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女神をさがして―家に帰るため、わたし冒険者になります!―  作者: 仁 尚
第一章 異世界に来ちゃいました!
12/16

(1-12)

今回は戦闘あり!

さらに、少々血なまぐさい描写がありますので、苦手な方はご注意を。

「伯母上…それは、何の冗談ですか?」

 気が付くと何故か、アズラク君がワタシを見て物凄く不機嫌そうになっている。


 そんなアズラク君に問い質されたメルトさんは、ムッとしたっ表情に変わった。


「失礼ね、さっき冗談は言うって言ったけど、時と場合は弁えているわ。今のは本気よ」


 えっと……今、メルトさん何て言ったの?

 

「メルトさん、今何て言ったんですか?」


 完全に聞き逃してしまっていたので、手っ取り早くメルトさんに聞いてみる。


 すると、メルトさんが不思議そうな顔をした。


「あれ?聞いてなかったの?あの子に出した課題、セアちゃんの攻撃に耐えることだから」

「はい!?どういうことですか?!」


 嫌な予感はしたけど、まさか巻き込まれるとは思ってもなかった!


 っていうか、何でわたし?!


 物凄く混乱するわたしの肩に、メルトさんが手を置いた。


「まぁ、困惑するのも無理ないけど、セアちゃんにとっても悪くない話なのよ。だから、いいわよね?」

 そういうとわたしの肩に置いたメルトさんの手に少しずつ力が加わっていく。


 それはまさに下手に拒否しようものなら肩ごと腕がもがれてしまうかも、と恐怖を掻き立てる所業で、おかげでわたしは混乱が解け、ただ無言で頷くことしかできなかった。


 ちくせう……拒否権なしって酷くないですか?


「よーし!それじゃ裏庭に移動しましょうか。あっちの方が広いし」


 わたしの許可(強制)もとれたと思ったメルトさんが裏庭に移動するため歩き出すと、クリスさんわたしと続き、少し距離を置いてアズラク君が付いてくる。



 ……なんか、背中にひしひしと視線を感じる気がする。



 裏庭に向かう最中、後ろからアズラク君にジッと見られている気がして、気まずくなったわたしはメルトさんに考え直してもらうため交渉しようと、傍へと寄った。


「あの、ホントにわたしでいいんですか?なんだか、凄く不満そうなんですけど…彼」

「いいのよ。私が出した課題を受けるって言ったのはあの子なんだから。これで駄々を捏ねるようなら二度とここへは近づけないとようにするだけよ。それから、セアちゃんにとってもこの課題を引き受けることは必要なことなのよ…だって、魔術を覚えてから一度も生き物に向かって使ったことないでしょ?試してみたくない?自分の魔術が通用するのかを」


 メルトさんの言葉を聞いて、交渉していたはずのわたしの心が少し揺れた。


 メルトさんの言う通り、わたしが魔術を覚えて一週間……裏庭にあった岩や木などを標的にしてはいたが、一度も生き物相手に魔術を使ったことがない。


 理由は、無駄な殺生はしたくない…とか格好いいこと言いたいけど、実際はメルトさんのお屋敷の周囲に生き物がいないからだったりする。

 何でも、メルトさんが展開している結界の影響で、様々な生き物が近づけないらしく、未だに生き物を相手にしたことが無いのだ。


 確かに、いつかは通らないといけない道だけど……


「まぁ、通用するのかは凄く気になりますけど……でも、わたしの魔術を彼が防いだら、メルトさんは戻りたくない故郷に帰らなきゃならないんですよ?責任重大じゃないですか……」

