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「リュウ。起きて」
俺はクリスのその声で目を覚ました。
俺が体を起こすとステラも眠っていたのか少しけだるそうにしていた。
周囲を見回し車の外に意識を向けると少し外がにぎやかなことに気がついた。
「周囲がおかしい?」
タテとエルナはおらずステラたちは二人とも外がにぎやかなのに不思議な顔をしていた。
俺は運転席の扉に向かった。
運転席に出て気がついた。
目的地の港町の入り口が前にひろがっていた。
「タテ。起こさなかったのか」
「申し訳ありません。よくお休みだったので自分が運転しておりました」
「そうか、気を使わせたな」
「わたしは中にはいるぞ」
エルナはそう言って扉に消えた。
代わりに俺が助手席に座る。
「港町に入る査定待ちです。もうじき順番なのでちょうどよかったです」
使い魔のタテでは身分証明が難しくまだ証明書を持っていなかった。
おれは事前にフィニアスからもらっていたこの国の身分証明を取り出す。
この身分証明、冒険ギルドのカードの元になったもので、この国の出身で身元保証人か保証書があれば申請するだけで簡単に手に入るものだ。
とはいえこの国のそれなりの地位を持っているものはカードの素材が上等なものになる。
一般人は銅。貴族は鉄。護民官や衛兵、臣下は銀。領主は金。元首や国王は白金。覇王はオリハルコンだ。このカードシステム、他の国も導入している。情報元はこの国なので覇王以外の素材が使われている。
つまり白金・金・銀・鉄・銅だ。
何が言いたいかといえば、覇王のカードは唯一無二なのだ。
オリハルコンは金によく似ているので誤解されがちだがよく見れば七色に変化するので気がつく奴は気づく。
ハッキリ言って出せば目立つのだ。
それはこの港町でも同じだった。
後で冒険者カードを出せばよかったと後悔する程度には。
タテにカードを渡し査定を終えると仰々しく門番が道を開けた。
そのまま港にある軍艦港に併設されてある連合国専用施設へと入った。
この港町、実は歴史はあるほうで千年前にも港町として栄えていた。
というよりも先代覇王のおかげで千年栄えたといっても過言ではない。
この港から覇王専用艦を使い世界中の国に繰り出したのは有名どころの話だ。
この港には観光用に覇王船が置かれてあるのだが自分の道具収納内にある船とは似ても似つかないのだとか。
これはキバの話だ。もっとも似ているか似ていないかは同じ港に浮かべるのですぐに判明するだろう。
施設には宿泊施設や軍議もできる程度には整っている施設だ。
俺が港町に到着したことは門番より通達がいっているのか施設前には兵たちが今かと待っていた。
設備前にタテは車を停止させた。
タテは運転席から出て俺の座る助手席のドアをわざわざ開けに来た。
俺は車から降りるとそのあとすぐに後部座席のドアが開きクリス達も降りてきた。
おれは出迎えてくれた兵たちに声をかける。
「出迎えまでありがとう。だが俺のことはいいから持ち場に戻り仕事を再開させなさい」
「は!」
一糸乱れぬ動作とはよく言ったものだと感心した。
「初めましてこの施設を管理している将軍であります。よろしくお願いいたします」
深々と頭を下げてきた彼に頭を挙げさせて質問をした。
「ああ。ところで船はどこに下すべきだ?」
「はい、こちらにご案内致します」
おれは車を道具収納内に格納すると案内されるほうへついて行った。
「こちらでお願いいたします、覇王様」
「ああ」
そこは少し開けた場所の船着き場だった。
俺は道具収納内を調べ、船を取り出そうとする。
「ねえ、リュウ。船に名前があるの?」
聞いてきたのはクリスだった。
取り出そうとした俺は中断してクリスを見る。
「なんでそんなことを聞く?」
「覇王様の船は有名な船があるの。もしかしたらと思って」
「そうなのか?」
俺は背後の兵たちも見た。
皆、頷いていた。見事に揃っていた。
俺は道具収納内にある船の説明を見た。
《覇王専用戦艦。覇王ウィリアムが能力設備を企画設置し稀代の魔船大工が生み出した史上最強と名高い浮沈艦・バーミリオン号》
「道具内の説明なんてあんまり調べなかったな」
「名前付き?」
「ああ。バーミリオン号というらしい。最強の浮沈艦とあるな」
その俺の言葉にその場にいた誰もが驚きの声があがる。
驚きの声というのかどよめきというのか周囲の声の歓声が上がったのだ。
「すごいわ。音にきこえたバーミリオン号なんて」
「有名なのか?」
ステラは説明をしてくれた。
「ええ、どんな覇王伝でも戦艦バーミリオン号は必ず話に出てくるの。覇王ウィリアムの世界統一に絶対に欠かせない戦力でこの船で世界を股にかけたと有名なのよ。覇王没後城と共に封印されたと伝わっているの」
「ほう…」
おれは感心した。ステラでさえも少し興奮しているようだ。
「城と違って覇王没後すぐに姿が消えた船なのでどんな船だったかあまり伝わっていないのよ」
「そうなのか?」
「ええ、でも今でも世界中に浮かぶ船のひな型になった船なのよ。千年ぶりに本物のバーミリオン号が浮かぶ雄姿は楽しみだわ」
「とはいえ千年前の船だからな。いろいろ調べてみないと」
「そうですね。ものによっては改修する必要もあるかもしれないですな」
「ああ、でも今回はただの移動手段だから移動する設備が問題ないなら改修は後回しになるかもな」
