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フィニアスから2・3日待ってほしいと言われた見捨てられし大地への旅だったが行く道程の関係から一週間準備に必要になった。道程に海路があるせいである。
その日ほぼ一か月使って作っていた移動用車両魔道具が完成した。
世界最大の魔石算出を誇る覇王連合国だからこそ完成させることができたと言ってもいいほどの大きな魔石を使った移動用魔道具だった。
バイク同様移動に必要な魔術をふんだんに使い安全かつ、快適な空間を持たせることに成功した車だった。
試運転もたびたび行い、その都度修正を施していたからこそ一か月もかかったのだった。
その甲斐あってか、その気になればある程度性能を落とすことで魔石の大きさも小さくできるので量産もできるほどの物だった。
フィニアスには量産を打診されたが移動革命が起きるのは確実なので保留中だ。
将来的にはカイエル内移動限定で実用も考えているが欲しがる奴は山とでるだろう事は少し考えればすぐに思いつく。
フィニアスにその生産体制が整わない限り量産は控えるべきと忠告しておいた。
そんな中、移動手段も整って準備もほぼ完了したと報告を受けた。
ステラたちが自分も行くと言っていたこともあり彼女らを探して側室たちの集まるリビングに俺は足を踏み入れた。
このリビング、家族もよく滞在する部屋でおれもよくくつろいでいる部屋だ。
だが俺は入って早々驚きのあまり足が止まった。
今日この日には魔道具が持ち込まれていたのを忘れていた。
戴冠の儀を撮った魔道具が持ち込まれていたのだ。
それだけならば足が止まらないのだがステラたちは魔道具に食い入るように見入っていた。
ちょうど俺が沐浴をしていた映像だった。
俺自身沐浴中の姿はある程度予想はしていても客観的に見ることは避けていたのでさすがに足が止まり、声がかけ辛かった。
その姿はある意味で倒錯的だった。
光に反射する水に手を翳し浴びている俺の姿は濡れた衣が程よく透けておりうっすらとその裸身をさらしていた。
映像の俺はやがて水を手ですくい飲むと動きが止まる。
水が落ちる動きがなければ静止画のようにも見えた。
やがて俺の姿が金髪の美男子にと変化していた。
さすがに居たたまれなくて目を外そうとしたときに起きたその変化に驚いた。
音にきこえし先代覇王ウィリアムその姿だったから。
ちょうど過去視をしていた時間だった。
「ウィリアム様…!」
キバの声が聞こえた。身動きを始めた俺の姿は元に戻っていた。
全身に水浴びを始めた俺の姿はさらに倒錯的に見える。愕然とした。
痛いな。まるで厨二じゃないか
さすがに直視できなくて俺が部屋に入ったことにも気がついてない二人のソファの背もたれの裏に映像を見ないように背を向け軽く腰掛ける。
自分の顔が熱を持っていることに自覚していた。
鏡を見なくてもわかるほど俺はゆであがっていた。
まいったなぁ。あんな物が世界中にばらまかれてるんだろ。やっぱり映像は断るべきだったな
羞恥心から大きなため息が出た。
それでステラたち二人は背後の俺に気がついた。魔道具を止めて俺を見た。
「リュウ…」
「それ見られると居たたまれないんだが…もういいのか?」
おれは二人を見ることができなくてそう呟いた。
クリスは出来上がった俺の顔をまじまじと見つめ笑みを浮かべる。
「真っ赤ね。ちょっと新鮮なんだけどそのリュウの顔」
「うるさいな。直視できるわけがないだろうが」
「水の滴るいい男だわ。素敵じゃない。ねえステラ」
ステラは真っ赤な顔をしていたが頷いてた。
「見るなら俺の居ないとこで見てくれ。おれは見たくない、それは痛すぎる」
「あの姿の変化はなに?」
ステラは話を変えてきた。気を使わせてしまったようだ。
「ああ、あれはあの時ちょうど習得したスキルが発動したんだ」
「スキル?」
おれは頷く。
「スキル《転身》。文字通り姿を変えるスキルだ。過去の姿なら完全変化させることができるが沐浴の時は中途半端に発動したんだ。体格はリュウの体格だったしな」
そう言って俺はソファに座る二人の間に割って入る。
意識的に二人の肩を両腕に抱え転身を使って見せた。
完全コピーではないがそれでも金髪碧眼のウィリアムの姿はそれなりに派手なので二人は驚いていた。
そして意地悪く俺はわざと悪意のある笑いを浮かべた。
「そんなに映像の俺がいいなら明後日からの旅は二人とも留守番だな」
声もいつもの俺の声ではないウィリアムの声だった。
「え」
「明後日?」
二人は驚いて聞いてきた。
「そうだ。準備は一つの確認を残して全て完了しているからな。明後日には俺は旅の空…だ」
言って俺は姿を元に戻した。
「一緒に行くわよ!」
そう言ったクリスを俺は冷めた瞳で見た。
「ダメだ」
本心ではなかったがそれでもちょっとした意趣返しでそういった。
クリスのことだからそういえばある程度の行動想像がついた。
今夜はステラ一人を戴冠後初めて呼ぶ予定だったのである程度はクリスの好きにさせるつもりだった。
案の定、クリスは座っていた腰を浮かせ俺を見下ろして強引に唇を奪ってきた。
想像していたので俺の頭は比較的冷静だった。
それでもされるままにしているとクリスは満足したのか唇を解放して言った。
「何があっても一緒に行くわよ」
決意みなぎる視線をぶつけてきた。
当初の予定通り俺は折れた。笑みを浮かべる。
「そう言いだしたら君はきかないからな」
「……」
クリスはジト目を向けてきた。どうやら俺の意図に気がついたらしい。
クリスはそのまま立ち上がり部屋に戻ろうとした。
「いじわるね…。ありがと」
リビングを出る直前にそう言って立ち去って行った。
クリスも今夜の事情は知っているのだ。
言葉をかけ辛かったステラがやっと声をかけてきた。
「あの…」
「心配するな。明後日はステラも一緒だ。それとも留守番のほうがいいのか?」
ステラは大きく首を横に振った。
「一緒に行く」
俺はその言葉に笑みを浮かべた。
肩にのせた腕に力を籠めステラを抱き寄せる。
ステラから逃れがたいほどの誘惑の香りが香っていた。
それだけで十分そそられた。
条件反射のようにステラの唇を奪っていた。
唇を解放しておれは呟いた。
「行こうか…」
ステラは頷いた。真っ赤な顔で言葉にできなかったのだ。
おれはステラを姫抱きに抱え、そのまま三階の自室に戻った。
その夜ステラとの熱い夜を初めて共有したのだった。




