第42話:勇者様ご一行
ここは、ガルガンティアの北端の町ダズ。
獣王タイランは砦で仲間と共に策を考えていた。
策といっても、もはや打つ手のない状態だ。
「タイラン様…敵がついにここまで…。」
「…ああ。…すまん、俺の力が足りなかった…。何とかレオンに遣いを送って、お前たちだけでも命を助けてもらえないだろうか…。」
「タイラン様…まだ…まだ戦いは終わっていませんよ!」
戦況は極めて厳しい。
タイラン軍は、ここまでレオン軍に敗戦を重ね、兵力も削がれている。
レオン軍はこのダズの町を包囲し、もはやタイラン達には逃げ場のない状態だ。
このまま戦っても、このダズの町は落ちる。
しかしダズが落ちることは、この戦の負けを意味する。
どうしたらいい?
「レオンのやつ…一体どうしてしまったんだ…。何故こうも変わってしまったのか…。」
獣王レオンは、ある時から人が変わったかのように考えが変わった。
それまでレオンは武人としての誇りを掲げ、この獣王国を大陸一の大国となるように牽引してきた。他国の見本となる国を目指し、エルフの国など武に劣る隣国達を魔族の手から守ってきたのだ。
それがある日を境に変わってしまった。
なぜか、エルフの国を目の敵にし、大樹の奪取を謳い始めたのだ。
「どうしてしまったんだ…レオン。」
「魔王のせいだと思うよ。」
そこに突然、ブロンドの髪をかき上げながら人間族の青年が現れる。
後ろには、美女を3人連れている。
「誰だ?!」
「大丈夫。敵ではないからさ。僕は勇者のアレク。このガルガンティアで争いが起きていると聞いてね。ここまで来たんだ。」
「勇者だと?」
「そう。精霊に愛された者、それが勇者だ。」
そういって、アレクはさっとサラマンダーを召喚する。
サラマンダーはアレクの周りを飛び回り、力を示すかの様に激しく燃える。
「ここに来るまでに、敵の獣の軍団と戦ってきたよ。彼らからは、なぜだか“魔素”を感じたよ。やっぱり、魔王が関係していそうだね。」
「魔王だと…?」
タイランには思い当たる節があった。
確かに、レオンが変わってしまう直前、魔王の来訪があったのだ。
いままで何度もガルガンティアににちょっかいを出してきた、隣国の魔王スーハラが和平を結びたいと言ってきていた。
あの和平の会合からだ…レオンがおかしくなったのは。
「魔王か…確かに、スーハラという魔王が、この混乱の前に我らの前に現れていた。そいつが悪巧みをしているのか?」
「その可能性があるね。僕の読みだと、彼らはその魔王に何らかの力で操られているとか、かな。うん?…外から雄叫びが聞こえる!敵の軍が攻めてきたようだ!僕たちは先に戦いに行ってくるよ。また後で話そう。」
そう言って、アレクは町の外に出る。
・・・
ダズの町を取り囲む様に、かなりの数の獣人族たちがこちらに敵意を向けていた。
「結構な数だな。あれを一人で相手にするのはちょっと大変だ。ジュリ、魔法でいくらか眠らせられない?できれば殺したくないから。」
「アレク様、簡単ですわ。」
アレクのパーティーメンバーの美人魔法使いジュリが風の魔法を唱える。
心地よい風が戦場に吹き、敵の多くがうとうとと眠ってしまう。
「ありがとう、ジュリ。ナル、僕のステータスを上げてくれ。
同じく魔法使いの美女ナルが、アレクのステータスを一時的に上げる魔法をかける。
「後は僕に任せて。」
アレクはそう言って、剣に炎を込めると、剣は赤く輝きを放つ。。
「炎一戟!!!」
激しい炎を纏った衝撃波が敵全体を飲み込む。
レオン軍の兵士たちは為す術なく、次々と倒れていった。
「ふぅ、こんなもんか。ギリギリだけど、みんな息はあるみたい。ノア、彼らの魔素を抜いてあげてくれ。治療もな。」
「アレク様、了解致しました。“悪の浄化”。」
僧侶である美人ノアは“光の魔法”を行使する。倒れている獣人達を優しい光が包み込み、彼らを蝕む“魔素”を消し去った。
「あれ?ここは…?俺達は…何を?」
一部の兵士たちは正気を取り戻し、少し混乱している様だ。
そこに、遅れてタイランたちがやってくる。
「これは…いったい…?」
「はは、良かった良かった。倒した兵士たちも大丈夫そうだな。彼らは魔王に操られていたみたいだよ。」
「操られていた…だと?」
「僕らの光の魔法で、魔素を取り除いてあげたから、そこにいる兵士は正気を取り戻したみたいだ。」
「では…レオンも魔王に!?」
「たぶんそうだね。これから僕らは、その獣王レオンの正気を取り戻しに行ってくるよ。」
「俺も連れて行ってくれ!!俺は獣王のタイラン。この国を…レオンを正気に戻したいんだ!」
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