇国に行くにあたり背後に五隻商船が同行している。

港町ブルーヴェルに籍を置く商人たちの船だ。

ぜひ同行して船旅の安全を確保したいと新領主を通じて依頼してきた。

断る理由もないので許可を出した。海とはいえ魔物もそれなりにでるからな。

依頼してくるもの無理はない。この船は戦艦だ。それも覇王専用戦艦だ。

しかも周囲2キロほどは魔道具の性能から弱い海の魔物は近寄れない機能が備わっているので安全は確約されたものというわけだ。

音にきこえたバーミリオン号での航海となれば商人たちも興奮したらしい。

この船の魔物忌避能力は伝記にも書き記されていたため有名であり千年たってもなお他の追従を許していなかったらしい。

船舶速度もその気になれば恐ろしいほどの速度が出せるのだが今回は同行する商船に合わせゆっくりと航行している。


今回の航行に五隻もの商船が依頼してきたのには理由がある。

エリル皇国との航路に強力な魔物が出現し船を沈没させるのだという。

そのせいもあり少し迂回する必要があったのだが迂回すればそれだけ費用もかさむので最近はエリル皇国との商船が行き来できていないらしい。

そこで覇王様の駆る戦艦ならば魔物を駆逐できるのではと期待されたのだ。

魔物の駆逐は俺の使命でもあるので依頼を受けないという選択はなかったわけだ。

今回は俺への冒険者ギルドからの指名依頼という形をとってある。


ギルドは《未完の貴公子》が覇王様と知ってからおれのランクをどうやら上げにかかっているらしい。

とはいえ正規冒険者となってからはさほど魔物討伐などの実績はすくないので対応に苦慮しているようだ。



「ふぁ…」

ブリッジで俺は大きな欠伸をしてしまった。

正面の窓には地平線の見える海と空。ただそれだけだった。

「退屈ですか」

言ってきたのは背後にいるタテだった。

「魔物忌避の効果が俺の魔力で決まることもあるせいか強すぎるのも問題があるかもな」

 魔物でも出てくれたほうが退屈はしないが呼ぶわけにもいかないしな

「そろそろ例の魔物多発域に差し掛かるころです」

「ああ、そうだろうとブリッジに上がったわけだから準備はしとかないとな」

「了解。監視警戒度を上げます」

「シールドの準備はできているな?」

「もちろんです」

「後ろの商船にも気を付けておけよ」

「了解です」

「そういえばリュウ様は今回の魔物に心当たりがおありなのですか?」

「ああ、おそらくはシーサーペント系の魔物だろうと思っているな」

それらしい魔物を図鑑で調べた結果だった。



そうして警戒しつつ航行を続けること一時間。前方の海に変化が現れた。

「前方の海面に大きな影と不自然な波が発生している模様!」

「来たか」

俺は立ち上がる。タテと共にいつの間にかクリス達もブリッジにいた。

「商船に通達。本船の守備範囲に停止警戒せよ」

護衛するにあたり、事前にシールド等の効果範囲を彼らに通知してあった。

彼らにとっても生命線ともいえる防御機能なので必至だろう。

守備範囲は狭くはない。回避行動を取ることも考慮されてあるので五隻程度なら問題のない範囲だった。

通知後すぐに彼らは守備範囲に入ってきた。

その後すぐに波間の陰から大きな首が船の前方に現れた。

一拍置いてすぐに口から大きな火炎ブレスが一行の船舶めがけ放射された。

準備していただけあり防御シールドはすぐに張られ火炎の被害はない。

「俺が船離脱後三十秒後に援護射撃を魔物に放て。一発でいい。後は防御に徹しろ」

「了解しました」

「ステラ、船の防御を頼む」

「ええ」

「クリスは甲板で援護してくれると助かる。姉さんはクリスを頼む」

「わかったわ」

「足場があれば私も行ったのだがな」

「仕方ないさ」

「タテは俺と来い」

「は」

俺はブリッジを出た。


甲板を出るとブレスで傷一つないのが気に入らないのか船に急接近していた。

接近していたおかげか魔物がシーサーペントではないことに気がついた。

「シードラゴン……か」

「そのようですね」

シーサーペントの上位種のシードラゴンと知っておれはぞくぞくした。

いわゆる武者震いというやつかもしれない。

自然と笑みが浮かぶ。久しぶりの強い魔物。しかも足場は海なのでこちらのほうが、分が悪い。

「悪いな。やっぱり俺は魔物討伐が性に合うようだ」

「いえ、覚悟はとっくにできておりますよ。存分に楽しんでください。援護いたします」

「足場固めに時限式の結界を敷く。まずは砲撃後に奴を海から引き離せ」

「了解」


魔人族は魔物と共存していただけあり戦闘能力とセンスはどの種族よりも優れている種族だった。

高位の魔人族は背に専用の羽根を生やし、空を飛ぶ能力をも持つ。

種族として際立った種族であったため他の種族から忌み嫌われた。

神によって最後に作られたという魔人族だが、一説には邪神が始祖ともいわれているが定かではない。

ちなみに覇王城にいる魔人族の使い魔たちは全員高位の魔人族だ。

つまり空はお手の物ということだ。

おれか?

