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両親のいる村から城へと帰還した俺をキバとフィニアスが待っていた。
というのもフィニアスは当初、戴冠式で着る服を新調するのに採寸をしたかったらしいのだがキバの話で城の宝物庫に戴冠用の覇王装備が保管されているという話を聞いたフィニアスは俺の帰還を待っていたらしい。
今日、城に戻ることは予定内だったためフィニアスは城で待っていたらしい。
というのも宝物庫は覇王しか扉が開けられないため確認できなかったのだ。
早速二人を連れて宝物庫のある地下へと降りる。
宝物庫へ行くには普通にはいけないようになっている。
まず3階の覇王のプライベートエリアにある専用の階段を使わなければならないのだ。
地下に降りると魔術のかかった扉が目にはいる。宝物庫の扉だ。
この扉、覇王の魔力にのみ反応する仕掛けな為、覇王以外では開錠はできないのだ。
おれは扉に手をかざし魔力を込める。
背後にいたキバが懐から鍵束をとりだし一つの鍵を手に鍵穴に差し込みまわす。
扉に魔方陣が一瞬浮かぶと直後にカチリと音がして鍵が開いた。
おれは魔力を込めたまま扉の二つある取っ手を両手で握り左右に開けた。
ゴゴゴと鈍い音が響くと扉は全開していた。
「さて、どの辺りかな」
というのも宝物庫は空間魔術で満たされているため城以上の広さを誇るのだ。
「広いですな…」
「服装品は扉より北東にあります」
「ああ、あの扉の向こうか」
警備のため扉はすべて魔力を込める必要がある。北東にある扉の前に来ると魔力を込めたままドアノブに手をかけ扉を開ける。
入って俺は驚かされた。
服はさほど置いてないのだが山のような装飾品だらけだった。
「目が疲れるな。チカチカする」
おもわず目頭を押さえた。
「素晴らしい装飾品の数ですな」
フィニアスの言葉にキバが答えた。
「先代覇王ウィリアム様は一時期アクセサリー収集に凝られていたので世界中より様々な装飾品が送られていたのです」
「それは、それは高尚な趣味なことで…」
俺は言外にそんな趣味には理解できんと首を振って呟いた。
そんな俺にフィニアスは満足そうに笑みを浮かべた。
「今代の覇王様は着飾るよりも実を取られることをうれしく思いますぞ」
俺の服の性能に気が付いているフィニアスは言った。
「こんなもの眺める位なら刀でも振ってたほうがマシだ。ゴテゴテに着飾る神経を疑うぞ、自分のこととはいえ…」
装飾品の数に圧倒されているわけにはいかないので正面にそれらしいローブ服と冠を見つける。
赤地の布に金の刺繍が一面に施されローブの外側を白いファーが目立つ、いかにも王様なローブだった。冠は意外にも繊細なデザインで正面に大き目の宝石が付いた金細工が目に付く大きな冠だった。
「これだな」
「ほう、これなら戴冠式で使えますな」
「そうだな。後は内側に着る服になるな」
立派な服マネキンに着せられていたそれをキバが手に取る。そのままタテに渡した。
タテはそのまま俺に着せてきた。
そのローブは少し小さかった。胸回りや腕回りが窮屈だった。
「ウィリアムは小柄だったようだな。少し小さい」
「というよりもリュウ様が少しばかり体格がよろしいようですね」
「かもな。普段から鍛えてるというのもあるが平均よりも背が高いのは知ってるからな」
俺は言いつつローブに魔力を込めた。
するとローブはリュウの体格に合わせ伸縮をしたようだ。魔道具ならではの性能だった。
「こんなものかな」
「よくお似合いですよリュウ様」
フィニアスが笑みを浮かべつつ言った。
「そうかな。着せられてる感がハンパないんだが…」
「いえ、ウィリアム様より着こなされているようです。武芸で腰が安定しておられるおかげでしょうね」
「あんまり褒めるなよ。照れるじゃないか」
俺は頭を掻いた。
気を取り直してローブを脱いでタテに渡した。
キバが冠を慎重にマネキンより取る。俺はマネキンを道具収納にしまいつつ呟いた。
「用はすんだな。戻るか」
宝物庫に再び鍵をかけ後にするのだった。
3階の居間に戻るとマネキンを部屋の隅に取り出す。
タテたちがそのマネキンにローブと冠をセットしているのを眺めつつ言った。
「戴冠まで3週間きったからな。準備で3週間なんてあっという間だろうな」
「そうですな。リュウ様、明日の午後。採寸のためにお時間をいただいてもよろしいかな?」
「ああ、午後なら問題はないぞ。ゲート関連は明日の午前までに終わらせる予定だしな」
「ありがとうございます」
フィニアスは深々とお辞儀をした。
