↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に戻った異世界賢者の備忘録  作者: 夏
三章 竜人姫と賢者
28/98

3-2

翌日港町の領主に会うことになった。

どうやらなにか頼みごとがあるらしい。

実は頼みごとは何か見当がついていたりする。

というのもこの港町は比較的魔物が少ない内海に位置している港町なせいか観光業が盛んだったりする。

もちろん漁業も盛んなのだがその観光が覇王に関連する施設でなりたっていたりする。

この港町、千年維持されているだけあり千年前には先代覇王ウィリアムがバーミリオン号でたびたびこの港から出航していたのだ。

そのバーミリオン号のレプリカがこの港町に作られていてそれが観光に大人気なのだがそのレプリカが問題だったりする。

三百年程前に作られた施設なのだが覇王没後すぐに姿を消したバーミリオン号を作ったのはいいのだが当時からすでにバーミリオン号の詳細な資料や情報が無かった為、かなり適当に作ったらしい。

適当とは言え千年前の船舶様式を取り入れていてそれなりに価値はあるのだが…。


そして今、港には本物のバーミリオン号が停泊している。

しかもそのレプリカのすぐ近くにだ。

見比べると同じバーミリオン号と名が付いているが色こそ同じだが様式が全く違うのだ。

そしてこのレプリカのバーミリオン号は作られてから時間が経ち施設はかなり劣化が激しい。

おそらくは施設のリニューアルを兼ねてそっくりに変えたいと思っているのではないだろうか。

そしてここの領主はその観光業で資金は潤沢だとフィニアスから聞いている。

領主の招待を受けた時点である程度予測をしていたのでキバに連絡を取り、事情を説明してどこまでをレプリカに反映させるのかをフィニアスに相談していた。

その結果を聞いてから領主館に足を踏み入れた。


「我が屋敷にようこそ。覇王リュウ様」

館の召使いに案内されて入った屋敷のエントランスでおれとタテは領主の歓待を受けた。

にこやかに笑う領主は肥え太った狸のような印象を受けた。しかもかなり歳をとっているようで俺と同世代の孫がいるという。

「ああ、招待感謝する。そういえば私の戴冠に貴殿の長男が来ていたという話を聞いた。貴殿らの忠誠に感謝している。ところで俺に相談というのは?」

相談事の中身を知っていたがあえて聞いた。

「その話は改めて別室で…」

狸は笑みを浮かべたまま後ろの女性を紹介してきた。

「これは私の孫娘のカレンです。ご出航までのおもてなしをさせます」

「カレンと申します。どうぞよろしくお願いいたします」

随分な美女を紹介してきた。

 露骨すぎるな。これは警戒したほうがよさそうだ。いろいろと…

「もてなしなんて必要ない。出航までの短時間滞在だからな」

きっぱりと断った。このカレンという美女はどうも男慣れしてそうだった。


妖艶すぎるのだ。


男としてどうしても視線が豊満な双丘にむかうのは仕方ないが気に入らない。

明らかに俺を狙いに来ている感がビシビシ来る。

聞かなくてもわかるが彼女はクリス達には嫌われるだろう。

要らない嫉妬にさらされたくない。

「しかし、そういうわけにはいきませんので」

狸は食い下がってきた。

当然だろうとも思う。おそらくはあわよくば妾にとでも狙っているのだろうが…。

「要らない。女性など同行している側室たちで間に合っているからな」

「そ、そうですか…。ではこちらにどうぞ」

指し示された部屋に入るとそこは応接室だった。

どう見ても趣味の悪い成金の応接室だった。

 事前に受けていたこの領主の情報に間違いはないようだな


そうこの領主に関していろいろと良くない噂を聞いていた。

賄賂や身分差別、闇ギルドとの関わりなどの噂があるがうまく尻尾を隠しているようで監査部がマークしているのだ。

それでも覇王連合の特殊警備隊の監査を潜り抜けていたのは理由がある。

