第41話:三人の魔王
ガルガンティアの内戦は佳境を迎えていた。
ここは獣王国ガルガンティアの“砂の都マリ”。
その王城にて、三人の魔王が円卓を囲んで話している。
「もうすぐ、この“砂の都”はボクのものなんだ。」
茶色のローブを羽織り、フードを深く被った小柄な魔族が言う。
彼は「砂」の魔王スーハラ。このガルガンティアに隣接する山岳地帯を領土にする魔王だ。
「グハハハ。おい、スーハラ。レオンを抑えているのは俺様だ。その辺は忘れんるじゃねえぞ。」
全身が深い毛で覆われ、大きな獣のような魔族がそれに反応する。
「分かってるんだ、ガルバート。君の『獣』の力がなかったら、こんなに事は上手くはいかなかったんだ。この『砂』の領土さへ手に入れば、ボクはもっと強くなれるんだ。あの憎たらしい“アルカモス”なんかには負けないんだ。」
「グハハハ…お前は、まだそんな事を言っているのか。俺様はこうも簡単に沢山の“兵隊”が手に入って興奮しているぞ。グハハハ。」
「獣」のガルバートはそう言うと、自分の大きな爪を研ぎながら続ける。
「おい、ヴェルネ。俺達だけ、こんないい思いをして良かったのか?お前は“エルフの里にある木”が欲しいとか言っていたが…本当にそんなもんでいいのか?」
そう言うと、二人はもう一人の男に注目する。
濃紺のマントを羽織った、身綺麗な顔立ちの青年は淡々と答える。
「僕は構わないよ。僕は領地とか、兵隊とか、あまり興味がないから。“木”だけで十分だ。」
「グハハハ。変わったやつだな。“木”が好きなんてな。まぁいい、さっさとタイランのやつを始末してしまおう。」
「水」の魔王ヴェルネはそう言うと、二人に気づかれないように微笑する。
「(馬鹿なやつらだ。“大樹”の大切さも知らないなんて。)」
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少し時間は遡る。
彼ら三人は、このガルガンティアの周辺を領土にする魔王たちだ。
それぞれの思惑が重なり、協力してこのガルガンティアに混乱を招き起こしたのだ。
実際は、見かけ上は、だが…。
「砂」のスーハラは、もともと自身の領土に不満を抱えていた。
彼が生まれた“ヴァルプルギスの夜”は、魔王アルカモスによって主催された。アルカモスは野心家で、序列10位と実力のある魔王だが、女好きで、酷く捻くれた魔王でもあった。
スーハラの同期の魔王には、「花」のローゼが居た。彼女はとても美しく、直ぐにアルカモスに気に入られた。アルカモスは彼女に、彼女の「花」のオリジナルスキルが最も活かされるであろう“魔の森”を領土として与えた。
さて、彼は「砂」の魔王だ。
「スーハラさんは…当然、“砂”を眺められる場所に致しましょうか。」
アルカモスはそう言った。
彼はその言葉に大きな期待を寄せる。
アルカモスは嫌な笑みを浮かべながら、彼を領地に転移させた。
その領地からは“砂漠”を眺められることができた。ただし、遠くに。
彼が与えられたのは、砂漠の見える、特徴のない山岳地帯だった。
砂漠を得られなかった事に憤りを感じたが、幸い砂漠は目の前だ。
スーハラは砂漠の領土を自分のものにすべく、躍起になった。
しかし、思いのほか砂漠の獣人の国は強く、彼では歯が立たなかった。
一方で、同期の「花」のローゼは、人間族の国との戦いに勝ち、序列を順調に上げていた。
同期の女に負ける。彼にはそれが耐えられなかった。
そんな折に、「水」の魔王ヴェルネが話を持ちかけてきた。
ヴェルネは序列20位、彼よりも遥かに実力のある魔王だ。
「スーハラ、君の砂漠の戦いに協力させてくれないか?」
ヴェルネは、「獣」の魔王ガルバートのスキルを使って、ガルガンティアを思いのままに操ろうと提案をした。ガルガンティアが亡くなれば、砂漠は自分のものだとも。
「そんなことをして、お前らには何のメリットあるんだ?」
スーハラは勿論疑う。話がうますぎる。何か裏があるのではないか?
「ガルバートは、自分の操れる“兵隊”を増やすことができる。あいつは馬鹿だから、それだけで満足するだろう。あいつは、“獣”を自由に操ることができるんだ。それは魔獣でも獣人でも…獣王国の王でも、だ。」
「お前は?何の目的があって…ボクに協力するんだ?」
「僕は正直砂漠とか、興味ないんだよ。僕は“獣の国”が仲良くしているエルフの国を滅ぼしたい。あそこにある“綺麗な木”が欲しいんだ。それだけだよ。」
「綺麗な木?」
「そう。綺麗な木。君は“花”とか木とかは、嫌いだろ?」
「…“花”なんてどうでもいいんだ!分かった、協力してほしい。」
こうして、三人の魔王によるガルガンティアの攻略が始まった。
ヴェルネの本心は別の場所にあるのだが…そんなことは知らずに。
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「グハハハ…俺様の兵隊が、勇者の一団がダズの町に来たと言っているぞ。」
「獣」のガルバートは言う。
「勇者!?勇者が来るなんて聞いていないんだ!ヴェルネ!どうすればいい?」
スーハラは思わぬ敵の出現に取り乱す。
内心呆れながらもヴェルネがなだめる。
「慌てなくも大丈夫だよ、スーハラ。こっちには、レオンがいるんだ。彼らには手を出せないだろう。後は、ここは『砂』の地。君の本気が出せる場所じゃないか、スーハラ。いざとなったら、僕が助太刀をするから、遠慮なく戦うといい。僕の『水」の力は勇者なんかに負けないよ。」
そう言うと、ヴェルネは高位の魔王に相応しい魔素を放つ。
スーハラとガルバートは、それに圧倒され、言葉を失った。
「わかったんだ。まずはボクの力を見せつけてやるんだ。2人とも、サポートしてほしいんだ。」
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