「それとフィニアスの希望通り戴冠後になると思うが父さんたち両親が移転してくることになる。そのつもりで動いてくれるか?」
「!本当ですか。エルド達がここに戻ると言ってくれましたか」
「ああ。覚悟はしていたらしい」
フィニアスは心底ホッとして嬉しそうだった。
「しかし俺も驚いたよ。まさか父さんとフィニアスが同期でしかも親友だったと聞かされた日にはな」
「ええ、アイツ、エルドは当時の権力闘争に巻き込まれて臣民官をやめざるを得なくなったのに自分はあいつに何もしてやれなかったのが悔しかった」
フィニアスは珍しく感情に出ていた。
「自分よりも優秀なアイツがいつか必ずこの国で陽の目を見ると確信していたのでそれに協力できるならいくらでもします!」
「そう言ってくれると助かるよ」
「さっそく手配をします」
そう言ってフィニアスは城を後にするのだった。
その日の夜、夕食時間になるとなぜかステラが食堂にいた。
「ステラどうしたんだ?」
ステラは気まずそうにしていた。
「父が夕食と朝食は今日からここでとるように言って家から追い出されちゃって…」
「そうか。戴冠すれば毎回ここでとることになるから構わないけどさ。でも朝食も?」
ステラは頷いた。
「……」
しばらく無言が続いた。食器の音と食べる音だけが響いた。
「フィニアスに知られたのか?一線超えてないって」
ステラは赤くなった。
言葉にできなかったのだろう。顔が真っ赤に染まっていた。
「そうだろうなと思った。機会がなかったというのもあるけど、ものには順序があるし急いでなかったからな君とは」
「ごめんなさい…」
「なんで謝る?」
「だって…」
「ステラが気にすることじゃない」
俺は立ち上がりステラのそばに近寄る。
「フィニアスが気にしたのもわかるけどな」
「そうなの?」
ステラは横にいた俺を見た。
「戴冠式前にはクリスティーナ姫がここに輿入れしてくる。ステラと同時にここに居を構えることになるからフィニアスは気にしたんだろうな。俺との仲を確実にしたかったんだろうさ」
俺はそっと後ろからステラを抱きしめた。
「自覚してくれたことは嬉しい。でも急ぐことでもないから」
そのステラからは少し百合の花の香りがした。
ステラから香ったのは初めてだった。いい匂いだと感じた。
「今日のステラからはいい匂いがする。このままステラを食べたくなるけどそれはしない」
「リュウ…」
「せっかくフィニアスがくれた機会だし、しばらく毎日添い寝してもらおうかな」
おれは抱きしめたまま笑みを浮かべた。
俺としてもステラと進展したかったというのも事実だった。
ステラは真っ赤になりながらも頷いてくれた。
ステラを腕から解放して食事を進めた。
その夜先に入浴を済ませていたステラは風呂上がりの俺に声をかけてきた。
風呂上がりということもあり俺の姿は寝具のローブ姿だ。その下は下着しか着ていない。ステラも同じ姿だった。
「これって戴冠式に着る服と冠?」
濡れた髪の水分を布でふき取りつつステラの視線にあるマネキンを見た。
「ああ、今日宝物庫から出したんだ。先代の戴冠式に使ったものらしい」
「やっぱり魔道具…よね」
「ああ、俺にしか、覇王にしか着られないものだな」
布を背後にいたタテに渡し退出させると音もなくステラの背後に立った。
「魔道具ならサイズ調整もされてあるのよね…っ」
ステラは背後にいた俺に驚いて体をこわばらせた。
「びっくりした」
俺はさすがに眠気から欠伸が出る。
ゲートを故郷で設置したため魔力不足から体も程よく疲れていた。
思考もすでに働かない。
「それはいいから俺は眠いんだよ。もう寝るぞ」
ステラは緊張から眠気などないのだろう。
気にしていられない程度に眠い俺はステラを無理やり姫抱きに抱え寝室に移るとそのままステラを抱きかかえたままキングサイズのベッドにもぐりこんだ。
俺がベッドに入るとベッドの天蓋にある魔方陣が発動しガード魔法がかかる。
そうなると俺以外の人はガードが消える翌朝までベッドから出られなくなる。
それは事前にステラに言っていた。
「………。ステラ。悪いけど人肌があるとおれは無意識に抱き癖が出る。気にしていたら眠れないぞ…」
俺はそれだけ言って落ちるようにステラを抱きしめたまま眠りに落ちた。
その後ステラはなかなか眠れなかったようだ。
翌朝目が覚めると案の定ステラに腕枕させた状態で開いた腕で腰を抱いたまま眠っていたようだ。
ん?ステラの百合の匂い昨日より強くなってる気がするな…
微動だにせずに腕の中で熟睡しているステラを見つめつつそんなことを思っていた。
これはしばらく起きそうにないな