この狸の長男がやり手なのだ。

この狸とは仲が険悪らしく実質統治しているのはその長男でこの狸は隠居生活しているらしいがいろいろ口をはさむのだとか。

「初めましてリュウ様。ご足労いただき感謝いたします」

応接室で迎えた男に見覚えがあった。

彼はフィニアスから紹介されたことがあったやり手の狸の長男だ。

「貴殿は…謁見でも会ったな」

「覚えておいででしたか」

「ああ、有能そうなやつは記憶している。君が説明を?」

「はい。ありがとうございます」

かれはそう言うとやんわりと狸を追い出した。

おれは進められたソファに座りやっとほっとできたので本題を切り出した。

「相談というのはこの港町にあるバーミリオンのレプリカの改築のことか?」

「はい。ご慧眼ですね。やはりフィニアスが褒めるだけあります」

「褒められてもなにもでんぞ」

かれは手を叩き女中を呼んだ。

女中は飲み物を出してくれた。

「この女中は私の息の者なのでご安心を」

「心遣い感謝しよう」

差し出された飲み物を一口飲んだ。

彼も口につける。

「ところでフィニアスとはアカデミー学園の同期という話は本当の話なのか?」

「ええ、彼からその話を?」

「ああ。ここの事情をいろいろと教えてくれたよ」

「そうですか。彼にも気苦労をかけているようですね」

「そう思うならさっさと片を付けろ、だそうだ」

「お見通しというわけか。適わないな、相変わらず」

「貴殿のことだから証拠など押さえてあるのだろうな」

「ご想像にお任せいたします。リュウ様」

「今回の相談の件だが結果から言うと許可はできる。ただし表だけだがな」

「表だけでも十分です。ありがとうございます」

「昨日から進めている船の調査で表の情報は十分揃うだろうからその報告をフィニアスに上げてからになるだろう」

「了解いたしました」

「そういや先ほど紹介されたカレンという者のことだが」

「お気に召されたのですか?」

意外そうに聞いてきた。

「あんな女は御免だ。あれは君の血筋か?」

「とんでもない。あれは父が妾に産ませた年の離れた娘で自分とは腹違いの兄妹になります」

「…孫娘と言っていたが…あれほど歳が離れていれば体面が悪いか」

「あれは母親の教育を主に受けたので性根が腐っております。上昇志向の高い妹で金のためなら平気で関係を持つ娼婦です。縁を切りたいのですがうまくいかないので…」

「そんな感じだな。良い教育を受けている様子ではない」

この後付きまとわれそうな気配が漂っているので辟易していた俺だった。

「付きまとって来るだろうと思うと滅入る。こんなことなら室たちと一緒に来たほうがよかったな…」

「彼女らはどうされたのですか?同行しておられるはずですよね」

「今日の彼女らは街で買い物だ。見たいと言っていたのでな」

おれはそういうと部屋に軽く結界を張った。

「陛下?」

「聞かれたくない話があるのでな」

彼は姿勢を正した。

「お前にこれを渡しておく」

机にカードを置いた。

「これは?」

「今日港の兵役所に設置したゲートの許可カードだ。お前専用になる」

「カイエルに通じるという?」

「そうだ。ゲートを作った街には信用のおける部下限定に渡してある」

「そのような貴重なものを拝謁いただけるとは身に余る栄誉です」

「もとよりこの町には設置予定だったのだがこの町の人間には一人だけ誰かに渡す必要があったのだ。普通ならば警備の高い物を領主に渡してあるのだがこれは貴殿専用になる」

そしてもう一枚取り出す。

「これは外部用の警戒の高いカードだ。非常用で貴殿の身に何かありカイエルに連絡が必要な時のためのものだ。身内の緊急避難にもなるな」

「どのカードにも言えることだがそれを持つ者は数人ならば同行出来、ゲートをくぐる際に数種類の調査が入る。具体的にはカイエルや俺に害意を持つ者。不穏な武器などを持っている者などがはじかれる。警備の関係でな」