俺は言って港ギリギリに立ち海に向かって掌を翳し道具収納の一覧から船を選択した。
掌の先から船影が俺の体に影を落とした。
さすがに俺も驚いた。
驚きのまま俺は船を海に下した。
「…ここまで大きいと思わなかったな。というか、こんなものが俺の道具収納に入ってたというほうが驚きだ」
おれは船を見上げた。
いわゆる巨大戦艦だったから。砲台などがなければ豪華客船といわれても信じてしまいそうなほど優美で巨大な赤い船だった。
じっと船を見つめておれは呆れた。
「こんなの大きすぎるぞ。目立ちすぎる」
「だったらリュウが小さくすればいいじゃない」
言ったのはクリスだった。
「は?」
よくわかっていない俺に説明してくれたのはステラだった。
「バーミリオン号は覇王の魔力と意志で小さくも大きくもできるのは有名だから」
「小さくできるのか」
「ええ」
「たしかに少し大きすぎますな。予定している乗組員は百名ですのでこの大きさだと5千人くらいは収容できそうですな」
「…だな」
おれは早速船に手のひらを当て魔力を込めて念じてみた。
小さく
すると俺の目の前で徐々に小さくなっていった。
手ごろな大きさまで小さくした船は豪華客船のような優美さはそのままに戦艦らしいフォルムは維持されていた。
「こんなものかな」
「いいわね。小さすぎず大きすぎず」
「この大きさなら二百人は乗れそうですな」
「小さすぎても国の沽券にかかわるからな。これくらいがいいか」
ほっと一息入れて船から手を離すと目の前に甲板に続く階段が現れた。
「中が気になるな」
俺は階段を上り甲板に足を踏み入れる。
「悪くはないな」
「そうね」
俺は言ってブリッジに向かう。
内部の全体を把握するには一番の見晴らしがブリッジだったためだ。
ブリッジに入ると大きな窓が正面にあった。
その窓の中央付近に舵があるのが見える。部屋を見回すとすぐ横は一段高くなっておりそこに豪華そうな椅子が一脚おいてあった。
明らかに身分の高い者が座るような椅子だったので得心が行く。
あれが覇王専用か
上って椅子に触ると目の前にステータス窓が現れた。
「!」
『魔力不足です。魔力を注いでください』
「魔力…ね」
俺はいつものようにその椅子に座る。
すると全身から何か力が抜ける感覚が上った。
魔力が吸われている感覚だった。
「なかなか吸うようだな」
後ろから付いてきた乗組員たちの一人が声をかけてきた。
「それだけで済むというのは、リュウ様は素晴らしい量の魔力をお持ちのようですね」
視線を向けると見覚えがあった。
元乗組員の使い魔だった。
「ジークだったか。どういう意味だ?」
「はい。ウィリアム様は空状態のこの船に魔力を注ぐことができませんでしたので…」
「?」
「空状態のこの船に魔力を注ぐとウィリアム様は気絶されるほど魔力を吸われたのです」
「封印を解いたばかりだからこの船に魔力など残ってはいないだろうな。だが気絶するほどではないな」
使い魔は舵横の計器に視線を落とす。
「充填率四十%…五十%…。充填率が早いですね」
「日頃から魔力も体も鍛えるようにしているからな。これ位の吸われ速度では、おれは気絶などせんな。気絶どころか消費している端から回復しているはずだ」
感心された。
「しかし…こんな程度で気絶するなど前世の俺は酷く軟弱だったようだな」
おれは呆れた。
ひじ掛けに肘をつきもたれる。
「充填率百%です」
吸われている感覚がやんだので窓を開けた。
「そういや窓を開けるのは久しぶりだな」
リュウ=クドウ=マリノス
職業=賢者28・王者22
HP=12574
MP=15891-14169
力=2000
素早さ=1800
集中=2000
魔力=5000
魅力=20000
運=8500
特技〈抜刀術・剣術・体術・全武具習得・無詠唱・魔術付与・魔力操作・魔道具作成・使い魔召喚・使い魔疎通・使い魔共有=MAX・覇剣術=中級〉
呪文〈水・炎・熱・光・闇・土・風・空間・聖・魔・回復=全最上級習得済・召喚呪文=中級〉
スキル〈鑑定β・図鑑・言語自動翻訳・速読・暗記・道具収納Ω・装備自動変換・特技呪文補助機能・手加減・魔力消費最適化・即時自動習得・浄化・生成・魅了・完全防御・魔物浄化・転身〉
固有スキル〈覇王の末裔・管理者の福音・管理者の祝福・覇王の結晶・王者の証・叡智の結晶・覇王の覇道記(現在使用不可)・叡智の魔術記(現在使用不可)〉
EXスキル〈超回復・超吸収〉
「あれ?スキルが増えているな」
「魔力あまり減ってないじゃない」
クリスが横から見た感想を言ってきた。
「そうだな。予想通り消費より回復するほうが高かったんだろうな」
しかし、道具収納がΩに上がってるのはともかくEXスキル?
EXスキルをタップして詳細を見た。
超回復=魔力運用能力が規定値を超えたため時差回復能力上限の限界突破したスキル。消費と同時値回復する。HPとMP共有スキル。同時値回復には上限アリ
超吸収=習得している属性呪文全てを任意で吸収することができ、回復するスキル。HP・MP同時回復
「このEXスキルの能力らしいな。さほど魔力が消費しなかったのは」
しかし通知はなかったな。鍛錬で習得したからか?
「ねえ、ブリッジだけじゃなくほかの部屋もみたいわ」
クリスは飽きたのかそういいだした。
「そうだな」
おれは同意するように席を立った。
その後も船内を見て回った後、メンテナンス作業を任せて俺たちは一旦船を降り案内された施設で一泊することになった。