「その点なら何も心配していないわ。セアちゃんなら、絶対大丈夫だから自信を持ちなさい!」


 その自信、何処から来てるんだろう……


 どうにかして考え直してもらおうと交渉したけど、わたしの交渉力ではメルトさんを説き伏せることは叶わず、気が付いたら裏庭に到着していた。


「それじゃ、始めましょうか!とりあえずアズラク……貴方は庭の奥に行って、元の姿に戻りなさい。言っておくけど、拒否するようならこの話はなかったことにするからね」


 予想すらしていなかったのか、メルトさんの指示にアズラク君は驚きのあまり目を大きくして声を上げそうになっていたけど、すぐに表情を引き締めた。


「…分かりました。こちらが有利になるわけですし、拒否するつもりはありません……人間相手にこの上なく不服ではありますが」


 チクリと嫌みを残しながら、アズラク君が庭の奥へと歩いていく。


 まぁ人間の、しかも女の子相手に「本気を出せ」、と言われたようなものだから仕方ないんだろうけど……何か見下される感じがして腹が立つなぁ…


 と、アズラク君に対してほんの少し苛立ちを覚えていると、メルトさんが盛大に溜息を洩らした。


「全く、相手を見た目で判断するなんて本当に【士成の義(しせいのぎ)】を受けて里を出てきた(・・・・・・)のかしら?後で問い質さないと……さぁ、セアちゃん!手加減は不要よ。ドラゴン族の打たれ強さは折り紙付き、思う存分殺ってきなさい!」

 何か呟いていたメルトさんだったけど、突然手を叩いたかと思うと、いい笑顔でわたしを送り出してくれた。


 メルトさんが物騒なことを言った気がするんだけど、気のせい?……まぁ、それはいいけど、ホントに大丈夫なのかなぁ?


 未だにメルトさんが何であんなに自信が持てるのか分からないまま、わたしはメルトさんたちから少し離れた場所まで移動すると、相対するアズラク君へと目を向けた。


 すると彼もちょうど庭の奥に辿り着いたところで、こちらに振り返ると突然身体中から目に見えるほどの魔力が溢れ出し、次の瞬間眩い光を発して辺りを照らした。


「うわっ?!」

 渡した咄嗟に目を瞑り、顔をそむける―そして何故か、その時メルトさんの方から盛大な舌打ちが聞こえた気がした―。


 十数秒ほど固く目を瞑っていたわたしは、もう大丈夫かと思ってゆっくり目を開けてアズラク君の方を再び見た瞬間、息を飲んだ。


 GUUU……


 三階建ての学校の校舎と変わらないぐらいの巨大な身体に、金色に輝く瞳。あらゆるものをかみ砕きそうな顎と刃物のように鋭い爪。二対四枚の巨大な羽に、身長と変わらないほどの長さと丸太のような太さをした尻尾……そしてアズラク君の髪の色と同じ深い海を思わせる蒼い鱗。 


 本来の姿に戻った彼はまさに、地球では空想上の生き物として考えられているドラゴン、そのものだった。 


「すご……」


 その大きさに圧倒されたわたしだったけど、不思議と怖さ、というか恐怖は感じなかった。


 あれかな?ドラゴンの姿をしていても、中身がさっきまで見ていたアズラク君だと知っているからかな?


 怪獣と言って差し支えない巨体を前に、冷静さを保てている自分を自己分析していると、メルトさんが二度手を叩いた。


「さて、アズラクが元の姿に戻ったことだしルールを確認するわよ。勝負は一度きり。セアちゃんの放った魔術を防御せずに耐えることが出来れば、アズラクの勝ち。逆に耐えることが出来ずに膝をついたり気絶した場合や、何かしらの防御や回避、もしくは攻撃による相殺を行った場合は、セアちゃんの勝ち。いいわね?」

「はい!」

『……』

 

 メルトさんの言ったルールに、わたしは返事で返し、アズラク君は無言で頷いた。


「それじゃ、セアちゃんの好きなタイミングで始めて頂戴!」


 開始のタイミングを任されたわたしだったけど、正直どの魔術を使おうか決めかねていた。


 ……う〜ん、あれだけ大きな相手なら、わたしが放てる最大火力をぶつけてみたいけど、強化型フレイムジャベリンはまだ試し撃ちしてないしなぁ……どうしよう?


 と、悩んでいると押し殺したような低い笑い声が聞こえ、わたしが顔を上げるとアズラク君が顔を歪めて笑っていた。


『おい、どうした。さっさと始めろよ……まぁどうせ、魔術なんてものを使っても人間風情にこの鱗に傷一つつけることなど出来はしないんだから、結果は変わらないだろうがな』


 その言葉を聞いて、わたしの中で”ブチッ”と何かが切れる音が響いた瞬間、先ほどの悩みが綺麗に吹き飛び選択肢が一つになっていた。


「……あっそ、だったら試してあげようか?人間の力で、その鱗に傷がつけられないのかをさ!」


 そう叫ぶと、わたしは魔力消費を二倍に引き上げ、貫通力を最大まで強化したフレイムジャベリンを選択する。


 正直、彼の言葉は上位種族特有の感性から出た言葉なんだろうけど、わたしからすれば「何も知らないくせにわたしの努力や力をくれたクリストバルさんを馬鹿にした!」としか思えなかった。


 だから、許せない……絶対泣かしてやる!!