「了解いたしました」

「お前には話しておくがゲートには無条件で通行できるものもいる。俺の身内、側室たちと使い魔がそれにあたる。この港にも数名使い魔が常駐するから彼らを使うのが一番俺に近道ということも覚えておくほうがいい」

「お心遣いに感謝いたします」

「ゲートのありかはこの町の将軍に聞くといい。それと専用カードには一度魔力を通してくれ。それで専用になる」

彼は手に取り魔力を通した。

カードは軽く光る。光が収まるのを待って二つ目も取り懐にしまった。

それを見届けてから俺は結界を解除した。

「今日はこれで失礼する。有意義な時間だった」

おれは軽く笑みを浮かべ立ち上がった。

「改築の詳細はフィニアスと相談してくれ」

「はい。ありがとうございます。深き忠誠を陛下に…」

立ち上がり彼は深々と頭を下げた。

俺はタテを連れて応接室を出た。

待っていたとばかりに廊下でカレンが立っていた。

「陛下、この後はご予定がありますか?」

俺は眉根を寄せた。待ち伏せが気に入らなかった。

この後の予定はなかったがクリス達を探すつもりだった。

「……。あったとしても君には関係のない話だな」

「ぜひ街をご案内したいのですわ」

カレンはそう言い無理やり俺の腕を取り組んできた。

豊満な双丘が俺の腕を包んできた。

 これ、わざとだろ

「離してくれないか」

おれは組んできた腕を外そうとした。

外す前にカレンがリュウを引っ張るように歩き出す。

「行きましょう」

俺は引きずられるように屋敷を出た。背後からはタテが付いてきていた。

「おい!」

「いいじゃないですか腕組むくらい」

大通りに出た。ここは港町の大通りらしくにぎわっていた。

 まずいな。クリス達にこの状況で見られると誤解されるぞ。せめて腕組みだけは外さないと…

「案内はいいけど腕は外してくれ」

おれは無理やり外した。

「初心なのね」

「違う。変な誤解はされたくないものでな」

「誤解されたいわ私」

「冗談じゃない」

そんな押し問答を続けながら大通りを歩いていると案の定ステラたちを遭遇してしまった。

クリスは駆け寄ってきてなぜいるのか疑問に思ったようだ。

「リュウ、領主館に行ったんじゃなかった?」

「その用事はすんだよ」

「なにしてたの?」

「なにも。クリス達を探そうかと思ってたところだったからな」

「彼女は?」

答えに困ったが正確に答えたほうがいいと判断した。

「ここの領主のご令嬢…で、カレンという」

クリスは若干目を細め軽く疑っているようだ。

「そう。まさか三人目とか言わないわよね?」

「バカ言うな。ありえないことをいうなよ」

「ありえない?」

ステラまで疑っているらしい。

「あのな、おれをウィリアムと一緒にするなと何度言わせる気だ。百人ハーレムなんぞ作る気はない。俺にだって好みくらいあるぞ」

背後でエルナが失笑していた。あまりの痴話げんかにだ。

ステラはカレンににっこりと笑って言った。

「ご案内ありがとうございました。もう結構ですので領主様によろしくお伝えください」

有無を言わせない迫力があった。

すかさずクリスは俺の腕を取った。もちろん右腕だった。

「行きましょう。良いカフェ見つけたのよ」

「おいしいのか?」

「評判のお店らしいわ」

言ってステラは軽く左腕を取る。

「それは楽しみだな」

「でしょ。私も楽しみなのよ。リュウと一緒に行きたいと思ってたのよ」

「カレン嬢。ここまで案内ご苦労だったな。領主によろしく伝えてくれ」

「早くいきましょうよ」

「おい、せかすなよ」

カレン嬢から離れた。

しばらく歩いて俺はホッとした。

「助かったよ。どうやって追い返そうかと困ってたところだったからな」

「そんな感じだったわ。リュウの嫌いそうなタイプだもの」

