9
9
戴冠式のその夜、城下の覇王城施設にある迎賓館で晩餐会が行われた。
晩餐会には各国の王などの最高権力者などもいれば俺の身内であるマリノス一家の姿もあり教会関係者である教皇もいた。
姉エルナは先の約束通り初めはドレス姿だったがあまりにもぎこちなさ過ぎて場違い感が出たのでしばらくして着替えることになった。
開会のあいさつはフィニアスが執り行いつつがなく執り行われ、最後に俺が〆のあいさつを行いその日の行事は無事全て終了したのだった。
晩餐会を終え迎賓館を出たところで周囲の町の様子が妙に騒がしかった。
なんだ?
疑問に思っていると急に目の前に一人の女性が飛び出してきた。
背後には衛兵たちが追っていた。
必死な様子でこちらに飛び出してきたのだった。
「覇王様!私の村を助けて!」
女性は兵士たちに拘束された。
多勢に無勢で女性は兵士たちに引きずられ俺から引き離される。
それだけならおれは気にも留めなかったのだがおれはその女性に引っ掛かりを覚えた。
なぜなら魔法指示が女性に飛んできたからだ。
「まて」
兵士たちは引きずるように俺から引き離そうとしていたが俺のその声で拘束したまま立ち止まる。
おれはその女性を観察した。
中毒症状が出ていて普通なら立ち上がれないほどの病もちだったからだ。
興味を覚えた。
その女性は再び必死に声を荒げた。
「私の村を助けてください覇王様。もう覇王様におすがりするしか手がないんです」
「君、その中毒症状は何なんだ?」
女性は驚きに震えた。
「あ…」
床に這いつくばるようにしている女性に合わせるように俺はしゃがんだ。
「君のその中毒。普通なら立って歩けないほどの重病人なはずだろう?」
その俺の声で兵士たちが緊張を高める。
慌てて俺から距離を置こうとするのだがおれはそれを制止した。
「心配いらん。周囲に害を及ぼすものではない」
女性は答える。
「こんなのは村では当たり前の症状です。私は軽いほうなのです。この症状などよりも村に襲う脅威のほうが何倍も重大なんです」
『キュアオール』
俺は女性に手を翳し状態異常を回復させた。
女性は非常に感激して感謝を何度もしてきた。
おれは詳しい話を聞くため近くにあった兵士詰所の会議室へと移動した。
「しかし、不穏な話だな。その病が当たり前でしかもそれ以上の脅威か。魔物か?」
女性は首を振った。
「村の守護神様が暴走されてしまいその影響で村に悪しき病が流行してしまったのです」
「その守護神を討伐してほしいのか?」
女性は首を振って否定してきた。
「違います。暴走を止めていただきたいのです」
おれはふと疑問に思った。
「なぜ俺なんだ?」
「村に伝承されているのです。その昔守護神様はかつて周囲に災いをもたらした悪しきドラゴンといわれていたのですがそれを守護神となさしめたのが古の大賢者様だったと伝わっております。そして制御できるのも賢者様か大賢者様のみと」
「その地にある国では拒否られたか」
「はい。守護神様とはいえドラゴン、竜ですのでさじを投げられ放置されました」
「納得のいく話だな。竜、ドラゴンは弱い個体でもAランクの魔物扱いだ。守護神と名つく個体ならばSだとしても納得がいく」
「そうですな。止めるにしても最低でも賢者となれば一国の国でも対応しづらいですしね」
フィニアスの言葉に俺は頷く。
「賢者は司祭以上に転職しづらい職業だからな。一国に一人いればいいほうだ。下手をするといない国のほうが多いだろう」
「さじを投げられたということはもしかして見捨てられし大地のかたですかな?」
「はい」
女性はうつむいて肯定した。
「見捨てられし大地といえばヴェリアス王国の北に位置する無法地帯だったか」
有名な場所だった。
ヴェリアス王国の北に位置する小国エリル皇国の直轄地だったのだが魔物が強すぎて国から見捨てられ、国の恩恵を受けられない土地なのだ。
あまりにも非情すぎるエリル皇国の対応に非難をした教会の指示のもと隣国ヴェリアス王国の領内にされたのだが、ヴェリアス王国からは登山不可能なウルグ山脈が遮りヴェリアス王国にとっても手が届かない場所なので実質無法地帯ともいえるのだ。
「ヴェリアス王国にも話は持って行ったのか?」
「いえ、この国のほうが近かったのでまだだったんです」
そこまで話が進んだ時キバが話に加わってきた。
「ウルグ山脈ですか。千年前は確か伝説の種族竜人族の里があるという話を聞いたことがあります。今もあるのかはわかりませんが竜人族も千年の寿命があるといいます。なにか関係があるのかもしれませんね」
「竜人族か。伝説級の種族だな。竜に変ずることができるという?」
「はい。我ら魔人族とエルフ族と並ぶ小種族ですので伝説化されているのでしょうね」
「行かれますかリュウ様」
フィニアスのその言葉は確認だった。
おれは頷いた。
「放置できないだろう。魔物も多く生息してそうだしな。浄化が必要な場所ほど魔物は多く強い傾向がある」
フィニアスはおれがイヴ神より授かった使命を把握しているので確認だった。
「わかりました。準備をさせます。二・三日いただければ整うでしょう」
「頼む」
「それと昼間の襲撃が覇王唯一教の関係者によるものだと判明いたしました」
「…やはりそいつらか」
「はい。リュウ様を覇王とは認められないと強硬手段に出たようです。リュウ様の拘束呪文のおかげでほぼ、かの教会を一網打尽にできました」
「それは良かった。だが残党もいるだろうから気を付ける必要があるな」
おれは少し安堵した。
やっと戴冠の儀が終わったような気がしたのだ。
次回投稿は30日です
外伝を予定しています
元日も投稿予定です
3章のプロローグなので短いです