おれは普通のヒューマなので魔法で飛ぶに決まってる。

そんな際立つ種族がなぜ覇王の使い魔になったのか聞いてみたことはあるがやんわりとはぐらかされた。

種族の存亡だけではない何かがあるのだろうが皆答えてはくれなかった。


「行くか」

土属性の浮遊呪文『レビタン』の上位呪文『レビルト』を唱える。

この呪文は浮遊するだけでなく移動できるので使い勝手は良い。しかも降りる意志を示すまで浮遊し続けるのだ。

一気に船の上空に上がりゆっくりと『フライ』を使い前進した。

一方でタテは射線上を外しながら魔物めがけ飛んでいく。

接近しつつあったのでさほどの距離はない。

するとバーミリオン号から魔法弾が発射され命中し大きな爆音が辺りを響かせ空気を震わせた。

その虚を突いてタテが魔物の上体に滑り込み大きく蹴り上げる。

それだけでシードラゴンの巨体は海から引きはがされ宙に舞った。

『ロジック・シールド』

その瞬間を狙い俺はシードラゴンの足元へと大きな結界を張る。

シードラゴンの巨体はその結界へと落ちた。

それを見届ける前に俺はフライのスピードを上げ急接近する。修羅を抜き刀身に風呪文の雷を纏わせた。

 ブレスを封じる!

ブレスの元となる部位がある口元に刃を入れた。だが鱗が固く思うように刃が入りにくかった。

Gyaaaaa!

大きな雄叫びが響き渡る。

その衝撃から俺は後方へと吹き飛ばされる。

飛ばされながらおれは体勢を整えようとしてタテに受け止められた。

「悪い」

タテは俺の腕を持ちながらシードラゴンを見据えていた。

吹き飛ばされながらも刀を持っていた俺は刀では通りにくいと判断し修羅を腰に戻し杖を出した。

ドラゴンは怒り狂っていた。一直線に俺たちに向かってくる。

「タテ、的になれるか」

「了解です」

「時間を稼いでくれ。一発で決める。引き際はまかせる」

合図を送らなくても意思疎通は伝わるのだ。

杖を前面に突き出し増幅の魔方陣を敷く。

続けるように魔力を込める。

放つ呪文は魔呪文の雷属性だ。シードラゴンにはこれが一番効く。

タテはドラゴンの視界に入りつつ回避を行いドラゴンの注意をひいていた。

その時俺に向かって魔力強化の呪文が入った。

 クリスか

その直後にタテにも守備の強化が入るのを見た。

 あれはステラのようだな

そうして魔力がたまったのを感じた。

陣を眼前に敷く。ちょうどタテが離脱した。

『イビル・サンダーボルト!』

杖を大きく振り上げ詠唱した。

シードラゴンの頭上に黒い稲妻が降り注いだ。

凄まじい勢いの稲妻がシードラゴンを包みこみその命を刈り取った。

稲妻の勢いはそれだけでおさまらずしばらく周囲には焼けた空気の匂いが充満していた。

下に敷いた結界にひと際大きい魔石とシードラゴンの鱗が転がっているのをタテが回収した。

結界を解除しそのまま船に戻る。

甲板に降りるとクリス達が待っていた。

「お疲れ様」

「けがは?」

「ないよ。船にも被害はなさそうだな」

「はい。背後の商船にも被害はありません」

「航行に問題なければ出発しよう」

「了解」

「リュウ様これを…」

タテは拾った魔石と鱗を目の前に置き差し出してきた。

「魔石が結構大きいな。高ランクの魔道具が作れるな。鱗も頑丈そうだ」

鱗は俺の半分の身長ぐらいありかなり大きい。魔石も片手では受け取れるギリギリの大きさで重量もあった。魔石をしまう。

立てて差し出してきた鱗を受け取り軽く足で蹴ってみると小気味よい甲高い音か響いた。ドラゴンの鱗だけあり頑丈だった。

持ち上げてみると驚くほど軽かった。

ひょいと片手で持ち上げると普通に持てる軽さだった。

「軽い上に頑丈ときた。加工すればいろいろ役立ちそうだな」

「さすがはドラゴンの鱗ですね」

「ああ、あとで加工を考えよう。とりあえず出発だ」

「「はっ」」

そうして航行を再開した後は何事もなくエリル皇国領へと入国した一行だった。


自分はワードで書いた本編をテキストデータに落として投稿しています

なので変換ミスで時々 ? がおかしな所で入っているやも…

消している努力はしている…はずです

あったときは軽く流してくだされば…m(__)m

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