「わたしも嫌いね。ああいう肉感的な女性は男を道具にしてそうで…」

「そうね。好きにはなれないタイプね。というよりも女に嫌われるタイプだわ」

「やっぱそうか…。嫌いそうなタイプだろうなとはおもったさ」

「ねぇリュウ。この後本当はどうするつもりだったの?」

「予定か。何もないさ。ただ、そろそろこの姿だと目立つようになってきたからな。おとなしく戻るつもりだった」

そう言って周囲を見た。

伺うような周囲の視線に気がついていたリュウだった。

「おれの肖像画をフィニアスが意図的に世界中にばらまいたせいもあって知られてるんだよ」

「そうなのね…。こんな風に出歩けなくなることもあるのかな」

「この姿ではそうなるかもな。そうなったとしても姿を変えるだけだ。他の手も考えるけどな」

「本当?」

「ああ、好きに出歩けないなんて嫌すぎる」

自由は確保しておきたいので認識阻害系の魔道具でも作るかなとちらりと思った。

 でも簡単なメガネでも十分変装にはなるかもな

メガネがこの世界にもあることは知っていたリュウだった。

その後一行はカフェで一息入れた後、リュウのために変装用の道具を探したが女性陣の気に入る道具はなかった。

それは俺も予想はしていたので最後にメガネ店でサングラスと視力矯正のないメガネ、いわゆる伊達メガネを買ったのだった。

「そんな魔石の込められてないおもちゃを買ってどうするのよ」

クリスに呆れられた。

「変装用ならこれで十分だ。もちろん後で魔石を付けて魔道具化させるけどな」

「でも」

「軽い認識阻害だから極小の魔石で足りる。金はあるけどこんなもので大金を使う気はない。魔石も極小なら自分で作るほうが早いしな」

何よりも船旅で暇つぶしができるのが一番の理由だ。

「一緒にみんなの分も作ろうと思ってるが」

「メガネ?」

嫌そうに驚かれた。

「そんなわけないだろ。アクセに決まってるだろ」

「楽しみにしてるわよ」

「期待はしないでくれ。性能はともかくデザインは苦手だからな」


その日の夜、暴動が起きた。


深夜に決行されたその暴動は有能だった長男がカイエルに改築の件で留守にしていた時だった。

領主館に暴徒が押し寄せその領主館にいた領主とその妾、そして娘のカレンがその暴徒の手により命が消えた。

主犯格はすぐに捕まえられた。

過去に領主とその妾の手によりひどい目にあわされた者たちが団結して復讐のために暴徒と化したのであった。

元より有能だった長男との確執は町中でも有名であり、別館に居を構えていたこともあり長男一家は誰も被害者は出なかったのは不幸中の幸いだった。


リュウはその夜の暴動に気がついたのだが施設の将軍たちや配下の制止もあり危険だからと施設から出してはもらえなかった。


翌朝、暴動の中心になった館の跡地を訪れたリュウは暴徒を罰しないわけにはいかないので新領主となった長男ことラミレスと協議の結果、主犯格数名は死罪。かかわった者は期日奴隷落ちとなった。


期日奴隷とは1年から十年の間犯罪奴隷となることで決められた期日の間奴隷となることから期日奴隷と名が付いた。この国独自の奴隷である。

この世界には奴隷制度が国によっては色濃く残っている。

ヴェリアス王国や覇王連合国は比較的奴隷制度は国力が豊かであるため奴隷人口は少ない。

また、先代覇王ウィリアム自身が奴隷上がりなこともあり奴隷制度には否定的な国が多い。それでも奴隷制度が残るのは犯罪抑止でもある。

犯罪奴隷はこの国でもその身の保証はされるが犯罪抑止の意味合いが大きく劣悪な環境なのだ。

暴動というごたごたに巻き込まれ二日ほど遅れたが船の調査も完了し、出発も整った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。