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第43話:勇者、魔王と戦う

 勇者アレクとその一行は強かった。

 彼は、炎の精霊魔法を巧みに操り、レオン軍の兵士を次々と戦闘不能にしていく。

 後ろに控えた三人の美女は、それぞれが魔法でアレクをサポートした。

 ノアの光の魔法は、獣人たちの“魔素”は次々と取り除いていった。

 タイランはその様子を、後ろから呆然と見ていた。


「お前たち…強いな。」

「当然だろ?僕は勇者だぞ?」

「お前だけではなく、後ろの女子(おなご)達も、だ。」

「そうだよ。彼女たちはただの僕のファンじゃないんだ。僕の戦いは勿論、身も心もサポートしてくれる、素晴らしい女の子たちさ。」

「…よく分からんが。」

「レオンとかいうやつは、どこにいるんだ?」

「おそらく、レオンはガルガンティアの首都マリにいる。」

「マリか…。そこの女の子達は可愛いのかい?」

「…お前は何しにここにきたんだ?」

「ちょっと確認しただけさ。さ、マリに向けて進もう。」


 そんなこんなで、勇者の一行とタイランは、マリに向かうのであった。



------------------------



 ガルガンティア、王城内。


「グハハハ…俺様の“兵隊”たちが、なぜだか知らんがやられとるわ。こりゃ勇者の仕業か?」


 「獣」の魔王ガルバートの大声が響く。


「笑いごとじゃないんだな、ガルバート!この役立たず!お前のせいで計画が失敗するかもしれないんだぞ!お前の力はそんなもんなのか?」

「グハハハ…スーハラよ。誰に対して物を言っている?ここが『砂』の国だからと言って、あまり調子に乗るなよ?」


 刹那、ガルバートは禍々しい程の“魔素”を放つ。


「!!?じょ、冗談なんだな!!お前の(ちから)には、とっても助けられているんだな!ただ、その勇者というやつの力が、思っていたよりも厄介なんだな!!」


 グハハと笑いながら、ガルバートは放っていた魔素を抑える。


「確かに、俺様の兵隊をいとも簡単に倒しているようだ。しかも、俺様の『獣』の力がレジストされている。兵隊の数が次々に減っているな。」

「このままじゃ、このマリまで来てしまうんだな。」

「グハハハ…それでも魔王か、スーハラよ?力を見せつければいいではないか?魔王の、な。」

「…確かに、ここは砂漠。ボクに利があるんだな。」

「グハハハ…そうよ。俺様も兵隊が惜しい。こちらから、その勇者の所に出向こうでないか。よいな、ヴェルネ。」

「構わないよ。僕たちの計画の邪魔だから、さっさとその勇者を殺ってしまおう。」



------------------------



「タイラン、あとマリまでどのくらいだい?」

「…数日はかかるぞ。ガルガンティアは大国だ。」

「え~。僕たちここまで、あまり休みもせずに急いで来たのに、まだそんなにかかるのかぁ。」

「仕方がないだろう。いずれにせよ、お前たちのお陰で戦えている。礼を言うぞ。」

「言葉ではなくて、態度で示してほしいなぁ。この内戦を収めたら、僕らに何かご褒美を頂戴よ。タイランも王様なんでしょう?」

「…まぁ、よいが…俺の想像していた勇者と、お前はだいぶ違うな。」

「どうせ、“勇者は無償でただ正義のために戦う”とか思っていたんでしょ?いつの時代だよ、それ。勇者も人間なんだから、見返りがないとね。貰えるものは貰いたいよ。」

「…うーむ、わかった。うん?またレオンの兵士が前にいるな。」

「またか…。うん?ちょっと雰囲気違うな。“魔素”が濃い。…!!?!みんな避けろ!!」


 突然、アレクの目の前に砂の刃が迫る。

 アレクの声に反応して、メンバーたちはギリギリで回避した。


「ボクの“砂の刃(サンドカッター)”を避けるとはね。」

「グハハハ…やはりお前の力はイマイチだな。今のは一人くらい殺さなければいけない場面だった。」


 一際“魔素”を強く放つ二体の人物が、目の前に現れた。


「…魔王か。」

「グハハ…いかにも、俺様は魔王ガルバート。お前は勇者か?俺様の兵隊の数が着々と減っているが…お前の仕業か?」

「兵隊?獣人達のことか?」

「グハハハ…そうだ。あれは俺様の“兵隊”。よくもやってくれたな!」


 ガルバートは大きな爪のついた両手を空に向かって振り抜く。