ステラの匂いを嗅いでいるせいかじっと見つめていると、いとおしさがこみ上げてくる。
腕に感じるステラの体が幸福をもたらしていた。
そしてしばらくそのままの体位でステラの寝顔を見つめていた。
この匂いが強くなると据え膳が厳しくなるかもしれないな
ステラとは戴冠の日まで関係を持つ気はなかったリュウは日追うごとに添い寝が厳しいものになることは覚悟していた。
魅了の香りが心持ち次第で強く香ることに気がついたからだ。
腰に回していた手をそっとステラの散っていた髪に触れる。さらりとした感触が指に伝わる。
その感触からかステラの瞼が開いた。
ステラは腕枕させていたことに気がついて慌てて身を起こす。
「ごめんなさい腕疲れたわよね」
おれは気を使いすぎているステラに笑みを浮かべた。
「そんなことは気にするな。無意識に抱きかかえてしまう自分の癖だから気にする必要はない」
解放された腕をかばいつつ起き上がると腕を軽く揉みほぐして状態を戻した。
「大丈夫?」
「大丈夫だ。ステラは気を使いすぎる。もっと気楽でいいんだぞ」
おれは言って強引に腕枕していた腕でステラを抱き寄せると顎を掴み、唇を奪った。
「!」
ステラは驚いて身を固くしたがされるままになった。
される行為が嫌ではなかったのか、おずおずとステラの手のひらが俺の腰に添えられた。
ステラの唇をたっぷり味わってからステラの唇を解放した。
熱が落ち着いたかな
あまりにも匂いを嗅いでいたので落ち着かなかったのだ。
ステラは真っ赤になっていた。そんな顔も可愛いと思いつつ笑みを浮かべた俺はステラの体をそっと解放した。
「しばらく部屋にいてもいいから落ち着いたら自分の部屋に戻るといい」
おれは言ってベッドルームを出て身を整えるために洗面所に消えるのだった。
その日城の入り口付近にあるゲート専用部屋にゲートの魔法を生み出し各地のゲートを開通させた俺は予定通り午後にフィニアスに連れられて城を降り城下で採寸をしたのだった。
その後1週間ほどは午前中城下にある議会に参加し議会運営を覇王室で見守り午後には議会に参加していた臣民官達らと会談をしたりと国家運営に参加するようにした。
そのおかげで臣民官達からは信頼を得られたことは上々だった。
ゲートを開通したおかげで父が単独で頻繁に城にやってきて城下のカイエルに降り臣民官としての地盤固めのため動き出していた。
クリスも開通してから1週間ほどはゲートを使い覇王城にやってきて自分の部屋を決めた後、それなりに整えていたのだが来ていたのは開通後1週間ほどだけだった。
というのもデモンストレーションの意味合いも兼ねていたので馬車で首都カイエルと覇王城入城を大々的にやるため旅の住人になっていたのだった。
そんな調子で1週間が過ぎると戴冠式に参列するために早いものはカイエル入りをしていた。
そんな参列者たちに顔見世を兼ねて午前中はフィニアスを伴い玉座にて謁見を繰り返し午後は自由時間を得ていたので新たな移動用の魔道具制作に取り掛かっていた。
新たな移動用魔道具、バイクは一人から二人乗りだったが作っているのは車だ。
こんなところで工業校に通っていた実績が役立つとは思っていなかった。
だが進行状況は芳しくない。魔法との掛け合いが難しいのだができないことではなかった。
そんな2週間の間、毎夜ステラと添い寝を繰り返し地味に夜が厳しくなっていたのもまた事実だった。
予定では明日クリスティーナ姫を乗せた馬車がこのウィリアム覇王連合国の首都カイエルに到着する。
ベッドの上でステラを胸に抱き留めた状態でステラにで声をかける。
「添い寝は今日までで一区切りつけるよ、ステラ」
「明日は姫が到着なさるものね」
ステラはすっかり俺と眠るのに慣れていた。俺の胸の鼓動を聞くのが好きなようだった。
「ああ」
「明日は姫を招くのね」
「…そうなるな。しばらくご無沙汰だったから…な」
「……私は…いつでもいいんだけど…」
そんなことを言ったステラを思わず見つめる。
ほんのり頬を染めて俺を見つめていた。
しばらく見つめあっているとステラがキスをしてきた。
されるままに様子をうかがっていると唇を解放したステラは聞いてきた。
「私じゃだめ?」
「……!」
俺は息をのんだ。服を剥きたくなったがギリギリで理性が働いた。
「そんなことはないさ。今も抑えるのに苦労してるくらいだ…」
「…じゃあどうして?」
ステラの頬に触れる。
「ステラとの関係は戴冠後としばらく前から決めていたことだ」
「そうなんだ…」
ステラはほっとしたようだった。
俺の胸の上から降りすぐ脇に横になった。
俺はステラの頭を抱えるように眠りに落ちた。