 わたしはキッとアズラクーもう君なんてつけてやんない!!ーを睨むと、右手を空へと掲げた。


 その動きに連動して掲げた右手の上空にフレイムジャベリンが出現し、待機状態で浮かぶ。


 通常のフレイムジャベリンはその名の通りに炎の槍だけど、貫通力を最大まで強化したわたしのフレイムジャベリンは、炎が極限まで収束され槍自体が真っ白に光り輝いていた。


「いっけぇー!フレイム、ジャベリン!!」


 掲げた右手を思いっきり振り下ろすと、フレイムジャベリンが敵に向かって撃ち出された。

 

 すると、さっきまで余裕を見せていたアズラクがいきなり前傾姿勢になったかと思うと……


『っグワァアアアアアアアアアア!!』


 咆哮を上げ、その口からレーザーのようなブレス(?)を放出し、わたしのフレイムジャベリンにぶつけたのだ!


「って、はぁ?!」


 その光景を見て、わたしは怒りを忘れて素で驚いてしまった。


 わたしの魔術を攻撃によって相殺すれば、問答無用で彼の負けなのは始める前に確認したのに、アズラクは迷うことなく相殺しようと試みたのだから。


 だけど、彼のブレスを無い物のようにわたしのフレイムジャベリンは切り裂きながら突き進む。


『っ!?くっそ!!』


 ブレスでは止められないと悟ったのか、突然ブレスを止め前傾姿勢をやめて身構えると、彼はあろうことか飛来するフレイムジャベリンを両手でつかんだ。


『うわぁあああああああああああ!!』


 掴んだ瞬間、肉の焼ける音と共にアズラクの悲鳴が辺りに木霊する。


「ちょっ、冗談でしょ?!何でよけなかったの!?」


 まさか避けずに素手でつかむとは思わず、わたしは驚きのあまり叫んだ。


『ぐぅううう……嘘だ……こんなの……』


 わたしの声を聞く余裕がないのか、アズラクは掴んだフレイムジャベリンを押し返そうと必死に力を込めるけど、その勢いは全く衰えることはなく、徐々に彼の胸へと迫りつつあった。

 

 ……ヤバい。これは、絶対ヤバいやつだ……


 怒りに任せて放った自分の魔術を目の当たりにして、わたしは背中が凍り付く様な感覚に襲われた。


 どうにかしないと!と思ったその時だった。


『っ!?』


 キンッ!と甲高い音が鳴った瞬間、アズラクの手がはじかれると同時にフレイムジャベリンが透明(・・)な箱に覆われる。


 そして箱が風車のようにクルクルと回り、槍の切っ先が空に向いた瞬間箱は消失し、フレイムジャベリンが青空へと昇って行った。


 何が起きたのか一瞬分からなかったけど、こんな芸当出来るヒトは一人しか知らないので、メルトさんの方を見るといつもの妖艶な笑みを浮かべてわたしを見ていた。


「ね?だから言ったでしょう…貴女なら絶対大丈夫だからって」


 何処か自分の考えが正しかったことを自慢するようにわたしにそういうと、メルトさんはわたしとアズラクのちょうど中間地点へと歩いていった。


「……攻撃による魔術の相殺を行ったので、アズラクの反則負け!よってこの勝負、セアちゃんの勝ちよ!」


 メルトさんが高らかにジャッジを下した。


 勝ったわたしは喜んでもよかったんだろうけど、さっきの光景が頭から離れず喜ぶことが出来なかった。


 そして、アズラクも負けたにも拘わらず、反応しなかった。


 変な沈黙が裏庭に流れる中、メルトさんが何かに気が付きアズラクの方へと歩いていく。


「あら、やだ。この子、気絶してるわ」

 


次回更新は、六月一日午後十一時です。

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