獣爪(ファングネイル)!!」


 砂の地面を土煙を上げながら、二本の斬撃がアレク達に向けて飛ぶ。

 アレクは咄嗟に剣を構え、その斬撃を剣で弾く。


「グハハ…これくらいでは殺れないか。」

「ボクの出番も作るんだな。ここはボクの縄張りなんだな。」

「お前は後ろで静かに見ているのだ。こやつらは俺様一人で殺れる。」

「ボクにも見せ場を作るん…」


 二体の魔王が会話をしている隙をついて、タイランが素早い動きでスーハラを爪で切りつける。

 スーハラの体は見事に真っ二つになるも、切断面からは砂がさらさらと流れ落ちた。その砂は砂山となり、そこから再度スーハラが現れる。


「おい、タイラン。ひどいじゃないか。ボクはまだ話してる途中なんだぞ。」


 そう言うと、タイランの足元の砂が、タイランを拘束するように体に絡みついた。


「ぐ…。スーハラめ…。」

「くくく…お前もボクを甘く見ていたんだろ。ボクはこの砂漠でなら負けないんだな。このまま握りつぶしてやるんだな。」

「タイラン!!!」


 アレクがスーハラに向けて魔法を放とうとすると、


「よそ見をするな。お前の相手は俺様だ。」


 ガルバートが再度、大きな両手を振りかざし、暴力的な斬撃を加える。

 同時に、アレクの足元の砂が動く。砂はアレクの手足を拘束し、自由を奪った。

 そのまま、ガルバートの斬撃が直撃する。


「アレク!!!」

「くくく…だからボクを甘くみるんじゃない。」

「グハハハ…まだ死んでなかろう。もう少し俺様を楽しませろ。」

「く…。ノア…急いで俺に“光の恵(ヒール)”を。」


 僧侶の美女ノアが“光の恵(ヒール)”を唱える。

 隙を見せずに、アレクは炎の精霊を召喚し、魔王たちに攻撃を仕掛ける。


炎一閃(フレイムストライク)!!」


 炎の斬撃がガルバートに迫るも、ガルバートは簡単に掻き消す。


「グハハハ…こんな精霊魔法、俺様には効かないな。」

「勇者も大したことないんだな。このままタイランものとも消し去るんだな。」


 ガルバートが(とど)めと言わんばかりに両手に力を込める。

 両手を振り抜くと、砂を巻き上げて、これまでよりも強力な斬撃がアレクの目の前に迫る。


「アレク!!!」


 アレクの仲間が後ろから何とか魔法で斬撃に対抗するも、勢いは衰えない。

 斬撃はアレクに達するとともに、大きな爆炎を上げる。


「くくく、雑魚だったんたな。」

「グハハハ…()()()()()()()、な。」


 ガルバートが身構えると、爆炎の中から灼熱の炎に包まれた魔獣イフリートが現れる。

 魔獣の口内に業火が集り、次の瞬間、


烈火の咆(インフェルノ・ロア)哮!!!」


 凄まじい程の勢いで熱の塊が、スーハラ目掛けて放たれた。

 スーハラはいとも簡単に消滅する。


「グハハハ…やるではないか。」

「あんまり余裕がないんだ。さっさと片付けるよ。」


 アレクは剣を構える。


烈火の剣(インフェルノブレード)!!」


 地獄の炎に纏われた剣を持ち、アレンがガルバートに斬りかかる。

 ガルバートは攻撃を躱すが、躱すたびに切りつけた地面が炎で燃える。


「グハハ…この炎に触れるとまずいな。」


 だが、少しずつ剣戟は、ガルバートに迫る。

 後方のノアが光の魔法で、アレクをサポートする。

 光の魔法でガルバートが怯んだところを、アレクは躊躇なくインフェルノブレードで切りつける。


 ガキン!!!


 アレクの燃える剣を、ガルバートは自慢の爪で受ける。

 刹那、ガルバートの右手が激しく燃え上がった。


「ぐおおおお!!!」

「終わりにしよう。」


 アレクは再度剣を振りかざす。

 すると、突然ガルバートの目の前に、ライオンの様な獣人が姿を現す。


「レオン!!!?」

「え!?」


 タイランが声を上げた。

 アレクが攻撃をためらった一瞬の隙を突き、「水」の魔王ヴェルネがアレクの体を貫いた。



悪魔の露(エビル・デュー)。終わりだよ。」


ここまでお読み頂きありがとうございます。


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次回もよろしくお願い致します。

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